図
7.3.1
にUV
でモニタしたPm
m@C
2nを含む溶液のクロマトグラムを示した。クロマトグラムの
56-60
分までのピークは合成に用いた金属元素及び保持時間 を考慮して、La@C82の溶出ピークであると推定できる。図
7.3.2
に56-66
分のクロマトグラム及び分画した成分中の139Ce
及び143Pm
の 放射能測定を行った結果を示した。143
Pm
の56.73-60.73
分までのピークは4, 5
章と同じくPm@C
82のピークであ る。この分画の143Pm
の放射能と、炭素棒に導入した143Pm
の放射能、及びPm@
82の収率を139
Ce
の結果と共に表7.3.1
に示した。Pm@C
82の収率は(2.8±0.1)×10-3%となり 4, 5
章の(0.28±0.06)×10-3% , (0.20
±0.2)×10-3
% と比較すると収率が約 10
倍に向上している。これは、Sm を除 去した結果、金属内包フラーレンの生成過程においてSm
の影響が小さくなり、またキャリアとしての
La
の影響が大きくなったため向上したものだと考えられ る。また
Pm@C
82溶出後にピークトップ62.07
分及び63.40
分のピークが現れてい る。保持時間63.40
分のピークは139Ce
においてもみられることから、Pm@82の 構造異性体であるPm@C
82(Ⅱ)に由来するものである考えられる。
保持時間62.07
分の成分については現段階では不明であるため、本実験のみに現れたピークで82
あるかどうかを確認するためにも今後
Pm
m@C
2n合成を再び行い、HPLC 分析を することでピークの再現性があるかを確認する必要がある。La@C
82, Ce@C
82, Pm@C
82 の保持時間を比較すると、それぞれ56.48, 58.40±
0.17
及び58.73±0.17
分であることから、M@C
82フラーレンは内包金属の原子番 号が増加すると溶出が遅くなることが分かった。139
Ce
143Pm
導入した試料の放射能
[kBq] 422±6 168±5
Ln@C
82の放射能 [Bq] 19.6±0.2 4.8±0.2 収率 [10
-3%] 4.6±0.1 2.8±0.1
表
7.3.1 7.2
の実験で得られたPm@C
82,Ce@C
82の収率83 0
200 400 600 800 1000 1200
0 10 20 30 40 50 60 70 80
UV
U V i nt e ns ity [ m V ]
Retention Time [min]
0 200 400 600 800
56 58 60 62 64 66
UV
U V i nt ens ity [ m V]
Retention Time [min]
0 0.5 1 1.5 2
Ce-139 Pm-143
N or m al iz ed R ad io ac ti vi ty
図
7.3.1 7.2
の実験で得られたPm
m@C
2nを含む溶液のクロマトグラム図
7.3.2 7.2
の実験で得られた56-66
分のクロマトグラム及び分画した成分中における139
Ce
及び143Pm
の放射能84
次に先行研究[48]で得られた、Ln(Ⅲ)@C82
( Ln= La, Ce, Pr, Nd, Gd)の溶出挙動と
本研究で得られたPm@C
82の溶出挙動の比較を行った。比較をするにあたっては先行研究と本研究の
Ce@C
82 の保持時間で補正を行 いPm@C
82の保持時間を先行研究の結果に合わせた。保持時間(tc
)については以下に示した Extreme
関数を用いて最小二乗法による ピークフィッティングの結果から導きだしている。Extreme
関数:𝑦 = 𝑦
0+ 𝐴𝑒
[−𝑒−(𝑡−𝑡𝑐 𝑤 )
−𝑡−𝑡𝑐 𝑤 +1]
ピークフィッティングの結果得られたクロマトグラムを図
7.3.3、得られた保
持時間を表7.3.2
に示した。Ln(Ⅲ)@C82は原子番号順に溶出しており、これは原 子番号の増加に伴いBuckyprep
カラムの固定相であるピレニル基に対してLn(Ⅲ)@C
82が強く相互作用をしていると考えられる。85 La Ce PrNdPm Gd
Nor ma liz ed ra d ioa c ti vi ty
Retention time [min]
