第 5 章 確率変数
5.1 離散型の確率変数と確率分布
一つのさいころを投げる試行を考え,出る目をXで表せばX は 1から 6の値をとり,それ ぞれの値が出る確率は1/6である。 これを表にすれば以下のようになる。
X 1 2 3 4 5 6 確率 16 16 16 16 16 16 一般に,変数 X のとり得る値が
x1, x2, . . . , xk
であり,Xがこれらの値をとる確率が, それぞれ p1, p2, . . . , pk
と定まっているとき,X を離散型確率変数(random variable)という。すなわちpi =P(X =xi), (i= 1,2, . . . , k) である。x1, x2, . . . , xk と p1, p2, . . . , pk の対応関係を, 確率変数 X の確率分布 という。当然p1+p2+· · ·+pk= 1 が成り立っている。
2つのさいころを投げたときの目の和を Z で表そう。Z も離散型の確率変数である。Z の確 率分布は以下のようになる。
Z 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
確率 361 362 363 364 365 366 365 364 363 362 361
説明:Z = 2 となるのは(1,1) の場合のみ(つまり最初の目が1で二番目の目が1)であり,
すべての可能な結果は36通りであるから確率は 361 である。Z = 3 となるのは(1,2), (2,1)の 二通りであるから確率は 362 である。他の確率も同様に求められる。
1 2 3 4 5 6 1/6
図5.1 さいころの目の確率分布
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1/36
図5.2 2個のさいころの目の和の確率分布
離散型確率変数とその確率分布の例を考えてみよう。一方の面に0,他方の面に1と書いてあ るカードが4枚あるとする。カードを投げてどちらの面が表になる確率も1/2である。表にな る面の数字に着目すれば,この試行の結果は(0,0,0,0),(0,0,0,1), . . . ,などで表され全部で16通 りある。これら16通りの結果の確率はすべて同じ, すなわち1/16と考えよう。4枚のカードを 投げたときに表の面の数字の和をXで表せば, Xは確率変数で, Xの確率分布は以下のように なる。
X 0 1 2 3 4 確率 1/16 4/16 6/16 4/16 1/16 Xの確率分布を以下ように線分を用いて表すと理解しやすい。
0 1 2 3 4
1 16
2 16
4 16
6 16
図 5.1: Xの確率分布
期待値 , 分散 , 標準偏差
X は離散型確率変数とし, とりうる値が x1, x2, . . . , xk であるとする。また pi =P(X = xi) とする。このとき
E[X] =
∑k
i=1
xipi (5.1)
を X の期待値(expected value)またはXの確率分布の平均という。期待値はX の確率分布の
中心を表す値であり, 確率分布のグラフの重心になっている.
例 5.1. 上で定義した4枚のカードの数字の和Xの期待値を計算すると E[X] = 0× 1
16 + 1× 4
16+ 2× 6
16 + 3× 4
16+ 4× 1
16 = (0 + 4 + 12 + 12 + 4)/16 = 2 となる。
X が離散型の確率変数であれば,関数gで変換したg(X)も離散型の確率変数である。E[g(X)]
を求めるには以下の公式が便利である(証明は省略)。
E[g(X)] =
∑k
i=1
g(xi)pi (5.2)
期待値の性質
✓ ✏
X は確率変数,a, bは定数であるとする。
(a) E[aX+b] =aE[X] +b
(b) 二つの確率変数X, Y に対して E[X+Y] = E[X] + E[Y]
✒ ✑
証明(a)の証明は容易。(b)の証明は本章後半に行なう。
確率変数がどのくらいばらつくのかを測る特性値として,確率変数の分散がよく使われる.確 率変数X の分散(variance)は
V[X] = E[
(X−E[X])2]
で定義される。g(x) = (x−E[X])2 とおいて公式(5.2)を用いれば, V[X] =
∑k
i=1
(xi−E[X])2pi = (x1−E[X])2p1+· · ·+ (xk−E[X])2pk
さらに,期待値の性質(d)を使えば,次式が成り立つこともわかる。
定理 5.1. 確率変数Xの分散について以下が成り立つ.
