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14.統括研究官(建築・施設管理研究分野)

ドキュメント内 Ⅳ 活動報告/研究業績目録 (ページ 77-81)

林基哉

(1)平成30年度活動報告 1 )研究活動

健康的生活の基盤である建築(住宅や施設等)は,生 活要求レベルの向上,超高齢,省エネルギー,災害対策 等の社会的必要性の変化の中,急速な技術革新が進めら れている.このような我国特有の状況の中,新旧の建築 における格差や変化に伴う副作用が発生している.中で も,アレルギー患者,高齢者,被災者等のハイリスク対 象では,室内環境が深刻な健康影響の要因となる.ハイ リスク対象を中心に建築の健康影響について,情報収集,

実態調査,機序解明と防除策に関する研究を行っている.

①建築物衛生に関する調査研究

①-1 建築物衛生管理基準の検証に関する研究(厚生労 働科学研究費補助金健康安全・危機管理対策総合研究 事業 H29-健危-一般-006)

建築物衛生法は昭和45年に施行され,その後の衛生水 準の向上,地球温暖化,省エネルギー,空調衛生設備の 変化に対応すべく,平成14年に特定建築物の範囲,空気 調和設備又は機械換気設備の維持管理基準,給水装置の 維持管理基準,清掃及びねずみ等の防除,について関連 省令の改正が行われた.改正後,給排水,清掃,ねずみ 等については,環境衛生管理基準の不適率一定程度に止 まったが,空気環境では平成10年以降上昇し続け,平成 29年度には相対湿度で57%,温度で32%,二酸化炭素で 28%に達している(図1).

平成26年度から28年度の「建築物環境衛生管理に係る 行政監視等に関する研究」では,空気環境衛生管理の現 状,健康危機対応の衛生管理の実態,温湿度・二酸化炭 素の健康影響エビデンスに関する現状分析が行われ,空 気環境衛生基準,衛生管理体制,新しい健康リスク等に 関する新しい基準に向けた提案が行われた.本研究では,

上記の提案に基づいて,空気環境を中心に 4 つの研究を 行っている.「①基準案の検証」では,上記提案に基づ いて,エビデンスの再確認と整理を行い,基準案(基準 の見直し,項目の追加・組替え)を作成して適応結果を 予測する.「②測定評価法の提案」では,基準案に対応 した測定法を提案し,実験及びシミュレーションにより ケーススタディーを行う.「③測定評価法の検証」では,

実際の特定建築物に徴取・検査を試行し,測定法の実用 性と健康影響に関する検証を行う.「④制度提案」では,

自治体,ビルメンメンテナンス業の担当者へのヒアリン グを行い,基準案及び測定法に基づく制度の可能性を検 討する.以上によって,建築物衛生の効果的向上を図る ための基準に向けた科学的根拠を明らかにする.平成30 年度は,②,③を中心に研究を実施した.また,④では,

二酸化炭素不適率上昇の要因として,外気濃度の上昇,

省エネルギーによる換気量削減があると共に,立入検査 に代って報告徴取が増加していることが上昇要因となっ ている可能性が高いことを確認した.本研究は中規模建 築物における衛生管理の実態と特定建築物の適用に関す る研究(厚生労働科学研究費補助金健康安全・危機管理 対策総合研究事業 H29-健危-一般-007)と連携している.

①-2 感染を制御するための室内空気環境計画に関する 研究(国立保健医療科学院基盤的研究費)

高齢者や障がい者は免疫力,環境適応力に個人差が大 きく,不適切な衛生環境が日和見感染やレジオネラ症・

インフルエンザなどの集団感染の危険性を増す場合があ ることから,社会福祉施設等の室内衛生環境には一層の 配慮が必要である.

一方,それらの施設は建築物衛生法の特定建築物の対 象ではなく,その管理は専門知識・経験を有さない施設 管理・運営者にゆだねられている.そのため,施設内衛 生環境の適正な計画と運用管理の指針を検討するための 基礎資料作成を目的に,調査研究を行っている.

平成30年度は,インフルエンザの感染対策として湿度 環境に注目し,湿度環境の改善策に関する調査及び実験,

湿度基準を持たないフィンランドの高齢者施設の室内環 境調査を実施した.

湿度環境の改善策に関する調査では,外気の絶対湿度 が低くなる寒冷地に注目し,北海道及び東北の特別養護 老人ホーム 5 か所について,加湿装置の整備,換気量制 御に関するシミュレーション及び試行を行い,その効果 を確認した.今後,改善手法や効果に関する事例として まとめる.また,広く使用されているポータブルの超音 波式加湿器内での細菌汚染(エンドトキシン濃度)の実 験を行い,加湿器清掃の必要性に関する知見を得た.

