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2.今後の課題

ドキュメント内 橡Taro13-FDアンケート (教員) (ページ 89-92)

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この度の全国調査では 日本における教育改善活動を中心とした教育活動の実態調査を 学長・学部長・教員を対象として、アンケート調査手法によって行っている。こうした調 査全体の中で、本報告が対象にして分析したのは最大の規模を誇り、全体の中で中心とな る教員調査である。その意味で、調査結果に具現した各種の傾向や特徴は注目すべき事柄 の各々である。序章において、FDの制度化に生じる各種の葛藤を指摘したが、また、い くつかの問題に関しては上記のまとめの部分において言及したが、それらのすべてに関し て論じる紙幅がないので、今回の調査結果を踏まえて総括的に若干の論点に言及してみた いと思う。

第1に、14 年前に比較して、研究志向から教育志向への転換が教員全体の意識の上で進

行している事実は、改めて注目すべきである。日本の高等教育が明治以来一貫して研究志

向を追求してきており、世界的にも研究志向型を明確に示してきた事実が、ここに至って

転換期を迎えていることを示している点で、極めて画期的出来事であると言わなければな

らない。

このことは、研究志向と教育志向がシステム的にも、機関的にも、組織的にも、意識的 にも緊張や葛藤を生じている事実を示唆していると読めるのではあるまいか。とりわけ教 員の意識に限れば、研究志向がタテマエでもホンネでもあった時代から、タテマエが先行 して教育志向が意識調査に浮上しているのにもかかわらず、ホンネの部分は依然として研 究志向にあるという時代への動きが始まっている。システムでのFDの法的、政策的、業 績的制度化の開始、それの機関や組織への刻印、さらには教員の意識への内面化が急速に 進行し始めているために、緊張や葛藤が惹起されざるを得ない。教育志向であるにもかか わらず、教育改善に熱心ではない意識、教育改善を強調しながら、実際には抵抗がある意 識、研究志向と教育志向への分化過程を辿る報賞体系の動き、といった現実が露呈してい るのである。詳細な分析が必要である。

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第2に トップダウンとボトムアップの葛藤が深まっている事実を指摘せざるを得ない 学長篇では、学長のFDへの期待と実際の教員の実践との間にギャップがあることを学長 自身が指摘している事実が明らかになった。今回の教員調査は教員自身が自らの意識を介 してFDの期待と実際の間の関係を明らかにした。この両者の意識の距離を測定するなら ば、学長の指摘は当たらずといえども遠からずとみなせるに違いない。似通った結果は、

同じ大学の価値、文化、風土、土壌、空気が学長にも、教員にも作用している現実を考え れば当然のことである半面、そこにはトップダウンとボトムアップの価値、文化、風土、

土壌、空気の相違が反映されていることも否めない事実である。例えば、学士課程の教育

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目的に関する両者の相違には 学長と教員のベクトルの違いが反映されていると介される 学士課程に教養教育を期待する学長と、専門教育を期待する教員の間に横たわる意識の乖 離は、教育改革を志向する狭義のFDの制度化にとって重要な問題を提起している。さら なる分析が必要であろう。

第3に、アメリカ型FDと日本型FDの葛藤の問題がある。上で述べた2つの問題は、

いずれもこの舶来型と土着型のFDに直接間接関わっている問題である。研究志向は戦前 から日本の大学へ輸入され、定着したので、130 年間にあたかも日本の土着型に見えるほ ど同化した価値、文化、風土である。これをアメリカのFDに内包される狭義のFDによ って改革を図ることが目下の懸案となっている以上、FDの制度化は両者の対峙、対立、

同化の過程を意味するのは自明である。1990 年代から開始されたFDの制度化は、さしあ

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たって対峙 対立の時代であり あるいはそれを克服して同化を模索する時代に該当する 制度的にも、意識的にもタテマエとホンネの間の動揺が生じるのは不思議ではない。

トップダウンとボトムアップの葛藤の問題も伝統と革新の葛藤の問題である。概して学

長は前者、教員は後者の動きである。狭義のFDの制度化に熱心なのは、学長であり、そ

の意識には教育改革への期待が強く見受けられる。これに対して、教員はかなり革新的な

部分も見られるが、概して教育への革新性は弱い傾向を示している。両者の間の角逐が各

機関の中で日常的に発生していることが、今回の学長調査、教員調査を比較するとき察知 されることが理解できると言って過言ではあるまい。今後これらの事実を学長、学部長、

教員の各回答を詳細に分析して、そのような現状を解明して、FDの制度化に横たわる問 題点を踏まえた改革策を考えることが課題となる。

第4に、すでに学長篇において指摘したように、様々な課題があることを再度指摘して おきたい。調査項目の不適切さなどのアンケート調査自体にも改善すべき余地が多々残さ れていると考えられるが、大学教育活動の質的保証を行う仕組み作りに際して、課題が残 されている。

(1)本報告で行った教員調査の分析結果を他の学長、学部長調査と比較し、三者の意 識の違いを明らかにし、大学機関内にある意識の構造を明らかにする必要がある。

(2)大学評価・学位授与機構や大学基準協会のような国レベルや大学以外の組織レベ ルでの教育改善活動の情報収集に努めることが肝要である。さらに、対象となった大学機 関や大学教員に対して質問調査票では得られない情報を補完するためにインタビュー調査 などによって詳細なデータを収集することも必要である。

(3)教育の質的保証の観点から教育の構成要素の中で本調査の対象となっている教員 以外の学生やカリキュラムなどを対象とした調査・研究を進めていくことが肝要である。

教育を支える人的資源としては、教員以外に事務職員の資質開発=SDとの連関性を考慮 することは欠かせないからである。教員・学生・カリキュラムという授業の3点セットの 中軸たる学生の研究が補完されることは不可欠である。同様に、学生の教育における到達 目標や指標に関する研究、あるいは教育内容・方法に直接関係するカリキュラムの研究が 重要であることは、論を待たない。

(4)外国の大学や教員を対象としたFDの制度化の比較研究を欧米やアジア諸国など を対象に行うことが必要である。これらの比較研究は、日本の大学教育改善を進める上で 重要な知見を得るためにも重要である。アメリカ型FDに対して、日本型FDが成立する とすれば、中国型、韓国型、タイ型などのFDも成立するはずであり、システム間の類似 性や相違性を比較することによって、FD制度化の国際比較を行い、それによって日本型 の長所や短所を明らかにする作業が必要と考えられる。

(5)この度の調査でも 14 年前の同様の調査との比較によって、FDを基軸とした教

育改善の問題点、課題などが明らかとなり、比較の重要性が明らかになったとおり、教育

改善活動の有効性を探るためには、数年間隔の継続調査が必要であろう。改革や改善のや

りっぱなしではなく、絶えず点検・評価し、有効な改善手法の構築に努めなければならな

い。

ドキュメント内 橡Taro13-FDアンケート (教員) (ページ 89-92)

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