• 検索結果がありません。

1諒1 86.,

ドキュメント内 生物の生殖と遺伝的多様性 (ページ 123-139)

。㌦\

89.4

へ息0.,.0

H H

6.1

10.9

0.10

1.00

1.24

0.21

雌雄異株植物の性分化119 期では,雄花にのみ強い発現がみられた38)0

おわり に

植物の性分化とは栄養生長から生殖生長への変化すなわち花芽分化を指 し,遺伝子解析手法やホルモンを含む生理活性物質分析技術が進歩した現 代においても,謎の多い研究分野である。本稿では雌雄異株植物の性分化 にしぼって最近の研究動向を紹介したが,これにより雌雄異株植物に限ら ず植物の性発現や雌雄器官分化等の生殖生理問題に読者が興味をもって下

されば,筆者の喜びとするところである。

参考文献

1) S.L. Dellaporta and A.C. Urrea, The Plant Cell, 5, 1241 (1993) 2) J.E. Lazarte and S.A. Garrison, I. Amer. Soc. Hort. Sci., 105, 691 (1980) 3) M. Kh Chailakhyan and V.N. Khryanin, Planta, 138, 181 (1978)

4) B.Durand, C.R. Acad. Sci. Pants Ser. Dリ263, 1309 (1966)

5) A.Champault, C.R. Acad. Sci. Pan's Ser. D" 269, 1948 (1969) I 6) V.S.Jaiswel and A.Kumar,). EQ. Bot., 31, 497 (1980)

7) M. Kh. Chailakhyan and V.N. Khryanin, Planta, 142, 207 (1978) I ‑ 8) S.S. Negiand H.P.Olmo, Science, 152, 1624 (1966)

9) H. Loptien, P710C. Of the 5th International AspamguS Symposium, 21 (1979)

10) J.E.Lazarte and B.F, Palser, Amer. ). Bot., 66, 753 (1979)

ll) M. Ruddat, J.Kokontis, L Birch, E.D.Garber, K‑S,Chiang, ∫.Campa‑

nella and H. Dai, Plant Science, 80, 157 (1991)

12) J.S. Parker and M.S. Clark, Plant Science, 80, 79 (1991)

13) S. Hamdi, G. Teller and J‑P. Louis, Plant Physiol., 85, 393 (1987) 14) J.P. Louis, C. Augur and G. Teller, Plant Physiol., 94, 1535 (1990)

亡:i

15) S. Hamdi and G. Teller, Plant Physiol. Llfe Sci. Adu., 7, 105 (1988) 16) M. Bazin, A. Chabin and R. Durand, Develop. Biol,, 44, 288 (1975)

17) S. Hamdi, LX.Yu, E.Cabrさand M.Delaigue, Mol. Gen. Genet, 219, 168 (1989)

18) J. Veuskens, D. Marie, S.C. Brown, M. Jacobs and I. Negrutiu, Cytomet7y, 21, 363 (1995)

19) S̲Grant, A. Houben, B.Vyskot, J,Siroky, W‑H. Pan, J.Macas and H.

Saedler, Dev. Genet., 15, 214 (1994)

20) I.S. Donnison, J. Siroky, B. Vyskot, H. Saedler and S.R Grant, Genetics,

120

144, 1893 (1996)

21) B.Janousek, J. Siroky and B. Vyskot, Mol. Gen. Genet., 250, 483 (1996)

22) ∫. Buzek, H. Koutnikova, A. Houben, K. Riha, B. Janousek, J. Siroky and

B. Vyskot, Chromo. Res., 5, 57 (1997)

23) J.G.K. Williams, A.R. Kubelik, KJ. Livak, ∫.A. Rafalski and S.Ⅴ. Tingey,

Nucl. Acids Res., 18, 6531 (1990)

24) Y.H. Zhang, S.D. Stilio, F. Rehman, A. Avery, D. Mulcahy and R. Kesseli, Genome, 41, 141 (1998)

25) G. Kahlem, Z. Pjlanzenphysiol. Bdリ76, 80 0.975)

26) G. Kahlem, Develop. Biol., 50, 58 (1976)

27) C. Sallaud, G. Kahlem and R. Esnault XVIII Forum desjeunes chercheurs.

