第4章 コントローリングと管理部分システムの調整
IV. 周辺的システムの調整
既述のように、コントローラーの職務にとって、人事管理システムや組織は周辺的なも のである39。もちろん、一般的な管理システムを考える際に、実行の段階におけるマネジ ャーの役割である組織や人事管理の問題は、彼らを支援するコントローラーが考えなけれ ばならない対象である。この点において、コントローリングと人事管理システムおよび組 織との関連の明確化は不可欠である。
1.人事管理システムの調整
人事管理システムは、企業における組織構成員を管理するためのシステムであり、その 要素としては、従業員以外に管理者や管理プロセスおよび管理手段が存在する。コントロ ーリングに関する文献の中で、コントローリングと人事管理システムとの関連を明確化し ているものはあまり見られない。しかしながら、人事管理は、他の部分システムにおける 従業員の行動に影響を及ぼすために、コントロ』リングの調整対象をして非常に重要とな
る40。
人事管理システムにおいては、管理原則、管理様式、モチベーション・システム、イン センティブ・システムおよび人材開発のシステムなど、さまざまな手段が存在する41。し たがって、これらの間に調整が必要となり、その際に、管理原則が有用である。なぜなら ば、これは、従業員を管理するための一般的な行動原則を表わしたものであり、これを通 じて他の人事管理の手段の調整や組織構成員の調整が行われるのである。
38VglL Kippe馬H.一U一:a.a.O.,S.152.
39Vg1−K血ppe島H.・U二:a.a.O.,S.12−15und194f 40Vg1−K泣ppe耳H. U一:a.a.0.,S.194f−
4I VgL K軸Pe耳H.・u:乱a.0.,S.194−198.管理様式とは、マネジャーが如何に部下に影響を及ぼす のか、ということに関して、そのためのアプローチを示すものである。それは、権威主義的な形態か ち協力的な形態まで、さまざまなものに分類される。また、人材開発システムとは、たとえば、教育、
研修、労働の構造化(グループ形成など)、キャリア計画を意味するものである。
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また、これら人事管理の手段を通じて、他の管理部分システムにおける従業員の行動に 対する管理が行われ、全体的な調整が可能となる。管理様式は、個々のマネジャーと組織 構成員に直接的に関連し、また、モチベーション・システムおよびインセンティブ・シス テムは一般に企業全体に関わる手段であり、組織構成員の行動に大きな影響を及ぼしうる。
このことから、これら手段は、直接的な調整ために有用である。調整のための間接的な手 段としては、組織構成員に対する目標提示、共通の価値観および期待の形成などが存在す る。彼らが共通の目標を追求し、共通の価値観を持ちうるのであれば、企業目標がよりよ く達成されるのである。
2.組織の調整
組織は、経済活動にとってもっとも重要な基礎であり、経営プロセスにある要素間の秩 序や、経営活動の目標を志向した管理のための秩序の枠組みを表わすものである42。そし て、一般的に、その本質的な機能は調整であると理解されている。それゆえ、組織の機能 である調整とコントローリングの機能である調整との区別が問題となる43。これに関して は先に述べたとおり、組織の枠組みの中での調整は、実現化の段階におけるものであり、
他方、コントローリングの機能である調整は管理システムにおける調整のみを意味するも のであるという区別が可能である似。
組織に関しては、組織構造と組織過程との間の調整が重要である。前者においては、経 営の構造や権限に関する長期的に有効な規制が問題となる。後者においては、権限委譲の 過程が問題となり、組織構成員の空間的・時間的な関係や委託と受託の問題の形成が行わ れる45。また、組織以外の管理部分システムは企業の組織を基礎としているために、それ らの間の調整が必要である。たとえば、情報システムは、職務の決定によって、その要素 である情報需要や報告システムが影響を及ぼされうるのである。このための調整手段とし ては、調整機関や職務決定、責任や権限の委譲が考えられ、また、フォーマルなコミュニ ケーション構造などによっても調整がなされうる46。
42VgしK軸p叫H. u:a.a.0.,S.264f−
43VgLWebe兵工:a.a,0.,S.234f;酌pp町1≡L・U.:a.a.O.,S−266−268一 仏VgL How批正,P:a.a.0.,S.213.
45VgL K迅ppe耳H.・U一:a.a.0.,S.265f 46VgL K泣ppe島H.・U.:a.a.0.,S.268丘
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V.結
ドイツにおいてコントローリングが本格的に普及し始めたのは1970年代後半のことで あり、その頃、コントローリングの機能が管理システムにおいて調整を行い、マネジャー の支援をすることであるとみなされた。その後約30年間、そのような見解は、コントロ ーリングに対する理解の中で最も重視されてきた。
調整志向的なコントローリング構想に関する支配的な見解は、コントローリングシステ ムを管理システムの部分システムであるとみなし、その機能を管理システム全体における 調整として理解するものである。それは、ホルヴアートやキュッパーに代表される。その 際に、その対象である管理システムは、計画策定システム、統制システム、情報システム、
人事管理システムおよび組織という5つの部分㌢ステムに細分される。しかしながら、彼 らはコントローリングシステムと他の管理部分システムとの関係については明確化してい ないため、本稿においては、管理シ子テムを狭義の管理システムとコントローリングシス テムとに細分し、そのことにより、コントローリングが調整機能を果たしうることを指摘
した。
すでに明らかなよ一うに、コントローラーは、上述の狭義の個々の管理部分システム内部 および管理部分システム間の調整のために、その役割を果たすのである。皿前以降におい ては、個々の管理部分システム内部およびさまざまな管理部分システム間という調整の対 象、そして、それらの調整のための手段が明確化された。計画策定システムに関しては、
計画策定目標や計画策定対象および計画策定レベル間の調整が重要であり、そのための手 段として、効用関数や目標抑制および目標妥協、また、逐次的計画策定モデルおよび同時 的計画策定モデルを指摘した。統制システムにおいては、コントローリングの役割があま り重要視されていないものの、差異分析がコントローラーの職務であると理解される。情 報システムにおいて柱、情報やさまざまな計算システムの調整のために統合的な企業計算 システムが不可欠であり、また、情報需要、情報生産、そして情報供給の間の調整のため には、情報需要分析や報告システムといった手段が存在するのである。
さらに、人事管理システムでは、そこにおけるさまざまな手段を調整するたやに管理原 則が有用であり、また、他の管理部分システムの従業員を調整するために、管理様式やモ チベrション・システム、インセンティブ・システムが重要である。最後に、組織に関し ては、組織構造と組織過程との間の調整が不可欠であり、そのための手段としては調整機
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関、職務決定および責任や権限の分配、フォーマルなコミュニケーション構造が挙げられ
る。
以上、調整志向的な構想に基づいて、個々の管理部分システムおよび管理部分システム 間の調整手段を検討してきた。一つの管理部分システム内部での調整手段は、孤立的調整 手段と称される。孤立的調整手段は、給付システムの調整のためにも用いられることから、
コントローリング固有の手段であるとはいえない47。コントローリングにとっては、管理 部分システム間の調整に基づく管理システム全体の調整が最も重要な課題であり、したが
って、コントローリング固有の手段というのは、予算管理や管理価格システムのような包 括的調整手段に求められる。そして、これらの手段による支援を通じて、分権化されたす べての管理部分システムが統合され、マネジャーが目標に向けて活動することが初めて可 能となる。これらの手段は、次章以降で検討していくことにしたい。
47Vg1−K軸pe耳亘.・U.:a.a.0.,S.230.
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