6.3. 結果と考察
6.3.1. 陽イオン交換クロマトグラフィーによる Pm の精製
s1.1
に対して行った1
段目の陽イオン交換クロマトグラフィー分離における 各分画の放射能及びクロマトグラムを図6.3.1
に示した。(a)(b)(c)すべての図に おいてSm
のピークがリーディングしていることが分かる。図6.3.1(b)及び(c)に
おいてPm
がほぼ正常なピーク形状をしていることから、リーディングの原因はSm
の量が多いために起きていると考えられる。また143
Pm
と145Sm
の全分画における放射能、回収した成分の放射能、及び回 収率を分離条件と共に表6.3.1
に記載した。なお、1
回目の分離においては72
分 までの分画について線測定を行えなかったため、1 回目の 145Sm
の全分画の放 射能として、s1.1
の全放射能から2
回目、3
回目の全分画の放射能及び3
回の分離後の
s.1.1
残留物の放射能を差し引いた値を採用している。各回の
Pm
が溶出しきるまでの時間を比較すると、1-3 回目でそれぞれ140,
100, 80
分程度であり、各回のPm
の回収率は1
概ね95-97%と非常に高くなって
いる。Sm の回収率(残留率)は
Pm
の溶出時間が短くなるにつれ20%程度から 2.5%程度ずつ上昇している。
Sm
の残留率は1
回目と3
回目で5%程しか異ならないため、分離時間が短く
溶離剤の使用量が少なくなる3
回目に近い条件で分離を行う事が適切であると66
判断した。
また、
1
回目において反応液の流速を0.2 mL·min
-1で分析を行っていたところ 反応液が塩基性であるため溶出液に水酸化物沈殿が認められたため、2
回目以降 では反応液の流速を0.1 mL·min
-1に下げた。この条件では沈殿の生成が認めら れなかったことから、この条件が適切であると判断した。反応液の流量を低下さ せたことにより、Sm
との錯形成が十分でなくなることからクロマトグラムからSm
の保持時間を求めることはできなくなることも予想され、反応液を用いない 手段も検討したが、少なくともSm
が溶出し始める時間についての情報は得られ るため、反応液は引き続き用いることにした。67
(a) (b)
(c)
図
6.3.1 s1.1
の1
段目の陽イオン交換クロマトグラフィーにおける各分画の放射能及びクロマトグラム(a)1回目, (b) 2回目, (c) 3回目
0 0.1 0.2 0.3 0.4
0 20 40 60 80 100 120 140
Retention time[min]
Intensity [V]
0 1 2 3 4 5 6
Sm-145 Pm-143
Radioactivity [kBq]
0 0.1 0.2 0.3 0.4
0 20 40 60 80 100
Intensity [V]
Retention time[min]
0 2 4 6 8 10
Sm-145 Pm-143
Radioactivity [kBq]
-0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1
0 50 100 150
Intensity [V]
Retention time[min]
0 1 2 3 4 5
Sm-145 Pm-143
Radioactivity [kBq]
68
サンプル名 溶離剤 反応液流量( mL・min-1 ) 分画した成分の 溶出時間 (min) 回収した成分の 溶出時間 (min) 核種145 Sm143 Pm145 Sm143 Pm145 Sm143 Pm 全分画の放射能 [kBq](2.96±0.02)×101 (4.19±0.03)×101 (2.70±0.03)×101 (4.15±0.03)×101 (2.44±0.03)×101 (3.97±0.04)×101 回収した成分の放射能 [kBq]6.2±0.1(4.00±0.03)×101 6.3±0.1(3.96±0.03)×101 6.4±0.2(3.84±0.04)×101 回収率 [%]20.9±0.495±123.2±0.596±126.2±0.797±1 s1.1 -HIBA 0.4 M (pH=5.07 )
1回目 -HIBA 0.32 M (pH=5.07 )-HIBA 0.4 M (pH=4.52 )
2回目3回目 0.1 28-98 62-82
0.2 38-150 112-150 82-10830-126
0.1
表6.3.1 s1.1の1段目各回の陽イオン交換クロマトグラフィーにおける分離条件と
全分画における放射能、回収した成分の放射能、及び回収率
69
次に試料
s.1.2
及びs1.3
の結果について述べる。s1.2, s1.3
の1
回目の陽イオン交換クロマトグラフィー分離によって得られた各分画の放射能及びクロマトグラムをそれぞれ図
6.3.2、
図6.3.3
に示した。また、それぞれの
1
回目の分離における全分画の放射能、回収した成分の放射能、及 び回収率を分離条件と共に表6.3.2
に記載した。s.1.2
では更なる溶出時間の短縮を期待しpH
を5.25
に上げたが、s1.1 の3
回 目の分離と比べPm
が溶出しきるまでの時間は6
分程度しか短縮されなかった。また、溶離剤の
pH
を上げすぎると水酸化沈殿が生成する可能性もあることか ら、以降はこの溶離剤の条件で固定し分離を行った。そのため、溶出挙動を調べ るのは、1回目のみとして2, 3
回目については回収のみを行った。s1.2
とs1.3
の溶出挙動を比較すると、溶離剤等の条件は同じでありながらs1.3
の方が
Pm
の溶出が遅い。これは、s1.2
の1
回目の陽イオン交換クロマトグラフ ィーに導入されたSm
の量が少ないため、溶離剤との相対的な濃度が低くなり起 こったと考えられる。s1.2, s1.3 について1
回目の分離実験で回収できたPm
は それぞれ83%, 98%となり、また残留した Sm
は15%, 24.5%となった。
70
0 0.2 0.4 0.6 0.8
0 20 40 60 80 100
