5.2 解析結果と考察
5.2.3 電子構造
図5.2にCuを外殻原子とするクラスターの断面の電子密度分布を示す.等高線間隔 は0.02 e/Å3としている.Cu単元系より大きなdetCIJを示したNi1Cu12,Ti1Cu12は,
Cu単元系のそれと似ているが,電子密度の拡がりが小さくなっており,クラスター内 部に電子が局在化している.Ti1Cu12は特にその傾向が顕著であるが,TiとCu間の密 度は低くなっているため,Ni1Cu12よりdetCIJ は小さくなったものと考える.Al1Cu12 も電子密度の拡がりはCu13に比べて小さくなっているが,中心原子と外殻原子の間の 結合が切れており,このために単元系よりも変形抵抗が減少したと考えられる.また,
中心原子をZrで置換すると,全ての原子間の電子密度が著しく低くなっており,原子 間の結合が切れて不安定となったものと考えられる.
図5.3はNiを外殻原子とするクラスターの電子密度分布である.やはり,中心原子 を置換すると,電子雲の拡がりが小さくなり,クラスター内の電子の局在化を生じて いる.Alで置換したときにAlへの電子の局在がなくなっているのは図5.2のAl1Cu12 と同じである.しかしAl1Ni12のdetCIJ はNi単元系よりは大きい値を示した.図5.2 と図5.3のAlで置換したクラスターでの分布を比べると,Niまわりに局在した電子は 円ではなく中心方向にわずかに配向している.不安定なZr1Ni12クラスターはやはり 原子間の結合が消滅している.
いずれも不安定である外殻原子がAlのクラスターは,図5.4に示すように中心原子 を置換しても各原子間に結合を生じていない.一方,図5.5および5.6に示したZr,Ti を外殻原子とするクラスターは,Cu,Ni,Alと異なりほぼ円形の分布を示す.断面に おいて外殻原子間の結合が存在すれば図5.2〜5.4のような分布になるので,Zr,Tiク ラスターでは外殻原子間の結合が極めて弱いことが示唆される.
図5.5,5.6中の丸で囲んだ部分は図4.8(b)で述べた外殻原子3つと中心原子の四面
体の中点に価電子を有する結合である.単元系のこの部分の電子密度は勾配がなく低 い値であるが,中心原子を置換して安定となったクラスターは明確な中心原子−外殻 原子間の強い結合をしている.結合部の電子密度はCu,Niが外殻原子である安定クラ スター中の直線的結合と比べて低い値であるが,クラスターのdetCIJ は近いオーダー である.これは四面体中心に電子を有する結合は4原子の間で形成されているため,2 原子間での直線的結合よりも変形抵抗を増加させやすい結合形状であるからと考えら
れる.
Stable
Zr1Cu12 0.4 (e/Έ)
0
3
Cut surface
Stable Stable
Stable
Ni1Cu12
Al1Cu12
Cu13
Ti1Cu12
Fig.5.2 Distribution of valence electron density in A1Cu12.
Zr1Ni12
0.4 (e/Έ)
0
3
Cut surface
Stable
Stable Stable
Stable
Cu1Ni12
Al1Ni12
Ni13
Ti1Ni12
Fig.5.3 Distribution of valence electron density in A1Ni12.
Zr1Al12 0.4 (e/Έ)
0
3
Cut surface
Ni1Al12
Cu1Al12
Al13
Ti1Al12
Fig.5.4 Distribution of valence electron density in A1Al12.
Cu1Zr12
0.4 (e/Έ)
0
3
Cut surface
Stable
Ni1Zr12
Al1Zr12
Zr13
Ti1Zr12
Stable
Fig.5.5 Distribution of valence electron density in A1Zr12.
Zr1Ti12
0.4 (e/Έ)
0
3
Cut surface
Stable
Stable Stable
Ni1Ti12
Al1Ti12
Ti13
Cu1Ti12
Fig.5.6 Distribution of valence electron density in A1Ti12.