救急医療システム等を積極的に活用する。』とされていることから,都 道府県単位で開催される運営連絡協議会などで,精神科救急システムに ついて円滑な活用が図られるようあらかじめ検討しておくことが望まれ ます。
(3)警察との連携
地域生活中に,対象者が自傷他害行為に及ぶおそれがある場合等,緊 急に医療を要する状況が生じた際には,必要な協力を得るなど,警察と
連携する場合があります。 (佐賀)
従って,家族に関わる医療従事者や社会復帰調整官は,彼(女)らも 事件発生によりつらい経験をしていることを理解した上で,決して家族 を責めることなく,まずは家族の話をじっくり聞いて彼(女)らの気持 ちを受け止めることが大切です。その際に,家族にも医療が必要になっ ている可能性も念頭に入れておきましょう。
通院処遇が開始されてからも,家族は様々な心理的ストレスにさらさ れます。例えば被害者への対応については,事件の内容や被害者サイド の希望などにより異なってきますが,中には家族の損害賠償責任が問わ れていたり,あるいは家族の中に被害者がいたりして,家族にとっては 重いストレスとなります。加えて,「本人にどう接していいかわからない」
「早く自立して欲しいのに,遅々として進まない」と本人との関係につ いて悩む家族も少なくありません。更に,必ずしも家族全員が一丸となっ て処遇に関われるわけではなく,家族内部での考え方のズレが生じるこ ともあるでしょう。このような場合に家族のコミュニケーションがうま くいっていないと,家族関係の悪化に発展する可能性があります。従っ て,家族に対する心理的サポートは,家族関係の調整も含め継続的に提 供していく必要があります。
(2)教育的サポート
家族の心理的負担を大きくしている要因の一つとして,精神疾患や医 療観察法に関する知識不足が挙げられます。以前に比べると精神疾患に 関する情報は一般に広く知られるようになってきましたが,それでも癌 や糖尿病などに比べれば,まだ十分とは言えないのが現状です。そのた め,病気や障害に対する誤解や偏見も多くあり,そのような誤解や偏見 が結果的に家族を苦しめることにもなっています。
鑑定入院で初めて対象者本人に精神疾患があることを知る家族もいま すし,事件以前から医療機関にかかっていて,対象者の病気については 知っていたという家族もいます。いずれの場合でも,精神疾患がどうい うものなのか,その症状や治療等について正しく理解していることはと ても重要です。今のところ,精神科のある病院やクリニックでは,必ず しも精神疾患についての正しい情報が家族に提供されているわけではあ りません。ですので,事件前に医療機関にかかっていても必ずしも精神 疾患についての正しい知識を持ち合わせているとは限らないのです。
更に,医療観察法についての情報提供も重要です。通常の通院との相 違点,処遇に関わる人々,期間,処遇終了後の対応等,制度に関する情 報はわかりにくく複雑なので,丁寧に説明する必要があります。処遇開 始間もなくは,家族も緊張したり混乱したりしており,情報が伝わりに くい場合もあるので,繰り返し説明することも必要でしょう。家族はし ばしば「この先どうなるのかわからない」という不安を抱いています。
このような不安を軽減するためにも,丁寧な説明が求められます。
病気についての情報を伝える方法としては,指定通院医療機関のデイ ケアや,地域の保健所などで実施する家族心理教育を活用するとよいで しょう。通常,家族心理教育は複数の家族が集まって行われますので,
一度に複数の家族に情報提供ができるという利点があります。また,ほ かの家族の話を聞くことができるので,仲間作りの機会にもなり,孤立 感の軽減につながります。しかし,医療観察制度について言えば,一つ の指定通院医療機関を利用する対象者数が少なく,家族心理教育の場を 利用することが困難なこともあるでしょう。そのような場合は,指定通 院医療機関のソーシャルワーカーや社会復帰調整官が,個別に情報を提 供することが必要です。
(3)福祉的サポート
医療観察法対象者の家族の場合は,一般の精神障害者家族に対して自 分の経験を話しにくいという点や,先に述べた人数的な点から,家族の 仲間作りが容易ではないのが実情です。したがって,地域の保健所や指 定入院医療機関や指定通院医療機関が協力して,孤立している家族が他 の家族と知り合える機会(社会資源)を作り出していく工夫をしていく ことが大切です。
また,家族の中には対象者との関わり以外で福祉的なサポートを必要 としていることも多くあります。例えば,高齢で外出がままならない場 合,自分自身も病気や障害を抱えている場合,他の家族を介護している 場合,小さい子どもがいる場合,経済的な支援が必要な場合等が考えら れます。特に家族が高齢であると,車で連れて行ってもらう,代わりに 買い物をしてきてもらう,重い物を持ってもらうなど通院処遇を受けて いる対象者に日常生活の面で頼ることもしばしばあります。対象者が家 の手伝いをすること,親子がお互いに気遣い合うことは,必ずしも悪い
ことではありませんが,場合によっては親子の関係が密接になりすぎて しまうことも考えられます。高齢者福祉や児童福祉といった様々な領域 のサービス提供機関と連携しながら,包括的なサポートを提供していく ことが大切です。
以上家族支援の三つの側面について見てきましたが,これらは責任の 所在を明確にした上で,社会復帰調整官を含む様々な関係機関が協力し て提供していくようになります。また,移行通院の場合は入院医療機関 から通院医療機関へのバトンタッチがスムーズにいくような努力も大切 でしょう。
最後に,家族が本人と対立している場合は,家族を協力者として安易 に位置付けないという点に注意する必要があります。むしろ家族が必要 としているサポートを提供できるような配慮が必要です。不足している 社会資源を作り,家族への支援体制を充実させることが今まさに求めら
れているのです。 (深谷,伊藤)