経営 面積
主食用 作物栽 培面積
飼料栽培面積
経営 面積
主食用 作物栽培
面積 トウモ
ロコシ
青刈トウ モロコシ
青刈 裸燕麦
トウモロ コシ
青刈トウ モロコシ
青刈 裸燕麦
主食用・飼 料両方減少
飼料の栽培面積 表3-3 「退耕還林」実施前後の耕地利用と飼料購入状況 (単位:a)
農家 番号
元 放牧 農家
購入飼料 2013年
トウモロコシ 瓜の種子殻 胡麻搾りかす
主食用作物
のみ減少
44 第四節 舎飼い転換による畜産農家の就業変化
序章で見た先行研究によると,放牧が禁止されると,飼料購入の増大によるコスト増大だ けでなく,給餌労働の増加により人件費も増大することが指摘されている。
そこで,次に舎飼いへの転換前後の 15 戸の畜産農家の就業状況の変化について考察する。
先行研究の指摘に基づけば,農家労働力はより畜産業に傾斜して投入されることになる。
1.元放牧農家の就業変化
表 3-4 には元放牧農家の 6 戸の家族員数(戸籍人数)と学生以外の家族労働力の舎飼い開 始前後の就業状況を示した。就業内容として農業,畜産業のほかに在村非農業として羊の転 売業,その他の兼業があり,その他の兼業には日帰りの兼業と農閑期を利用した半年間の出 稼ぎが含まれている。表中の 1 番農家と 3 番農家には通年の出稼ぎ・離村者がいるが,これ らは戸籍が残されているものの家計が同一でないことと,変化がないため,本表には含めな かった。
この 6 戸のうち,兼業農家あるいは専業農家として変化のなかった農家がそれぞれ 4 戸あ り,専業農家から兼業農家に変化した農家が 2 戸あった。家族労働力の就業変化の内容を具 体的に見ていこう。
まず,専業農家として変化の無かった 1 番農家について見る。息子と娘が出稼ぎ・離村を しているため,世帯主夫婦のみが在村している。世帯主は 2000 年に羊の放牧を始め,舎飼い を開始した 2013 年まで続けており,舎飼いに転換して以降も夫婦で対応している。
R村での放牧は 1 年間行うが,毎日自宅から村周辺の荒地までの往復時間を含めて平均 10 時間かかり,1 番農家では世帯主が担当している。1 年のうち 4 月から 10 月までは天然の草 で十分であるが,11 月から翌年 3 月までの期間は荒地や収穫後の畑に放牧し,帰宅後,濃厚飼 料を補充する必要がある。そのため,冬季はトウモロコシの脱粒といった飼料準備と給餌作 業が必要となる。1 番農家ではこの作業を夫婦で担当していた。農作業も同様に夫婦で行っ ていた。
2013 年に農民専業合作社に加入し,舎飼いへ転換した後は,放牧労働がなくなるため,そ の時間は空いたが,毎日飼料の準備と給餌で 3~4 時間を要するようになった。1 番農家の場 合は,舎飼いに転換したことで,夏季に夫婦二人での飼料準備・給餌の作業時間が増えた分, 妻の労働時間が増えたが,世帯主の夏季の労働時間は短縮された。
45 次に専業農家から兼業農家に変化した 2 番農家と 3 番農家ついて見よう。
2 番農家は 4 人家族であるが,学生が 2 人おり,世帯主夫婦のみが農業に従事している。世 帯主は,2008 年以前はカシミヤヤギを飼育していたが,2009 年から羊の飼育に切り替えた。
農民専業合作社に加入する 2012 年までは,放牧と冬季の飼料準備・給餌作業を世帯主のみ で行っていた。
2012 年に舎飼いへ転換した後,家族の仕事の分担は変わっていないが,世帯主は放牧の時 間が短縮した分,羊の転売業を兼業として始めた。2013 年には,毎月 100 頭程度の羊を畜産 農家から買い集め,市場へ出荷している。羊の転売は個々の農家から集めた羊が一定の頭数 になるまで飼育しておくことが必要である。転売用の羊は放牧せずに,自宅近くの囲いの中 で飼育しており,濃厚飼料を与えることが必要である。2 番農家は,この作業を夫婦で行って いた。
同じく兼業農家になった 3 番農家は 6 人家族であるが,大学院生の娘(28 歳),息子夫婦と 孫は都市で生活している。2013 年に農民専業合作社に加入する以前,世帯主は 20 年以上羊 の放牧をしていた。放牧の状況は他の農家と同様であるが,冬季の飼料準備は妻が分担して
羊の 転売
その 他
羊の 転売
その 他
男(58歳) ○ ○ ○ ○
女(52歳) ○ ○ ○ ○
男(31歳) ○ ○
女(29歳) ○ ○
男(48歳) ○ ○ ○ ○ ●
女(45歳) ○ ○
男(50歳) ○ ○ ●
女(52歳) ○ ○ ○ ○
女(28歳) ○ ○
男(24歳) ○ ○
女(20歳) ○ ○
男(44歳) ○ ○ ○ ○
女(43歳) ○ ○
(雇用) ○
男(40歳) ○ ○ ○ ○ ○ ○
女(40歳) ○ ○ ○ ○
(雇用) ○
男(47歳) ○ ○ ○ ○
女(45歳) ○ ○
(雇用) ●
(出所)R村での聞き取り調査(2014年)による。
(注)1)●は畜舎飼養前にはなかった新しい就業内容を示す。
2)兼業農家にある(雇用)は家族労働力ではないが、畜産業での雇用があることを示している。
半年 出稼 ぎ
兼 業 農 家
4 4
5 5
6 4
専 業 農 家
1 4
専 業 か ら 兼 業 へ 変 化
2 4
