• 検索結果がありません。

1 m V

b 低体温誘導中 直腸温度20ºC

C 15℃到達直後 直腸温度15ºC

53

図21 低体温の導入と維持がマウスの血液生化学値に与える影響

これらのグラフはAST(a),ALT(b),LDH(c),BUN(d)の平均値±標準偏差を 示している(各群: n=6)。横軸は採血の各時点を示してる。対照群は通常体温のマウス の血液生化学値の値を示す。0hは低体温誘導により直腸温度が 15℃に到達した直後の マウスの血液生化学値の平均値を示す。3hと6hはそれぞれ15℃の低体温状態を3時間 または 6 時間維持したマウスの血液生化学値の平均値を示す。ALT を除く全ての項目 において,低体温を維持する時間が延びることで値が有意に上昇した。横棒は項目間の 有意差があることを示す(p<0.05)。

a

AST (U/L)

150

100

50

0 対照群 0h 3h 6h

低体温維持時間

b

ALT (U/L)

60 45 30 15

0 対照群 0h 3h 6h

低体温維持時間

c

LDH (U/L)

300 150 450

0 600

d

BUN (mg/dL)

50 40 30 20 10

0 対照群 0h 3h 6h

低体温維持時間

対照群 0h 3h 6h

低体温維持時間

54

図22 低体温の維持と回復がマウスの血液生化学値に与える影響

これらのグラフは,体温回復前後の各群のAST(a),ALT(b),LDH(c),BUN(d)

の平均値±標準偏差を示している(各群: n=6)。横軸は採血時点を示している。○は低 体温誘導により直腸温度が15℃に到達した直後のマウス,または15℃到達直後に体温 を回復させたマウスの血液生化学値の平均値を示している。□は15℃の低体温状態を3 時間維持したマウス,または3時間維持後に体温を回復させたマウスの血液生化学値の 平均値を示している。◇は15℃の低体温状態を6 時間維持したマウス,または6 時間 維持後に体温を回復させたマウスの血液生化学値の平均値を示している。二元配置分散 分析により AST において低体温状態の維持時間と体温の回復には有意な交互作用があ ることが確認された。縦棒は各群間に有意差(p<0.05)があることを示している。*は

a

AST (U/L)

200

0 50 100 150

前 後

体温回復 交互作用p<0.05

低体温維持時間 6h 3h 0h

b

ALT (U/L)

60

0 15 30 45

前 後

体温回復

低体温維持時間 6h 3h 0h

前 後

c

LDH (U/L)

1200

0 400 800

体温回復

低体温維持時間 6h 3h 0h

前 後

d

60

0 15 30 45

BUN (mg/dL)

体温回復

低体温維持時間 6h 3h 0h

55

各低体温維持群において体温回復の直前と直後において有意差(p<0.05)があることを 示す。ALT(b),LDH(c),BUN(d)には有意な交互作用はなかった。

56

図23 低体温状態からの体温の回復がマウスのALT,LDH,BUNの値に与える影響

これらのグラフは,ALT(a),LDH(b),BUN(c)の体温回復前と体温回復後それぞ れの平均値±標準偏差を表している(各群: n=18)。横軸は採血時点を示している。ALT は体温の回復前後に有意な差はなかった(a)。LDH(b)とBUN(c)は体温回復後に値 の有意な上昇が見られた。

a

ALT (U/L)

60

0 20 40

前 後

体温回復

b

LDH (U/L)

800

0 200 400 600

前 後

体温回復

前 後

c

BUN (mg/dL)

60

0 20 40

体温回復

57

図24 低体温の維持がマウスの体温回復時に生じるASTの上昇に与える影響

このグラフは,ASTの各採血時点間での血液生化学値の平均値の差を表わしている。“0 時間回復後”(白)は15℃到達直後に体温を回復させたマウスの血液生化学値の平均値

から,15℃到達直後のマウスの血液生化学値の平均値を引くことにより算出した。“15℃

3 時間維持”(グレー)は低体温状態を 3 時間維持したマウスの血液生化学値の平均値 から,15°C 到達直後のマウスの血液生化学値の平均値を引くことにより算出した。

“15℃ 6時間維持”(黒)は低体温状態を6時間維持したマウスの血液生化学値の平均

値から,15℃到達直後のマウスの血液生化学値の平均値を引くことにより算出した。“3

40

A ST の平均値の差 (U /L )

80

0

120

58

時間維持回復後”(斜線)は低体温状態を 3時間維持した後に体温を回復させたマウス の血液生化学値の平均値から,15℃到達直後のマウスの血液生化学値の平均値を引くこ とにより算出した。“6時間維持回復後”(横線)は低体温状態を6時間維持した後に体 温を回復させたマウスの血液生化学値の平均値から,15℃到達直後のマウスの血液生化 学値の平均値を引くことにより算出した。