Regard sur la Biochemie, (1991)

28) G.P.M. Longo, G. Rossi, G. Scaglione, C.P. Longo and C. Soave, Sex Plant

R砂Y10d, 3, 236 (1990)

29) M. Bracale, M.G.Galli, C.Longo, B.Campion and A. Falavigna, Acta

肋〟., 271, 423 (1990)

30) M. Bracale, M.G.Galli, A. Falavigna and C. Soave, Sex Plant Reprod, 3, 23(1990)

31) C.Jiang, M.E.Lewis and K.C.Sink, Genome, 40, 69 (1997) 32) C. Jiang and K.C. Sink, Euphytica, 94, 329 (1997)

33) T.Abe and T.Kameya, Planta, 169, 289 (1986)

34) T. Abe, R. Shimizu, H. Iwamura and T. Kameya, Physiol. Plant., 70, 228 (1987)

35) T.Abe, T.Kameya and H.Iwamura, Acta Hort,, 271, 491 (1990) 36) T.Abe, S. Yoshida and T.Kameya, Acta Hort., 415, 405 (1996)

37) D. Yeo, T. Abe, H. Abe, A. Sakurai, K. Takio, N. Dohmae, N. Takahashi and S. Yoshida, Plant Cell Physiol., 37, 935 (1996)

38) T.Abe, D.Yeo, H.Abe and S.Yoshida, Acta Hort., 479, 321 (1999)

環境ストレスに対する生き残り 戦略としての花粉数

西 山 岩 男

はじめに

植物の生殖細胞形成過程は,高温・冷温あるいは乾燥などの環境ストレ スによって大きな影響を受ける。イネの冷害もその例に漏れず,穂ばらみ 期の冷温による不受精の発生は冷害の中でももっとも激甚であり,昔から 悲惨な飢健の原因となってきた。この穂ばらみ期不受精は,正確には花粉 母細胞減数分裂期の直後である小胞子初期(4分子期+小胞子期前期)の冷 温によって引き起こされる。そして,雌性の器官は冷温に対して比較的強 く,雄性不稔であることが明らかにされている。イネの冷害にはいくつか の種類があるが,通常,品種の耐冷性と言えばこの穂ばらみ期不受精に対 する耐性を意味する。

最近,穂ばらみ期不受精の耐冷性に関して花粉数が重要な役割を果たし ていることが明らかにされ,この観点から,これまでの冷害に関する知見 の全体的な見直しが必要となってきている。

1.イネの冷害研究にお′けるセントラルドグマ

1993年の夏,100年に1度と言われた大冷害が濃厚になってきたころ,韓 国から国際電話が入った。 「先生の"イネの冷害生理学"には多肥にすると 不受精が多発する理由が書いてない。なぜ不受精が増大するのですか。」肥 えた水田で不受精が甚だしいことは古く江戸時代から知られていた。しか

東北大学農学研究科

122

し,その原因はまだ明らかになっていない。

窒素肥料をたくさん与えると,葉中の窒素含有量が増大し葉色が濃くな る。葉色による追肥の診断法も開発されている。どの時期に窒素を施用す るとどの葉位の窒素含有量がどの程度増加するか,など現象論的な文献に は事欠かない。けれども,因果関係については,葉中の窒素濃度と不受精 に相関があるということしか分かっていない。不受精の原因は穎花の中に あると考えられる。それが葉中の窒素濃度とどのような関係があるのか。

Nishiyama ‑and Satake (1979)は穂上の位置により穎花の耐冷性が顕 著に異なることを発見した7)。そして, Nishiyama (1982,1983)はその原 因が花粉数にあることを突き止めた5・6)。その内容については後述するが, 花粉数は耐冷性の品種間差異においても主要な原因となっている。した がって,耐冷性のメカニズムを解明するための穎花の側からの手がかりが 得られたことになる。すなわち,イネにおける障害型冷害発生の生理的メ カニズムの中心は,根の窒素吸収から花粉数の減少に至る因果関係の連鎖 にあると考えて良い。 Nishiyama (1996)はこの考え方をイネ冷害研究に おけるセントラルドグマと呼び,この点に研究の努力を集中することを提 唱している8)。そのためには,これまでに蓄積された冷害に関する多くの知 見を,この新しい視点に沿って整理してみることが有益であろう。

2.穂上位置による花粉数の差異と耐冷性

穎花の穂上における位置は,図1に示したように番号で表すのが便利で ある5)。穂の上部から1次枝榎を第1,第2と数え, 1次枝梗上の穎花は2 桁, 2次枝梗上の穎花は3桁で表し,いずれも上から数える。表1,表2で

はこの表現法を用いている。

表1は,穂上位置ごとに冷害危険期である小胞子初期に冷温処理をした 穎花の受精率を示す5)0 1穂上の穎花はそれぞれ生育段階が異なるので,そ れらに正確に冷害危険期の冷温処理をするのは実は結構面倒なのである が,その方法についてはここでは触れない。表を見ると, ll,21の穎花では 受精率が10%以下であるのに対して, 45,55あるいは423では50%を超

