インド国立銀行の組織は、最高の意思決定機関としての中央理事会
(CentralBOard)と 、実際の職務実施機関としての管区理事会
(Presidenこy Boaro)か ら構成される。容易に推測されるように、このような制度上の分権制は、アメ
(320)″
法経研究
リカの連邦準備制度 に極 めて類似 した ものである。
中央理事会 は、総裁、副総裁、イ ン ド政府代表の
3名
か ら構成 され、時 に応 じて3名
またはそれ以上の補佐官が出席す る。総裁 はイン ド大臣の奏請 に基づ き国王が任命 し、イン ド政府代表 はイン ド総督が任命 し、副総裁 は総裁お よび イン ド政府代表の指名 に基づ きイン ド総督が任命する。補佐官 は以下で述べる 管 区本店 の支配人 また はその代理人 で構成 され るが、彼 らには投票権 が ない∽
"。
,pp.153‑4)。 中央理事会 は、デ リー また はカルカ ッタに立地 され る。デ リーに立地することのメ リッ トは、中央理事会の各管 区理事会 か らの独立 と、
各管 区理事会 の地位 の対等性 を保 てることにあ り、カルカッタに立地す ること のメ リッ トは、国立銀行 の政府か らの独立 を保 てることにある
0"。
,p.162)。中央理事会の業務 は、バ ンク・ レー トの決定、管 区間お よびイン ドとロン ドン 間の送金、その他全般的な政策問題 に関わ る ∽ κ。,p.163)。
国立銀行 の実際の営業活動 は、カルカ ッタ、 ボンベイ、ヤ ドラスの二つの管 区に置かれ る管区本店 (Presidency head omce)に 委ね られ、従来の三つの管 区銀行 か ら引き継がれ る。管 区理事会 は、管区本店 の意思決定機関であ り、支 配人、副支配人、地方政府代表、および株主の互選 による三、四名の民間代表 か ら構成 される。管区本店の業務 は、①中央理事会 との協議によって取 り決め られた最低利率での、6カ月未満のルピー貿易手形の割引、②中央理事会 との 協議によって取 り決められた最低利率での、他の銀行によって裏書きされたス ター リング手形の再割引、③最低利率での6カ月未満の貸付、④金地金・債券・
有価証券の国内での売買、⑤管区間での民間の送金、およびロンドンヘの民間 の送金、⑥無利子ないし最高利率での預金の受け入れ、⑦貴重品の保管、③各 管区内での支店の開設、職員の配置、および管理、である の κ。,pp.154‑6)。
なお、インド国立銀行の資本金および準備金は、従来の三管区銀行の資本金 および準備金の合併 によって獲得される。新銀行の資本金に関して政府からの 出資は不要である。なぜならば、政府 と株主 との関係を複雑にするからである。
このよう│こインド国立銀行(state bank)は、純然たる国立銀f T(national bank) ではな く、株式銀行である∽ が。,pp.165‑6)。 また、紙幣発行にともなう利益 は、 まず株主に分配 され、残余のうちの一部が準備に追加され、さらにその残 余 は政府に帰属する ∽ が。,pp。 168‑1)。
θθ (319)
ケインズとインド け)発券業務
ケイ ンズ は1844年の ピール条令 によって採用 された保証準備発行制度 はイ ギ リス以外 の国には不適切である として、その他の国で採用 されて きた発券制 度 を次 の四つに分類 した
(C″
り、15,p.173)。 (a)一定 の保証発行額 を定 めるが、制限外発行税 を支払 うことによつて、 これを越 える発行が認 め られ る。 ドイツ で採用 された屈伸制限制度。(b)保証発行 を比率で制限す る比例準備制度。(C)一 定 の保証発行比率 を定 めるが、制限外発行税 を支払 うことによって、 これ を越 える発行が認 められ る。(d)フランスで採用 された最高発行額制 限制度。 ケイン ズはイ ン ドで採用 されるべ き発券制度 は、(C)の一種であるべ きである として、
次のような基準を設定する。①保証発行額は総紙幣発行額の40%ま で認めら れ、これを越える発行額に対しては金またはルピー銀貨による準備を必要とす る。②保証発行額は総紙幣発行額の60%ま で拡大することができるが、40%を 越える保証発行額に対しては年率 5%の 発行税を政府に対して支払う必要があ
る。③インド大臣が緊急時にこの銀行法の条項を停止する権限を有する以外に は、保証発行比率は決して60%を 上回つてはならず、現金準備比率は決して 40%を 下回つてはならない
(あ".,p.174)。
保証発行の裏付けとなる証券として、政府債務
(これまで紙幣準備で保有さ れているルピー紙幣
)、コンソル公債
(これまで紙幣準備 と金本位準備で保有さ れている
)、そめ他の優良証券、スターリング建て及びルピー建ての為替手形、
を考える0".,pp.17778)。 これらのうち、ケインズは、中央銀行の手形割引 業務は紙幣発行の弾力性を増す上で不可欠のものと考えている。 「他国の経験が 示すように、政府証券に基づ く紙幣の弾力性は極めて限られたものであり、変 動を続け繁忙期にのみ必要となる紙幣発行の裏付けとして、手形は本質的に適 合的である。政府証券の額は、 ・・・直ちに拡大することはできず、しかも直ち に現金化することは容易ではなく、また政府の立場から見てそうすることがの ぞましいものでもない。政府紙幣に基づいたアメリカの紙幣発行は、絶望的に 非弾力的なものとなったが、貿易手形の割引に基づいた弾力性の導入が、アメ
リカにおける改革案の主要な目的 となっている。…… [したがって、イン ドに おいて も]国立銀行 は最大限に再割引業務 を目指すべ きである と、私 は考 える。
つまり、できる限 り国立銀行は、他の銀行、高い地位にあるシュロフやマルフ リ[といつた土着銀行家
]の
手を渡 り、彼 らによって裏書 きされた貿易手形を、自身のポー トフオリオ に組 み入れ ることを目指すべ きで あ る」∽ κ.,pp.
