。
5 0.3 0.4 0.5 0.6
根の呼吸速度
。
• /
•
Y=37.94X-0.71
0.7
r=0.763* *
0.8 0.9
(mgCOgLU2g ・1
h勺
1.0
第6-10図
登熟期の根の呼吸速度と出液中のカルシ ウムに対する珪酸の比(SiOiCa)との関係..:穂揃日~穂揃後14日, 0:穂、揃後15日,.._,30日.
,'O O ,' O ,' 。 ,' 。 , O O / o fO O,' Gγ / 0 0 '
Y=0.37X+7.21 [=0.916* * 20
Y=0.20X+7.08 [=0.894* * 18
14 12 16
(民) 時律相鐙剖吟鰍
10
8 15 30 35 40
Si02/Ca 25
20
第6-11図 登熟期における第13葉のカルシウム 含有率に対する珪酸含有率の比(SiOiCa)と 珪酸含有率との関係.
品種:ヤマビコ. ・:9月3日, 0:10月8日.
試験区は無肥料, 生ワラ, ワラ堆肥, 野草 堆肥, 厩肥などを約1'"'-'2 Kg m-2施用して,
それぞれの区の半分に石灰120gm・2を加え た合計14区で, 各区より1点の資料を得た.
出穏期にかけて差は縮小し, 登熟期 には 低濃度となり, かつ区間差は 認められな かったが, 珪酸全吸収量の20%程度は登熟期間に吸収され, 特に堆肥区は 28
%と大であるのに対し, 生ワラ区は3%と区間差は大であった. この事実か らし て, 第6-11図のS i02/Ca比は根の活力の長期にわたる発現が反映の結果と考え られる.
摘 要
水稲の幼穂形成期より, 登熟期にかけて出液を採取し, 出液中のアンモニア態 窒素, 珪 酸および カルシウムを定量して, それら と 根の呼吸速度とを検討した.
処理 として, 堆肥, 生ワラ などの有機物を施用する区, 多窒素区および75%遮 光区などの合計11区を設けた.
出液 中のア ンモ ニア態窒素濃度は, 遮光 区が登熟期平均で8.3ppmと他の処 理区平均o .6 ppmより 高い値を示した. 遮光区の根は, 全糖含有率が0.2%と 極端に低下(対照区1 .0 %)してお り, 根の全糖含有率が低下す ると出液中の アンモニア態窒素濃度が上昇する傾向が認められた.
出液中の珪酸濃度は, 幼穂形成期に高く, その後登熟の進行とともに漸次低下 した. これは根の呼吸速度の変化と同様の傾向であった. 出液中のカルシウム濃
度は生育期間を通して, 概ね一定濃度で推移した.
根の呼吸速度と出液中の珪酸濃度および出液中の珪酸含有量とは, 高い正の相 関関係があった. 根の呼吸速度と出液中のカルシウムに対する珪酸の比との聞に は, 正の相関があり, 根の呼吸速度が高い場合は, カルシウム に対する珪酸の比 が高いこ とを認めた. 従って, 根の呼吸速度の高い根を有する水稲では, 葉身の
珪酸含有率が高くなる可能性が示唆された.
第7章 総合考察
本論文では, 水稲の幼穂形成期から登熟後期に至るまでの根の活力を呼吸速度 としてとらえ, その機能発 現を作物生産に関連する生理現象と対応させて論じて きた. 本章では, 得られた結果について総合的に論議を行い, そこから本研究の
栽培学的意義について考察を行うこととする.
1 . 環境ストレス下での根の機能発現
移植栽培の水稲は, 一定の育苗期間を経て本田へ移植され, その後, 分げつを 始める. 分げつ期 に おいて通常の水田では, 有機物 の多量投入などに起因す る根 圏土壌の強度の還元状態がもたらすところの根の障害がない限り, 根自体の機能 はさほど顕在化しないであ ろう. なぜならば, 分げつ期の根は発根後の日数経過 が少なく若い 根であると同時に, 稲体の高い窒素含有率を反映して呼吸速度が高 く(山田 1959, 稲田 1967 )維持され, 不良環 境に耐えうる力が大であると
みなすことができるからである. 根の機能の良否が発現するのは, 水稲が高温,
低温 および日照不足などの不良環境に遭遇したとき であり, 通常の状態では, 根 の老化が進行する登熟期間であると考えられる. 登熟期の根の機能維持とそのた めの栽培管理については後述するとして, ここでは環境ストレス下での根の機能 発現 について論議 したい.