えている。受精率における50%の差は,品種の耐冷性検定では極強と弱の

環境ストレスに対する生き残り戦略としての花粉数123

図1穂上の位置による穎花の命名(Nishiyama, 1982)

差に相当するほど大きい。もう1つ,いわゆる強勢穎花は耐冷性が弱く,弱 勢穎花の方が強いことにも注目してほしい。

表1をさらに詳細に見てみると, 3つの傾向性が読みとれる。すなわち,

① 1次枝横間の比較をすると上部から,下部に向けて次第に強くなってい

亡i

く。それは1次枝梗穎花でも2次枝梗穎花でも同様である。 ② 1次枝梗内 あるいは2次枝棟内の顕花間の比較でも,上部から下部に向けて強くなっ ていく。 ③ 2次枝梗穎花は1次枝梗穎花よりも強い。

表2は,穂上位置別の穎花の花粉数を数えたものである5)I.これは冷温処 理をしていない正常な荷の花粉数である。穂上位置の11や31では800程 度と少ないのに対して, 55,521,523では1,200を超えている。そして,表 1で見た3つの傾向に対応して,耐冷性が強いものほど花粉数が多くなっ

124

Tablel. Fertility of spikelets cooled at the young microspore stage (Nishiyama, 1982).

Location on branch

Branch

Average

1 2 3 4  5

n n n n n 0 4 8 9 10 3 0 0 0% 1 2 2  2 32 6 3 6 47 6 0 7 7% 21 34 37 班 5 5 9 0 9 6% 3 3 3 3 52 6 6 7 65 0 5 7 0%

1 1  1 3

%

5 8 6 7 6 8 2 0 6 3

1  1  1  2

%

0 9 0 6 4 5 4 5 0 0 1 2 2 3 4

Average

Illl■

n12 n13 n21 n22 m23

5 6 1 8 3 1

1 3 4 2 3 3 2 3 46 9 5 3 7 79 8 9 8 9 4 3 3 4 3 3 45 5 0 8 5 55 4 4 8 5 4 5 4 3 4 3 51 8 9 1 2  78 4 0 5 7 2 3 3 3 3 3 53 9 9 4 5 02 3 1 7 4 0

Average   31.1  35.3   38.5   45.1        38.6

Grand average 20.7   26.7   32.2   43.0   39.7    32.3

Each value is the lowest one of the average fertilities of 3 Consecutive days during a period from 12 to 1 days before heading.

*The nl means ll,21,31,41 and 51, and nll means 111,211,311 and 411.

ている。この2つの表を比較すれば,花粉数が耐冷性の原因となっている ことが理解できるであろう。

別の実験によれば,危険期の冷温によって減少した花粉数は穂上位置に よらずほぼ同程度であった6)。したがって,十分に稔実可能な花粉数の閥値 が存在するならば,上部の穎花では軽度の冷温によってもその閥値を下回 りやすいことになる。この開値は,この実験では約640/荷と計算されてい る。すなわち,もっとも弱い穎花では花粉数が20%減少すると不受精が出 始めるのに対して,もっとも強い穎花では50%減少するまで耐えることが できる。

このように1穂上の位置によって穎花の花粉数が異なるのは,植物が冷 害のような厳しい環境の下でも,その生殖過程を通して子孫を確保するた

環境ストレスに対する生き残り戦略としての花粉数125 Table 2. Pollen number* (per anther) of spikelets at different locations on

the panicle (Nishiyama, 1982).

Location of branch Average

1 2 3 4 5

n n n n n 8 9 0 0 01 1 0 0 73 6 7 3 5

1  1  1

4 3 8 9 9 3 2  5 6 1 8 9 9 0 1

日H HH

0 3 7 9 3 2 4 6 2 2 9 0 0 1 2

r:  HU HH HU

6 1  1  7 9 5 6 1  6 3 8 9 0 0 1

1  1  1

Average 1076 1007

1 2 3 1 2  3 1 1  1 2 2  2

n n n n n n 1  1  10 0 17 5 08 6 3 1  1  1  1  1  10 1 1 1 0 06 4 0 1 4 26 8 0 4 5 3 1  1  1  1  1  11 0 1 2  1 20 9 6 2  1 36 4 3 7 6 6 1  1  1  1  1  10 0 1  1 0 18 9 2  7 8 33 9 2  1  1  0

Average 1,079    1,083    1,157    1,112

Grand average 1,006    1,036    1,120    1,060

* Microspore number counted at the middle phase of microspore. Each value is an average of 10 anthers from 4 spikelets.

