1.福岡市在住高齢者の居住動向
(1)目的
高齢者の居住に関するニーズについては、2007 年からの団塊の世代の退職が始まる中で的確に把握 する必要がある。そのための高齢者居住者へのアンケート及びヒアリング調査を実施し、実際の居住動 向を分析し、今後の高齢者の居住動向の予測をするための判断材料とするものである。
(2)調査対象地区の抽出
福岡市の主要な住宅地において、居住地選択と高齢期の生活意向に関するアンケート及びヒアリング 調査を行った。
対象地区は、都心からの距離、都市機能の集積度(都心、副都心、郊外 1、郊外 2)と高齢者居住状 況から代表的な 4 地区を抽出した。具体的対象地区は、65 歳以上の転入者が 5%以上で、区別転入転出 状況の比較的高い地区を選出した。また、都心副都心については、転入率が比較的高く、コミュニティ が形成されている地区を選定した。郊外については自然発生的な住宅地として有田校区を、計画的な住 宅地として柏原校区をそれぞれ選定した(図 3-1)。
(3)アンケートおよびヒアリング結果 1)高齢者へのヒアリング実施概要
高齢者へのヒアリングは、表 3-1 のとおり実施した。
表 3-1 ヒアリング実施概要 (人)
アンケートと ヒアリング
アンケート のみ
実施日 校区 場所 所属
男性 女性 計 男性 女性 計
総計
2007 年 4 月 12 日
柏原 柏 原 公 民館
絵 手 紙 サ ー ク ル
0 10 10 0 0 0 10
2007 年 4 月 14 日
柏原 柏 原 公 民館
男 の 料 理
11 0 11 0 0 0 11
2007 年
4 月 16 日 百道浜
百 道 浜 公民館
老 人 ク
ラブ 5 3 8 7 5 12 20
2007 年 4 月 24 日
有田
有 田 公 民館
有 田 大 学
2 9 11 15 79 94 105
2007 年
4 月 24 日 博多
奈 良 屋 公民館
奈 良 屋 まちづく り 協 議 会
7 5 12 0 0 0 12
計 25 27 52 22 84 106 158
2)高齢者へのアンケート結果
アンケート調査は、資料編 126 ページの調査票により実施した。
ここではアンケートとヒアリングの両方を実施した標本数で分析した。
①校区
アンケートとヒアリングの被験者数は 52 人で、柏原小校区 40.4%、博多小校区 23.1%、有田小校区 21.2%、百道浜小校区 15.4%の標本数である(表 3-2)。
②性別
男性 48.1%、女性 51.9%である(表 3-2)。
③年齢
年齢は、60 歳代 38.5%、50 歳代 28.8%、70 歳代 26.9%、80 歳代 5.8%の順となっている(表 3-2)。
④世帯構成
世帯構成は、夫婦のみが 51.9%と最も多く、次いで親と子の二世代 32.7%となっている (表 3-2)。
⑤住宅形態
住宅形態は、持ち家(戸建て)が 61.5%と多く、次いで持ち家(マンション)26.9%となっている。
賃貸マンションや公営住宅は 7.7%と少ない(表 3-2)。
就労の有無では、働いていないが 61.5%、働いているが 38.5%となっている (表 3-2)。
⑦居住期間
居住期間は、10~20 年未満が 32.7%を占め、次いで 10 年未満の 38.5%であり、20 年未満が全体の 71.2%
である(表 3-2)。
⑧現在のところに移った理由
現在のところに移った理由では、「環境の良さ」が 67.3%と最も多く、次いで「生活の便利さ」が 38.5%、
「資金、資産、仕事の関係」が 21.2%となっている。「環境の良さ」や「生活の便利さ」を重要と考えている (表 3-2)。
⑨前居住地
前居住区としては、南区が 17.3%で最も多い。次いで城南区 15.4%、早良区 11.5%の順となっている(表 3-2)。
⑩住み替え意向
住み替え意向では、「今のところに住み続ける」が 82.7%と突出している。
「住み替える」と答えた人は 5.8%、「住み替えたいたいができない」が 9.6%であり、住み替えを考えてい る人は少ない(表 3-2)。
⑪住み替え意向の理由
住み替え意向の理由では、生活の便利さが 73.1%と突出している。次いで「友人、知人などの人間関 係や愛着」が 36.5%、「環境の良さ」が 34.6%となっており、「現在のところに移った理由」と多少順位が 逆転しており、高齢者にとっては、環境より利便性と地域コミュニティが重視されている傾向がある (表 3-2)。