水稲は湛水条件下で-生育しているので、土壌水分が充分であるにもかかわらず,
飽差が大で蒸散が 盛んなと きは気孔開度が減少して , 光合成速度が低下する 現象 が認められている. たとえば, 石原ら( 197 1 a , 1971 b, 1978 a, 1978 b, 1978 c) は水稲の気孔開度の日変化の実態を詳細に調査しているが, 蒸散の盛んな晴天日 の午後に は 気孔開度が減少すること, また, 気孔開度は葉位, 生育時期で差異が あり, 出穂、後は出穂、前に比べて最大開度が小さいこ とを 認めており, これらの現 象と根の発育や老化との関係を考察している. またHirasawa et a1. (1992a)は 日中の気孔開度の低下は根自身の水の通導抵抗の増大が主たる要因であると報告 している.
一方著者の別 の報告(津野ら 1991b)によれば, 飽差, 日射強度および 葉色 の3要因で, 気孔開度の日変化を説明でき, 日中の気孔開度を減少させないため には, 葉色を濃く保つことの必要性を強調している. この報告では, 根の 呼吸速 度と気孔開度との直接的な関係は明確に示されていないが, 別の実験(津野ら
199 5)で葉身木部水ポテンシャル, 葉身窒素含有 量および光 合成速度について 詳細に検討したところ, 1茎のうちで上位から数え た第3, 4葉, つまり下 葉の 葉身木部水ポテンシャルは その個体の根の呼吸速度と高い負の相関関係を認め た.
これ は, 根の老化した個体 では, 下位葉の水の通導抵抗 が増 大するため気孔開度 を減じて, 葉内水分を保つため葉身木部水ポテンシャルは高まるが, 気孔抵抗の 増大のため光合成速度 は低 下すると考察した.
このように, 飽差 が大である日中や葉の老化 が進んだ下位葉では, 根の機能の 良否が通導抵抗をとおして気孔開度に影響を及 ぼし , それ が光合成速度に影響を 及ぼしている.
本研究では, 高温条件を 水稲個体に与え, 総光合成速度の高温低下現象と根の 呼吸速度との関係をみた結果, 11予吸速度が高い板を有する個体では, 4 0 oc の高 温でも総光合成速度の低下 が認められず, 3 0 ocよりも4 OOCの方が高い値であっ た〈第3章第1節). さらに, 葉身に対する水分供給を根の質と量の2面よりと らえ, 前者を根の呼吸速度, 後者を根重に対する葉面積の比で代表させると, 根 の呼吸速 度か高く, 葉面積:根重比が小さいものほど総 光合成速度の高温低下現 象を軽減でき るという結果を得た. つまり, 幼穂形成期では葉面積に対して相対 的に根重が少ないが, 高い根の呼吸速度でそれをカバーしており, 根の呼吸速度 が低下する登熟期では葉面 積に対して相対的に根重が多くなって水分供給を助け るという調 節機能の作動が認められた.
一方, 水稲5品種に 対し て穂ばらみ期と登熟中期に夜間100C, 12時間の低 温処理を施すと, すべての個体で翌朝の光合成速度および蒸散はともに抑制され たが, 光合成速度が 低下しにくい個体 は, 比葉面積(SLA)が小で-かつ根の呼吸
速度の高いものであった(第3章第2節)• このSLAと根の呼吸速度との聞には 相関はなく, 互いに独立して機能 して いるものと考えられる. また, SLAの小で あるもの ほど呼吸速度が高いことも明ら かと した. すなわち, SLAの小である葉 は呼吸で示されると ころ の 生理活性が高く, これが 葉内水分の保持に寄与 してお り, さら に加え て根の呼吸 速度の高い場合に積極的吸水が高いため, 低温の後に
与えられた好適条件下で 光 合成速度の回復が速やかであると言え る.
