• 検索結果がありません。

59973330807500 ●●●●●ロ●1010011

ドキュメント内 原 著 (ページ 51-60)

153

の1項目が削除され,最終的に全17項目(α=、79)か らなる「虐待傾向尺度」が構成された。さらに,虐待類 似行為について内山(2000)の行為分類に基づいて分類 を行った。α係数を最大化する項目群を選択したとこ ろ,「ひどくつれる」の1項目が削除され,暴力系行為 (接触型)5項目(α=、74),暴力系行為(非接触型)4項 目(α=、47),遺棄系行為7項目(α=、58)に分類され た。暴力系行為(非接触型)については,信頼性が低い 傾向が見られたが,最低限の内部一貫性はあるとみな

し,以後の分析に用いることにした。

次に,自尊感情尺度については,全10項目のα係数 は.81であり,内部一貫性を高めるためにα係数を最大 化する項目群を選択し,全8項目(α=、84)の自尊感情 尺度が構成された。また,育児ストレス尺度5項目のα 係数は.80であり,α係数は最大で十分な信頼性が確認 された。親に対する愛着尺度15項目のα係数は.91で あり,同様にα係数の最大化を行い,全14項目を愛着 尺度とした(α=、93)。これらの結果から,関連尺度の 内部一貫性による信頼性は十分に確認されたといえる。

2.母親の認知的枠組みと各説明変数,虐待的行為との 相関

認知的枠組みと各説明変数との関連について相関を求 めて検討したところ,被害的認知は,育児ストレスと正 の相関を示し(γ=、39,p<、001),自尊感情と負の相関 を示した(γ=‑.40,p<、001)。また,否定的認知は,

育児ストレスと高い正の相関を示し(γ=、55,p<、001),

自尊感情と負の相関を示した(γ=‑.37, <、001)。被 害的認知および否定的認知と親に対する愛着との間には 有意な相関が認められなかったが(それぞれγ=、02, γ=‑.06,ともに〃.s,),肯定的認知は親に対する愛着 および自尊感情と正の低い相関を示した(γ=.19,,<

、01;γ=、16, <、05)。このことから,子どもが示す反 抗行動をネガティブに捉える「否定的認知」や子どもに 敵意があると捉える「被害的認知」には,育児ストレス と母親自身の自尊感情が関連することが明らかになっ た。一方,ポジティブに捉える「肯定的認知」には,母 親の親に対する愛着(心理的安定感)と自尊感情が関連 することが明らかになった。

次に,認知的枠組みと虐待的行為との関連について相 関を求めて検討したところ,虐待的行為に対して,被害 的認知が最も高い相関を示し(γ=、25,,<、001),否定 的認知とは低い相関を示した(γ=、15, <、05)。肯定的 認 知 と 虐 待 的 行 為 に は 有 意 な 相 関 は 見 ら れ な か っ た (γ=、01,〃.s、)。この結果,本研究で予測された母親の 認知の歪みと虐待的行為の関連性が示唆された。虐待的 行為の下位分類(暴力系行為:接触型,暴力系行為:非 接触型,遺棄系行為)については,分類によって虐待的 行為に関連する認知変数は大きく変わらない結果となっ 認知=、92,否定的認知=、93,肯定的認知=、88であり,

認知尺度が高い内的整合性を有していることが示唆され た。因子間相関については「被害的認知」因子と「否定 的認知」因子間にγ=、62の中程度の相関が見られ,「被 害的認知」因子と「肯定的認知」因子間にγ=−.00,「否 定的認知」因子と「肯定的認知」因子間にγ=、00の相関 が見られた。このことから,「被害的認知」と「否定的認 知」は比較的関連の強い認知特性であることが示唆され

(2)尺度の信頼性虐待傾向尺度については,まず,

項目別の平均値および標準偏差を算出した('mable3)。

その結果,「お尻をたたく」「大声でしかる」「泣いても 放っておく」の3項目のみ平均値3.0以上を示し,他の 項目に比べ平均値が極めて高く,母親が育児の過程で

「しつけ」の一環として行うことが多い日常的行為とし て捉えることが妥当と考えられた。そこで,本研究では これら3項目を除いた18項目を虐待傾向尺度として検 討を行うこととした。尺度の内部一貫性を確かめるため にα係数を算出し,内部一貫性を高めるためにα係数を 最大化する項目群を選択したところ,「異物を飲ませる」

Table3虐待傾向尺度の平均値と標準偏差

178620826948 ●●●●●● 000000

M S D

111111 278469 111

暴力系行為(接触型)

お 尻 を た た く 物を投げつける 頭をたたく,なぐる 物を使ってたたく ひ ど く つ れ る 顔を平手打ちにする 手 を た た く , ぶ つ

10 13 18 20 21

母親の被害的認知が虐待的行為に及ぼす影響

70825444865206 ●●●●●●●3121122

暴力系行為(非接触型)

