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1)データ

ドキュメント内 最終報告書.PDF (ページ 55-69)

本推計で使用したデータ(いずれも四半期)は以下の通りである。なお、推計期間は1973 年第2四半期〜1999年第2四半期とした。

①  実質GDP

日本の実質GDP(季節調整済)を経済企画庁『国民所得統計』よりとった。対数階差系 列を使用。

②  経常収支

経済企画庁『国民所得統計』における日本の実質GDP の対数値から実質国内需要の対 数値を引いたものとした。共に、季節調整済み系列である。

③  財政支出

経済企画庁『国民所得統計』における実質政府最終消費支出と実質公的固定資本形成を 加えたものを実質GDPで割り、その対数値をとった。いずれも季節調整済み系列である。

④  マネーサプライ

日本銀行『金融経済統計月報』におけるM2+CDをとり、これの対数階差系列を使用。

⑤  実質実効為替レート

日本銀行統計による。これは、日本の主要輸出相手国・地域の名目為替レートを当該相 手国・地域の生産者物価と日本の生産者物価との比を乗じて実質化し、当該相手国・地域 毎の実質為替レートを算出。これを日本の輸出に占める各地域のウェイトで加重幾何平均 したうえ、基準時点(73/3)を100として指数化した系列。数値の上昇が円の増価を示す。

⑥  実質長期金利差

IMF “International Financial Statistics”より日米の名目長期金利をとり、それぞれの 生産者物価にて実質化したものの差をとった。

 

 

図表  III-12  各時系列データの推移 

-5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

73:2 75:2 77:2 79:2 81:2 83:2 85:2 87:2 89:2 91:2 93:2 95:2 97:2 99:2

実質GDP マネーサプライ

前年比、%

-5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

73:2 75:2 77:2 79:2 81:2 83:2 85:2 87:2 89:2 91:2 93:2 95:2 97:2 99:2

財政支出(公需) 経常収支(外需)

対GDP比、%

90.0 100.0 110.0 120.0 130.0 140.0 150.0 160.0

73:2 75:2 77:2 79:2 81:2 83:2 85:2 87:2 89:2 91:2 93:2 95:2 97:2 99:2 -15.0 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0

実質実効為替レート(左) 日米実質長期金利差(右)

73/3=100

2)推計結果

(1)拡張的財政政策の効果 

ここでは、財政支出の増加があった場合の各変数へ与える影響を分析する。図表Ⅲ-13 には、金利、経常収支、為替レートおよび GDP のインパルス応答関数を示した(横軸は 四半期)。まず F 値を見ると、為替レートを除いていずれも統計的に有意である(この推 計に対応するF分布上側上位5%点=2.199)。為替レートについても F値は極めて低いと いうわけではないことから、財政支出の変動が各変数について、(グランジャーの意味で)

「原因」となっていることが確認される。

  拡張的財政政策がうたれた場合の金利のインパルス応答関数をみると、およそ4四半期 目まで上昇圧力がかかっていることが確認され、モデル結果と整合的である。経常収支の インパルス応答関数は、かなり長期にわたって減少方向へ動いているが、これもモデル結 果と整合的である。為替レートについては、3四半期目に上昇(=円の増価)方向へ動い ておりモデル結果と整合的であるものの、それ以降は減少してしまっている。最後にGDP への影響をみると、基本的にはモデル結果同様に増加方向へ動いているものの、オシレー トしているのが特徴的である。

  全体として、モデルとほぼ整合的な結果が得られているものの、為替レートについては、

財政政策がうたれた後1年以上経ってしまうと、モデル結果とは逆方向へ動いてしまう結 果となった。

図表  III-13  拡張的財政政策の効果(インパルス応答関数) 

①金利への影響(F値=3.329)

②経常収支への影響(F値=3.362)

-5.00 0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

-0.10 -0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00

③為替レートへの影響(F値=1.600)

④GDPへの影響(F値=2.610)

(2)拡張的金融政策の効果 

図表Ⅲ-14 には、マネーサプライが増加したときの金利、経常収支、為替レートおよび GDPのインパルス応答関数を示した。F値を見ると、金利・GDPについては統計的に有 意であるが、経常収支・為替レートについては有意でない。つまり、マネーサプライの変 動は経常収支と為替については、変動の「原因」とはいえない結果となった。

