第 1 章
現象の記述
摩擦による帯電 .
27.] 実験I.註1 いずれも電気的性質を示していないガラス片と樹脂片を互 いに擦りあわせ、擦りあわせた面を接触したままにする。それらは未だ何ら の電気性も示さない。それらを分離しよう。そのとき、それらは互いに引き 合うであろう。
もう一つのガラス片をもう一つの樹脂片と擦りあわせ、もしその片々を分 離し、以前のガラス片と樹脂片の近くに吊るすと、 つぎのことが観測され る—
(1) 2つのガラス片は互いを斥ける。
(2) ガラスの各片は樹脂の各片を引きつける。
(3) 2片の樹脂は互いを斥ける。
これらの引きつけあい、斥けあう現象は電気現象と呼ばれ、それらを示す物 体は帯電した、または電気を荷されたと言われる。
2片のガラスの電気的な性質は互いに相似しているが、2片の樹脂の性質と は逆である:ガラスは樹脂が斥けるものを引きつけ、樹脂が引きつけるもの
を斥ける。 p. 33
もし物体がガラスが振る舞うのと同じように帯電したなら、つまり、もし それがガラスを斥け樹脂を引きつけるなら物体はガラス(vitereously)帯電し
註1Sir W. Thomson ‘On the Mathematical Theory of Electricity in Equilibrium’, Cam-bridge and Dublin Mathematical Journal, March, 1848参照
たと言われ、もしガラスを引きつけ樹脂を斥けるなら、樹脂(resinously)帯 電したと言われる。すべての帯電物体はガラスまたは樹脂のどちらかに帯電 していることが分かる。
ガラス帯電を正、樹脂帯電を負と呼ぶのは科学者の間で確立した慣習であ る。二種類の帯電の正反対の性質は反対符号でそれらを指すことを正当化し ているが、正符号を他方ではなく一方に指定するのは、ちょうど右手方向に 正の距離を計算することが数学の図での規約であるのと同様、恣意的な規約 であると考えなければならない。
引力であれ斥力であれ、どのような力も帯電した物体と帯電していない物 体のあいだでは観測されない。それ以前に帯電していなかった物体に帯電し た物体が作用していることが観測されているときは、どのような場合でも、
作用が観測されるのは、帯電していなかった物体が誘導によって帯電してい たからである。
誘導による帯電 .
図4.
28.] 実験 II.註2 中空の金属の容器を白い絹糸で吊 下げ、容器を手で触れることなく開閉できるように同 じような糸を容器の蓋に付けよう。
ガラス片と樹脂片を同じように吊下げ、前と同じよ うに帯電させよう。
始めに容器は帯電していないとしよう。このとき、も し帯電したガラス片を容器に触れることなく糸によっ てその中に吊るし、蓋を閉めたなら、容器の外側がガラ ス帯電していることが分かり、容器の外側の帯電はガ ラスが内部空間のいかなる部分に吊下げられていよう と、まったく同じであることが示されるであろう註3。
もしガラスがそれに触れることなく容器から取り出 されたなら、ガラスの帯電はそれが入れられる前と同
註2この実験や、これに引き続く実験はファラディによるものである。‘On Static Electrical Inductive Action’,Phil. Mag., 1834,またはExp. Res, vol. ii. p.279.
註3{これは100 c節の説明図である。}
じであり、容器の帯電は消えたであろう。 p. 34 この容器の帯電は、その中にガラスがあることによっており、ガラスが取 り去られたとき消えるので、誘導による帯電と呼ばれる。
もしガラスが容器近くの外部に吊下げられたなら同様の効果が生じるが、
この場合、容器の外面の一部分ではガラス、他の部分では樹脂に帯電してい ることが分かるであろう。ガラスが内部の場合、容器は外面全体がガラスに、
内面全体が樹脂に帯電している。
伝導による帯電.
29.] 実験 III.直前の実験のように、金属の容器が誘導で帯電されたとし、
第二の金属物体がその近くに白い絹糸によって吊下げられたとし、同じよう に吊下げられた金属の導線が帯電された容器と第二の物体に同時に触れるよ うに持ってこられたとする。
第二の物体はそのときガラス帯電しており、容器のガラス帯電は減少して いることが分かるだろう。
電気的な状態が容器から第二の物体に導線によって伝えられている。導線 は電気の導体とよばれ、第二の物体は伝導により帯電したと言われる。
導体と絶縁体 .
