試験区(ディスペンサー設置) 対照区(未設置)
図3 フェロモントラップによるヒメボクトウの 総誘殺数
0 1 2 3 4 5
7/18 7/20 7/22 7/24 7/26 7/28 7/30 8/1 8/3 8/5 8/7 月/日
誘殺数(頭)
♂ ♀
図4 ディスペンサー設置区内の日別乾式予察灯によるヒメボクトウの誘殺推移(
2011
年)
また 、試 験 区 内のリ ン ゴ樹 ではふ化幼虫 による 初 期 被 害もみられなかった。しかし 、 ふ化幼虫 の初 期 被 害は 、対照区 で確認 できた のは 2010 年が 1 箇所 、2011 年が3箇所 と少 なく、効果 の評価 はできな かった(表4)。リンゴ は粗皮の 発達が著 しく、初期 被害 の特徴となる 粗皮下 から排出 される 若 齢 幼 虫の 細かい虫糞 は見つ け に くく 、日本 ナシ 等の棚仕立 てに比 べて立ち 木仕立ての 樹形は調 査 効 率が かなり悪 かった。
表4 ヒメボクトウによる初期被害調査結果
樹数(率%) 排出孔数
2011年 9月14日 26 0 (0) 0
2010年 9月15日 20 0 (0) 0
2011年 9月13日 47 3 (6) 3
2010年 9月10日 20 1 (5) 1
ディスペンサー
設置区(場内)
対照(天童市)
調査年
区 調査日 調査
樹数
初期被害のみられた
なお 、ヒメボクトウの ディスペンサーが 他種のチ ョ ウ目害虫 に対して 、誘引阻害等 の影響 を与えるか 調査 す る た め、試験区 と試 験 場 内のデ ィ ス ペ ン サ ー未 設 置 区に各種 のト ラ ッ プを 設置して 半旬毎に 誘殺数を 調査した。その 結果、キンモンホソガ やリン ゴコカクモンハマキ、モモシンクイガ への 影響はな か っ たが、ナシヒメシンクイに 対 して はヒメボクトウの ディスペンサー設置後 の誘殺数 が大きく 減少し 、弱 いながらも 誘 引 阻 害を起 こしている可能性 が示唆された 。
また 、設置したデ ィスペンサーの 有効成分残存量は 、8 月 下 旬 頃に 残存率が 10% 程 度にな り放出量 も減って 交信かく 乱効果 はほとんど消失し て い た(図 5)。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
6/2 7/2 8/2 9/2
月/ 日
残存率%
有効成分
4. お わ り に
現在 、ヒメボクトウの 被害は東北 6県す べ て で発生 し て お り、関東や中 部 地 域でも 発生 が拡大し て い る。生 産 現 場では 被害があっても生産者 がカミキリムシ 類の被害 と 誤認 し、発 生 初 期の段階 だと気がつかずに 見落としてしまうことも多い 。樹体に大 き
図5 ディスペンサーの有効成分残存の推移(2010年)
な損傷 を与えるヒ メ ボ ク ト ウは 、防除 の難しい 害虫と 考え ら れ る。今後は、関 係 機 関
と 連 携を し な が ら本 種の 被害 を防 止す る た め の 総 合 的 な防 除技 術の 確 立に向 け て取
組んでいきたい 。
引用 文献
菅 原 秀 治・ 平 澤 秀 弥・髙 部 真 典 ・阿 部 篤 智・ 伊 藤 慎 一(2009 ) 山 形 県のリ ン ゴ園 にお
けるヒ メ ボ ク ト ウの発 生 実 態.北日本病虫研報 60: 277-280
伊 藤 慎 一( 2010) リ ン ゴのヒ メ ボ ク ト ウに 対する 昆 虫 寄 生 性 線 虫ス タ イ ナ ー ネ マ・ カ
ーポカプサエの防 除 効 果. 北日本病虫研報 61:215- 219
中牟田 潔 ・伊 藤 慎 一・ 佐々木 正 剛・中 西 友 章 ・南島 誠(2010) 新たな 果 樹 害 虫とし
てのヒ メ ボ ク ト ウ.植 物 防 疫 64(12):1-3
中 西 友 章(2009) ナシ のヒ メ ボ ク ト ウに 対する 生物的防除に つ い て .バ イ オ コ ン ト ロ
ール 13(1):44 -47
伊藤 慎一 氏
山形県農業総合研究セ ン タ ー園芸試験場 園芸環境部 主任専門研究員 虫 害 担 当
平成 2 年:山形大学農学部卒業
平成 3 年 4 月 :山形県入庁
平成 3 年:山形県病害虫防除所 で病害虫発生予察業務に従事
平成 9 年:山形県園芸試験場で果樹 のハ ダ ニ類、食用ギクの アザミウマ対策 の研究 に
従事
平成 12 年: 山形県病害虫防除所
