スピーカー 机
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分析方法 反応を評定する指標に関しては,まず,鈴木(1997)の反応分類 や藤田(2001)のTAT の情報分析枠(FIA),関山(2001)のSocial Cognition and Object Relations Scale中京大学版(SCORS-C)などからTAT指標を収 集した。次に,熊倉(1989)や水口・佃(1955)が挙げているAPT の特徴か ら考えられる,APT独自の指標を作成した。そして,実際にそれらの指標を用 いていくつかの反応の評定を試み,本研究のAPTに合うように適宜変更や修正 を加え,評定基準が一定になるよう評定マニュアルを作成した(資料 2,3)。 内容面・形式面・認知面から成るこれらの諸指標(表 3-2)を用いて,反応ご とに幅広く分析を行った。各指標の評定方法と想定される解釈について以下に まとめて示す。
(1)内容面
1)自己の内界に向ける関心 本論では,参加者が物語において特に同一化 した登場人物,つまり主人公を「自己」とする。TATにおいても物語の主人公 を「自己」と捉えることには諸説あるが,「被検者が強く同一化している人物の 特徴的な面は,被検者自身のそれでもあろう(鈴木,1997)」という視点に本 論も重きを置く。本指標では,その「自己」の気持ちの移り変わりなどの内的 過程や,思考過程に関する言及について「ある/ない」の 2 件法で評定する。
ただし,刺激中の会話をなぞるだけの語りや,明らかに表面的な語り,まった く情緒を伴わない語りなどは,自己の内界に強い関心があるとはいえないので,
「ない」に評定する。本指標には,参加者自身の内界に向けるエネルギーの強 さが反映され,それはいわゆるユング的な向性に関連すると考えられる。
2)自己に向ける感情 自己に向けられている感情について「肯定的/どちら でもない/否定的/言及なし」のいずれかに分類する。ただし,刺激中の台詞を 単純になぞるだけのものは評定対象としない。本指標では,「言及あり/言及な し」には自己に注意を向ける程度が反映され,「肯定的/どちらでもない/否定 的」には自己イメージが肯定的であるか否定的であるか,自尊心が高いか低い か,それらの程度が反映されると考えられる。
3)他者に向ける関心 本論における「他者」は「自己」以外の登場人物を 指し,1 つの物語で複数登場することもある。本研究の聴覚刺激には複数人物
間の会話が含まれているため,本指標では,それを基準とした対人関係の描写 の程度について「強い/どちらでもない/弱い」の3件法で評定する。刺激中 に他者が存在しているにもかかわらず,登場人物が1人のみの場合は対人関係 の回避と考え,「弱い」に評定する。本指標には,他者に向ける関心や対人希求,
回避傾向などが反映されると考えられる。
4)他者に向ける感情 他者および周囲の環境に対する感情を「肯定的/どち らでもない/否定的/言及なし」に分類する。他者は安心して甘えられる存在で あるか,あるいは脅威を与えてくる存在であるかということも含まれる。ただ し,刺激中の言葉を単純になぞるだけのものは評定対象としない。本指標では,
「言及あり/言及なし」には他者に注意を向ける程度が反映され,「肯定的/ど ちらでもない/否定的」には他者イメージが肯定的であるか否定的であるか,
周囲に対する信頼‐不信や対象関係,対人関係の質が反映されると考えられる。
5)父親(的人物)に向ける感情,母親(的人物)に向ける感情 両親や祖 父母などの保護者,それに近い立場の登場人物に対する感情を評定する。評定 方法は「他者に向ける感情」に準ずる。本指標には,親イメージや親子関係の 質,さらには依存傾向なども反映され得るだろう。
6)人物の導入 刺激中に存在しない人物を物語に登場させた場合には「あ る」,登場させていない場合には「ない」と評定する。単なる「通行人」など,
物語の展開に関係しない人物の導入が見られた場合には「ない」と評定する。
本指標は,他者に対する関心や想像力・創造性,課題に対する自由な態度など を反映すると考えられる。「導入人物の性質」と共に総合的に解釈すると,より 豊かな情報が得られる。
7)導入人物の性質 物語に導入人物がいる場合,その人物は他の登場人物,
特に主人公にとってどのような存在であるかを検討し,「肯定的/どちらでもな い/否定的」に分類する。山本(1992)はTATの図版1に関して述べる中で,
「この絵の中に描かれていない人物が導入されたとき(導入人物)は,他の絵 でも同じであるが,その人物との関係が深いことが予想される」としている。
参加者にとっては刺激中の人物よりも導入人物の方が近しい存在であり,本指 標は,「他者に向ける感情」以上に参加者の対象関係や対人関係の根幹に関わる 特徴を示す可能性がある。
