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各種サービス利用時の顧客感動に関する内容分析

5-1. はじめに

顧客評価に関する量的分析において、アメリカ版顧客満足度指数ACSI と日本版顧客満 足度指数 JCSI で用いられた顧客評価を測定する項目を基礎に、それらに顧客感動と係員 のもてなしに係る項目を加え、さまざまなサービス業(小売業・テーマパーク・教育・情 報支援業)の利用顧客を対象とし、実証研究を行った。その結果、さまざまなサービスを 利用時に顧客の体験する感動の重要性が確認された。

先行研究のように、多くの研究者は顧客感動についてさまざまな研究をし 、顧客を感動 させることの重要性を明らかにしてきた。そして単なる顧客満足を超えて 、高いレベルの 満足が得られれば顧客感動に至ることが指摘された。また顧客満足以上に顧客感 動がロイ ヤリティを強化し、顧客維持、ポジティブなクチコミおよび推奨意向があることが指摘し た。オリバー(1997)、コトラー(2000, 2002))なども、顧客に感動してもらうことの重要性 を指摘している。このように顧客感動の重要性は指摘されているが、顧客感動の構造は必 ずしも明らかになってない。本章では質的研究(内容分析)を用いて、顧客感動の内容とそ の構造を明らかにする。

5-2. 装い関連サービスにおける口コミデータの内容分析

顧客が自由に書き込んだ口コミ内容は、企業の商品あるいはサービスに対する主観的 な感情の表明である。小野(2010)も示したように、顧客感動は口コミを誘発する。すなわ ち感動した顧客は企業のファンになり、好意的な口コミを書き込むが、それに対して不満 で激怒した顧客は、批判を含めた口コミを伝播する可能性が大きい。本研究は 、装い関連 サービスを焦点にして、インターネット上に書き込まれた顧客の感動に関わる口コミに注 目し、顧客感動の内容や喚起される要因の明確化を行った。 なお装いとは、装飾、整容、

75 変身に関わる人間の行動を指す (神山、1999)。

5-2-1. データの収集

本研究で分析するデータは、インターネットの口コミサイトから収集された。データ は 2012年 12月から2013年5月までの半年間に書かれた口コミであり、日本国内最大 級の装い検索・予約サイトである「ホットペッパービューティー」、および店舗の口コミラ ンキングサイトである「エキテン」から、それぞれのサイト業者の許可を得て、収集され た。分析対象者の口コミは、装い関連サービスを利用したことがあり、利用したサービス を 4つ星・5つ星と評価したことから顧客感動が含まれる可能性のある体験を述べている と考えられる 2187名の顧客データであった14)。国籍が未記入のために第 5-1表は、2187 名について、性と年齢の内訳を要約したものである。なお装い関連サービスの中で 、身体 そのものの装いに関するものはエステサロン・ヘアサロン・ネイルサロン・ヘアセットで あり、身体の外部の装いに関するものはクリーニング・着付けであった。

5-2-2. 分析方法

顧客が自由に記述した口コミデータに関して 、顧客感動の内容を描写している単語とそ の出現頻度に着目して解析を行った。また顧客感動の内容における性別・年齢別の相違を 、 カイ二乗法を用いて分析した。

5-2-3. 分析結果

まず各サービスに関して単語の内容とその出現頻度の解析を行った。単語の出現頻度解 析では、例えば、「提案」「アドバイス」「カウンセリング」といった類義の単語を「相談」とい う 1つの単語に統一してから、その単語の出現度数を算出した。

分析の結果、顧客感動の記述に関する出現頻度が高い単語は、主に7つのグループに分 けることができた(第 5-1 図)。第 1 グループは「係員」「相談」などを中心とし 、したがって

14) 口コミサイトで評価を書く時、1つ星から 5 つ星までをつける必要があり 、3 つ星が普通評価の基 準である。それらの中で4つ星・5つ星の付いた口コミには、驚き、楽しい、嬉 しいなどといったポジ テ ィ ブ感 情 およ びま たよ ろし く 、再 利 用な どと いっ たロ イ ヤリ テ ィに 関す る記 述が 多 く出 現 した 。 ヴ ァーマ(2003)などによれば 顧客感動が驚きと喜びによって喚起される。また多くの研究者は 、顧客満足 以上に顧客感動がロイヤリティを強化することが指摘した。したがって本研究では 、4つ星・5つ星の 付いた口コミを顧客感動体験が含まれる可能性のある口コミであると判断した。逆に 1 つ星・2 つ星 の付いた口コミは不快、残念、失敗などに関する記述が多く出現し、したがってこれらの口コミを顧客 不満・激怒が含まれる可能性のある口コミであると判断した。

