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高岡中心部の調査報告

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成功する B 級ご当地グルメとは

―「高岡流お好み焼ととまる」を事例に―

山下 恵実 はじめに

実習で高岡市を訪れた際、2015年春の新幹線開業に向けて町を盛り上げようとする 行政の様子と、それとは裏腹にシャッター街となってしまっている駅前の商店街の様子 の違いに驚いた。高岡市は、「イオンモール高岡」の印象が強く、人の流れが出来てい るイメージがあったからだ。しかし実際には、郊外のイオンモールの方へ若者をはじめ とした人の流れが出来たことにより、中心部の商店街は衰退してきたようであり、その ため駅前の商店街を元気にしようと様々な団体が立ち上がっていることも知った。そん な様子を目の当たりにし、高岡市の町おこしについて調べてみたいと思った。また、も ともと食文化に興味を持っていたので、この2つを組み合わせた「食の町おこし」につ いて調査することにした。

「食の町おこし」でまず連想したものは、B級グルメであった。B級グルメが大ヒッ トしたことによる町おこしの成功例を耳にしたことがあったからだ。そこで、高岡市に おけるB級グルメの町おこしはどのようなものがあるのか、また、成功するB級グル メとはどのようなものであるのか、という問いを立てて調査を開始した。

調査方法としては、高岡駅構内、駅前商店街、老舗グルメやB級グルメの店舗を訪れ て聞き取り調査を行った。また、2014年8月24日の「第4回T-1グランプリ」、9月 20日・21日の「食の祭典inぎふ郡上」に、ボランティアの販売スタッフとして参加し た。このように、消費者と販売者の双方の意見を聞くことで、両者の溝を知ることがで き、食の町おこしの現状や改善点を見出すことができるのではないか、と考えた。

1. B級グルメについて 1-1. 歴史

まず、B級グルメはどのようにして生まれ、浸透していったのか、その歴史を紹介し ていきたい。そもそもB級グルメとは、安価で、庶民的でありながら美味しいと評判 の料理のことである。昭和60年(1985年)に、フリーライターの田沢竜次が雑誌『angle』 に連載した記事を元に刊行した、『東京グルメ通信 B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)

で初めて登場した言葉である。その後、昭和61年(1986年)に文春文庫ビジュアル 版で、田沢竜次もメインライターとして参加した『B級グルメ』シリーズが刊行され、

167 この用語と概念が広がった。

平成18年(2006年)頃から、「B級グルメ」といいながら、それ全般を指さずに、

特定の地域に結びつけようとした料理、すなわち「B級ご当地グルメ」に焦点が当たる ことが増えた。「B級ご当地グルメ」とは、昔からその土地で食べられてきたものをま ちおこしのために活用した「発掘型」と、まちおこしを狙ってここ数年で新たに開発さ れた「開発型」の2種類がある。B級ご当地グルメに注目が集まった原因といえるのが

「ご当地グルメでまちおこしの祭典!B-1グランプリ」(通称「B-1グランプリ」)であ る。ただしB-1のBは、B級のBではなく「地域BRAND」のBである。そもそもこ のイベントは、B級グルメの祭典ではない。まちを盛り上げ、地域ブランドを確立しよ うと日々活動するまちおこし団体の、年に1度の共同PRイベントとして開かれたので ある。よって、表彰はグルメにではなく、まちおこし団体に向けて贈られる。決して、

食べ物を売ることを目的としたグルメイベントではなかった。しかし、B-1のBを「B 級グルメ」と勘違いしたり、強引に結びつけたりされることが増えたのだ。(出典:「ご 当地グルメでまちおこしの祭典!B-1グランプリ公式サイト」)

第1回B-1グランプリは、平成18年(2006年)2月に青森県八戸市で開催され、毎 年1回行われるようになった。第1回大会は八戸せんべい汁研究所のメンバーが、「八 戸を盛り上げるために何かやろう」と始め、開催した。現在は、全国のまちおこし団体 で組織する「ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会」(通称「愛Bリーグ」)が主催 している 18

表1にあるように、B-1グランプリは今や全国区の大きな食のイベントになったとい える。そしてB-1グランプリに続いて、各地で様々な食のイベントが開催されるように なった。

表1. B-1グランプリ これまでの大会について(ウェブサイト「ご当地グルメでまち おこしの祭典!B-1グランプリ公式サイト」を参考に筆者作成)