実験IV.金属線の代わりにガラス棒、樹脂の棒、グッタペルカ、白絹糸が 使われたなら、電気の輸送は起こらなかったであろう。したがって、これら 後者の物質は電気の非伝導体と呼ばれる。非伝導体は電気の実験で電気を運 び去らずに帯電した物体を支えるために使われる。このとき、それらは絶縁 体と呼ばれる。
金属はよい導体である。空気、ガラス、樹脂、グッタペルカ、エボナイト、
パラフィン、その他はよい絶縁体である。しかし、後で見るように、すべて の物質は電気の通過に抵抗し、すべての物体は、まったく異なる程度ではあ るが、電気が通ることを許す。この問題は電気の運動の取り扱いに来たとき
考えることとする。いまのところ、二種類の物体、よい導体とよい絶縁体の みを考えよう。
実験IIでは帯電した物体は非伝導媒質である空気によって金属容器から分 離されて、金属容器のなかで電気を生成している。これらの電気的な効果を p. 35
伝導なしに伝える媒質が考えられる。そのような媒質はファラディによって 誘電物質と呼ばれ、それをとおして生じる作用は誘導と呼ばれる。
実験IIIでは帯電した容器が第二の金属物体に導線の媒質をとおして電気 を生成した。導線が取り除かれたとし、帯電したガラス片を触ることなく容 器から取り出し、十分に離れた所へ動かすとする。第二の物体はいまだガラ ス電気を示すが、容器はガラスが取り除かれたとき、樹脂電気を持つであろ う。そのとき、もし導線を持ってきて両物体を接触させると、導線にそって 伝導が起こり、全帯電は両物体から消える。これは2つの物体の帯電は等し く反対であることを示す。
30.] 実験V.実験IIで、もし樹脂で擦られて帯電したガラス片が絶縁され た金属の容器のなかで吊下げられているなら、容器の外側で観測される帯電 はガラスの位置に依存しないことが示された。そこで、ガラスを摩擦したそ の樹脂片を同じ容器にガラス片や容器に触らずに入れると容器の外側では帯 電がなくなることが分かる。このことから樹脂の帯電は正確にガラスのそれ に等しく反対であると結論する。任意の方法で帯電した任意の個数の物体を 入れることにより、容器の外部の帯電は樹脂を負と勘定してすべての帯電の 代数的な総和によることが示すことができる。このようにして、それらの帯 電を変えることなく、いくつかの物体の電気的な効果を加える実質的な方法 を持つ。
31.] 実験VI.第二の絶縁された金属の容器、B、が与えられているとし、
帯電したガラス片を第一の容器、A、に入れ、帯電した樹脂片を第二の容器、
B、に入れたとする。二つの容器を実験IIIでしたように金属によって連結し
ておく。帯電のすべての兆候は消えるであろう。
次に、導線を取り除き、ガラス片と樹脂片をそれらに触れることなく容器か ら外へ出そう。Aは樹脂帯電しBはガラス帯電することが分かるであろう。
さてガラスと容器Aが大きな絶縁された金属の容器 Cの中へともに入れ られたなら、C の外側では帯電はないことが分かる。これはA の帯電はガ p. 36
ラス片の帯電に正確に等しく反対であることを示し、Bのそれは同じように して樹脂片のそれに等しく反対であることが示される。
こうして私たちは容器を帯電した物体の電気量と正確に同じ大きさで反対 の電気量で、後者の帯電を変えることなく、荷電する方法を手に入れ、この ようにして、任意個の容器をどちらかの種類の正確に同じ大きさの電気量で 荷電することができる。その電気量を私たちは暫定的な単位とすることがで きる。
32.] 実験VII.しばらくのあいだ 1単位と呼ぶ、ある正の電気量が荷され た容器B を大きな絶縁された容器C の中に、その容器に触れることなく入 れるとする。B は C の外面に正の帯電を生成する。ここでBを C の内部 で接触させる。外部の帯電のいかなる変化も観測されない。そのとき、Bが Cから触れることなく取り出され、十分な距離まで取り除かれたなら、Bは 完全に電荷を消され、Cは 1単位の正の電気を帯びるようになっている。
こうしてB の電荷をC に移す方法を手に入れた。
さてB が1 単位の電気で再び荷電され、既に荷電されたC に入れられ、
C の内部で接触させられ、そして取り除かれたとする。 B は再び完全に電 荷を消され、したがってCの電荷が2倍になったことが分かるであろう。
この過程が繰り返されたなら、いかに高く C が以前に電荷を帯びていて も、そしてどのような方法でBが荷電されても、まずBが完全にC に囲ま れ、つぎにCに接触させられ、最後にC に触れずに取り除かれたなら、B の電荷は完全にCに移され、B はまったく帯電がなくなる。
この実験は任意の個数の電気の単位で物体に電荷を帯びさせる方法を示し ている。私たちが電気の数学理論に来たとき、この実験結果が理論の正しさ の精密な検証を与えることが分かるだろう註4。 p. 37
33.] 駆電力の法則の研究に進む前に既に確立した事実を数え上げておこう。
絶縁された中空の伝導性の容器の中に任意の帯電した系を置き、容器の外 側で起こる合成された効果を検証することにより、異なる系の物体間で電気 を伝えることなく、内部におかれた系の全帯電の性質を確かめている。
註4{以前の実験を疑う余地のないものにするため乗り越えなければならない困難は非常に大き く、ほとんど越せないものである。しかしながら、彼らの記述はきわめて印象的な方法で電気の 性質を説明するのに役に立つ。実験Vでは外部容器の帯電を測定できるいかなる方法も与えら れていない。}