めの手段である。環境条件が良ければ全ての穎花が稔実する。ストレスが 加わると稔実する穎花が減少していくが,非常に厳しい条件下でも1粒な り2粒なりが稔実して子孫を残す。これは,イネが進化の過程で獲得して きた種としての生き残り戦略であると言うことができる。

いうまでもなく,イネは自殖性であり品種は育種の過程で十分に固定さ れているので, 1穂上のどの簡花も遺伝的には同じであると考えて良い。遺 伝的に均一な穎花の耐冷性が極強と弱ほどに異なるのは花粉数の差による のであるが,この違いはどのようなメカニズムで実現されているのであろ うか。最近,工学の方で傾斜機能という発想が注目されている。科学研究 費の重点領域研究に「傾斜機能材料の物理・化学」というプロジェクトが あり,傾斜的に不均一な資材の研究をしている。生物にはこのような傾斜 構造が豊富であるということから,このプロジェクトに筆者の研究室も参

126

画した12)。穂状位置による花粉数の差異も傾斜構造と考えることができ,そ の面からも興味深い。

3.耐冷性の品種間差異と花粉数

イネの耐冷性の強弱が花粉数によって決定されているという事実は, 1 穂上における異なる位置の穎花間の比較により明らかにされた。けれども,

この法則は品種間の耐冷性につもゝても適用す左ことができる.したがって, 耐冷性育種に使うことができ,実際に利用されている3)。ただし,育種では たくさんの系統を扱うので,花粉数と相関が高く測定が容易な荷長で代用 している。前川・角田(1994)は,高度耐冷性品種の育成を目的として,長 荷で耐冷性が強いイネ野生種0. longistaminahzからの遺伝子導入の可能 性を示した4)0

Satakeは新しい冷害対策技術として前歴深水潅概法を開発したが,そ の研究の中で,前歴期間(この場合,穎花分化期γ4分子期)の冷温は小胞 子の分化数を減少させ冷害危険期(この場合,小胞子期前期〜後期)の冷

趨強

母59号155号156%

極強盛事董

コシヒカリ ひとめぼれ かけはし 強  たかねみのL) こころまも あせたこまも

申 告雪孟始

アキヒカリ やや弔 農林20号 ササニシキ 極弱  ヒT‑コモチ

0    500   1 000  1 500   2000

充実花粉致/柄

図2 耐冷性の異なるイネ品種の充実花粉数(千葉他, 1998)

環境ストレスに対する生き残り戦略としての花粉数127 温は分化した小胞子の発育を阻害することを明らかにした9,10)。さらに, Satake and Shibata (1992)は受精に関与する要因を花粉の発育段階にし

たがって分化小胞子数・発育花粉歩合・受粉歩合及び柱頭上花粉の受精効 率の4構成要素に分解し,耐冷性の異なる19品種についてこれらの中の前 3者の寄与率を評価した11)。危険期に冷温処理された穎花の受精率におけ る品種間分散の82%がこの3要素により説明され,それぞれの要素ごとに 品種間差異があることが示された。

千葉他(1998)は東北地域を中心とする品種群について正常な穎花の花 粉数を計測した1)。耐冷性の程度により極強から極弱までグループに分け て平均値をとると,強いものほど花粉数が多い傾向が明白であった。しか し,品種ごとに見ると,図2に示すように,耐冷性が同程度のグループの 中で花粉数の多い品種と少ない品種があることが分かった。この結果から, 耐冷性の品種間差に花粉数以外の何らかの要因が関与している可能性が推 測される。現在,その要因を探索中である。

4.耐冷性に関する諸知見と花粉数との関係

立田他(1996)は窒素施肥の方法による花粉数の変動を調査したⅠ3)。基肥 に窒素を多く施用するほど開花期の充実花粉数は少なくなる(図3)。また, 追肥をすれば花粉数が減少する。特に,冷害時に被害を大きくする可能性 が高いとされている幼穂形成期の追肥では,充実花粉数の減少が最大で あった(図4)。この結果は,窒素施肥と花粉数の関係を直接に示したこと により, Nishiyama (1996)の提唱するセントラルドグマ8)の第1段階の証 明となっている。

林他(1998)は,窒素及びりん酸が花粉数及び稔実歩合に及ぼす影響を 調べた(図5)2)。対照区の小胞子数及び花粉数は多窒素区で減少するが,多 窒素でもりん酸の濃度を2倍にした区では回復しており,その傾向は遮光 区で一層はっきりしている。冷温処理区でも全く同様な傾向が読みとれ,り ん酸2倍区では花粉数・稔実歩合ともむしろ少窒素区を上回っている。以 前から,多窒素レベルではりん酸が括抗的に保護作用を持つと言われてい たが,はっきりした証明がなく論議があった.このデータはりん酸の保護

ドキュメント内 生物の生殖と遺伝的多様性 (ページ 123-139)

関連したドキュメント