I.序
コントローリングの調整機能が強調されている1。すなわち、それはコントローリングの 機能を管理システムにおける調整と理解するものである。コントローリングの機能をこの
ように理解する場合、コントローリング組織は、企業内においてどのように位置づけられ うるのであろうか。
周知の通り、「組織」という場合、そこには非常に多くの意味が含まれている。たとえば、
組織形態の問題、権限委譲の問題、意思決定問題など多種多様なものが組織の問題として 指摘される。そして、このような組織の問題を考察することは、経営経済学の一部分領域 であるコントローリングの全体像を論究する際に避けては通れない。すなわち、調整とい う機能を果たすための固有のコントローリングのための「組織」を形成しなければ、コン トローラーは効率的にマネジャーの支援を行うことが不可能である。組織を明確にして初 めて、分業や権限の分配、さらには、コミュニケーションのパターンが明らかにされ、そ の役割が定かになるからである。目的を達成するための手段としての組織について議論す ることは、非常に重要である。
本章と次章の第8章は、コントローリングがその機能を果たすための組織を明らかにす るという目的を有している。
まず本章において、われわれは、コントローリングの機能を再度確認したのちに、その 組織について議論する際に取り上げるべき問題を明らかにする。それに基づき、独立した
コントローリングのための組織を形成するか否かという問題やそれを規定する要因につい て考察していく。次いで、それが職能別組織や事業部制組織などの組織形態の違いにより、
どのように異なるのかを明確化する。さらに、実際の企業組織におけるコントローリング 部門の位置づけ、ならびに、それが企業内に複数設置される際のコントローラーに対する
1コントローリングの機能を調整として把握する調整志向的構想を最初に展開 したのはホルヴアートで あるといわれている。彼は、1970年代後半に著した論文において、調整という機能を果たすべきであ るという見解を明らかにしており、現在もそれに基づき、コントローリングに関する研究を展開してい
る。VgLHow舳,R:C㎝tm㎜皿g−En㎞cH㎜g㎜aSt㎜de血erK㎝zeph㎝z㎜肋s㎜gaer
Ad.aphons−u11d.Koo拙皿ahonspmb1emeaerF棚皿mg,ZfB,48.Jg.(1978),S.194−208.なお、ホル ヴァートの見解は本稿第4章、また、コントローリングの機能の変遷に関しては第2章を参照。
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指揮命令権についての検討が行われ、その際に、事例も併せて取り上げる。これらのこと を通じて、マネジャーを支援するために有効なコントローリング組織ならびにコントロー ラーのための職位を明らかにしたい。
皿.コントローリング組織の形成
コントローリング組織(Contro11i皿80rga㎡satio凶の特徴づけを行うことは、コントロー リングの概念を考察するうえで非常に重要である。先に述べたように、コントローリング 組織を明確にすることにより、その機能を担うコントローラーの職務、責任および権限な
どが明らかになるからである2。
コントローリング組織を明確化する際に、以下の3つの問題を検討することが必要とな る(表7−1参照)3。
第一に、コントローリングのための独立した組織が形成されるのか否か、ということが 論じられなければならない。これは、その組織の制度化もしくは非制度化という二つの観 点から論じられる。第二に、コントローリングの配置(Gheaemng)、すなわち、コントロ ーリングを計算制度や予算管理のような職務ごとに分けるのか、部門ごとに分けるのかと いうことや、中央コントローリィグと部門コントローリングを如何に設置するのかという コントローリングの集権化の程度についての検討が不可避である。また、われわれは、分 権化されたコントローリング組織の規制、すなわち、部門コントローリング組織における
コントローラーが誰によって統率されるのかということに関する問題も考えなければなら
ない。
さらに、第三番目の問題として、企業組織内でコントローリング組織がいかに位置づけ られうるのか、ということについて考察を加えることが必要となる。このことに関しては、
コントローリング組織を位置づける階層的なレベルとコントローリングの権限の明確化を 通じて検討が行われる。
2VgL酌ppe4H. U.:a.a.0.,S.481.シュナイダーは、コントローラーの権限および成果責任が明確で はないということに関しても、批判的な見解を示している。VgL Sc㎞eid明D.:a.a.0.,S.459f 3Vg1・Fie叫B・:Contro皿hg,Stuttg砒2003,S.95f;How銚h,P:a・a・0・,S・846fl;K軸P興.H・ U・:
Con伍。皿ng,3.Au血.,S血就gart2001,S.515丘
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(表7−1)コントローリング組織の形成形態4
形成のための基本変数 形成のための代替案 コントローリング職務の職務 ・非制度化
担い手への関連付け ・制度化
コントローリングの配置 ・職務志向的な配置
・組織志向的な配置 コントローリングの集権化 ・中央コントローリング
の程度 ・部門コントローリング
分権化されたコントローリン ・部門のマネジャーのもとへの従属
グ組織の従属 ・中央コントローリング部門のコントロー
ラーへの従属
・二重支配原則
コントローリングの階層的な ・最上位のレベルヘの配列
配列(EhOr山㎜g) ・二番目のレベルヘの配列
・より低いレベルヘの配列
コントローリングの権限 ・ライン機関としての組織
・スタッフ職位としての組織
・横断領域としての組織
皿.コントローリング組織の制度化と配置
1.コントローリング組織の制度化
最初に、コントローリングのための独立した組織が形成されるのか否かということが議 論される。このことに関して、フリードル(Friea1,B)は、コントローリングの非制度化
(Nichti皿s砒utiona1isiemng)と制度化(Institutionalisiemng)を区別し、それぞれについて
4この表は、以下の文献をもとに筆者が作成したものである。VgL F{ed1,B.:a.a.0.,S.96.
