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手の感染症

7. 非結核性感染症(Non-tuberculous mycobacterial infection)

以前は、非定型抗酸菌感染症と呼ばれていたが、何が定型的でないのか明確でないとの理由で、非 結核性という呼称に統一されている。これも、炎症所見に乏しい慢性炎症の臨床像を呈する10, 11)。術 中に滑膜を一般培養提出と同時に、抗酸菌培養、 PCR-DNA probe法、病理への提出を行う。手の感 染症では、 Mycobacterium marinum、 chelonae、 kansasii、 intracellulare、などが検出される12)

が、肺の非結核性感染症に多いのは、 Mycobacterium avium、 intracellurareであり異なる。検出率 は50%程度なので、病理所見で「類上皮肉芽腫性炎症」が証明されれば、抗結核剤の投与を考えるべ きである。ただし、結核に比べると乾酪壊死は無いことも多いので、壊死のない肉芽腫を作るサルコ イドーシスとの鑑別が必要になる。 M. marinumは海に存在し、魚の骨を指したりして感染する。海 に生息するので温熱に弱く、ミノマイシン内服と温熱療法が効果があるとの報告がある13)。他の菌の

        

滑膜切除後 1 年で再発    MRIで米粒体       術中米粒体     病理所見:類上皮肉芽腫

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場合は、滑膜切除と抗結核剤の投与となる。3剤併用は様々な意見もあるが、RFP(リファンピシン)、

EB(エタンブトール)、 CAM(クラリスロマイシン)を基本に1年間の継続を基本にしている。副作 用もあるので、呼吸器内科の医師との連携をとって治療している。

<文 献>

1. 花田麻須大、ほか:手術を要した手指感染症の起炎菌の検討. 日手会誌 27:119-123, 2010.

2. 尼子雅敏、ほか:爪部、爪周囲の感染症.Derma 184:76-80, 2011.

3. 平原康文、ほか:肘関節内側に発生した猫引っ掻き病の2例.日肘会誌 21:S123, 2014.

4. 納村直希、ほか:手指化膿性腱鞘炎に対する治療成績の検討.日手会誌 30:145-148, 2013.

5. 小栗雄介、ほか:手指化膿性腱鞘炎に対してセイラムサンプチューブを用いた閉鎖性持続洗浄療法を行った治 療経験. 日手会誌 29:840-844, 2013.

6. 石崎力久、ほか:手指粘液嚢腫から感染した可能性関節炎の検討.日手会誌 31(1):S737, 2014.

7. 澁谷亮一:指関節化膿性関節炎の関節機能温存可能例と損失例の検討.日手会誌 31(1):S587, 2014.

8. 大島卓也、ほか:手指末節骨の化膿性骨髄炎の治療経験.日手会誌 22:766-768, 2005.

9. 藤岡宏幸、ほか:手指屈筋腱に生じた結核性腱鞘滑膜炎の1例.中部整災誌 58:195-196, 2015.

10. 坪内英樹、ほか:手指非結核性抗酸菌症:その病態と軟部腫瘍との鑑別点.整・災外 54: 1243-1251, 2011.

11. 光安廣倫、ほか:手指、手関節に生じたMycobacterium kansasii感染症について.日手会誌 27:465-467, 2011.

12. Balaque N, et al:Non-tuberculous mycobacterial infections of the hand. Chir Main 34: 18-23, 2014.

13. 古北一泰、ほか:温熱療法が奏功したMycobacterium marinum感染症の1例.皮膚科の臨床 52:1437-1441, 2010.

池田 和夫

(いけだ かずお)

【略 歴】

昭和59年 3月 国立金沢大学医学部卒業

昭和59年 4月 国立金沢大学医学部整形外科学教室入局 平成 2年10月 国立金沢大学医学部整形外科助手 平成 9年 6月 同上 講師

平成15年 4月 同上 医局長

平成18年10月 金沢大学医学部臨床教授

平成19年 4月 独立行政法人国立病院機構金沢医療センター整形外科部長 平成24年 4月 同上 手術管理部長

平成27年 4月 同上 外科系診療部長 兼任

【所属学会】

日本整形外科学会(中部地区資格認定委員、 2007年7月~)

中部日本整形外科災害外科学会:評議員(2006年10月~)

中部日本手外科研究会:世話人(2010年~)

日本手外科学会:評議員(2000年5月~、代議員:2011年~)

        (教育研修委員、 2000年~2005年)(編集委員、 2007年4月~2014年)

日本骨折治療学会:評議員(2004年7月~)(広報委員、 2004年~2010年7月)

日本マイクロサージャリー学会:評議員(2003年~)(編集委員、 2004年10月~)

日本末梢神経学会:評議員(2003年~理事:2010年9月~)

【賞罰等】

アメリカ手の外科学会最優秀ポスター賞

        第48回 (1993)、 第54回 (1999)、 第57回 (2002)、 第59回 (2004)

第51回アメリカ手の外科学会最優秀展示賞 (1996)

第2回アジア太平洋手の外科学会 最優秀ポスター賞(1999)Singapore

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MEMO

札幌医科大学整形外科

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