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外集団第三者+比較他者群

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比較他者のみ群

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統制群(第三者,比較他者なし)

  図3.3 自己の遂行量と平均他者評価得点の関係 横軸は自己の遂行量(個数),縦軸は平均他者評価得点(3〜21)

考 察

 内集団成員である第三者が比較他者を評価する状況において,自身の単語作 成数が多い人ほど平均他者評価が低いという関係が確認された。比較他者との 関係では回帰の等質性の仮定が棄却されなかった。ただし,比較状況ごとの単 回帰分析では,第三者が内集団成員の群でのみ,自身の単語作成数が多い人ほ ど比較他者評価は低い傾向であった。また,自身の単語の作成数が多い人ほど 自己評価が高いという関係は,第三者も比較他者も存在しない群で確認され,

その他の群では確認されなかった。さらに,性別による違いも確認されなかっ

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た。

 実験参加者自身のテスト結果と自己評価との正の関係が確認されると同時に,

比較他者や平均他者の評価との負の関係が確認されるという 典型的な 社会的 比較の評価は,どの状況でも観察されなかった。しかし,重要な指標である比 較他者,平均他者との負の関係は,第三者が内集団成員の状況でのみ確認され た。自己の遂行と他者評価の関連を社会的比較の重要な指標であるとする本稿 の立場から,比較他者を評価する第三者が自己と同じ集団の成員である場合に 社会的比較による評価が顕在化しやすいことが示唆される。この結果は,本稿 の仮説2の実証的証左であると考えられる。

 しかし,なぜ,比較他者の存在しない群でのみ自己の遂行と自己評価の関係 が確認され,その他の群では確認されなかったのであろうか。比較状況間の直 接の比較は分析の都合上できないが,本研究ではこの結果を二つの観点から解 釈する。ひとつは,評価の手がかりの多さである。本研究における言語能力テ ストは,単語の作成数とユニークさの二つの指標で判定されるものであった。

単語の作成数とユニークさをそれぞれ一つの手がかりとしてカウントすると,

統制群の実験参加者にとっての手がかりの数は,自らのテスト結果から示され る二つであるのに対して,その他の群では比較他者のテスト結果も含めて四つ であった。すなわち,言語能力テストの出来具合から能力の推測をする際,比 較他者が存在する群の実験参加者にとっては,自らが作成した単語数は評価の 手がかりとして四分の一の情報価しかないのに対し,統制群の実験参加者にと っては二分の一の情報価であったのである。したがって,統制群では,自らが 作成した単語数が評価の手がかりとして重視され,自己評価との関係が確認さ

れたと解釈できる16。

 もう一っは,自己高揚の目標が活性化した結果,自己評価との関係が確認さ れなかったとする解釈である。この解釈は,比較他者が存在する群でも,自身 の単語の作成数と自己評価の関係が本来は存在していたことを前提とする。本 研究での比較他者は,単語の作成数の観点からは上位他者であり,すべての実 験参加者は劣位に位置する17。Wills(1981)の下方比較理論や, Tesser(1988)

の自己評価維持理論では,自らが劣位であることで自尊心が脅かされ,そのよ うな状態は回避するように動機づけられる。本研究の実験参加者も,自尊心を 維持,高揚させる方略として,単語の作成数と自己評価とを心理的に結び付け

るのを回避したのである(Goethals&Darley, 1977)。それに対し,比較他者が存 16さらに,単語のユニークさは実験参加者にとって曖昧な指標であり,単語の作成数によ る手がかりが当面の状況では重視されたと仮定すると,この傾向はさらに顕著であろう。

17 芒rによる自己高揚の目標は, 凌ぐべき相手としての上位他者 と L自らより劣位である 下位他者 の異なった二つの様相があることが指摘されているが,本研究では後者の立場を 取ったことになる。

在しない統制群の実験参加者にとっては,そのような脅威が無く,作成した単 語数と自己評価を結び付けたのである。

 自己高揚による上記の解釈を敷祈すると,社会的比較による正確な自己評価 の目標は,必ずしも優勢ではない目標のように思える。しかし,内集団第三者

+比較他者群における参加者自身の単語の作成数と他者評価の関連を考慮する と,比較他者や平均他者の評価を明確にすることで,正確な自己評価の目標を 間接的に達成していると解釈できる。つまり,自らの遂行の評価は不確定にし て自己高揚の目標を達成する余地を残しておく一方で,他者評価を確定するこ とで正確な自己評価の目標を間接的に達成するのである。この際,他者への適 切な対応を 結果的に 高めるような他者評価が, 結果的に 正確な自己評価へ寄 与していることになる。