回 開催地 開催年月日 出展団

体数 来場者数 優勝団体

1 青森県

八戸市 2006/2/18,19 10 17,000人 富士宮やきそば学会

2 静岡県

富士宮市 2007/6/2,3 21 25,000人 富士宮やきそば学会

3 福岡県

久留米市 2008/11/1,2 24 203,000人 厚木シロコロ・ホルモン探検

4 秋田県

横手市 2009/9/19,20 26 267,000人 横手やきそばサンライ’S

18 2014年6月現在で加盟団体は71団体。

168 5 神奈川県厚

木市 2010/9/18,19 46 435,000人 甲府鳥もつ煮でみなさまの

縁をとりもつ隊

6 兵庫県

姫路市 2011/11/12,13 63 515,000人 ひるぜん焼そば好いとん会

7 福岡県

北九州市 2012/10/20,21 63 610,000人 八戸せんべい汁研究所

8 愛知県

豊川市 2013/11/9,10 64 580,000人 浪江焼麺太国

9 福島県

郡山市 2014/10/18,19 59 453,000人 十和田バラ焼きゼミナール

1-2. 富士宮やきそば

B-1グランプリが、まちおこしを目的としていることからもわかるように、イベント などで人気が出たグルメの影響でまちおこしに成功した事例もある。その代表例として、

B-1グランプリ第1回・第2回大会で優勝した、富士宮やきそば学会の「富士宮やきそ ば」を紹介したい。富士宮やきそばは、ご当地B級グルメブームの火付け役ともいえる グルメである。B-1グランプリでの優勝もあいまって、富士宮やきそばを市外から食 べに訪れる観光客は、年間70万人を超えるまでになった。2001年~2007年の6年間 のやきそばによる経済波及効果は217億円だという19。このように、富士宮やきそば は地域に大きな経済的効果をもたらしたといえる。(出典:『「食」による地域活性化に 関する研究―山梨県大月市の郷土料理を事例として』)

富士宮やきそばは、もともとは地域のお好み焼き店などで提供されていた、その土地 独特のやきそばであった。それを、2000年にまちおこしのために設立された「富士宮 やきそば学会」が着目したのが、ご当地B級グルメ化の始まりである。その後、話題 づくりや食のイベントを主催するなどの精力的な活動の中で、富士宮やきそばは全国有 数の地域ブランドに仕立てられていったのである。

1-3. 成功要因

では、富士宮やきそばのように、食による地域活性化が成功する要因には何がありう るだろうか。先行研究20では、①B級グルメとしてのインパクト、②食と地域性の関わ り、③地域活性化を推進する組織力、の3つに分類している(表2)。

19田中章雄 2008年 『事例で学ぶ!地域ブランドの成功法則33』 光文社 p76-98

20佐藤茂幸 2011年 『「食」による地域活性化に関する研究―山梨県大月市の郷土料理を事

例として』日本経営診断学会論集11 p110-116

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表2. B級グルメによる地域活性化の成功要因(先行研究「「食」による地域活性化に 関する研究―山梨県大月市の郷土料理を事例として」を参照)

3つの成功要因 内容

① B 級グルメとしての商品性にイ ンパクトがあること

味のインパクトがある(素材自体の味の強さに 加え、ソース、醤油、香辛料などの味付けの濃 さなど)

ユニークさ・意外性がある(食べ合わせ、珍し い食材、調理方法など)

ファストフードで手軽さがあり、安価である

② 食の地域性が高いこと(地域に根 付いた食であること)

地元の多くの飲食店で提供されている 地域の特徴のある食材を使っている 歴史やエピソードがある

地域ブランド形成につながるネーミングがある

③ 地域活性化を推進する組織力が あること

優れたリーダーが存在する

話題作りとなる企画力とイベント展開力がある 地域経営体制が構築されている

これを富士宮やきそばに当てはめてみる。まず、「B級グルメとしてのインパクト」

であるが、やきそばであること自体、「B級度」の高いメニューであるといえる。また、

ラードとその肉カス、辛口のソースを使った味付けはとてもインパクトのある味である。

次に、「食の地域性」に関しては、やきそばに使用する麺を地元の3つの製麺業者に限 定している。また、具材のキャベツや水は地域のものを指定して使用している。最後に、

「地域活性化を推進する組織力」に関しては、渡辺英彦氏が牽引するNPO法人富士宮 やきそば学会がある。この団体は、イベント企画力と実行力があり、地元でB-1グラン プリを開催し、成功を収めるなどの実績も残している。以上から、富士宮やきそばは地 域活性化に成功するB級グルメとしての条件を満たしていることがわかる。では、こ の成功要因を高岡のグルメはどれくらい満たしているのだろうか。

2. 高岡のグルメ

2-1. B級グルメと老舗グルメ

高岡市には、後述する「ととまる」のように比較的新しく生まれたB級グルメと、

昔から長く続いている老舗グルメとがある。高岡駅周辺で「高岡のグルメといえば何で すか?」と聞き取り調査を行ったところ、老舗グルメを挙げる方がほとんどであった。

時間帯の関係で、年配の方が多かったこともあるかもしれないが、どうしてこのような 差が出るのだろうか。

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