(318) θノ
178‑9,[ ]は
引用者)。 このように、イン ドにおいて再割引市場 を創設するこ とは、脆弱 なイン ド株式銀行 の健全 な発展 にもつなが る0万
。,pp。 179‑80)。なお、国立銀行が発行する紙幣は、銀行券ではな く、政府が保証す る政府紙 幣(Goverrlment notes)、 つ まり要求払いの政府手形(GoverFllnent promissory notes payable on demand)で あるべ きである ∽
":,p.181)。
紙幣発行 の政 府保証 (government's guarantee)を 確保す るために、イングラン ド銀行 と同 様 の 膨旨鵡制 と「銀行部」との分離 を図 るべ きである とし("κ。,pp。 181‑3)、
「発行部」 と「銀行部」のバ ランス・ シー トの仮設例 を提示 している ∽
":, p.182)。
(3)為替手形 の再割引 と為替銀行 との業務の競合
ところで、国立銀行 に手形割引業務 を認 めることには、為替銀行 (植民地銀 行)の 反対が集 中 していた ∽
"。
,pp。 120‑7)。 ケインズ は為替銀行の反対 を回 避す るため、イ ン ド国立銀行 と為替銀行の業務 の競合 を慎重 に避 けている。つ ま り、国立銀行 はロン ドンで支店 の開設 は認 め られ るが、ロン ドン支店 は、為 替銀行 と預金獲得競争 を行 うことがあってはな らず、 また一般公衆 と直接取引 を行 うので はな く、イン ド省やロン ドン貨幣市場お よび他の銀行 とのみ取引を 行 う。 しか し、国立銀行がイ ン ド大臣の送金業務 を行 うこと、 ロン ドンで残高 を保有 しそれ をロン ドン貨幣市場で利用すること、イン ドの顧客のためのロン
ドン宛ての私的な送金業務 を行 うことは認 め られ る
0".,p.184)。
国立銀行 に認 め られ る外国為替業務 は、イン ド国内での貿易手形の購入では な く、他の銀行 によって裏書 きされたスター リング手形の再割引のみである。
これ に伴 い、為替銀行 はイン ドで資金 を補充す るために二つの方法を獲得する ことになる。第一 は従来 どお リイン ド省手形 をロン ドンで購入す る方法であ り、
第 二 は ロ ン ドン宛 て ス ター リング手 形 をイ ン ドで再 割 引 す る方法 で あ る
∽ ″"p.185)。 国立銀行は、インド省 におけるロンドン残高が必要な場合に は、為替銀行がインド省手形 を購入する方が有不Jなように、またインド省にお けるロンドン残高が過剰な場合には、為替銀行がスター リング手形を再割引す る方が有利なように、イギリスにおけるインド省手形の売却価格 とインドにお けるスター リング手形の再割引率を誘導する∽ 燿。,pp.185‑6)。 従来、為替銀 行 はインドにおいて割引いたスター リング手形をロンドンの本店に送付 して、
それをロンドン割引市場で再割引して、 これによって得た資金でインド省手形
″ (317)
ケインズとインド を購入す るか ソヴ リン金貨 を購入す るか して、再 び これをインドの支店 に送付 してル ピー貨 を補充す るとい う複雑 な手続 きを繰 り返 して きた。 しか しインド 国立銀行 に再割引業務 を導入す ることによって、為替銀行 はイン ドにおいて割 引いたスター リング手形 を、直 ちにイン ドにおいて再割引す ることによって資 金 を調達す ることが可能 になるのである ∽ ″.,p.187)。
(4)国立銀行創設 に伴 う利点
国立銀行を倉
J設することによって、まずインド政府にとって以下のような直 接的利点が生じる。①独立国庫制度を廃し、巨額の政府残高を適当に管理し運 営することができる。②ロンドン金融市場において巨額の短期資金を保有する 必要がなくなる。③紙幣の流通を促進することができる。④金融業務の委細を 国立銀行に委ねることによって金融上の政府の責任を軽減できる。⑤金融業務 の委細を熟達する専門家に委ねることによって政府はその他の目的に従事でき る。⑥金融業務の委細事項に関してインド大臣と煩雑な批判の間の緩衝地帯を 設けることができる。また、インド経済界にとっても以下のような問接的利点 が生じる。①政府残高が国立銀行に預託されることによって、政府残高の一部 が解放されることに加え、 発券上の改革によって多額の資金が利用可能 となる。
②銀行利率の大幅な変動 と繁忙期における高利率が緩和される。③政府業務 と 銀行業務の統合が支店の開設を促進すれば、インドの多 くの地域で徐々に健全 な銀行業が発展してくる。④再割引業務の導入は、ヨーロッパで進展したよう な望 ましい方向で、インドの銀行業の発展 も大いに助長 される ∽ ″
,,pp.192‑3)。
結論部 においてケイ ンズは、「管区銀行 はすでにかな りの程度 まで銀行 の銀行 で はあるが、全ての負担 に耐 えうるほど強力 な もので はない。実際、政府 は銀 行準備 の一部 を維持 してはいるが、その準備が銀行業 と正常な関係 を持つに至 るような機構 を有 していない。準備が集中 してお らず、信用通貨 に弾力性がな く、再割引市場や公定歩合政策がない こと、……脆弱性 の要素のほとん どはこ こに見いだされ、強 さの要素が見いだされないの もこのためである」∽ が。,p.