以上の結果より, 環境ストレスに耐えうる水稲'の姿が浮かび上がってくる. そ れは, SLAが小さ く充実した葉身を持 ち , 葉面積に対して相対的に根 量が多く,
根の呼吸速度が高い稲であ る. このよう な稲を作るには, 個体に充分 な光を与え ることと , 一度に多量の窒素を施肥 しないことが肝要である. この理由は, 本実 験の遮光処理によって弱光下で生育 した水稲は, SLAが大で, 葉 身長を増大させ てい たこと, 高窒素含有率の稲は軟弱な生育を したことより明白である. また,
低い窒 素条件で 生 育さ せると 根 が よ く発達し, 吸水能力が 高まるとの報告 (Hirasawa et al. 1992a)もある. もちろん, 気孔開度を高く保つうえで葉色を 落さずに(葉色板示度で5"-'6)維持しなければなら ない. したがって, 稲の生 育状態, 特に葉色の変化に着目して, 適切な葉色の維持が可能である追肥重点の
肥培管理は合理的である. さらにし1えば, 良質な完熟堆肥を施用することが 根の
健全性を 保つうえで望ましい.
2. 不良環境への調節機構に関与する根の機能
日本の水田の約半分は標高4 0 m以上のと ころに位置し, しかもその多くは中 小河川水系内に分布して いる. 一般に中小 河川水系では, 下流と上流との 標高差 が著しい. 例えば, 第3章第3節で山あげ処理を施した安蔵 は, 鳥取市の南東に 位置す る野坂川水 系の 上 流に位 置する が , 野坂川は標高差約3 0 0 mを 約 20kmほどで流下 して日本海に注いで いる. この水系内の気象条件を詳細に調
査し た結果では , 標高が1 0 0 m上昇するごと に , 稲作期間の 平均気温 は
0.7 30C低下 し, 用水 温度 は平地(湖山〉が25 oCの時, 安蔵で は1 6 oCと約
9 0Cも低水温 で あった(津野ら 1982, 1983) . 同時に上流では谷聞がせばま り, 山の稜線で日射が遮られるために安蔵では晴天日の日射量が平地の25%も 減少していた(津野ら 1982) . これらは, 全国の中小河川水系で共通する環 境であり, いわゆる谷間の水田では低温と日照不足の不良環境に恒常的にさらさ れている.
このような不良環境 への水稲の調節機能の発現に関して, 根の機能が関与して いることを明らかとすることができた. すなわち, 弱光下におかれた水稲は乾物 生産が抑制されるが, 窒素吸収量の抑制度は軽度 で, そのため体内窒素含有率お よび葉身窒素含有率が高ま り, 光合成能力を高く維持する方向に調節機構が働い ていた. ま た, 体内窒素含有率の上昇は, 根の窒素含有率を引き上げ, そのため 処理個体の根の呼吸速度は無処理よりも高い値を維持する. そして, 根の呼吸速 度の促進は, 窒素吸収量の増加を促して, 体内窒素含有率を高く保持する(第3
章第3節〉
さらに特記すべきことは, 上記した体内窒素含有率の調節を適当に発揮する品 種と, 体内含有率が過度に高まり, イモチ病などの耐病虫害抵抗性の低下などの
好ま しくない形質を誘発する品種のあることを指摘できたことである. 例えば,
平地 向き品種と言われている日本晴は, 分げつ期の山あげ処理により著しく 窒素 吸収の低下を見た. 逆に, 遮 光処理では著しく窒素吸収が促進された. したがっ て, この品種は中山間部の日照不足の地帯では穂、数の確保が困難であり, 徒長気 味の軟弱な生育となり, 病虫害への抵抗性が劣ることが予測される. 日本晴が当 地の山間部で普及しないのは, 熟期の遅いことの他にこうした生理的要因も関与 していると考えられる. 一方, 当地 で中山間部向き の品種とされているアキ ヒカ
リは遮光処理による窒素吸収量の低下が他の品種よりも著しいが, 分げつ期の山 あげによる窒素吸収量の低下度は他の品種よりも小である. この特性が, 穂、数の 確保にあずかつて, 中山間部で安定した作柄を示す 品種として位置づけられるも のと考えられる. コシヒカリは, 窒素吸収の面からみるとアキヒカリに似た傾向