V[X] = E[X2]− {E[X]}2 (5.3)
証明:
V[X] =E[
(X−E[X])2]
=E[
X2−2E[X]X+ E[X]2]
=E[ X2]
−2E[X]E[X] + E[X]2
=E[ X2]
−E[X]2 ✷ 分散のプラスの平方根を標準偏差という
分散の性質
✓ ✏
a と b は定数であるとする。
(a) V[a] = 0
(b) V[aX+b] = a2V[X]
✒ ✑
証明:(a) E[a] =a だから
V[a] = E[(a−E[a])2] = 0定数の分散は0 (b) E[aX+b] = aE[X] +b だから
V[aX+b] = E[
(aX+b−(aE[X] +b))2]
= E(a2(X−E[X])2) =a2V[X] ✷
例題 5.1. 一つのさいころを投げて出る目を X とする。 このとき以下の問に答えなさい。
(1) E[X] を求めよ。 (2) E[X2] を求めよ。
正解:(1) 期待値の定義を用いて以下のように計算できる。
E[X] = 1× 1
6 + 2× 1
6+ 3×1
6 + 4× 1
6 + 5× 1
6+ 6×1 6 = 3.5
(2) 公式(5.2)を使って以下のように計算できる。
E[X2] =12× 1
6+ 22×1
6 + 32 ×1
6 + 42× 1
6 + 52× 1
6+ 62× 1 6
=1
6(1 + 4 + 9 + 16 + 25 + 36) = 15.17 小数点第2位で四捨五入した
代表的な離散型確率分布
離散型一様分布
(5.4)で与えられる確率分布を離散型一様分布という. つまり有限個の値を等しい確率でとる
分布が離散型一様分布である.
✓ ✏
離散型一様分布
P(X =i) = 1
k (i= 1,2, . . . , k) (5.4)
平均 k+1
2 , 分散 (k−1)(k+1)
✒ 12 ✑
二項分布
試行をn回繰り返すことを考える. 各試行の結果は2つだけである(便宜上「成功」, 「失 敗」と呼ぶ)とする. さらに, n回の試行は独立であるとする. このような試行の繰り返しをn 回のベルヌーイ試行という.
今, n回のベルヌーイ試行を行い, 成功が起こる回数をXで表せばXは1,2, . . . , nの値をと る離散型確率変数である.Xの確率分布は以下の式で与えられる.
P(X =k) = nCkpk(1−p)n−k (k= 0,1, . . . , n)
この分布は二項分布と呼ばれ,B(n, p)と表す.Xの確率分布が二項分布B(n, p)であるときに,
XはB(n, p)にしたがうといい,X ∼B(n, p)と書く.
✓ ✏
二項分布 B(n, p)
P(X =k) = nCkpk(1−p)n−k (k = 0,1, . . . , n) 平均: np, 分散: np(1−p)
✒ ✑
以下に, n = 5で, 異なるpの二項分布を図示した. 二項分布のnとpのように確率分布を定め る定数をパラメーターという.
0.1 0.2 0.3 0.4
0 1 2 3 4 5
B(5,0.2)
0.1 0.2 0.3 0.4
0 1 2 3 4 5
B(5,0.5)
0.1 0.2 0.3 0.4
0 1 2 3 4 5
B(5,0.8)
問題
問題 5.1.1. 確率0.005で当たり(100万円がもらえる), 確率0.995ではずれの宝くじがあると する. この宝くじを買うとき, 受け取る金額の期待値を求めよ.
問題 5.1.2. サッカーのリーグ戦では試合の結果に応じて勝ち点が得られる. 勝ち点は, 負けの
とき0点, 引き分けのとき1点, 勝ちのとき3点である. AチームがBチームと試合をするとき, Aチームが負ける, 引き分ける, 勝つ確率はそれぞれ0.2, 0.3, 0.5である. Aチームがこの試合 で得る勝ち点Xの期待値を求めよ.
問題 5.1.3. あるバスケットボールの選手がフリースローを行うときの成功確率は0.8であると
する. この選手が10回フリースローを行うときの成功回数をXとする. Xの確率分布は何か.
また, Xの期待値を求めよ.