8)標準的年齢/性別設定からのずれ 本研究の聴覚刺激が実際に大学生や 親子に依頼して台詞を録音したものを中心に構成されていることから,刺激中 の人物の実際の年齢や性別は明確であり,物語作成においてもそれに沿った形 で人物設定がなされると想定される。しかし,声を聴いただけで人物の年齢や 性別を正確に判断することは必ずしも容易なことではなく,聴覚刺激には「人物 の無規定性(水口・佃,1955)」という特徴もあり,被検者は物語作成におい てある程度自由に人物設定を行うことが可能であると考えられる。このため,
本研究では試験的に本指標がAPT指標として利用可能であるか検討する。刺激 中の人物の実際の年齢や性別(表 3-1)を「標準」とし,年齢設定のずれに関 しては,子どもの声が成人の声とされたり,成人の声が子どもの声とされたり する場合に「ある」,そのような設定のずれがない場合に「ない」と評定する。
性別設定のずれに関しても同様に,女性の声が男性の声とされたり,男性の声 が女性の声とされたりしたときは「ある」,そのような設定のずれがないときは
「ない」と評定する。本指標における「標準」に関しては,今後,研究を蓄積 する中で検討を行っていく必要があるだろう。
9)独特な人物設定 本指標も「人物の無規定性(水口・佃,1955)」による 探索的指標である。登場人物に社会的地位や特定の性格,容貌などが設定され ている場合に「ある」,設定されていない場合に「ない」と評定する。本指標に は,他者に対する特殊な関心や,想像力が反映されると考えられる。
10)有音/無音の背景音の取り込み 背景音を反応に取り込んでいるか否 かを検討し,「ある/ない」の2件法で評定する。背景に音がある場合(有音)
と,音がない場合(無音)を分けて評定を行う。本指標には周囲に対する関心 や敏感さ,注意深さ,および刺激全体を取り込もうとする努力などが反映され ると考えられる。
11)背景音に対する情緒的意味づけ 背景音は物語の登場人物,特に主人 公にとってどのようなものであるか,その性質を「肯定的/どちらでもない/否 定的/言及なし」に分類する。無音の背景音についても評定対象とする。例えば,
「周囲に何も聴こえないがそこに何かが潜んでいる気がする」という場合は「否 定的」,「逃亡者が誰もいない静かな場所に辿り着いてほっとしている」という 場合は「肯定的」となる。本指標には,周囲に対する信頼‐不信や対象関係の
質などが反映されると考えられ,「他者に向ける感情」よりも非意識的な部分が 表れやすいだろう。
12)明確な結末 物語に明確な結末がある場合には「ある」,結末が曖昧で あったり,そもそも物語の展開に乏しかったりする場合には「ない」に評定す る。本指標には,葛藤を明確に解決しておきたいか,曖昧なままにしておきた いかという処理や態度が反映されると考えられる。また,物語の展開に乏しい 場合には,APTに対する意欲の低さや防衛的態度とも関連する可能性がある。
13)結末の性質 登場人物,特に主人公にとって物語の結末はどのような ものであるかを検討し,その性質を「肯定的/どちらでもない/否定的」に分 類する。一般的に投映法の刺激は否定的な性質のものが多く,本章のAPTもそ のように作成している。そのような刺激に対して肯定的な結末を多く語る人は,
否定的なものを受け入れられず,否認している可能性もある。逆に,否定的な 結末ばかりで肯定的な結末を語らない人は,抑うつ的で,悲観主義的な構えが あることが推測されるだろう。
14)攻撃的内容 自己や他者,導入人物の区別にかかわらず,物語の登場 人物の攻撃的行動や強い怒り,破壊が述べられていれば「ある」に,述べられ ていなければ「ない」に評定する。自傷他害を含め,自殺など攻撃が自己に向 けられている場合にも「ある」と評定する。本指標には,参加者の攻撃性や強 い怒りの感情が反映されると考えられる。
15)自己言及 物語を語る際に自分の体験に言及した場合は「ある」に,
言及しなかった場合は「ない」に評定する。聴覚刺激が備える「一過性」の特 徴から,物語には参加者の記憶が強く反映される可能性があり,TATよりも本 指標に該当する反応が多くなると予想される。その一方で,実際に自分の体験 をもとに物語を作成しているとしても,そのことを明言する人は少ないかもし れない。本指標には,TATにおける自己言及と同様に,独断性や自己中心性が 反映されると考えられる。
16)主観的印象 反応において物語作成とは関係のない主観的印象が語ら れた場合に,聴覚刺激に対するものを「対刺激」に,刺激中の人物に対するも のを「対人物」に,参加者が作成した物語に対するものを「対物語」に評定す る。鈴木(1997)によると,TATにおける主観的印象は,反応に対する主体の