木村映善
(1)平成30年度活動報告 1 )調査研究
①EHR時代に向けた患者プロファイル情報を集積・提 供するフレームワークに関する研究(基盤研究C)
日本医療情報学会課題研究会「患者プロファイル基盤 研究会」の活動及び本研究に参画し,患者プロファイル 情報(Patient Profile Information : PPI)の標準化を進め る方法論について検討した.全国61病院での患者に関す る基本情報の調査結果から,共通して利用される機会の 多いデータ項目の集計結果をもとに,基本データ項目群 と利用目的に依存する詳細データの項目群にわけて,標 準化を検討した.木村はこの検討を背景として,最近諸 国での採用が進んでいる標準医療情報交換規格「FHIR」
に注目し,特にPPIの相互交換による恩恵を受けると思 われる医療安全への応用を視野に入れ,アレルギーに関 する記述の標準化と臨床判断支援システムへのユース ケースの検討を行った.
②オープンな評価コンテストによる匿名加工アルゴリズ ムとリスク評価の研究(基盤研究A)
2017年の改正個人情報保護法施行により,本人の同意 がなくても匿名加工処理を施して個人の識別特定可能性 を排除したデータについては第三者提供ができる環境が 整備された.しかしながら,匿名加工に関するリスクに は,特定,識別,属性推定等の多様な形態があり,対象 となるデータの性質や攻撃者(能力)の仮定によって大 きく前提条件がかわり,またリスク評価が困難であるた めに,通常の者にとって匿名加工方法を決定することは 依然として困難である.本研究では匿名加工を検討する データセット及び手法に関するオープンデータベースの 開発,有用性指標の設計,攻撃者の知識モデルと安全指 標の設計,匿名加工のアルゴリズム,コンテスト評価環 境の整備に取り組む.木村は,米国における医療情報の Public Use File公開による研究開発の推進に関わる状況 調査と,医療情報の分析に関して,医療データに通じて いない者でも分析ができるようにトランザクションデー タを標準データウェアハウスに展開する手法について検 討を行った.
②高品位な知識抽出を実現する三階層オントロジーフ レームワークの開発(基盤研究C)
膨大な数にのぼる日本の医学用語を国際統制用語集 UMLSにマッピングするには多くの人手を要する.機械 学習的手法を用いたマッピング手法を提案した.具体的 には,和英の医学用語辞典を作成し,その辞典に登録し た日本語の用語は形態素解析の辞書に取り込む.電子カ ルテの診療録を形態素解析し,その結果をFacebookが開 発したfasttextという意味分散表現としての多次元ベク トルを算出するライブラリにかけて,各単語の多次元ベ
クトルを算出する.さらに,そのベクトルに最も距離が 近い分散表現を持つ単語を当該概念の「訳語」の候補と して,またアウトライヤー処理にて除外されなかった端 とを「同義語」あるいは「訳語の次席候補」として提示 した.サンプリングした概念を検証した結果,機械的に 英和の単語ベースでマッチングするより精度の高いマッ ピングが確認された.この取り組みから得られた知見は,
今後我が国における医学用語集を国際統制用語集にマッ ピングするマスター構築の前段階処理として利用する予 定である.この研究について2018年 6 月に開催された日 本医療情報学会春季学術大会においてポスター優秀賞を 受賞した.
③標準医療情報規格にかかる研究
各国で導入が進められている標準医療情報規格FHIR について調査し,患者基本情報におけるアレルギー情 報記述の標準化,臨床判断支援システムとの連携,治 験や臨床試験の効率化に寄与するEDC (Electronic Data Capture)と電子カルテシステム間のデータ交換,厚生 労働省標準規格SS-MIXのデータのFHIRへのマッピング と,FHIRの利活用にむけたユースケースやフィージビ リティスタディを多数実施した.これらの調査等から得 られた知見は厚生労働省における標準医療情報規格への 取り組みの助言や,規制改革会議における米国でのPHR 取り組み状況の紹介につなげられている.保健医療情報 管理分野の主要なテーマとして,標準医療情報規格の調 査及び普及に関する活動は今後も充実させていく所存で ある.
④次世代医療基盤法にかかる研究
内閣官房調査事業「匿名加工医療情報の利活用に関す る調査」に協力し,諸国のレジストリ運用,データの二 次利用状況,及び匿名加工に関する技術の近年の動向に 関する調査を支援した.
⑤臨床研究レジストリの運用および関連する研究 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業
「ホルモン受容機構異常に関する調査研究」において,
甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017版の有効性を検証 するとともに,種々のクリニカルクエスチョンを検討し,
甲状腺クリーゼの予後に影響する要因を解明することを 目的した,多施設前向きレジストリー研究を開始した.
内分泌学会認定専門医施設を中心に診断時から 6 ヶ月ま での追跡調査を行い,患者基本情報,発症時期,合併症,
既往歴,身体所見,血液検査,画像検査,治療状況等,
ガイドラインや全国疫学調査の項目をレジストリに登録 することになった.木村がオープンソースのEDCシス テムであるREDCapを使用して愛媛大学にレジストリを 設置した.2018年 5 月にレジストリ運用を開始し,症例
を蓄積中である.