Intensity [V]
Retention time[min]
0 5 10 15 20 25
Sm-145 Pm-143
Radioactivity [kBq]
0 0.2 0.4 0.6 0.8
0 20 40 60 80 100
Retention time[min]
Intensity [V]
0 10 20 30 40 50 60
Sm-145 Pm-143
Radioactivity [kBq]
図6.3.2 s1.2の1段目1回目の陽イオン交換クロマトグラフィーにおける
各分画の放射能及びクロマトグラム
図6.3.3 s1.3の1段目1回目の陽イオン交換クロマトグラフィーにおける
各分画の放射能及びクロマトグラム
71 サンプル名
溶離剤 反応液流量( mL・min-1)
分画した成分の 溶出時間 (min) 回収を行った成分の
溶出時間 (min)
核種 145Sm 143Pm 145Sm 143Pm 全分画の放射能 [kBq] (5.56±0.07)×101 (9.5±0.1)×101 (1.11±0.01)×102 (2.05±0.02)×102 回収した成分の放射能
[kBq] 8.3±0.2 (7.8±0.1)×101 (2.7±0.1)×101 (2.01±0.02)×102 回収率 [%] 15.0±0.5 83±1 24.5±0.8 98±2
64-80 68-88
s1.2 s1.3
0.1 0.1
30-90 30-90
1回目 1回目
-HIBA 0.4 M (pH=5.25 ) -HIBA 0.4 M (pH=5.25 )
表6.3.2 s1.2及びs1.3の1段目1回目の陽イオン交換クロマトグラフィーにおける
分離条件と全分画における放射能、回収した成分の放射能、及び回収率
72
2
段目の1
回目及び3
回目における陽イオンクロマトグラム及び分画の放射 能を図6.3.4、各回における
143Pm
と145Sm
の全分画の放射能、回収した成分の放 射能、及び回収率を分離条件と共に表6.3.3
に示した。回収率については、2 回 目の分離においてSm
の溶出し始めた分画からの回収が行えていないため、1
回 目及び3
回目のみを記載した。なお、1回目は試料の導入量を1 mL
として分離 を行ったが、2回目と3
回目については導入量を0.5mL
としている。1
回目について、44-70 分までの分画について回収を行うとPm
はほぼ100%
回収され、
Sm
の残留率は47%となった。この分離においても Sm
がリーディン グしているため、試料の導入量を減らし、2回目と3
回目の分離を行ったがSm
のピーク形状は改善しなかった。1
回目と3
回目を比較すると、Sm
の残留率が61%と上がってしまっているた
め、溶離剤のpH
を下げるか溶離剤の濃度を下げることが望ましい。73
(a) (b)
図
6.3.4 2
段目の陽イオン交換クロマトグラフィーにおける各分画の放射能及びクロマトグラム (a)1回目, (b) 3回目
0 0.1 0.2 0.3 0.4
0 10 20 30 40 50 60 70
Retention time[min]
Intensity [V]
0 20 40 60 80 100
Sm-145 Pm-143
Radioactivity [kBq]
0 0.2 0.4 0.6 0.8
0 10 20 30 40 50 60
Intensity [V]
Retention time[min]
0 10 20 30 40 50
Sm-145 Pm-143
Radioactivity [kBq]
74
溶離剤 反応液流量( mL・min-1 ) 分画した成分の 溶出時間 (min) 回収を行った成分の 溶出時間 (min) 核種145 Sm143 Pm145 Sm143 Pm145 Sm143 Pm 全分画の放射能 [kBq](3.31±0.06)×101 (2.26±0.03)×102 --(2.41±0.04)×101 (1.26±0.02)×102 回収した成分の放射能 [kBq](1.57±0.04)×101 (2.26±0.03)×102 2.4±0.1(1.03±0.02)×102 (1.46±0.04)×101 (1.25±0.02)×102 回収率 [%]47±2100±2--61±2100±2
44-7042-6234-60
0.10.10.1 32-7042-6224-60 1回目2回目3回目 -HIBA 0.4 M (pH=5.25 )-HIBA 0.4 M (pH=5.25 )-HIBA 0.4 M (pH=5.25 )
表
6. 3.3 2
段目各回の陽イオン交換クロマトグラフィーにおける全分画に おける放射能、回収した成分の放射能、及び回収率75
分離前及び
2
段階分離後の放射能、Sm2
O
3(分離後は換算)の重量、分離後の回収率、及び Sm
2O
3に対する143
Pm
の放射能濃度を表6.3.4
に示した。Pm
は約41%回収され、残留した Sm
は4.4%となった。実験の一部で試料をロ
スしたため、
2
段階の陽イオンクロマトグラフィー分離の回収率よりも低い値と なっている。これはSm
も同様である。よって、
Sm
2O
3に対する放射能濃度で考えると、分離前後でそれぞれ0.359 kBq
·mg-1
, 3.3 kBq·mg
-1 となり、この分離操作によって放射能濃度が9.3
倍まで向上 した。核種 145Sm 143Pm 145Sm 143Pm
放射能 [kBq] (7.4±0.3)×102 (1.11±0.02)×103 (3.28±0.06)×102 (4.54±0.04)×102 回収率 [%] - - 4.4±0.2 40.8±0.8 Sm2O3(換算)の重量 [g]
Sm2O3に対するPmの放射 能濃度 [kBq·mg-1]
分離後
0.137±0.005 3.3±0.1 0.359±0.06
3.10338 分離前
表
6.3.4
分離前及び分離後のPm
及びSm
の放射能及び回収率と分離前後における
Sm
2O
3重量とPm
の放射能濃度76