フィンランド・エスポ市高齢者施設の室内環境と入居 図 1  建築物衛生管理基準不適率の推移

者行動及びケアに関する調査では,加湿を行わない施設 におけるインフルエンザ空気感染及び臭気への対策に関 する事例を得た.高い断熱性と床暖房による安定した室 内温熱環境,熱回収換気システムによる室内空気環境の 維持と省エネルギー,サニタリーでの排泄処理と常時排 気による臭気対策によって,インフルエンザ空気感染の リスク,省エネルギーの両面で,日本の測定事例よりも 優れていることを明らかにした.

本研究の結果は,「高齢者施設の空気環境」日本建築 学会第27回空気シンポジウム2018.9,「高齢者福祉施設 の環境衛生管理と課題―国立保健医療科学院の高齢者施 設環境衛生管理に関する調査研究―」第27回日本臨床環 境医学会シンポジウム,2018.7等で紹介した.

② 住まいと健康に関する調査研究

②-1文科研基盤A「超高齢・省エネ時代の居住に係る健 康リスクとリテラシー効果の推定法」,「文科研基盤C

「皮膚乾燥疾患予防の湿度基準と住まい方の提案」他) 住宅の省エネルギー性能及び環境性能の向上,超高齢,

地球温暖化,都市・建築の高度化と老朽化,居住形態の 多様化,アレルギー等の体質変化等の様々な変化の中で,

住居衛生に係る新たな対応が必要となっている.

居住環境の健康リスクの考え方については,居住形態,

住宅構法・設備等が与える影響について,既往の知見を 整理して居住に係る健康リスクのフロー作成の基礎とし て,死亡統計とアメダス気象データを用いて,気象条件 と死亡原因との関係を分析する手法を提案した.また,

全国の戸建住宅の居住者を対処にウェブアンケートを行 い,分析を始めた.その中で,シックハウス対策として 設置が義務化されている常時換気設備について,常時運 転の必要性を居住者が認識していない状況が確認された.

居住リテラシー,住居・設備,室内環境に関する調査 では,パッシブ換気等を含めた15件の住宅で,住宅性能 及び室内環境,住生活に関するモニター調査を行い,空 気環境に特徴を有する対象を選定し,改善に関する検討 を行った.

居住リテラシーを考慮した室内環境予測手法では,既 往の隙間ネットワーク,窓開放習慣等のデータによるシ ミュレーション“Fresh”に,居住リテラシーの影響を加 える方法の検討を行い,各種の換気システムを有する住 宅をモデルにして試行し,室内環境及び健康リスクに関 する比較を行った.また,外気温制御によるパッシブ換 気の試作を行い,実験住宅で換気制御と空気質維持の可 能性を示した.

2 )養成訓練

近年,対物保健の担い手である環境衛生監視員の急速 な世代交代や職員配置の流動化,担当領域の拡大などが,

その専門性や監視密度の低下を招いていると懸念される 中,当分野ではかねてから健康に住むための技術支援を 行う能力の養成を目的とした「住まいと健康研修」( 3 週 間) 及び,建築物衛生法に係る衛生監視業務に役立つ洞 察力を養うことを目的とした「建築物衛生研修」( 3 週間) を隔年で,生活衛生営業等の監視指導能力を養うことを 目的とした「環境衛生監視指導研修」( 1 週間)を毎年 開講している.平成30年度は,「建築物衛生研修」と「環 境衛生監視指導研修」を実施した.また,専門課程「環 境保健概論」の住居衛生及び建築衛生に関する科目を実 施した.

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(2)平成30年度研究業績目録

1 )学術誌に発表した論文(査読付きのもの)

原著/Originals

金勲,柳宇,鍵直樹,東賢一,林基哉,大澤元毅.空 気中エンドトキシン濃度と浮遊細菌濃度に関する基礎的 研究.日本建築学会環境系論文集.2018;83(749):581-588.

林基哉,金勲,大澤元毅,竹熊美貴子,本間義規,長 谷川兼一.戸建木造住宅のレンジファンを用いた簡易気 密性能確認法の精度検証.日本建築学会環境系論文集.

2018;83(748):555-563.

林基哉,金勲,竹熊美貴子,大澤元毅.木造戸建住宅 の構造内部化学物質の室内侵入に関する測定.日本建築 学会環境系論文集.2018;83(747):481-490.

金勲,阪東美智子,林基哉,大澤元毅.高齢者施設の におい環境と対策に関する全国調査.日本建築学会環境 系論文集.2018;83(746):393-401.

開原典子,林基哉,金勲,大澤元毅,阪東美智子,小 林健一,他.特別養護老人ホームの温熱環境に関する実 態調査 寒冷地における冬期の室内温湿度と湿度管理に関 図2  高齢者施設の加湿改修効果に関するシミュレー

ション(CFD解析)の例

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