大声でしかる 異物を飲ませる 押入れ等に入れる

子どもを傷つけるようなことを言う 一室に拘束する

家の外(ベランダ等)に出す

9050723659092358 ●●●C●●●●00100000

250662403415 ●●●●●● 411211

遺 棄 系 行 為 下着を替えない

自動車内等に放置する 泣いても放っておく 子どもを無視する 食 事 を 与 え な い 裸のままにしておく 風 呂 に 入 れ な い

子どもを家に置いたまま出かける

11jj1111 35691257 1111 8059777627020026 ●●●●●●●●11321111

154 発 達 心 理 学 研 究 第 1 7 巻 第 2 号

たため,以後の分析は虐待的行為全体のみを使用するこ ととした('Elble4)。

3.虐待的行為に影響を及ぼす認知を媒介としたモデル の検討

予測されたFigurelのモデルを検討するため,重回帰 分析を行った。仮説に従い,先行要因,認知的要因の各 変数を順次投入し,虐待的行為を最終的な目的変数とし て分析を行った。Figure2には,重回帰分析の結果,標 準偏回帰係数(β)が5%以上の水準で有意になったパ スを取り上げ,重決定係数(R2)とともにダイアグラム に示した。

(1)先行要因が母親の認知的枠組みに及ぼす影響被 害的認知に対しては,自尊感情から負のパス(β=‑

.32,,<、001),育児ストレスから正のパスが示された (β=、30,p<,001)。一方,親に対する愛着,子どもの 性 別 , 母 親 の 就 労 か ら は 有 意 な パ ス は 見 ら れ な か っ た (親に対する愛着:β=、00,子どもの性別:β=‑.05, 母親の就労:β=−.07;すべて".s、)。重決定係数(R2)

は.25(p<、001)であった。否定的認知に対しては,自 尊感情から負のパス(β=‑.25, <、001),育児ストレ スから正のパス(β=、47,,<、001),母親の就労から負 のパスが示された(β=‑.15,,<、05)。一方,親に対 する愛着,子どもの性別からは有意なパスは見られな かった(順にβ=、06,β=‑.09,すべて〃.s、)。重決定 係数(R2)は.39(,<、001)であった。肯定的認知に対し ては,自尊感情および親に対する愛着から正のパスが見 られ(それぞれβ=、16,β=、16,ともに <,05),母親

の就労から負のパスが示された(β=‑.16,,<、05)。

一方,育児ストレス,子どもの性別から有意なパスは見 られなかった(順にβ=、09,β=、06,すべて〃.s、)。重 決定係数(R2)は.09('<、01)であった。このことから,

子どもの反抗に対する母親の認知に影響を及ぼす要因に ついては,母親の育児ストレスが高い場合に「被害的」

または「否定的」認知が促進され,一方,母親の自尊感 情が高い場合には,「被害的」または「否定的」認知は低 減されることが明らかになった。また,母親の自尊感情

Table4子どもの行動に対する母溺の認知と関連変数との澗

否 定 的 認 知 被 害 的 認 知 肯定的認知

自尊感情育児ストレス親に対する

愛着

‑.37***

‑.40***

、16*

、55***

.39***

、05

、02

‑.06 .19*

全体 ,15* .25***

01

虐待的行為 暴 力 系 (接触型)

、03 .15

、00

暴 力 系 (非接触型)

、17*

17

‑.02

**やく.001*ツ<,01やく.05

3=、16

:する愛司上

先 行 要 因

否 p

(R2=、39***

被害的』,

R

回 、

?2.09*

認知的要因

結 果

**やく.001*やく.01やく.O5 Figure2先行要因・認知的要因'と虐待的行為に関するパス解析の結果

遺 棄 系

、20**

、24**

、04

母親の被害的認知が虐待的行為に及ぼす影響 155

の高さや親に対する愛着(心理的安定感)の高さが子ど もに対する肯定的認知を促進すること,母親の就労が否 定的認知および肯定的認知を低減することが示された。

(2)先行要因・認知的要因が虐待的行為に及ぼす影響 次に,虐待的行為に影響を及ぼす先行要因および母親 の認知的枠組みについて検討する。重回帰分析の結果,

虐待的行為に対しては,育児ストレス,被害的認知,子 どもの性別から正のパスが示され(順にβ=、31, <、001;

β=、20,p<、05;β=、19, <、01),親に対する愛着から 負のパスが示された(β=‑.16,p<、05)。一方,自尊 感情,否定的認知,肯定的認知,母親の就労からは有意 なパスは示されなかった(順にβ=−.05,β=‑.14, β=、03,β=、00;すべて".s、)。重決定係数(R2)は.20 (,<、001)であった。このことから,先行要因として検 討した育児ストレスは,虐待的行為を促進する重要な先 行要因にもなりうること,親に対する愛着は虐待的行為 を抑制する可能性が示された。また,「子どもの性別」