59

図25 低体温状態を6時間維持したマウスの1週間後の血液生化学値

これらのグラフは低体温状態を6時間維持したマウスの1週間後のAST(a),ALT

(b),LDH(c),BUN(d)の平均値を表わしている(各群: n=6)。横軸は採血の 時点を表わしている。1週間後のAST(a),ALT(b),LDH(c)は,対処群に比べ て有意に低い値を示した(p<0.05)。BUNには有意差がなかった(d)。

a

40

0 10 30

A S T (U /L )

20

1週間後

対照群

b

40

0 10 30

A LT (U /L )

対照群 1週間後 20

c

100 200

L D H

(U/L)

50 0 250

1週間後

対照群 150

d

30

0 20

B U N ( m g /d L )

10

誘導前 1週間後

60

考察

第3章の目的は,非冬眠動物であるマウスを極度の低体温状態に誘導する方法の確立 と,低体温状態がマウスに与える影響を明らかにすることである。第2章ではラットに おいてイソフルラン麻酔と冷却を用いる低体温誘導法を確立した。そこで,マウスにお いてもラットと同様の方法を用いて,極度の低体温状態に誘導できるかを検討にした。

第2章で行ったイソフルラン麻酔によるラットの低体温誘導により,非冬眠動物を低 体温に誘導するためには,体温回復行動を示さなくなるまで,体温調節中枢を抑制する ことが重要であることが明らかとなった。そこで,マウスにおいてもイソフルランの吸 入を一定の体温で停止することで低体温に誘導できるかどうかについて検討した。マウ スでは体温が 20℃に到達した時点でイソフルランの吸入を停止しても,体温回復行動 がみられたことから,この体温では体温調節中枢が機能していることが示唆される。

20℃以下でもイソフルランを2%濃度で吸入し続けると心拍動に異常が生じるため,イ

ソフルランの吸入濃度を体温が25℃に到達した時点で1%に低下させて低体温誘導を続

けると,20℃以下の体温でも異常心電図は生じなかった。そのため,マウスにおいても

麻酔による中枢神経系の抑制が心拍動に影響を与えていることが示唆された。体温が 15℃に到達した時点でイソフルランの吸入を停止しても体温回復行動が起こらなかっ たことから,マウスにおいても,イソフルラン麻酔により体温調節中枢を適切に抑制す ることで,低体温に誘導することが可能であることが明らかとなった。

マウスにおいても麻酔と冷却の組み合わせにより 20℃以下の低体温に誘導可能であ ったが,直腸温度が15℃以下に低下するとマウスは心停止を起こした。そのため,15℃

を下限の体温として冬眠様低体温とした。この体温はラットにおいて誘導できる下限の 体温と同一であったことから,体温調節中枢が機能する下限の温度に種差はあっても,

心機能を維持できる体温に種差はないと考えられる。しかし,極度の低体温状態の医療 応用を考えると,医学分野ではヒトを,獣医学分野ではイヌやネコなどを対象にする必

61

要がある。そのため,ウサギなどの大型の実験動物を用いた研究を行い,より効率の良 い体温制御の方法や,体温調節中枢が機能する下限の温度の種差についてさらなる研究 が必要である。

ラットと同様に直腸温度 15℃の低体温状態を 6 時間維持することが可能であったこ とから,低体温誘導による影響について種差があるかどうか血液生化学値により評価し た。低体温誘導により直腸温度が15℃に到達した時点では,全ての項目において,対照 群と有意な差はなかったが,AST,LDH,BUNは,低体温状態の維持にともなって有意 に上昇した。このことから,単なる体温の低下そのものはマウスに悪影響をもたらさな いが,低体温状態を長時間維持することにより心臓や骨格筋の組織傷害や腎臓の傷害が ラットと同様に誘発されると考えられる。このような変化が見られる一方,ALTには低 体温維持による有意な値の上昇はみられなかった。ALT は主に肝傷害時に上昇するこ と(69)から,マウスの肝臓は骨格筋や心臓組織に比べて,低体温に対する耐性が高い といえる。この低体温による組織傷害がどのような機序により生じているかはまだ明ら かではないが,一つの原因として虚血による傷害が考えられる。冬眠動物であるジリス やコウモリにおいては,冬眠期間中に低酸素誘導因子の発現が変化すること(49,50)

から,低体温の維持や体温回復による傷害の機序に低酸素が関わる可能性は高い。また ヒトの低温での臓器保存では,肝臓に比べて心臓は虚血許容時間が長いことが知られて いる(4,26)。このような臓器の虚血に対する耐性の違いにより,低体温状態の維持や 体温回復による血中逸脱酵素の上昇の仕方に差があったと考えられる。

また,低体温からの体温回復に対して,低体温状態の維持時間がどのような影響を与 えるかについて検討した。二元配置分散分析を用いて解析したところ,ASTにのみ,低 体温状態の維持時間と体温の回復の間に有意な交互作用を認めた。このことは,体温の 回復による血液生化学値の変化に対して,低体温の維持時間が影響することを示唆して いる。低体温状態を6時間維持した場合のみ,体温の回復によるASTの値の上昇を認 めたことから,低体温状態の維持は体温回復時に生じる組織傷害に相加的または相乗的

関連したドキュメント