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第 3 章 実験

3.2 顔認識実験

本研究では,同一人物と判定される範囲で最大限に美形化することが目的であり,同一人 物の範囲内かそれとも過剰な変形であるかの判定が非常に重要な要因である.顔認識実験で は,2.8節に示した判定関数による判定が人間の感性と近いかどうか検証を行う.

3.2.1 手法

学習データは100人の画像を10段階に美形化した1000枚の顔画像から求められた4096 次元の特徴ベクトルと,入力画像と比較した人間の評価である.またテストデータは学習 データには含まれていない35人の画像において求められた350個の4096次元の特徴ベクト ルと,人間の評価とする.ロジスティック回帰に用いるハイパーパラメータCは0.05とし,

3.4 : 主観評価実験において,入力画像の方が美しいと評価された数が多かった結果を 4例挙げる.各ペアにおいて,左が入力画像,右が美形化画像.

コストはL1ノルムで求める.350のテストデータに対して,判定を行い判定関数の精度を 検証する.

3.2.2 実験結果

実験結果を表3.3に示す.

3.3 : ロジスティック回帰による判定結果

 識別器判定 =同一人物 識別器判定=過剰な変形 

人間による評価 =同一人物 320 5

人間による評価 =過剰な変形 21 4

ここで35枚の顔画像に対する人間による境界線と,判定器による境界線の差を調べる.

境界線とは,10段階に美形化した画像に対して,どこまでの変形を同一人物に見える範囲 内の変形とするかの境界線を意味する.境界線について図3.5に示した.

1枚の顔画像は10段階に美形化されており,各入力画像に対して人間による境界線と,判 定関数による境界線を持つ.境界線の差は,人間による境界線と関数による境界線の位置の 差の絶対値を意味する.よって,値が小さい方が人間の感性に近い判定関数ができたと言え る.表3.4に今回の実験による境界線の差についてまとめたものを示す.

3.5 : 人間と判定関数による境界線の差を示した.境界線とは,左上から右下にかけて 10段階に美形化されている中で,どこまでを同一人物の範囲内の変形と判定したか示した ものである.黄色による線が人間による境界線,水色による線が判定関数による境界線を意 味し,今回の場合境界線の差は2である.

3.4 : 境界線の差

0 1 2 3 4 計

人物数 14 19 0 1 1 35

3.2.3 考察

表3.3より,人間が過剰な変形であると判定している顔画像に対して,識別器が同一人物 の範囲内の変形であると判定する顔画像が多いことが分かる.つまり,この識別器を用いて 美形化を行った場合,人間が過剰な変形であると感じるにもかかわらず識別器の制約が働か ず,変形を行ってしまうケースがあると考えられる.これは学習データの偏りが原因と考え られる.今回,同一人物の範囲内の変形として学習させたベクトルが957に対し,過剰な変 形として学習させたベクトルが43となっている.つまり,学習データの96%が同一人物の 範囲内の変形についてであり,学習の結果,ベクトルに対して同一人物内の変形であると判 定した方が精度が高くなる.この結果,人間による評価が過剰な変形であると判定している 顔画像に対して,識別器が同一人物の範囲内の変形であると判定する可能性が高くなってい ると考えられる.

表3.4より,人間による判定と関数による判定の差を示した.境界線の差は平均0.743で あり,人間による評価と近い値を意味している.学習するデータ画像を増やしたり,過剰な 変形が行われた画像について多く学習を行うことで,より精度の高い識別器が実現できた可 能性もある.人間による境界線と識別器による境界線を比較した場合,識別器による境界線

の方が人間よりも変化に鈍感だったためである.上でも述べたように,学習データの偏りに よって本来学習されるべき人間の評価が学習できなかった可能性がある.学習データの工夫 によって識別器の精度が高くなる可能性が考えられる.

一方で,識別器の精度が人間の評価に準じていないのは,元々人間もデータを正確に評価 できていない可能性が考えられる.今回学習データを評価したのが3人であるため分散は 大きくないが,評価した人数が増えた場合分散が大きくなる可能性は大いに考えられる.分 散が大きくなるということは人間が与える評価すら人間によってバラバラであることを意味 している.表3.4より,35枚中14枚が人間の評価と一致している.テストデータ35枚の,

人間の評価の標準偏差の平均は0.276である.ある画像においては標準偏差が1.155となり 人によって評価が大きく異なっていることが分かる.図3.5で示したように画像は10段階 に変形させているが,人間の評価が一意に決まるとは考えにくく,元々識別器に学習させる データの精度が高いとは考えられない.そのような曖昧な学習データを基にしているにも関 わらず,90%近い精度で人間の評価と同じ結果を示す判定関数はある程度妥当であると考え られる.

よって,本実験で用いる美形化画像が入力画像と同一人物か判定する関数として,今回求 めた判定関数を用いることとする.ただし,識別器は完璧に識別できるとは言えない.なぜ ならば,考察で示したようにまず元々人間が完璧に識別できないため,そして,学習データ の偏りによって人間に比べ適切な変形であると判定しやすくなっているためである.

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