平成 17 年: 山形県庁総務部危機管理室食品安全対策課で農薬 の適 正 使 用の指導 およ
び農薬取締法に基 づく農薬販売店立入検査業務 に従事
平成 21 年: 山形県農業総合研究セ ン タ ー園芸試験場、現在 に至る
リンゴ やブドウ の枝 幹 害 虫の防 除 対 策に関する 研究に従事
プロフィール
静岡県農林大学校教務課 主査 藤浪 裕幸
1 は じ め に
静岡県東部地域 のJA伊豆 の国は、栽培面積約 33ha、出荷販売金額約 12 億 、 生産者 170 名のイ チ ゴ産地である 。平成 21 年から 防除の省 力 化 及び 収量性の 向 上を目的 に、天 敵 導 入を 核とした IPMの 導入を推進 し、平成 23 年 は天 敵 導 入 戸数 112 戸、導入率 65 .9%、21 年対比 486.0%と 、3年間 で急激に 導入が進 み、
静岡県 の天敵導入戸数の 約4分の 1を占め て い る。これまでの取り組 みについて 報告する 。
2 取り組みの 概要
平成 21 年 5 月に、 防除暦を 作成し、 全 生 産 者に 配布した 。同時に 、現地調査 ほ場を5 ヶ所選定 し、農林事務所とJA 担当者で 、病害虫の 発 生 状 況を、育苗ほ 、 本ぽに つ い て、毎 週 調 査を行 った。生産者 からの聞 き取り に よ り農 薬 散 布履歴 を 確認した 。調 査 結 果は、毎月の栽培講習会で 報告し、悪い事例(薬剤の 選択、薬 害等) が あ っ た場合は 、その 改 善 策の説明 を行った 。現 地 調 査の 結果を も と に 、 改善した 防除暦を 翌年 3 月 に作成し 、次作の防除 にいかして いる。防除暦 の改善 は、平成 22 年から 毎年行 っ て い る。
(1 )防除暦
育苗ほ用 と本ぽ用 の2つを 作成した 。育苗 ほ防除暦(表1)は、予防を目的 とした 殺菌剤 の散 布 間 隔を、7日間隔 として 殺虫剤を組 み合わせた 。3 月下旬 の 親株定植以降、4 月 から 9 月下旬 の本 ぽ定植前 までの約 6 ヶ月間に 7 日間隔 、 計 25 回、農薬費は 約 3 万 6 千円( 本ぽ 10 a当りに 必要な苗 )で あ っ た。本防 除暦 の特徴 は①合成 ピレスロイド系、有機 リン系、カーバメート系 の薬剤は 極 力使用 しない 、②病害虫 の抵抗性 の発達を 回避す る た め、異なる成分 の薬剤 を 3 種類以上輪番で配置 、③ハダニ 対策として 気門封鎖剤は約2 週間、殺 卵 効 果 のある 薬剤 は約1ヶ 月間隔で 配置した 。
本ぽ 防除暦( 表2)は、①天敵 ミヤコカブリダニ、チ リ カ ブ リ ダ ニ、アブラ バチを利用 、②天敵 に影響 が少ない 薬剤を選択 し、異なる 成分の薬剤 を 3 種類 以 上 輪 番で配置した 。
過去 の現 地 調 査で硫黄 くん煙 を行なっているハ ウ スに 天敵を放飼 した場合 、 天敵の 定着が悪 く、失敗 した事例 があったため、天敵放飼後 7 日間は、慣行的 に硫黄 くん煙は 行わない こととした。
イチゴにおける天敵導入を核とした病害虫防除
―静岡県東部地域におけるIPMの取り組み―
また 、天敵放飼後、14 日間は 薬剤散布 に よ り天敵 が洗 い流されるのを防 ぐ ため、薬 剤 散 布は行 わないこととした。ただし 、天敵放飼後 、薬 剤 散 布を 行わ ない 14 日間に他 の病害虫が 発生しないように 、天敵放飼予定日 から逆算 し、
計画的 な防除を 行う。特 に、ヨトウムシ、 スリップスの防除は 必要になる 。
(2 )気門封鎖剤と薬害
気門封鎖剤 プロピレングリコールモノ脂肪酸 エ ス テ ルは、高温期 は新葉に 薬 害 が発生しやすいので 注意が 必要である 。土 耕 栽 培では収穫期 に気門封鎖剤 を 使用 すると 、マルチに接 した果実 に薬害が 発生する 。こ の た め、プロピレング リコールモノ 脂肪酸 エ ス テ ル、デ ン プ ン等 の気門封鎖剤は、土 耕 栽 培では 、開 花期以降使用 しないこと。また、殺菌剤 ジチアノンと気門封鎖剤プロピレング リ コ ー ル モ ノ 脂 肪 酸 エ ス テ ルの 混 合 散 布 は茎 葉に 薬害が 発生 す る の で 注意 が 必要 である 。
3 調 査 結 果
( 1)土 耕 栽 培(生産者 A)
