韓国における現行の個人情報保護監督機関の現状は、表 3 の通りである。
表 3 韓国における個人情報保護機構の構成及び運営状況
機関名 構成現況 機関長任命 機関の役割及び根
拠法 運営現況
個人情報紛争調 停委員会
・委員会 ( 総 15 人 ) - 4 人の法律家 - 6 人の教授
- 3 人の関連機関専 門家
- 2 人の消費者、事 業者団体代表
・事務局
行政安全部長官 民間部門の被害救 済(情報通信網法)
・委員会を支援す る事務局を韓国イ ンターネット振興 院で運営する
放送通信委員会 行 政 機 関 ( 政 府 省庁 ) 大統領 民間の情報通信分 野の監督(情報通 信網法)
・個人情報保護業 務を専門に担当す る個人情報保護倫 理課がある
・個人情報侵害申 告受付、相談など の業務を担当する 個人情報
侵害申告センター を、行政安全部、
放送通信委員会と 共同で運営
公共機関個人情 報保護審議委員 会
・委員会 ( 総 10 人 ) - 委員長 1 人を含む 10 人の委員で構成 - 委員長 : 行政安全 部次官
- 委員 : 国務総理が 任命又は委嘱
国務総理 公共部門の審議機 構(公共機関個人 情報保護法)
・公共部門でコン ピュータによって 処理される個人情 報の保護に関する 主要事項の審議
行政安全部 行 政 機 関 ( 政 府 省
庁 ) 大統領
公 共 部 門 の 監 督 ( 公共機関個人情 報 保 護 法 ) と 民 間部門のうち百貨 店・ホテル・旅行 社など(情報通信 網法)
・個人情報保護業 務を担当する部署 がある
・公共機関個人情 報保護に関する事 項を審議する個人 情報保護審議委員 会運営
出典 :이창범/윤주연『각국의 개인정보피해구제제도 비교연구』2003년 12월、개인정보분 쟁조정위원회、277 頁を基に一部加筆修正した
ここでは、公共機関個人情報保護法が規定する公共機関個人情報保護審議委員会と、情報通信網法 が定める個人情報紛争調停委員会、そして、情報通信網法に基づいて設立された放送通信委員会傘下の 特殊法人であり、個人情報侵害申告センターの業務を担当している韓国インターネット振興院(KISA)1 について説明することにする2。
(1)公共機関個人情報保護審議委員会
①公共機関個人条保護審議委員会の概要
公共機関のコンピュータ等によって処理される個人情報の保護に関する事項を審議するために国務 総理所属下に公共機関個人情報保護審議委員会を置く ( 公共機関個人情報保護法 20 条 1 項 )。しかし、
委員会の構成・運営及び人事・行政上の支援などは、国務総理室ではなく、行政安全部が担当している。
委員会は、①個人情報保護に関する政策及び制度改善に関する事項、②処理情報の利用及び提供に 対する公共機関間の意見調整に関する事項、③行政安全部長官から審議要請を受けた事項、④他の法 律で定められた所管業務を遂行するための処理情報の目的外利用または提供に関する事項、⑤その他 個人情報の保護に関して大統領令で定める事項について、審議する (2 項 )。
委員会は、委員長 1 人を含む 10 人以内の委員で構成し (3 項 )、委員長は行政安全部次官が、委員は 公共機関の所属職員及び個人情報に関する学識と経験が豊富な者の中から委員長の推薦で国務総理が 任命または委嘱する (4 項 )。委員の任期は、2 年であり (5 項 )、その他委員会の組織及び運営に関して 必要な事項は大統領令で定めるとされている (6 項 )。委員は、当然職 5 名と委嘱職 5 名で構成されて いるが、当然職 5 名は政府省庁の公務員である。
②公共機関個人情報保護審議委員会の運用実態
このような構成のために、国家人権委員会は、公共機関個人情報保護審議委員会について「個人情 報保護審議委員会は行政安全部次官が委員長を任されており、委員は委員長が推薦する構造である。
個人情報保護審議委員会の役割は、諮問機能以上を果たし得ず、別途の事務局も存在しないので、行 政安全部から全く独立し得ておらず、2005 年から 2009 年の上半期までの会議開催が総6回に止まる など、実効性のある役割をしていると見ることは困難である3」とまことに厳しい評価を下している。
1 2009 年 7 月に、政府の公共機関先進化政策により放送通信委員会傘下の韓国情報保護振興院 (KISA)、韓国インターネット振興院 (NIDA)、情報通信国際協力振興院 (KIICA) の 3 つの機関が統合して新たにスタートした機関である。
2 国家人権委員会も、その決定の中で、「現行法上、個人情報保護を担当する機構としては、公共部門を担当する公共機関の個人情報 保護に関する法律に基づいた個人情報保護審議委員会と、民間部門を担当する情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律上 の個人情報紛争調停委員会及び個人情報侵害申告センターがある」( 国家人権委員会常任委員会決定 [3개개인정보보호법률안(이 혜의원대표발의안,변재일의원대표발의안,정부발의안)중 개인정보보호기구 관련 조항에 대한 의견](2009.12.24)6 頁 ) と述べて いる。
3 国家人権委員会常任委員会、前掲決定 (2009.12.24)6 頁。
(2)個人情報紛争調停委員会
①個人情報紛争調停委員会制度の概要
個人情報紛争調停委員会は、情報通信網法 33 条乃至 40 条に基づいて設置・運営されている4。
(a) 構成
紛争調停委員会は、委員長 1 名を含む 15 名以内の委員で構成され、そのうちの 1 名は常任とす る(33 条 2 項)。常任委員は、事務局の指揮監督と委員会の議決の支援を行う。