金利のインパルス応答関数をみると、上昇圧力がかかってしまっている。モデル結果と 非整合的であるが、これは、マネーサプライの増加が景気に対して遅行的であった場合、

景気上昇局面では一般に金利も上昇していくために、マネーと金利が正の相関を持ってし まうことが理由であると考えられる。

経常収支のインパルス応答関数をみると、統計的に有意でない上にモデルが示唆する方 向とは逆へ動いている。為替レートについては、3四半期目のみ円が減価する方向へ動い ており、部分的にモデル結果と整合的である。GDPへの影響をみると、一貫してプラス方 向へ動いており、これはモデル結果と整合的であった。

総じて、金融政策については、モデルと整合的な結果は得られなかった。これは、モデ ルの主要変数である金利が、マネーサプライの増加に対してモデルの想定とは逆方向へ動 いてしまうことに起因するとみられる。

-1.00 -0.80 -0.60 -0.40 -0.20 0.00 0.20 0.40

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

-0.03 -0.02 -0.01 0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

図表  III-14  拡張的金融政策の効果(インパルス応答関数) 

①金利への影響(F値=2.161)

②経常収支への影響(F値=0.880)

③為替レートへの影響(F値=0.356)

④GDPへの影響(F値=4.508)

-40.00 -20.00 0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

-0.30 -0.25 -0.20 -0.15 -0.10 -0.05 0.00

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

-1.00 -0.80 -0.60 -0.40 -0.20 0.00 0.20 0.40 0.60

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

(3)期間別  因果関係の存在の有無 

  以下の図表には、①1973年第2四半期〜1999 年第2四半期、②1973年第2四半期〜

1985年第2四半期、③1985年第3四半期〜1999年第2四半期、の区分で求めたF値を 整理した。いずれの期間についてもマネーサプライの変動よりも、財政支出の変動が各変 数に大きな影響を与えていることが確認できる。

  プラザ合意前(②)と合意後(③)を比べてみると、多くの変数間の相互影響関係が薄 まっているように見受けられる。ただし、経常収支については、各変数に対してその変動 が大きな影響を与えているのが注目される。実際にマーケットでは、経常収支が材料とな って為替レートが変動する局面が多々あり、その意味では事実と整合的である。 

   

図表  III-15  F 値総括表――グランジャー因果関係の存在の有無 

①推計期間:1973年第2四半期〜1999 年第2四半期

         

②推計期間:1973 年第 2 四半期〜1985 年第 2 四半期   

         

③推計期間:1985 年第 3 四半期〜1999 年第 2 四半期   

         

注1:縦軸は独立変数(「原因」)、横軸は従属変数(「結果」)である。 

注2:濃いグレーは 1%水準で、うすいグレーは 5%水準で、それぞれ因果関係の存在が有意であること を示す。 

 

GDP 経常収支 財政支出 マネーサプライ 為替レート 金利差

GDP - 1.404 6.887 1.388 1.540 2.707

経常収支 2.744 - 1.726 1.474 1.998 0.363

財政支出 2.610 3.362 - 1.244 1.600 3.329

マネーサプライ 4.508 0.880 4.331 - 0.356 2.161

為替レート 7.806 2.167 5.231 3.047 - 6.023

金利差 0.993 0.393 1.624 1.057 0.485

-GDP 経常収支 財政支出 マネーサプライ 為替レート 金利差

GDP - 1.414 6.516 0.914 0.709 3.375

経常収支 2.413 - 1.610 1.557 0.773 0.798

財政支出 3.150 3.954 - 5.800 0.801 3.385

マネーサプライ 3.631 1.170 3.340 - 0.056 1.447 為替レート 14.272 1.538 4.826 4.095 - 3.902

金利差 0.462 0.240 0.767 0.936 0.210

-GDP 経常収支 財政支出 マネーサプライ 為替レート 金利差

GDP - 0.838 2.133 1.078 0.582 0.522

経常収支 3.370 - 3.348 1.847 2.822 1.855

財政支出 0.941 1.953 - 0.336 1.442 0.958

マネーサプライ 2.344 0.559 1.278 - 0.375 0.542

為替レート 1.007 1.512 1.617 1.739 - 0.925

金利差 1.319 0.700 1.875 0.615 1.919

-図表  III-16  F 値表 

注:TSPにより計算。

上側点 F(6,92) F(6,36) F(6,44) 10% 1.839 1.945 1.913

5% 2.199 2.364 2.313

1% 3.004 3.351 3.243

参考1:マーシャル=ラーナー条件について

為替レート水準の変化が貿易収支に与える影響の伝統的な分析方法として、輸出入需要 の価格弾力性にもとづいた「弾力性アプローチ」が挙げられる。ここでは弾力性アプロー チを用いて、為替レートが減価したときに貿易収支(経常収支)が改善する条件を求める。

