第 3 章 集中の深さに着目した作業集中モデルと 知的生産性評価手法の提案知的生産性評価手法の提案
3.2 知的生産性の定量的評価手法
3.2.4 集中指標の算出
3.2.3項で述べた解析手法によって求められたパラメータを表3.1にまとめる。解答
時間の期待値E1、E2は式3.3で、集中の時間T1、T2は式3.4で算出される。
Ek=eµk+σk
2
2 (k = 1,2) (3.3)
Tl =El·Nl(l= 1,2) (3.4)
表 3.1: 算出されるパラメータ パラメータ 意味
N 総解答数
T 総解答時間
N1 第1位集中での解答数
E1 第1位集中の解答時間期待値 T1 第1位集中の時間
N2 第2位集中での解答数
E2 第2位集中の解答時間期待値 T2 第2位集中の時間
本研究ではこれらのパラメータを用いて、CT Rより多くの集中を評価して集中時間 比率を表す値として算出される指標M CT R(Multi-Concentration Time Ratio)と、集 中時間全体に占める第1位集中の支配率を表す値として算出される指標 CDI(Concent-ration Depth Index)を開発した。M CT Rの算出方法を式3.5に、CDIの算出方法を 式3.6に示す。これらの指標は3.2.1項で述べたように、既存指標CT Rの算出過程で は考慮できなかった集中の深さの変化を反映した指標である。M CT Rのイメージを図 3.19に、CDIのイメージを図3.20に示す。
M CT R= T1 +T2
T (3.5)
CDI = T1 T1+T2
(3.6)
第 2 位集中までの時間比率 (Multi Concentration Time Ratio)
70% ・・・
第1位 集中
第2位
集中 長期休息状態
総解答時間
図 3.19: 集中の時間指標M CT R
第 1 位集中の支配率 CDI (Concentration Depth Index)
54%
𝐶𝐷𝐼 = 𝑇
1𝑇
1+ 𝑇
2第1位 集中
第2位
集中 長期休息状態
𝑇
1𝑇
2総解答時間 𝑇
図 3.20: 集中の深さ指標CDI
集中時間を表す指標M CT Rは、作業時間全体において第1位集中と第2位集中を遷 移した時間の合計が占める割合を表しており、第3位集中やそれより浅い集中状態を非 集中状態とみなした場合の全集中時間の比率を意味している。集中時間が長いほどこ の指標は大きな値を持ち、実際の作業の遂行は集中状態で行われているため、M CT R が大きいほど知的生産性が高いと考えられる。第1位集中のみを評価対象としていた 既存指標CT Rと比べ、新たに第2位集中を評価できていることから、M CT RはCT R より執務者の多様な状態を対象に集中時間比率を表せていると言える。
集中の深さを表す指標CDIは、第1位集中と第2位集中を遷移した時間の合計にお いて第1位集中を遷移した時間が占める割合を表しており、2番目に深い集中までの時 間に占める最も深い集中時間の支配率を意味している。深い集中の時間が長いほどこ の指標は大きな値となり、集中が深いほど作業速度が高く作業内容が高次化している ため、集中時間の長さが同じであってもCDIが大きいほど知的生産性が高いと考えら れる。図3.21は、第1位集中が第2位集中より支配的であり、CDIが50%より大きい 解答時間ヒストグラム、図3.22は、第2位集中が第1位集中より支配的であり、CDI が50% より小さい解答時間ヒストグラムの例を示す。
40
30
00 2 4 6 8 10
20
10
解答頻度
解答時間(s)
図 3.21: 第1位集中が支配的なヒストグラム例
さらに、M CT RとCDIを同時に参照すると、式3.7に示すように作業時間全体に 占める第1位集中の時間割合を求めることができる。例えば、2つの解析結果を比較検 討する際、一方のM CT RとCDIの値が共に上がっていれば式3.7の値も上がり、第
60
00 2 4 6 8 10
40
20
解答頻度
解答時間(s)
図 3.22: 第2位集中が支配的なヒストグラム例
1位集中の時間が長くなっているため知的生産性が向上したと推察できる。
M CT R×CDI = T1
T (3.7)
以上のように、既存指標CT Rでは評価できなかった集中の深さの変化を、新指標 CDIによって評価できるようになる。さらに、M CT RとCDIを共に用いることで、
知的生産性を新たな観点から評価することが可能になる。