 最後に研究2の問題点を考察する。本研究は,特定の比較状況における自己 の遂行と自己評価,および自己の遂行と他者評価の関連を検討した。あくまで 個人間の関係についての分析であり,個人の内的過程を推測する場合には注意 が必要である。特に,第三者を含む比較他者がどのような認知プロセスを経て 自己評価や他者評価に影響したのかについては明らかではない。しかし,本研 究の結果から,比較状況における第三者が社会的比較に関与していたこと,お

よび自己と第三者の関係によってその傾向は変わりうることは示唆できる。

 外集団第三者+比較他者群と比較他者のみ群では,自己評価のみならず,他 者評価でも有意な関連は確認されなかった。これらの状況で,比較が生起して いたのかどうかは不明である。また,言語能力テストの評価基準である単語の 作成数とユニークさの関係を実験参加者がどのように解釈していたのかも不明 である。単語のユニークさに対して,作成数は明確な指標であるとの想定であ ったが,この性質の違いゆえに評価の手がかりとしての重要度が変わっていた 可能性がある。検討課題として,第三者が評価する指標を操作すると共に,そ れぞれの指標の重要度を測定する必要がある。それにより,本研究で観察され た関係が変わるのであれば,比較状況における第三者の機能がより明確になる

であろう。

 さらに,本研究の比較他者は,単語の作成数の観点からは上位他者に限定さ れていた。もし,すでに述べた自己高揚の解釈が妥当であるならば,実験参加 者よりも少ない単語しか作成していない下位他者では自己評価との関係も確認 されるはずである。したがって,下位他者群も設定して検討することで,本研 究の推論を実証的に検討することが可能である。

第4節:第三者の集団成員性と社会的比較による評価の関係(2)(研究3)18  研究3の目的は研究2の知見を再検討することにある。

 研究2において,自己の遂行量と自己評価の関連は,比較他者が存在する群 では確認されなかった。その理由として,指標の数の違いによる説明と,自己 高揚による説明がなされた。本研究では,実験で用いる課題の評価指標を限定 し,かつ下位他者群を設定することで自己高揚による説明の妥当性を検証した。

 研究2で用いた課題は, 作成した単語の数 と 作成した単語のユニークさ の二つの指標で言語能力が判定されるものであった。前者の指標は遂行の量的 指標(遂行量)であり,後者は質的指標(遂行の質)であった。この二つの指 標が存在することで,自己の遂行量のみを用いた絶対的な評価の影響を排除す る狙いであった。しかし,この設定は,実験参加者がどちらの指標を重視して 自己評価や他者評価を行っているのかを不明確にした。そこで,研究3では,

課題の評価指標を 作成した単語の数 ,すなわち遂行量に限定した。この設定に より,自己の遂行量と自己評価の関連はより強まる。したがって,すべての比 較状況において,自己の遂行量と自己評価の関連が確認されると予想する。

 さらに,本研究では,実験参加者より遂行量の劣る下位他者を提示する群を 設定した。研究2で提示した比較他者は,遂行量の点で優れた上位他者であっ

た。研究2の自己高揚による説明では,遂行量で勝っている他者は自己にとっ て脅威であるため,自己の遂行と自己評価の関連を避けたと解釈した。しかし,

変数間の関連性が無かったという事実から,そのような推論を直接導き出すこ とはできない。そこで,本研究では下位他者群を設定し,この群における自己 の遂行量と社会的比較による評価の関連に注目した。

 もし,上位他者との比較が自己にとって脅威であり,そのような比較を回避 するように動機づけられているのであれば,自己の遂行と他者評価,または自 己の遂行と自己評価の関連のどちらかを無視することが考えられる。前者は比 較それ自体を回避することにつながるが,適切な対人戦略を採用するという観 点からは望ましくない。それに対し,後者は比較による脅威を最小限に抑えつ つ適切な対人戦略を可能にする方法である。研究2の内集団第三者+比較他者 群では,後者の方法により,間接的に自己評価の目標を達成する社会的比較の 形式であると解釈した。自己高揚の余地を残す程度に自己評価に曖昧さを保持 したまま,他者評価を明確な指標で確定させることで結果的に直接の社会的比 較と同程度,または正確さという点で許容できる範囲内で目標が達成されるの

18本研究の結果は日本社会心理学会で発表された。

大久保暢俊(2005).対人文脈による他者評価と社会的比較による自己評価の関係 日本社 会心理学会46回発表論文集,288−289.

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