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「接客」に関わる要因と考えられる。第 2グループは「雰囲気」「清潔感」などを中心とし 、「店 の環境」に関わる要因と考えられる。第 3グループは「効果」「髪型」などを中心とし、「仕上 がり」に関わる要因と考えられる。第 4グループは「時間」「料金」などを中心とし、「コスト」

に関わる要因と考えられる。第 5グループは「知識」「腕前」などを中心とし、「技術」に関わ る要因と考えられる。第 6 グループは「楽しい」「嬉しい」などを中心とし、「ポジティブ感 情」に関わる要因と考えられる。第 7グループは「驚き」「予想外」などを中心とし、「意外性 の認知」に関わる要因と考えられる。これらの中で、第 1~第5グループは感動をもたらす 要因であり、第 6グループと第7グループは、それらから生起する顧客感動であると考え られる。例えば、ヘアサロンに関して、「1万円で多くおつりがきたこと(コスト)に驚いた

(意外性の認知)」「細かな気遣い(接客)が嬉しい(ポジティブ感情)」などのような記述例であ

る。

また、顧客感動の対象(ヒトとモノ/コト)、感動内容(ポジティブ感情と意外性の認知)に 分け、性別や年齢による違いを検討するためカイ二乗検定を行った。これらの中でヒトは 接客に関する記述であり、モノ/コトは店の環境・仕上がり・コスト・技術に関する記述で あった。

第5-2表は、顧客感動の記述に関する性別・年齢別のクロス表とカイ二乗検定の結果で ある。感動内容に関する記述に性別間で有意な相違が認められ(χ2=14.8、df=1、p<0.001)、

感動内容に意外性の認知を指摘した割合は男性よりも女性で高く 、逆に感動内容にポジテ ィブ感情を指摘した割合は女性よりも男性で高かった。

また、感動内容に関する記述には年齢間でも有意な相違が認められ(χ2=7.60、df=1、

p<0.001)、意外性の認知を内容とした感動体験の割合は、36歳以上の中高年よりも35歳以 下の若年で高く、ポジティブ感情を内容とした感動体験の割合は35歳以下の若年よりも36 歳以上の中高年で高かった。

5-3. 宿泊、旅行関連サービスにおける口コミデータの内容分析

装い関連サービスにおける口コミデータの内容分析からは、感動に関わる具体的な要素 が接客、店の環境、仕上がり、コスト、技術などであり、これらの要素が楽しい、嬉しい などといったポジティブ感情、および今までに経験したことのない意外な体験であるとい う理解や判断を生じさせることが示唆された。この結果を踏まえて宿泊 、旅行関連サービ

77 スにおけるデータを収集し、分析を行った。

5-3-1. データの収集

本研究で分析するデータは、インターネットの口コミサイトから収集された。 データは 2012 年1月から 2013年 10月までの間に書かれた口コミであり、日本の宿泊、旅行に関 する検索・予約サイトである「楽天トラベル」「じゃらん net」から収集された。分析対象 者の口コミは、宿泊、旅行関連サービスを利用したことがあり、利用したサービスを 4つ 星・5 つ星と評価したことから顧客感動が含まれる可能性のある体験を述べていると考え られる835名の顧客データであった。国籍が未記入のため に第5-3表は、835名について、

性と年齢の内訳を要約したものである。

5-3-2. 分析方法

分析方法は装い関連サービスを利用した顧客が書かれた口コミデータの分析と同様に 、 まず顧客が自由に記述した口コミデータに関して、顧客感動の内容を描写している単語と その出現頻度に着目して解析を行った。また顧客感動の内容における性別・年齢別の相違 を、カイ二乗検定を用いて分析した。

5-3-3. 分析結果

まず各サービスに関して単語の内容とその出現頻度の解析を行った。 分析の結果、顧客 感動の記述に関する出現頻度が高い単語は、主に 7つのグループに分けることができた(第 5-2図)。第 1グループは「雰囲気」「清潔感」などを中心とし 、「施設の環境」に関わる要因と 考えられる。第 2グループは「係員」「相談」などを中心とし、したがって「接客」に関わる要 因と考えられる。第 3グループは「景色」「海」などを中心とし、「自然の環境」に関わる要因 と考えられる。第 4グループは「時間」「料金」などを中心とし、「コスト」に関わる要因と考 えられる。第 5グループは「料理」「酒」などを中心とし 、「飲食」に関わる要因と考えられる。

第 6グループは「楽しい」「嬉しい」などを中心とし、「ポジティブ感情」に関わる要因と考え られる。第 7グループは「驚き」「予想外」などを中心とし、「意外性の認知」に関わる要因と 考えられる。

また顧客感動の記述を感動対象としてのヒトとモノ/コト、感動内容としてのポジティブ 感情と意外性の認知に分け、性別や年齢による違いを検討するためカイ二乗検定を行った。

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