①天 敵 導 入 1 年目の 平成 21 年は、育苗 ほから 本ぽにハ ダ ニを持 ち込み、 ミヤ コカブリダニの 放飼が 11 月 3 日 と遅れ、ハダニ が増加 し た た め、2 回目 に チリカブリダニ を 12 月 3 日に 放飼した 。2 月にハ ダ ニが 再び増加 し た た め、
3 月上旬 にビ フ ェ ナ ゼ ー ト水和剤を 散布した 。4 月以降 はハ ダ ニの発生は 抑 制された (図1 )。
0 20 40 60 80 100
9/24 10/28 12/3 1/4 2/9 3/15 4/20
1 複葉当 り 虫数
0 1 2 3
1 複葉当 り 天敵数
ハダニ成虫 ハダニ卵 チリカブリダニ ミヤコカブリダニ 殺ダニ剤
気門封鎖剤 ミヤコ 放飼 チリ放飼
② 天 敵 導 入 2 年目 の平成 22 年は 、育苗ほから 本ぽへの ハダニの 持ち込 み は な く、
10 月 29 日にミヤコカブリダニとチ リ カ ブ リ ダ ニのスケジュール 放飼を 行い、
1 月 9 日にチ リ カ ブ リ ダ ニの追加放飼 を行なった 。調査期間中 、2 月にハダ ニの発生 がわずかに認め ら れ た(図 2)。
図1 土 耕 栽 培に お け るハダニ とカブリダニの 発 生 状 況の推移 (平成21 年)
0.0 0.5 1.0
10/4 11/9 12/13 1/17 2/14
1 複葉当 り 虫数
0.00 0.05 0.10
1 複葉当 り 天敵数
ハダニ成虫 ハダニ卵 チリカブリダニ ミヤコカブリダニ 殺ダニ剤
気門封鎖剤 ミヤコ放飼 チリ放飼
( 2)高 設 栽 培(生産者 B)
①平成 21 年は、育苗 ほから 本ぽにハ ダ ニを持ち 込み、薬 剤 防 除の み で は、 ハ ダニの 発生を抑制 できないため、天 敵 導 入を 急遽行うこと になり 、12 月 13 日にシェノピラフェン水和剤 を散布 して、ハダニ 密度 を低下させ 、12 月 15 日にミヤコカブリダニとチ リ カ ブ リ ダ ニを放飼 した。1 月にハ ダ ニが増加 し たため 、1 月上旬 にビフ ェナゼート水和剤 、2 月上旬にシフルメトフェン 水 和剤を 散布し、3 月 5 日 にチ リ カ ブ リ ダ ニを 追 加 放 飼した。2 月以降ハダニ の発生 は低密度で 推移した 。(図3)。
0 2 4 6 8
12/8 12/15 12/24 1/4 1/13 1/22 1/29 2/9 2/22 3/8 3/23 4/6
1 複葉当 り 虫数
0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12
1 複葉当 り 天敵数
ハダニ成虫 ハダニ卵 チリカブリダニ ミヤコカブリダニ 殺ダニ剤
ミヤコ放飼 チリ放飼
図2 土 耕 栽 培に お け るハダニ とカブリダニの 発 生 状 況の推移 (平成22 年)
図3 高 設 栽 培に お け るハダニ とカブリダニの 発 生 状 況の推移 (平成21 年)
② 天 敵 導 入 2 年目 の平成 22 年は 、育苗ほから 本ぽへの ハダニの 持ち込 み は な く、
10 月 29 日にミヤコカブリダニとチ リ カ ブ リ ダ ニのスケジュール 放飼を 行い、
1 月 15 日にチ リ カ ブ リ ダ ニの追 加 放 飼を行 なった。 調査期間中、ハダニ の 発生は 認められなかった。( 図4)。
0.0 0.5 1.0
9/27 10/25 11/22 12/21 1/17 2/14 3/14
1 複葉当 り 虫数
0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
1 複葉当 り 天敵数
ハダニ成虫 ハダニ卵 チリカブリダニ ミヤコカブリダニ チリ放飼
ミヤコ放飼 気門封鎖剤 殺ダニ 剤
( 3)天 敵 利 用が防除回数及 び収量に 及ぼす影響
①平成 21 年は、化 学 農 薬による ダニ防除回 数は 11 回、天 敵 放 飼は 、ミ ヤ コ カ ブ リ ダ ニ 1 回、チリカブリダニ 2 回 、計 3 回行 った( 図5)。
0 2 4 6 8 10 12 14 16
H21年 H22年
ハダニ 防除回数 ( 回 )
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000
収量 (kg/ 10 a )
チリカブリダニ ミヤコカブリダニ 化学農薬 収量
図4 高 設 栽 培に お け るハダニ とカブリダニの発 生 状 況の推移 (平成22 年)
図5 本ぽにおけるハ ダ ニ防除回数及び収量