5 検討
5.1 有効性の検討
5.1.1 非接触呼吸計測の有効性について
本節では,本システムによる非接触呼吸計測の有効性について検討する。
本システムにおいて,簡易型PSGと同等の呼吸計測が実施できていることは,§4.1.3に示 したとおりであるが,本システムの大きな特徴は非接触・無拘束での呼吸モニタリングを実 施可能であることにあるものと考え,予備実験で行った本システムと簡易PSGとの比較試験 を,老人保健施設において実施したフィールドテストにおいても実施した。
比較試験においては,フィールドテスト対象とした高齢者65名(男性19名,女性46名)
の内,本システムでSASの疑いがあると考えられた高齢者に協力を依頼し,同意を得られた 計12名(男性8名,女性4名)に対して実施した(1名当たり2回測定を実施)。なお,比 較試験への協力依頼に際しては,本比較試験の内容に関する十分な説明を行い,実際に簡易 型PSGのセンサを装着して頂いた上で,本比較試験への協力の可否を文書にて回答頂いた。
また,本比較試験においては,グループⅠに属する痴呆症高齢者は,対象から除外した。
比較試験の結果,予備実験と同様に,本システムによる呼吸計測が,簡易型PSGと同等の 呼吸計測が実施可能であることがわかった。しかしながら,簡易PSGの計測結果より,協力 者の多くは,就寝の途中で,簡易PSGの気流測定用サーミスタの拘束感に耐えられず,故意 に,あるいは,無意識のうちに,気流測定用サーミスタを取り外してしまっているという事 実が明らかとなった。
図5.1に,簡易PSGによる計測結果を示す。図5.1においては,3時41分ぐらいに気流測 定用サーミスタの脱離があり,脱離後には呼吸運動測定用加速度センサによる波形が得られ ているにもかかわらず,気流測定用サーミスタによる波形が測定できていないことを示して いる。本比較試験において,試験対象者が起床時間まで気流測定用サーミスタを取り外すこ となく計測を完了できたのは,24例中,実に5例だけであった。
PSGによる呼吸計測は,計測対象者が,SAS等のSDB のスクリーニングなどを目的とし ており,計測に対して十分なモチベーションを持っている場合には実施されてはいるが,以 上の結果が示すように,就寝者に対して極めて多大なストレスを与えており,不自然な状態 での睡眠を強いている可能性があるものと考えられる。本システムにおいては,非接触・無 拘束での呼吸計測が可能であることから,このような問題は発生せず,測定データが脱落す
第5章 検討 101
ること無く就寝者呼吸計測を実施できている。また,PSGにおいてはセンサの装着や配線を 要することから測定準備に時間や手間が掛かるのに対し,本システムでは,一切必要とせず,
また,配線により就寝者の動作・行動を制約することも一切ない。
以上の通り,本システムよる非接触・無拘束呼吸計測は,従来の就寝者呼吸計測手法と比 較して,多くの優位性を有することが明らかとなった。
Detachment of sensor
Signal value (Airflow sensor)
Signal value (Accelerometer)
Detachment of sensor
Signal value (Airflow sensor)
Signal value (Accelerometer)
図5.1 気流測定用サーミスタの脱離
Fig. 5.1. Detachment of airflow sensor.
簡易PSGによる計測結果の一例であり,3時41分ぐらいに気流測定用サーミスタの脱 離が発生し,脱離後には呼吸運動測定用加速度センサによる波形(下方のグラフ)が得 られているにもかかわらず,気流測定用サーミスタによる波形が測定できていないこと を示している。
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