日本(j)と米国(a)からなる二国二財経済を考え、二国間で貿易が行われていると考 える。その際、比較優位論に従って、日本は財1の生産及び輸出に特化し、米国は財2 の生産及び輸出に特化していると考える。

この状況では、以下の関係が成立している。

(ドル為替需要)=(日本のドル建て輸入額)

(ドル為替供給)=(日本のドル建て輸出額)

この関係を利用し、ドル為替需要の価格弾力性

ε

Dとドル為替供給の価格弾力性

ε

S

以下のように定義する。

e d

M d p d e

d M p d e

de

M p M p d

D ln

ln ln

ln )

| ln(

/ / )

| ( 2 2 2 2 =− 2 2 =− 2+ 2

ε (1)

e d

X d p d e d

X p d e

de X p X p d

S ln

ln ln

ln )

| ln(

/ / )

| ( 1 1 1 1 = 1 1 = 1+ 1

ε (2)

ここで、添え字1,2は財を示し、

e

は円建て為替レート、価格pはドル建て、X,M は それぞれ日本の輸出数量および輸入数量を示す。

さて、日本の輸入需要の価格弾力性ηjは、

2 2 2

2

ln ln

ln )

ln(

ln

p d e d

M d ep

d M d

j ≡− =− +

η (3)

と定義され、米国の輸入需要の価格弾力性

η

aは同様に、

1 1

ln ln

p d

X d

a ≡−

η (4)

と定義される。

更に日本の輸出供給の価格弾力性χjは、

1 1 1

1

ln ln

ln )

ln(

ln

p d e d

X d ep

d X d

j ≡− =− +

χ (5)

と定義され、同様に米国の輸出供給の価格弾力性

χ

aは、

2 2

ln ln

p d

M d

a

χ (6)

と定義される。

次に、(3)を(6)で割ると、

2 2

ln ln

ln p d e d

p d

a j

− + χ =

η

となり、これを

d ln p

2について解くと、

e d p

d

a j

j ) ln

( ln 2

χ η

η

− +

= (7)

となる。

(7)を(6)に代入して、

d ln M

2について解くと、

e d M

d

a j

j

a ) ln

( ln 2

χ η

η χ

− +

= (8)

となる。

こうして得られた(7)と(8)を利用すると、ドル為替需要の価格弾力性

ε

Dは、

a j

a j

D η χ

χ ε η

+

= ( +1)

(9)

と表せる。

同様に、(5)を(4)で割り、

d ln p

1について解くと、

e d p

d

j a

j ) ln

( ln 1

χ η

χ

− +

= (10)

となる。

(10)を(4)に代入し、

d ln X

1について解くと、

e d X

d

j a

j

a ln

ln 1

χ η

χ η

= + (11)

が得られる。

こうして得られた(10)と(11)を利用すると、ドル為替供給の価格弾力性

ε

Sは、

j a

a j

S η χ

η ε χ

+

= ( −1)

(12)

と表せる。

さて、日本のドル建ての貿易収支

NX

は、

2 2 1

1

X p M

p

NX = −

(13)

である。

これを全微分すると、

) ( )

( p

1

X

1

d p

2

M

2

d

dNX = −

となるが、(1),(2)より、

e d X p X

p

d (

1 1

) = ε

s 1 1

ln

(1’)

e d M p M

p

d (

2 2

) = ε

D 2 2

ln

(2’)

で あ る の で 、 こ れ ら と(9),(12)を 利 用 し て 整 理 し 、 当 初 の 貿 易 収 支 が バ ラ ン ス

p

1

X

1

= p

2

M

2)していたとすると、次の表現が得られる。

1

] 1

) )(

(

) 1 (

) 1 [ (

ln p X

e d dNX

a j j a

a j a j a

j a j

χ η χ η

η η χ χ χ

χ η η

+ +

− + +

+

= + (15)

為替レートの切り下げにより貿易収支が改善する(

dNX / d ln e > 0

)ための条件は、

) 0 )(

(

) 1 (

) 1

( >

+ +

− + +

+ +

a j j a

a j a j a

j a j

χ η χ η

η η χ χ χ

χ η

η (16)

となる。これは「ビッカーダイク=ロビンソン=メツラー条件」として知られる。

  さて、両国の輸出供給の価格弾力性が無限大である(即ち、輸出財価格が各国の通貨建 てで固定されている=古典派の標準的な仮定)場合に為替レートが切り下げられた場合 に貿易収支が改善する条件は以下のように求めることが出来る。

ドキュメント内 最終報告書.PDF (ページ 55-69)

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