福岡市内居住者(高齢者)への意識調査(平成 19 年 3 月~4 月・実施)
・対象校区 都心部(博多区博多校区)
副都心(早良区百道浜校区)
郊外住宅地(早良区有田校区、南区柏原校区)
・調査対象者 男性 47 人、女性 111 人、計 158 人 ・住み替え動機
生活の便利さ(駅に近い、病院が近い、店が近い等) 73.1%
友人、知人等の人間関係 36.5%
環境の良さ 34.6%
・住み替え意向 今のところに住み続ける 82.7%
・ヒアリング結果
・博多・・・・・地元土着住民が多く、生活の便利さから住み続けたい。
・百道浜・・・比較的ニュータウンで、定住住民が多い。生活も便利であり、住み続けたい。
・有田・・・・・地下鉄開通で、利便性向上。住み替える必要がない。
・柏原・・・・・車がないと不便。生活の利便性に問題あり。住み替えたい。バス停も近いし、
表 3-2 アンケート結果表 校区
項目 回答者数 割合
柏原 21 40.4%
百道浜 8 15.4%
有田 11 21.2%
博多 12 23.1%
計 52 100.0%
性別
項目 回答者数 割合
男性 25 48.1%
女性 27 51.9%
計 52 100.0%
年齢
項目 回答者数 割合
50歳代 15 28.8%
60歳代 20 38.5%
70歳代 14 26.9%
80歳代 3 5.8%
90歳代 0 0.0%
計 52 100.0%
世帯構成
項目 回答者数 割合
1.単身 4 7.7%
2.夫婦のみ 27 51.9%
3.親と子の二世代 17 32.7%
4.親と子と孫の三世代 3 5.8%
5.その他 1 1.9%
計 52 100.0%
住宅形態
項目 回答者数 割合
1.持ち家(戸建て) 32 61.5%
2.持ち家(マンション) 14 26.9%
3.賃貸マンション 3 5.8%
4.公営住宅 1 1.9%
5.その他 2 3.8%
計 52 100.0%
就労の有無
項目 回答者数 割合
1.働いている 20 38.5%
2.働いていない 32 61.5%
計 52 100.0%
居住期間
項目 回答者数 割合
10年未満 15 28.8%
10~20年未満 17 32.7%
20~30年未満 6 11.5%
30~40年未満 4 7.7%
40~50年未満 4 7.7%
50~60年未満 1 1.9%
60年以上 5 9.6%
計 52 100.0%
現在のところに移った理由
項目 回答者数 割合
1.生活の便利さ 20 38.5%
2.環境の良さ 35 67.3%
3.個人や家庭の事情 8 15.4%
4.友人、知人などの人間関係や愛着 5 9.6%
5.資金、資産、仕事の関係 11 21.2%
6.その他(趣味やライフスタイルなど) 1 1.9%
計 80 153.8%
無回答 1
回答者数 52
前居住地
項目 回答者数 割合
福岡市東区 4 7.7%
福岡市中央区 3 5.8%
福岡市博多区 5 9.6%
福岡市南区 9 17.3%
福岡市城南区 8 15.4%
福岡市早良区 6 11.5%
福岡市西区 1 1.9%
福岡市内 1 1.9%
県内 5 9.6%
九州内 1 1.9%
関東 4 7.7%
その他 1 1.9%
不明 1 1.9%
無回答 3 5.8%
計 52 100.0%
住み替え意向
項目 回答者数 割合
1.今のところに住み続ける 43 82.7%
2.住み続けたいができない 0 0.0%
3.住み替える 3 5.8%
4.住み替えたいができない 5 9.6%
無回答 1 1.9%
計 52 100.0%
住み替え意向の理由
項目 回答者数 割合
1.生活の便利さ 38 73.1%
2.環境の良さ 18 34.6%
3.個人や家庭の事情 8 15.4%
4.友人、知人などの人間関係や愛着 19 36.5%
5.資金、資産、仕事の関係 5 9.6%
6.その他(趣味やライフスタイルなど) 6 11.5%
計 94 180.8%
回答者数 52
3)高齢者へのヒアリング結果
表 3-3 ヒアリング結果のまとめ
校 区 住み替え意向等
柏原小校区 ・当地区は陸の孤島と呼ばれるくらいであるが、環境も悪くなって きている。