2 )養成訓練
・特定健康診査・特定保健指導に関するデータベース,
特定健康診査・特定保健指導情報の電子化に関する HPの運営・企画への参画
・研修生2名指導担当 (国際統計分類ファミリ-により 統計分類の改善や有用性の向上に資する研究)
・専門課程Ⅲ保険医療データ分析専攻科 (NDBオープン データ,KDB,GIS分析)
・地域医療の情報化コーディネータ育成研修(標準医療 情報規格)
・遠隔2 保健情報利用概論(オンライン保健情報の信 頼性の担保にむけて)
・FD講師 eラーニングの先駆的取り組み事例の紹介
・H-CRISIS健康危機管理ライブラリーのWebサイトにお けるセキュリティ・運用体制についての助言
3 )社会貢献活動等
厚生労働省,内閣官房の調査事業,内閣府の活動につ いて,保健医療情報管理分野に関する最新の知見の提供 を中心とした協力をしている.国際貢献として,JICAの
「日本モンゴル教育病院運営管理及び医療サービス提供 の体制確立プロジェクト」に協力し,モンゴル国に 2 回 渡航,技術指導を行っている.医療情報システム教科書 編集委員,米国医療情報学会,日本生体医用工学学会,
第37日本医療情報学連合大会の査読・実行委員,MED-INFO2019の査読委員,医療情報 第 6 版 医療情報システ ム 編集者を担当する等,学会活動,教育活動も積極的 に行っている.
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(2)平成30年度研究業績目録
1 )学術誌に発表した論文(査読付きのもの)
原著/Originals
古川安志,佐藤哲郎,磯崎収,鈴木敦詞,飯降直男,
木村映善,他.甲状腺クリーゼの診断と治療.内分泌・
糖尿病・代謝内科.2019;48(1):18-23.
総説/Review
木村映善.Real World Data を活用する観察研究データ ベースの考察.保健医療科学.2018;67(2):179-190.
その他/ Others
木村映善.基調論文 HIS更新時の留意点を説く : 変 更前・後にかかわる要件定義を中心に.月刊新医療.
2018;45(4):96-98.
著書/Book
木村映善.2019年最新医療情報システム/画像情報シス テムの動向を探る.医療機器システム白書2019.東京:
エム・イー振興協会;2018.p.236-239.
2 )学術誌に発表した論文(査読のつかないもの)
抄録のある学会報告/ Proceedings with abstracts 栗原幸男,石田博,木村映善,近藤博史.臨床意思決 定支援の要としての患者プロファイル情報(PPI)を考 える.第38回医療情報学連合大会; 2018.11.23;福岡.医 療情報学.2018;38(Suppl.):265-267.
木村映善.医療情報学と病院情報システムの現状から みる超音波画像とAIの連携可能性.日本超音波医学会第 91回学術集会;2018.6.10;神戸.2018;45(Suppl.):S232
木村映善,山本景一.EDC への電子カルテからのデー タ取り込みの標準化に関わる取り組み.第38回医療情報 学連合大会; 2018.11.23
;福岡.医療情報学.2018;38(Sup-pl.):40-44.
木村映善.SS-MIX への FHIR Web サービス実装の試 み.第38回医療情報学連合大会; 2018.11.24;福岡.医療 情報学.2018;38(Suppl.):1074-1076.
木村映善.保健医療情報の Public Use File 作成にむけ て.第38回医療情報学連合大会; 2018.11.25;福岡.医療 情報学.2018;38(Suppl.):224-225.
古川安志,赤水尚史,佐藤哲郎,磯崎収,鈴木敦詞,
飯降直男,他.甲状腺クリーゼ多施設前向きレジスト リー研究の進捗状況.第61回 日本甲状腺学会学術集会;
2018.11.23; 川越.日本内分泌学会雑誌 .2018;94(4):1209.
佐藤洋子.水島洋.木村映善.西大明美.緒方裕光.
我が国における ICD-11 フィールドトライアル― 診断用 語コーディングにおけるゴールドスタンダードの解析
―. 第38回医療情報学連合大会; 2018.11.25 ;福岡.医療 情報学.2018;38(Suppl.);800-802.
研究調査報告書/ Reports
木村映善,岡本和也,今井健.文部科学研究費補助金 基盤研究(C)「高品位な知識抽出を実現する三階層オン トロジーフレームワークの開発」(研究代表者:木村映善.
15K08845)平成30年度研究成果報告書.2018.
愛媛大学.愛媛大学防災情報研究センター年報.
2018;13(12).
近藤博史,栗原幸男,石川澄,石田博,木村映善,合 地明,他.一般社団法人日本医療情報学会 2017年度 課 題研究会 患者プロファイル情報基盤研究会 課題研究会 報告書.2018.
松村泰,石田博,横井英人,紀ノ定保臣,興梠貴英,
木村映善,他.一般社団法人日本医療情報学会 2017年 度 課題研究会 電子カルテの臨床研究利用研究会 課題研 究会報告書.2018.