が虐待的行為に関連すること,母親の認知的枠組みの中 では,特に本研究で着目した「被害的認知」のみが虐待 的行為に正の影響を及ぼす可能性が示唆された。

考 察

本研究は,反抗期の子どもと母親の日常的関わりにお いて,母親の認知的枠組みが虐待的行為にどのように影 響するかについて検討するため,一般の母親のデータか ら連続的な特性として,臨床群における被害的認知を媒 介とした虐待メカニズムを推定することを主な目的とし ていた。まず,子どもの行動に対する認知尺度の因子分 析結果から,3〜4歳児の反抗的行動に対する母親の認 知には,「子どもの悪意を感じる」「子どもにバカにされ た気がする」など,行動の背後に敵意を感じたり,自分 を否定する行為であると被害的に捉える側面,「戸惑い を感じる」「つらく感じる」など,困惑したり否定的に捉 える側面,「子どもが成長している証拠だと受け止める」

「子どもらしいと思う」など,成長過程において必要な 行動であると肯定的に捉える3つの側面があることが明 らかになった。また,これらの認知的枠組みの中で,被 害的認知および否定的認知に対しては,育児ストレスが 促進要因として,自尊感情の強さが抑制要因として影響 することが示された。神谷(1999)の知見に見られるよ うに,本研究においても育児ストレスがネガティブな認 知の促進要因として影響していたことから,育児生活に よる疲労感や負担感は,母子の相互交渉において母親が 子どもの行動をネガティブに捉える傾向を強めると考え られる。また,母親の就労が「否定的」または「肯定的」

認知に負の影響を及ぼしていたことから,仕事をしてい る母親の方が専業主婦より子どもの行動に対して困惑し たり否定的に捉える傾向が少ないこと,一方で,子ども

の成長過程に必要な行動だと肯定的に捉える傾向も少な いことが明らかになった。肯定的認知に関しては,円滑 かつ歪みのない情動情報の読み取りと安定した愛着が正 の相関にあるという坂上・菅沼(2001)の知見に見られ るように,母親の自尊感情の高さや親に対する愛着(心 理的安定感)の高さが肯定的認知を促進することが示さ れた。

次に,先行要因および母親の認知的枠組みが虐待的行 為に及ぼす影響を検討した結果,先行要因として検討し た育児による母親のストレスや親に対する愛着は,虐待 的行為という行動段階へ直接影響し得ることが明らかに された。虐待相談には,育児の不安や困難に起因する母 親の訴えが多いこと(両角ほか,2000),子どもの行動 をネガティブに捉えやすくなると育児ストレスが高まる という悪循環を生み出す可能性もあることから,ストレ ス軽減や緩和に向けた対策,周囲のサポートがハイリス クの母親援助には不可欠であると考えられる。また,親 に対する愛着(心理的安定感)が虐待的行為を抑制する という結果は,自分の親との愛着関係が次世代の母子関 係に連鎖するという従来からの指摘(Cappell&Heiner,

1990)を支持するものであった。虐待予防を目的とした 集団精神療法の実践では,世代間連鎖の問題を抱える母 親のグループ療法の中で,参加者が「目の前の子どもに 怒っているのではなく,かつての加害者を子どもに置き 換え,または虐待されていた嫌な自分を子どもに投影し,

自分を叩くように子どもを叩いているんだ」と話す母親 がいることが報告されている(広岡,2003)。今後は,

ハイリスクの母親支援の中で,世代間連鎖の問題を抱え る母親に対してどのようなケアを行っていくことが有効 であるか,実践と検討の蓄積が期待される。

また,本研究では「子どもの性別」が虐待的行為に影 響を及ぼすことも明らかにされた。Starr(1988)は,「虐 待を受ける子どもの性別に関しては,9歳未満の低年齢 児では男女差が認められないが,より年長児では,男子 の方が女子よりも暴力を体験しやすい」と報告している が,本研究では3,4歳児の場合でも性差が現れた。わが 国における多くの実態調査では,これまで性差について は有意な差が見られていないことから(谷村,2004),

性別による虐待的行為の差については今後さらに検討を 行う必要があるだろう。

最後に,本研究で着目した母親の認知要因が虐待的行 為に及ぼす影響については,子どもに対する母親の否定 的認知は虐待的行為と低い相関を示したものの,重回帰 分析において有意な因果関係は見出されなかった。つま り,否定的認知は反抗期の子どもを持つ母親に多く経験 されるものであるが,必ずしも不適切な養育行為に結び つくものではないと考えられる。その一方,育児ストレ スの高さや自尊感情の低さからもたらされる被害的認知

ドキュメント内 原 著 (ページ 51-60)

関連したドキュメント