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
58 60 62 64 66 68
La Pr Ce Nd Gd Pm
元素 La Ce Pr Nd Pm Gd
保持時間
[min] 60.13±0.17 60.88±0.17 60.98±0.17 60.99±0.17 61.27±0.17 62.24±0.17
図
7.3.3 先行研究[48]で得られた Ln(Ⅲ)@C
82(Ln= La, Ce, Pr, Nd, Gd)
のクロマトグラム、及び本研究で得られた
Pm@C
82のクロマトグラム表
7.3.2
先行研究[48]
で得られたLn(
Ⅲ)@C
82(Ln= La, Ce, Pr, Nd, Gd)
の保持時間、及び本研究で得られた
Pm@C
82の保持時間86
Ln(Ⅲ)@C82の保持時間の差について考えると、HPLC保持時間は固定相と溶質
分子とのある種の平衡反応と見なすことができ、保持時間
t
R と自由エネルギー との間には相関がありln 𝑡
𝑅− 𝑡
0𝑡
0∝ ∆𝐺
0𝑅𝑇 (1)
で表すことができる[50]。ここでの
t
Rは保持時間、t
0は空保持時間を表す。t0 は先行研究の溶媒ピークが現れる時間である5.11
分を採用した。金属フラーレンとピレニル基との相互作用の大きさは分散相互作用と双極子-誘起双極子相互作用の和として現すことができ、分散相互作用については、内包 金属の違いによる差がないものと仮定すると、
ln ( 𝑡
𝑅− 𝑡
0𝑡
0) = A + 1
𝑅𝑇 ( 𝛼
1𝜇
22+ 𝛼
2𝜇
12(4𝜋𝜀
0)
2𝑙
6) (2)
ここで右辺の第一項は分散相互作用を定数
A
とし、第二項では双極子-誘起双 極子相互作用の大きさを示している。ここでα
分極率、𝝁
は双極子モーメント、𝜀
0は真空の誘電率、𝑙
はLn(Ⅲ)@C
82とピレニル基の平均分子間距離を示している。それぞれのパラメータの添え字の
1, 2
はそれぞれLn(Ⅲ)@C82,
ピレニル基のもの であることを示す。𝑙, 𝛼
1, 𝛼
2, 𝝁
2は
Ln(Ⅲ)@C82の構造が同じであり、また内包金属の価数も変わらな いことから定数だと仮定した。87
Ln(Ⅲ)@C82の双極子モーメント𝝁𝟏
= 𝑞𝒓
𝒊𝒐𝒏であり、内包金属の電荷q
が変わら ないとすれば、双極子モーメントは内包金属のイオン半径𝒓𝑖𝑜𝑛に依存すると考え られる。上記の式(2)は定数項をまとめ定数B
とすると、ln ( 𝑡
𝑅− 𝑡
0𝑡
0) = 𝐴 + 𝐵𝑟
𝑖𝑜𝑛2(3)
となる。
ここで
La
と他のランタノイドLn
における差をLa
の保持時間を𝑡𝑅 𝐿𝑎、Lnの 保持時間を𝑡𝑅 𝐿𝑛として現すとln ( 𝑡
𝑅 𝐿𝑛− 𝑡
0𝑡
𝑅 𝐿𝑎− 𝑡
0) = 𝐵(𝑟
𝐿𝑛 𝑖𝑜𝑛2− 𝑟
𝐿𝑎 𝑖𝑜𝑛2) (4)
となり
Ln
とLa
のイオン半径の二乗の差(𝑟𝐿𝑛 𝑖𝑜𝑛2− 𝑟
𝐿𝑎 𝑖𝑜𝑛2)に比例することが分
かる。(4)式の左辺:Ln
とLa
の保持比の自然対数の差 ln(𝑡𝑅 𝐿𝑛−𝑡0𝑡𝑅 𝐿𝑎−𝑡0
)を、右辺:イオン
半径の二乗の差(𝑟𝐿𝑛 𝑖𝑜𝑛2
− 𝑟
𝐿𝑎 𝑖𝑜𝑛2) に対して図 7.3.4
にプロットした。図
7.3.4
において最小二乗法にて回帰直線を求めると、相関係数R
は0.9897
となり良い相関があることから、
Buckyprep
カラムの固定相であるピレニル基に対 して原子番号の増加に伴いLn(Ⅲ)@C
82 が強く保持される原因が双極子-誘起双 極子相互作用に由来し、保持時間の差は内包金属の違いによる双極子モーメン トに起因することが強く示唆された。88
-0.01 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
-0.25 -0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0 0.05
ln ( t R Ln - t 0 / t R La - t 0 )
r 2
Ln ion -r 2
La ion [ Å 2 ]
La Ce
Pr Nd Pm
Gd y = -0.1654x R = 0.9897
図
7.3.4
LnとLaのイオン半径の二乗の差と保持比との相関89