・柏原から引っ越す人はいるが、転入してくる人は聞かない。
・居住年数が長いと同じところに住み続けたくなる。
・山の上なので運転ができなくなったら住み替える。
・家を建て替えたばかりなので住み替えができない。
・子どもと離れたら、生まれたところに帰りたい。
・一軒家に女性の一人住まいが多いなど、高齢者にとっては将来の 生活の利便性に不安があり、住み替え意向は比較的強い。
・一番大切なのは、近所の方との人間関係や友達
・住み替えたいが、売ろうとしても高い値で売れない。
・住み替え先は、田舎を希望する人と都会を希望する人に分かれる。
ただし、都会は都心部というより都心周辺を望んでいる。
・引っ越し先の住居形態も一戸建てとマンションに分かれるが、ど ちらかというと便利なところでマンション系の意向が強い。
百道浜小校区 ・環境が良く、病院などもあり安心感があるとの認識が強い。商店 街がないのが問題点。便利さでは都心として捉えられている。
・本地区は、比較的新しい計画団地であり、すでに住み替えて来て、
これからもずっと住み続ける意向が強い。
有田小校区 ・本地区は、地域コミュニティが確立されていることや鍵をかけな くても安心して住める環境との認識が強い。
・地下鉄が新しく開通したことにより、利便性が高まり、住み替え る必要性がなくなったと思っている人が多い。
・住み替えるとしたら、早良区か西区を希望する人が多く、東区は 人気が低い。
博多小校区 ・都市高速道や空港、病院も近く、先祖代々から住み続けている人 が多く、歴史を守らないといけないと感じている。また地域コミ ュニティも強い。
・生活の便利さと山笠があるため、また地元に土着している人が多 く、住み続ける意向が強い。
・当地区を拠点にして、田舎にセカンドハウスを持つというような 居住形態を望んでいる人も多い。
4)オピニオンリーダーへのヒアリング結果
最近の高齢者動向について明るい民間コンサルタント、民間事業者、へのヒアリング調査を行った。
ヒアリング結果については、表 3-4 のとおりである。
表 3-4 ヒアリング結果のまとめ(オピニオンリーダー)
ヒアリング先 福嶋 明子氏 所 属 ぐらんざ総研
Q 福岡における住み替えの実態について
・2 年ほど前、タワーマンションが売り出された時、実際にシニアの方で購入した人も多い。理 由は、医療機関が近いなど。
・7 年前の調査では、高齢者の方(70 歳前後)は土地を手放すことに対して抵抗があるというこ とが分かった。団塊の世代とそれ以上の高齢者とでは考え方が違う。団塊世代の方が土地への こだわりが薄いため、これまでの傾向から今後変わってくるだろう。
・住み替えを考える場合、「都心へ」が感覚的には 7 割ぐらいではないか。女性は、都心への意 識が強い。一方、男性は田舎暮らしを希望する人が多い。現実的には女性の意向に引っぱられ ている。
・このような夫婦の意見の違いで、住み替えを断念するケースも多い。女性にとって、買い物が 便利で、医療機関が近くて、友人関係などのコミュニティが出来上がっている場合、今更住み 替えは考えにくい。
・妥協案として、これからは、クラインガルテン(市民農園)のような時々田舎暮らしを体験で きるようなものが流行る傾向がある。一部の高収入層などは、キャンピングカーへの需要も多 い。
Q 「都心」の定義について
・医療機関が近く、文化施設に通いやすく、買い物できる場所が近くにあるという条件。また、
今後、自動車の運転も難しくなることから公共交通機関の利便性がいいところ。つまり、身体 的な不安をクリアできる場所ということ。
・東京でいう「都心」と福岡の「都心」とでは、考え方が異なる。
・物理的な条件よりも、便利のいいところということで、百道浜や春日市なども、イメージ的に は含まれる。
・Uターンは当然ある。福岡の特徴としては、Iターンが多いということ。支店長OB会という のがあるが、福岡の支店に来て、そのまま定住(Iターン)する人も多い。そういう意味でも、
今後ますます福岡市は人口が増えるだろう。
Q 住み替えの動機について
・戸建て住宅は、歳をとると庭の草刈りなど維持・管理に苦労する。セキュリティの面からもマ ンションの方が楽である。
・団塊の世代は、子どもに世話をしてもらうのではなく、第三者(老人ホームなど)にお世話に