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静圧上昇と静圧効率改善の要因考察

第 3 章 小型軸流ファンの翼端漏れ渦の静圧上昇と静圧効率への影響

3.4 静圧上昇と静圧効率改善の要因考察

初期形状と最適形状の違いは流量係数Φ = 0.21における翼端漏れ渦の崩壊の有無,

翼端漏れ渦の隣の翼への干渉,逆流領域の広さであることがわかった.さらに,これ らが全圧損失係数ζp の高い領域の違いとなって静圧上昇と静圧効率に影響を及ぼす ことがわかった. Jeong(20)らの研究では計算した全てのケースで渦崩壊が見られたが,

比較的渦崩壊が弱いケースでは全圧損失係数ζp の高い領域が狭くなり効率が改善し たと報告しており,本研究と同様の傾向が示されている.これらをふまえて,最適形 状が初期形状に比べて静圧上昇と静圧効率が改善した要因について考察する.

初期形状は表 3.1 で示したように翼端の翼出口角βb2が最適形状に比べて小さいた め翼端の負荷が大きく,図 3.5 で示したように逆流が発生する.これにより図 3.7 で 示したように入射角が大きくなり,図 3.3 で示したように翼端漏れ渦は前縁付近から 巻き上がる.翼端漏れ渦は図 3.5で示した逆流により上流側に押し戻される.翼端漏 れ渦の軌跡は周方向に傾くため,渦は周方向の大きな逆圧力勾配によって崩壊する.

渦は隣の翼の圧力面にも影響を及ぼし,渦中心付近の逆流領域は翼間全体に広がる.

特に渦崩壊した領域には強い逆流が生じる.これにより図3.6 で示したように全圧損 失係数ζpが増大し,静圧上昇と静圧効率が低下する.

最適形状は表 3.1 で示したように翼端の翼出口角βb2が初期形状に比べて大きいた め翼端の負荷が小さい.これにより図 3.5 で示したように翼端付近の逆流は弱く,翼 端漏れ渦は上流側に押し戻されることはなく,逆流領域も翼間全体には広がらない.

これにより図 3.6 で示したように全圧損失係数ζp の高い領域は渦中心のみにとどま るため静圧上昇と静圧効率は低下しない.図 3.7で示したように最適形状の入射角は 小さいため,図 3.3 で示したように翼端漏れ渦は前縁よりも下流側で巻き上がる.翼 端漏れ渦は崩壊せずに翼間を通過し隣の翼とは干渉しない.最適形状の翼枚数は5枚 で初期形状の7枚よりも少ないため翼間のピッチは 7/5倍大きい.このピッチの違い が翼端漏れ渦の隣の翼への干渉を抑制する効果にもなっている.一方,最適形状は翼 端の負荷が小さい設計であるため弦節比σを初期形状と同一とすると理論全圧を確保 できない.そこで最適形状は表3.1で示したように翼代表半径Meanと翼端Tip の弦 節比σを大きくすることにより理論全圧を確保している.

以上により静圧上昇と静圧効率改善の要因は,翼端の翼出口角βb2の増加,弦節比 σの増加,翼枚数の低減であるといえる.これにより翼端漏れ渦の崩壊が抑制され,

逆流領域が狭まるため全圧損失係数が低減する.

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Suction surface

Pressure surface

Rotation

Suction surface Initial fan

Rotation

Pressure surface

Tip leakage vortex core

Tip leakage vortex core

H

n

1.0

-1.0

Optimized fan

図 3.3 初期形状と最適形状での渦中心の比較

小型軸流ファンの翼端漏れ渦の静圧上昇と静圧効率への影響

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Initial fan

Rotation

w/u

t

Expansion and stagnation

Optimized fan

Rotation

No expansion and stagnation

0.5

0.0

図 3.4 初期形状と最適形状での渦中心まわりの流線の比較

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Initial fan

Rotation

C z /u t

Optimized fan

Rotation

0.0 0.5

-0.5

図 3.5 翼端付近R/Rt=97%を通る円筒断面での軸流速度Cz

小型軸流ファンの翼端漏れ渦の静圧上昇と静圧効率への影響

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ζ p

Initial fan

Optimized fan

Rotation

1.0

0.0 Tip leakage vortex core

Tip leakage vortex core Rotation

図 3.6 全圧損失係数ζpの分布

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Incidence angle

Incidence angle Pressure surface

Suction surface

Pressure surface

Leading edge

Leading edge

Initial fan

Optimized fan Suction surface

図 3.7 初期形状と最適形状のR/Rt=97%を通る

円筒断面での翼端前縁付近の相対速度ベクトル

小型軸流ファンの翼端漏れ渦の静圧上昇と静圧効率への影響

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