緊急時の対応については,対象者参加の下で検討し,対応方法や連絡 体制などについて関係機関皆が共有しておくことが重要です。病状悪化 時における緊急時の対応について,想定される実際の流れについて概略 を示します。
まず保護観察所その他の地域処遇に携わる関係機関は,ケア会議にお いて,症状悪化時における緊急時の対応について協議を行い,あらかじ め緊急時における基本的な対応方法を定め,方針や連絡先を共有します。
処遇の実施計画にその内容を明記して,対象者及びその家族等の関係者 に対して説明し,対応方法について理解を得るよう努めます。
そして,緊急時における対象者等からの相談窓口を設定し,保護観察
所は,夜間,休日の保護観察所・関係機関への連絡先を家族及び関係機 関に伝えておくなど,連絡及び協議できる体制をあらかじめ整備します。
病状悪化等医療に係る対応を要する相談については,医療を担当する指 定通院医療機関が中心となって対応することとなります。
対象者の病状の悪化や医療中断など,緊急に対応を要する状況を認め た場合には,関係機関相互に速やかに連絡し,情報の共有を図り,あら かじめケア会議で定められた対応方法に沿って,対象者に適切な精神科 医療を提供するとともに,入院が必要な場合には,精神保健福祉法に基 づく入院を適切に行うなど,必要な医療を確保することとなります。
また精神保健福祉法に基づき入院している場合において,その適切な 介入や治療によっても短期間では病状が改善されないと判断される場合 には,保護観察所は,必要に応じケア会議を実施するなどして本制度の 入院による医療の必要性について協議し,その結果に基づき,必要な場 合には本制度による入院の申立てを行うことも想定しています。
病状悪化における対応は,地域支援の中で,本人の症状悪化が見られ たとき,早期の段階で察知し,関係機関と連携して対応できる体制(初 動態勢)の整備が大切です。本制度では,関係機関と協力して,本人の 病状悪化を招かないための支援体制作りを目指しています。
(1)クライシスプラン
緊急時の対応については,処遇実施計画書中の(5)緊急時の対応に 基づく対応の別紙でクライシスプランとも呼ばれる形で定めることが多 くあります。具体的には,過去の病状悪化時の状況等を振り返り,「○
○の状態になったらA機関に相談し,関係者と一緒に臨時受診する」や
「△△という考え(妄想)の下に確認行為した場合は,緊急のケア会議 を開催し,休息入院を検討する」「○○の状態になったら,精神保健福 祉法上の入院について検討する。保護観察所は関係機関と協議の上入院 の申立てをすることもある」等といった段階的な対応を具体的に文章と して明記し,共有しています。クライシスプランの検討に当たっては,
対象者の生活の何が病状悪化の誘因になりそうか,前駆症状は何か,そ の症状が現れたときに対象者はどんな対処法を持っているか,家族や関 係機関はどう対処すべきかなどをあらかじめ共有しておく必要がありま す。
場面 病状悪化サイン 本人の対処 担当者及び連絡先 家族及び支援者の対応
①
・ 生活のリズムが 崩れる(昼間に 眠たくなる,身 体 が だ る く な る)
・ 精神保健福祉セン ターや保健所のス タッフに相談する
・ 精神保健福祉センター(○
○)
⇒000−000−0000
・保健所(○○)
⇒000−000−0000
・ 家族の対処:関係 機関に相談する
・ 支援者の対処:関 係機関に連絡する
②
・ 薬を飲みたくな くなってくる
・ 不眠が2日間続 く
・ 病院のスタッフに
相談する ・ 病院(主治医:○○,ケー スワーカー:○○)
⇒000−000−0000
・病院に連絡する
・ 受診に付き添い,
先生との話しを支 援する
・ 不眠の状況をよく 聞き,原因となる 問題を考える
・ 適切な薬を処方す る
③
・ 受診したくなく なる
・病院に相談
・ リハセンターのス タッフに相談
・ 保健福祉センター のスタッフに相談
・保護観察所に相談
・ 病院(主治医:○○,ケー スワーカー:○○)
⇒000−000−0000
・ 精神保健福祉センター(○
○)
⇒000−000−0000
・保健所(○○)
⇒000−000−0000
・保護観察所(○○)
⇒000−000−0000
・ 受診したくない気 持ちについて十分 に話し合う
・ 病院に連絡する
・ 受診に付き添い,
先生との話しを支 援する
・訪問回数を増やす
④
・ 確認行為をした くなる (嫌がらせをさ
れているような 気がする,見張 られているよう な感じがする,
噂をされている ような感じがす る)
・病院に相談
・保護観察所に相談
・ リハセンターのス タッフに相談
・ 保健福祉センター のスタッフに相談
・ 病院(主治医:○○,ケー スワーカー:○○)
⇒000−000−0000
・保護観察所(○○)
⇒000−000−0000
・ 精神保健福祉センター(○
○)
⇒000−000−0000
・保健所(○○)
⇒000−000−0000
・ 周りが気になる気 持ちや確認をした くなる気持ちにつ いて十分に話し合 う
・ 本人・家族を入れ ケア会議を開催す る
⑤
・ 確認行為をした (疑った相手に 話 し か け る,
疑った相手をビ デオカメラで撮 影する)
・ 保護観察所に報告 する
・保護観察所(○○)
⇒000−000−0000
・ 保護観察所:病院 と 相 談 し 任 意 入 院・医療保護入院 を検討する。裁判 所と医療観察法の 入院を検討する。
・ 家族:夜間時に保 護観察所へ連絡す る場合は緊急連絡 先へ電話する
〈夜間(午後5時から次の日の午前9時まで)と祝祭日の相談について〉
病院に連絡する(000−000−0000)※当直の先生が対応する。
表5 クライシスプラン例
当初審判において通院決定となった対象者については,鑑定結果以外 の情報が少ないことからすぐに上記のような具体的なクライシスプラン の作成を行うことが困難な場合があります。その場合は,緊急時にどん な機関がどんな相談を受けることができるかについて確認し,病状悪化 時には精神保健福祉法上の入院を活用すること,病状悪化時に必要と認 めた場合,保護観察所は裁判所に入院の申立てをすることを当面のクラ イシスプランとし,指定通院医療機関や各関係機関がそれぞれ関係を構 築していく中で収集した情報をケア会議で共有しながら,見直しを図っ ていくことになります。
(2)精神科救急システム
地域処遇中,緊急に対応を要する状況を認めた場合,処遇の実施計画 に基づく連絡・情報共有の後,指定通院医療機関による評価・判断を受 け,保護観察所とも協議の上で,精神科救急医療等の活用を検討する場 合があります。
精神科救急医療活用については,指定通院医療機関主治医の意見・協 議を基に,精神保健福祉法上による対応を行い,受診に繋げることが望 まれます。
通院処遇ガイドラインにおいても,対象者の病状の悪化が認められた 場合には,『ケア会議等であらかじめ定めた方針に従い,既存の精神科
救急医療システム等を積極的に活用する。』とされていることから,都 道府県単位で開催される運営連絡協議会などで,精神科救急システムに ついて円滑な活用が図られるようあらかじめ検討しておくことが望まれ ます。
(3)警察との連携
地域生活中に,対象者が自傷他害行為に及ぶおそれがある場合等,緊 急に医療を要する状況が生じた際には,必要な協力を得るなど,警察と
連携する場合があります。 (佐賀)