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考察を加えている5。
まず、コントローリング機能が固有のコントローリング組織に委ねられない非制度化の 場合、コントローリング機能は、計算制度部門もしくは財務部門などに委ねられることと なる。しかしながら、非制度化の場合はコントローラーの職位が明確でないために、その 機能が重要視されない可能性がある。コントローリングがコントローラー制度から生成・
発展してきた初期の段階、すなわち1950年代後半から1960年代終わりでは、コントロー ラーの職位は制度化されない割合が高かった。
コントローリングが制度化された場合、コントローラー職位の形成によるその権限およ び責任の明確化を通じて、上述したデメリットは克服されることとなる。さらに、固有の
コントローリング組織が形成されることにより、コントローラーの経験が蓄積されること を通じてその知識が体系化される.こととなる6。したがって、コントローリング組織は制度 化されることがより望ましいと考えられ、コントローリングが普及し始めた1960年代後 半から近年においては、固有のコントローリングのための組織もしくは独立したコントロ ーラーの職位をもつ企業の割合が増加している。
第1章の表1−1ですでに示されたように、ドイツ企業では、1960年代後半までコント ローリング部門をもつ企業は少なく、コントローリング機能は、計算制度の部門に委ねら れることが一般的であった(表1−1参照)7。この理由としては、当時のコントローラー 制度そのものが企業で重視されておらず、また、そもそも、コントローリングという概念 が未だほとんど見られなかったことが考えられる。コントローリング部門が形成されるよ
うになったのは、1960年代以降のことである。さらに、今日、コントローリング部門を設 置する企業の割合は非常に高くなっている。
以上のごとく、今日、コントローリングの組織は多くの企業に存在するのである。それ では、いかなる要因によってその導入が規定されるのであろうか。コントローリング組織 を規定する要因に関しては、さまざまなものが指摘されているが、主なものとしては、企 業規模、組織形態などがある8。
また、いくつかの文献においては、企業を取り巻く環境と独立したコントローリング組
5Vg1−Fded1,B.:Contro11hg,Stuttgart2003,S.95f1㎜1d.100.
6Vg1−K酌p興H.・U一:a.a.0.,S.485f−
7VgL Lh餌au,V:a.a.0.,S.84;Webe耳J./Sch池島U一:a.a.0.,S.232.
8VgL K軸Pe巧H.一u!Webe民J.!Z㎞a,A:孔a.0.,S.286;How乏th,P:乱a.0一,S.832−
839;K軸pe巧H.・U.:a.a.0.,S.481−483.
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織の設置およびその内容との関連が検討されている。企業を取り巻く環境とは、調達市場 および販売市場、技術そして政治的・社会的環境などである。たとえば、デプケ(Dδpke,U)
は、企業の市場行動とマーケティング・コントローリング組織の設置との間の関連を分析 している9。しかしながら、その関連は明確に根拠付けられていない。ホルヴアートも、彼 の著書において同様の指摘を行っているが、組織とその環境との明確な関連は示されてい ない。したがって、以下においては、コントローリング組織を規定する要因を企業規模お よび組織形態に限定し、考察を加えることにしたい。
コントローリングの組織の導入がそれぞれの企業規模に依存することは明らかである10。
(表7−2)コントローリング部門を設置している企業の割合11
従業員数 企業数 コントローラーの職位をもつ企業