委員は、次の①から⑥のいずれかの資格を有する者の中から、行政安全部長官が任命または委嘱 するが、委員の分布を多様にするためにそれぞれの資格要件に該当する者を 1 名以上含まなければ ならない(3 項)。その資格とは、①大学または公認された研究機関で副教授級以上またはこれに相 当する職にあるかあった者で個人情報保護関連分野を専攻した者、② 4 級以上の公務員またはこれ に相当する公共機関の職にあるかあった者で個人情報業務に関する経験のある者、③判事・検事ま たは弁護士の資格のある者、④情報通信サービス利用者団体の役職にあるかあった者、⑤情報通信 サービス提供者または情報通信サービス提供者団体の役職にあるかあった者、⑥非営利民間団体支 援法第 2 条による非営利民間団体で推薦した者の 6 種である。なお、情報通信網法には、委員の欠 格事由についての定めはない。
一方、委員は、次の各号の一に該当するときは、当該紛争調停請求事件の審議・議決から除斥さ れる(35 条 1 項)。すなわち、①委員またはその配偶者であった者が当該事件の当事者になるか、
その事件に関して共同権利者または共同義務者の関係にある場合、②委員が当該事件の当事者と親 族関係にあるかあった場合、③委員が当該事件に関して証言や鑑定をした場合、④委員が当該事件 に関して当事者の代理人または役員として関与した場合、の 4 つの場合である。さらに、当事者は 委員に審議・議決の公正を期待するのが困難な事情があるときは、紛争調停委員会に忌避を申し立 てることができる。この場合、紛争調停委員会は忌避の申立てが妥当であると認めるときは、忌避 の決定をする (2 項 )。また、委員が除斥・忌避に該当するときは、自らその事件の審議・議決を回 避することができる (3 項 )。
なお、委員長は、委員の中から行政安全部長官が任命する (33 条 5 項 )。
4 現在の個人情報の監督の実際の流れは、韓国インターネット振興院(KISA)で個人情報侵害の申告を受け付けて、その事案に従い 各部署に渡している。例えば、紛争調停事件は個人紛争調停委員会に渡し、個人情報侵害事件で刑事事件の場合は行政安全部を経 て捜査当局に移行しているが、しかし、個人情報保護法が施行されれば、個人情報保護に関する事項は、個人情報保護委員会を中 心に扱われることになり、紛争調停事件は行政安全部傘下の個人情報紛争調停委員会で扱われることになるであろうということで ある。2011 年 3 月 25 日に行った個人情報紛争調停委員会委員長である金浹謙・東国大学法学部長へのインタビューでの発言。
(b) 委員の任期及び身分保障
委員の任期は 3 年であり、連続して任命することができる (33 条 4 項 )。委員は、資格停止以上 の刑を宣告され、または、心身上の障害で職務を遂行できない場合を除いては、その意思に反して 免職または解嘱されない (34 条 )。
(c) 業務支援組織
紛争調停委員会の業務を支援(紛争調停案件の事実調査、委員会の議決の支援など)するために、
韓国インターネット振興院 (KISA) に事務局を置く (33 条 6 項 )。また、紛争の調停業務を効率的に 遂行するために紛争調停委員会に 5 名以下の委員で構成される調停部を置いている (33 条の 2 第 1 項 )。
(d) 調停対象紛争の範囲と調停手続
調停対象は、個人情報に関する紛争である (33 条 1 項 )。ここで個人情報とは、生存する個人に 関する情報で、氏名・住民登録番号等によって個人を識別することができる符号・文字・音声・音 響及び映像等の情報 ( 他の情報と容易に照合することができることによって特定の個人を識別する ことができる情報を含む ) をいう (2 条 6 号 )。
情報通信網法には、申請人の資格についての規定はないが、個人情報紛争調停委員会の設置目的 が「個人情報に関する紛争を調停」するものである以上、申請人は個人情報に関する紛争に対して 調停を申請しようとする者であると解される。代表者や代理人に関する規定はない。また、申請書 に記載しなければならない要件、申請期間、調停費用などについての規定もない。
紛争の調停申請を受け付けた紛争調停委員会は、申請を受けた日から 60 日以内に審査して調停 案を作成しなければならない。ただし、やむを得ない事情がある場合には、紛争調停委員会の議決 によって、その期間を延長することができる (36 条 2 項 )。期間を延長する場合には、期間延長の 事由などの事項を申請人に知らせなければならない (3 項 )。
紛争調停委員会は、紛争調停のために必要な資料の提供を紛争当事者に要請することができる。
この場合、その紛争当事者は正当な事由がない限り要請に従わなければならない (37 条 1 項 )。
紛争調停委員会は、調停申請を受け付けた後、当事者にその内容を通知して、調停前の合意を勧 告することができる (19 条 )。
(e) 調停の効力
紛争調停委員会は調停案を作成したときは、遅滞なく、各当事者に提示しなければならない (38 条 1 項 )。この場合、調停案を提示された当事者は、提示された日から 15 日以内に調停案の受諾の 可否を紛争調停委員会に通知しなければならない (38 条 2 項 )。当事者が調停案を受諾すれば、紛 争調停委員会は直ちに調停書を作成しなければならず、委員長及び各当事者はその調停書に記名捺 印しなければならない (3 項 )。当事者が調停案を受諾して調停書に記名捺印すれば、当事者間に調