3 6
表3-4 畜舎飼養開始前後の元放牧農家の就業変化 世帯の
就業変 化
農家 番号
家族 人数
就業者 (性別・
年齢)
畜舎飼養前 畜舎飼養後
農業 畜産 業
在村非農業 通年
出稼 ぎ・
離村 半年
出稼 ぎ
通年 出稼 ぎと 離村
農業 畜産 業
在村非農 業
46 いた。農業は夫婦で行うが,世帯主は主に農繁期作業のみに従事していた。2013 年に農民専 業合作社に加入した後も,夫婦間の農業と畜産の分担状況は変わらなかったが,世帯主は羊 の転売業を始めた。
これらの 2 戸の農家は世帯主の放牧時間が減少したことを受けて,兼業を始めた点で共通 している。
最後に 4 番,5 番,6 番の兼業農家について見る。
4 番農家は 4 人家族で,就学中の子供が 2 人いる。2012 年に農民専業合作社に加入する前 は放牧を行っていたが,村の放牧労働者を通年雇用しており,世帯主は農業に加え兼業とし て羊の転売業に従事していた。農業の農繁期作業は 1 日で 10 時間作業を行うが,羊の売買 は一か月に 1 回程度であるので農業と両立が可能であった。転売用の羊の世話を含めて夫 婦で行っていた。2012 年に,農民専業合作社に加入した後は,放牧労働者の雇用がなくなり, 夏季の飼料準備・給餌の時間が 3~4 時間かかるようになったが,羊の転売業も継続され就 業変化は起こらなかった。
5 番農家は 5 人家族で就学中の子供が 3 人おり,夫婦で農業と畜産業を行っていた。2005 年から,羊の放牧を開始したが,世帯主は羊の転売業に従事していたので,放牧労働者を年 間 1 頭当たり 150 元(2011 年)で雇用した。2012 年に農民専業合作社に加入した後は,放牧 労働者の雇用は必要なくなったが,夫婦の就業内容には変化がなかった。
6 番農家は 4 人家族で,2 人の就学中の子供がいる。2013 年に農民専業合作社に加入する まで 20 年以上羊の放牧をしていた。世帯主は他の農家と輪番制で放牧に従事していたため, 夏季も空いた時間を利用して羊の転売業を行っていた。農業は世帯主のみが行い,飼料準 備・給餌は夫婦で分担して行っていた。2013 年に農民専業合作社に加入した後は,放牧労働 がなくなったため羊の転売業を,雇用を入れて継続している。
このように放牧飼育から舎飼いへ転換した後には,以前であれば夏季にはなかった飼料 準備・給餌時間が通年作業となる一方で,夏季の放牧労働がなくなった。その結果,世帯主 の時間的余裕が増大した。他方で妻には夏季も飼料準備などの作業時間が増大するという 変化が生じた。調査農家の中で,舎飼いに転換したことで実際に兼業が増大した農家は 2 戸 にとどまるが,すべての農家が同様の状況に置かれている点で共通している。つまり,舎飼 いは飼料準備・給餌労働を通年化させるが,放牧労働から解放されることで男性の非農業部 門就業を拡大する契機となったと言える。
47 2.畜産部門への新規参入農家の就業変化
R村で舎飼いを行う農民専業合作社に加入したのは元放牧農家だけではなく,畜産部門 への新規参入農家もいる(以下「新規参入農家」と略す)。調査対象の 15 戸の農家うち,9 戸 は新規参入農家である。
表 3-5 には新規参入農家の合作社加入前後の就業内容について示した。表頭の項目は表 3 と同じである。彼らの就業変化の特徴は,合作社加入前に羊の転売業に従事しているか否 かで明確な違いがある点である。羊の転売業に従事していたのは, 9 戸のうち 5 戸(7 番・8 番・9 番・10 番・11 番)で,従事していない農家は 4 戸(12 番,13 番,14 番,15 番)である。後 者のうち,14 番農家は半年間の出稼ぎから戻った男性が畜産業を始めた農家で,12 番と 13 番の農家は農業以外の就業がなく畜産業を始めた農家で, 15 番農家は無職であった夫婦が 農業と畜産業を始めた農家である。
羊の 転売
その 他
羊の 転売
その 他
男(47歳) ○ ○ ○ ● ○
女(43歳) ○ ○ ●
女(20歳) ○ ○
男(19歳) ○ ○
男(44歳) ○ ○ ○ ● ○
女(40歳) ○ ○ ●
男(40歳) ○ ● ○
女(40歳) ○ ○
男(43歳) ○ ○ ○ ● ○
女(39歳) ●
男(60代) ○ ● ○
女(60代) ○ ○ ●
男(34歳) ○ ○
女(32歳) ○ ○ ●
男(65歳) ○ ○ ●
女(65歳) ○ ○
13 2 男(45歳) ○ ○ ●
男(60代) ○ ○ ○ ○
男(43歳) ○ ● ● ●
女(40歳) ○ ○
男(29歳) ● ●
女(29歳) ●
(出所)R村での聞き取り調査(2014年)による。
(注)●は畜舎飼養前にはなかった新しい就業内容を示す。
表3-5 新規参入農家の就業変化 合作社
加入前 の状況
農家 番号
家族 人数
就業者 (性別・
年齢)
合作社加入前 合作社加入後
農業 畜産 業
在村非農業 在村非農
業
4 10 5
通年出 稼ぎと 離村 半年
出稼 ぎ
通年出 稼ぎと 離村
半 年 出 稼 ぎ 農業 畜産
業
羊 転 売 非 従 事
12 2
14 5
15 4 羊
転 売 従 事
7 4
8 4
9
11 5