第 4 章 実験体系
4.1 実験装置
4.2.3 電流引き出し実験
DECIGOでは0.1~100μNというかなり小さい推力の制御が求められるため,低流量の推
進剤で,そして,低電力で安定して十分なプラズマを維持できるようにイオン源 B を採用 した.さらに,このイオン源Bにduty比制御に用いたグリッドAよりも,イオンビーム発散 角が小さいグリッド B を取り付けて実験を行った.これによって,より安定したイオンビ ームを引き出すことができる.グリッドのイオン放出口の前方に電子コレクタを設置し, このイオン源とグリッドに投入したマイクロ波の電力と引き出した電流値を測定した.
この実験は,推進剤にキセノンを使用し,推進剤流量は 0.05 sccm,マイクロ波周波数は 1.6 GHz,圧力0.6×10−5 Torrの条件のもと行った
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参考文献
(4-1) 杉田健策:小型マイクロ波放電式イオンスラスタのマイクロ波周波数依存性,平成 23年度,九州大学修士論文
(4-2) FAST HIGH VOLTAGE TRANSISTOR SWITCHES
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第 5 章 実験結果・考察
5.1 実験結果
5.1.1 信号による電圧引き出し実験結果
実験結果を図5.1と図5.2に示す.信号の電圧をSignal ,引き出された電圧をOutput とし た。
図5.1 100 Hzの信号
図5.2 200 Hzの信号
100 Hz,200 Hzどちらの場合でも,回路に加えた信号により出力された電圧のグラフか
ら電圧と信号が同じタイミングになることが確認できた.
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5.1.2 duty 比可変範囲の測定結果
実験結果を図5.3~図5.6に示す.
図5.3 信号と電流 (100 Hz) 図5.4 信号と電圧 (100 Hz)
図5.5 信号と電流 (1 kHz) 図5.6 信号と電流 (duty比99.9%)
図5.3と図5.4は,回路にduty比が20%,周波数が100 Hzの信号を印加した結果である.
あらかじめ,スクリーングリッドには電源から500Vの電圧がかかっており,アクセルグリ ッドに信号によって500Vの電圧が印加されたときには,スクリーングリッドとアクセル グリッドの間の電位差が0Vになり,電流が流れていない.逆に,信号が無く,アクセルグリ ッドに印加される電圧が0Vのときは,スクリーングリッドとアクセルグリッドの間に電 位差500Vが生じ,電流が引き出されていることが実験から確認することができた.
図5.5は,回路に1 kHzの信号を印加した結果である.正常に電流が引き出せている図 5.3と比較して,電流の引き出しの立ち上がりになまりができ,尐しの遅れやノイズが生じ る結果となった.
図5.6は,回路にduty比が99.9%の信号を印加した結果である.このときも,周波数を高 くしたときと同様に,電流の引き出しに尐しの遅れやノイズが生じた.これによって,この 回路に印加させるduty比の可変範囲は1~100%の100倍の範囲であることが確認でき た.
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5.1.3 電流引き出し実験結果
実験結果を図5.7に示す.
図5.7 マイクロ波の投入電力と引き出した電流
電流引き出し実験の結果として,マイクロ波の投入電力2W,推進剤流量0.05 sccmでは 35μAと,目標値3 mAの約1/100の電流しか引き出すことができなかった.
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5.2 考察
実験それぞれについて考察する.
1つ目の信号による電圧の引き出し実験では実験結果のとおり,周波数を変化させて も,与えた信号と同じタイミングで電圧を引き出すことができ,正常に HTS transistor
switchで制御することができていることが確認できた.
2つ目の duty 比の可変範囲の測定は,まず正常に電流を引き出せたときを考察する.か ら,duty比が20%,周波数が100 Hzの信号によって,アクセルグリッドに500 Vの電圧が引 き出されたとき,スクリーングリッドにはあらかじめ,電源から 500 V の電圧が印加され ており,電位差が0 Vとなるため,電流が流れないことが実験から確認することができた.
次に,正常に電流を引き出すことができなかったときを考察する.信号の周波数を 1 kHz,
duty 比を 99.9%にすると,実験結果のグラフからわかるように,電流の立ち上がりになま
りが見え,ノイズが入る結果となった.これはスイッチング間隔がきちんと制御できてい ないことが考えられるため, MOSFET に高速 MOSFET を採用し,スイッチの遮断時に生 じる過渡的な高電圧を吸収するためにスナバ回路を追加するとよいと考えられる.これ によって信号を切り替えた瞬間に生じたノイズを取り除くことができると考えられる.
3つ目の電流引き出し実験では,目標値の約1/100の電流しか引き出すことができなか った.この実験では低流量・低電力で安定してプラズマを維持できるようにイオン源Bを 使用した.しかし,イオン源Bはイオン源Aと比較してオリフィス径が小さいことなどの 要因でイオン源としては適していなかったことが考えられ,電子の引き出しには適して いたがイオンの引き出しには適していなかったと考えられる.
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第 6 章 結論と展望
本研究では,DECIGO に用いられる 0.1~100μN の推力の可変範囲があり, 2W,
0.05sccmで3 mAの電流を引き出すことのできるイオンスラスタについて研究した.
・信号を送るとその信号と同時に電圧を引き出すことができる回路を作成し,実験結果か らも回路が正常に働いていることが確認できた.
・duty比が20%,周波数が100 Hzの信号ではduty比を正常に制御することができ,電流の
引き出しにも成功した.
・推力の可変範囲については,目標値の1/10の可変範囲である100倍の可変範囲までduty を制御することができた.しかし,それ以上の duty 比では正常に電流を引き出すことが できなかった.
・実験を行ったduty比で正常に電流を引き出せるように, スイッチング時に生じていた ノイズを取り除くために回路に高速 MOSFET を使用し,合わせてスナバ回路を採用し, 回路を改良する必要がある。
・電流の引き出しについては,目標値の1/100までの電流しか引き出すことができなかっ た.
・低流量・低電圧で安定してプラズマを維持できるように採用したイオン源Bはイオン 源Aと比較してオリフィスの径が小さい.そのため,電子の引き出しには適していたが, イオンの引き出しには適しておらず,今回の実験では適していなかった.
・DECIGOに必要とされる推力がとても低いため,尐量の電流を引き出すためのプラズマ
を安定して維持することは難しい.