風速の推定に誤差がある場合

さらに風速の推定に誤差がある場合を考える。風速は前節のモデルの値を用いて、0.1s前の情

報でWind Methodを計算する。風速の推定誤差による影響はどのくらい過去の測定値を使用する

かで変わってくる。そこで、ここでは風速の推定誤差によってずれる距離で風速の推定誤差の大 きさを表す。まずすべての大気揺らぎの層が風速の推定誤差によって考慮していた位置より0.1m、

0.2m、0.5mずれたときの推定精度を計算する。今回は0.1s前の測定値を使っているので、風速

の推定誤差にすると1m/s、2m/s、5m/sとなる。図4.15がその結果である。青線は風速の推定誤 差のないWind Methodの結果、赤線はNormal Methodの結果、その他が風の推定誤差を入れた

Wind Methodの結果である。風速の推定誤差によるずれが0.1m以下のときはその影響はほとん

ど見られない。しかし、風速の推定誤差がそれ以上大きくなると徐々に推定精度も落ちていき、風 速の推定誤差によるずれが0.5mのときはNormal Methodよりも推定精度が悪くなる。

次に大気揺らぎを上層(16000m、8000m)、中層(4000m、2000m、1000m)、下層(500m、0m)

第 4章 結果 4.3. 風速を用いた結果

100 150 200 250 300 350 400

0 50 100 150 200 250 300

WFE [nm]

Distance [arcsec]

Wind Method

Normal Method No Noise Noise = 0.1m Noise = 0.2m Noise = 0.5m

図4.15: ノイズを与えた場合の結果。青線はノイズが無い場合のWind Method^{の結果、赤色は}Normal Methodの結果、その他が風速の推定にノイズを入れたWind Methodの結果である。

の３つに分けてそれぞれに風速の推定誤差をのせ、高さごとの風速の推定後さの影響を見ていく。

図4.16がその結果であり、上から下層、中層、上層の結果である。この図から同じ誤差をのせて も下層の推定残差が中層や上層と比べて大きくなることがわかる。これは今回用いている大気揺ら ぎモデルが0mで60%近いパワーを持つためであると考えられる。他の高さでは風速の推定誤差に よるずれが0.5mになってもNormal Methodからは十分精度が向上している。この結果から下層 でどれだけ風速を正確に推定できるかが重要となることがわかる。

4.3.5 4.3 の結果のまとめ

風速の推定誤差がない理想的な場合ではNormal Methodに比べてWind Methodを使用した方 がに大きく推定精度が向上しこの手法が有効であることがわかった。とくに今回用いてる風速のモ デルは上層で強い風速を持つので、よりWind Methodに適しているといえる。しかし、風速の推 定誤差が大きい場合はNormal Methodよりも精度が悪くなる。次の章では風速の推定誤差による 影響を抑える手法と、このWind Methodが現実的に使えるかどうかを議論する。

第 4章 結果 4.3. 風速を用いた結果

100 150 200 250 300 350 400

0 50 100 150 200 250 300

WFE [nm]

Distance [arcsec]

Wind Method (Low)

Normal Method No Noise Noise = 0.1m Noise = 0.2m Noise = 0.5m

100 150 200 250 300 350 400

0 50 100 150 200 250 300

WFE [nm]

Distance [arcsec]

Wind Method (Middle)

Normal Method No Noise Noise = 0.1m Noise = 0.2m Noise = 0.5m

100 150 200 250 300 350 400

0 50 100 150 200 250 300

WFE [nm]

Distance [arcsec]

Wind Method (High)

Normal Method No Noise Noise = 0.1m Noise = 0.2m Noise = 0.5m

図4.16: 上から下層、中層、上層にノイズを与えた場合の結果。青線はノイズが無い場合のWind Method の結果、赤色はNormal Methodの結果、その他が風速の推定にノイズを入れたWind Method の結果である。