5.1 調査概要
本研究の目的は、リアルな泡の映像を CG で作成するための手法を確立することである。そ のためには CG での表現方法はもちろんのこと、複雑に変化する泡の形状や挙動に対する 調査も必要となる。よって、本開発予備調査では以下の2点に重点を置いて調査を行う。
・ 泡の形状及び挙動の解析
・ CGにおける泡の表現方法の確立
5.2 調査項目
調査を行うにあたり、下記の表のように3つの調査項目を設定した。これにより、実験のデー タや理論だけでなく、CGにおける表現方法においても幅広く情報を取得し、よりリアルな泡を 表現する。
表5-1
調査目的 調査項目 調査により取得できるもの 水槽での観察 観察結果
(デジタルビデオカメラにより撮影)
泡の形状及び 挙動の解析
文献調査 泡に関する論文及び書籍
シミュレーション方法に関する論文 CGに関する理論及び表現方法 CGにおける
表現方法の確立
Mayaの調査 Mayaにおける表現技法
①水槽における泡の形状及び挙動の観察
[目的]
・泡の形状を観察
どのような場合にどのように形状が変化するか。また、分裂・合体、
並びに障害物回避の際に泡の形状はどうなっているか
・泡の動きが回りにどのような影響を及ぼしているか
泡が上昇した後にできる渦や、泡が上昇する軌跡はどうなっているか
[方法]
エアーポンプは観賞魚などを飼育する際に一般的に使用されるものである。今回 使用したエアーポンプには排出される空気量を調整するためのコックがついてお り、これを利用して泡の大きさや連続的に発生させるなどの調整を行った。また、
実際の泡は上昇速度が速く目視での観察は難しかったため、デジタルビデオカメ ラで撮影した映像をスロー再生することにより細かな変化を観察した。
図5-2
エアーポンプ
(NISSO INNO−β6000)
水槽
(水の流れはない)
ソフトチューブ
(ジェックス ソフトチューブ GX―72)
②文献調査
[目的]
・水槽観察で調べることのできなかった詳細な部分についての情報を文献から補 う。
・CGにて泡を表現する際に最適と思われるシミュレーション方法を調べる。
・Cloth や弾性体などCG においてやわらかさを表現するためにはどのような方 法が使われているのかを調べ、その方法によって泡が表現できないかどうか 検討する。
[方法]
・インターネットや図書館などを利用する。
・専門の人にヒアリングを行う。
③Maya の調査
[目的]
・Maya 上でリアルな泡を表現するにはどのような機能が最適かを試作しながら 検討する。
・ユーザが実際に操作するのは Maya のインタフェースであるため、使いやすい インタフェースになるよう検討する。
[方法]
・インターネットを利用し、Mayaの表現技術を調べる。
・専門の人にヒアリングを行う。
5.3 調査結果
5.3.1 水槽での観察による結果
①単一気泡におけるの形状及び挙動の変化
泡の挙動は大きさによって異なり、単体の泡の場合は 図5-3 のような挙動を行う。また、
泡の形状においては 図5-4 のようになり、泡が大きくなれば大きくなるほど変形し分裂 しやすくなる。
小 大
図5-3 単一気泡の大きさによる挙動の変化
小 大
図5-4 単一気泡の大きさによる形状の変化 直進
★変化なし ★ 向きを変える毎に 形状が変わる。
(タイミングが 同期している)
★ 表面を水流がなめる向きに、波 打ったでこぼこが移動。
(水面を風がなめて
波が出来る様子と似ている)
②泡周辺の水流の動き
次に泡周辺の水流の動きを観察した。泡周辺のとても小さな泡の動きなどを参考に推 測すると下図のようになる。
図5-5 単一気泡周辺の水流
図5-6 連続発生時の泡周辺の水 流
③水流の強さと泡の大きさ
水流の強さと泡の大きさの関係を下図に表わした。
水流>泡 水流<泡
図5-7 流される
合体 分裂
変形する 影響受けない 図 5-6 連続発生時の泡周辺の
5.3.2 文献調査の結果
①泡の形状
Cliftらによると、Reynolds数、Etövös数、Morton数という3つの無次元数により、泡 の形状をいくつかに分類することができる(下図参照)。また、水槽観察で推測したよう に泡の形状や挙動の変化には泡のサイズに依存していることも文献から確認できた。
縦軸(Re) :Reynolds数 慣性力と粘性力の比
横軸(Eo) :Etövös数 泡に働く浮力と表面張力の比 斜め(logM) :Morton数の対数 流体の特性(特に粘性の影響)
図5-8
②シミュレーション方法 シミュレーションの方法として
Level Set法、オイラー法、ラグランジュ法、格子ボルツマン法、粒子法
など様々な方法があることが分かった。今回はこの中からオイラー法、ラグランジュ法に より流体のみを、そして格子ボルツマン法により泡の挙動並びに形状の変化をシミュレ ーションするためのプロトタイプを作成することにした。最終的に結果を比較し、最適な
5.3.3 Mayaの調査
やわらかさを表現する方法としてSoft BodyやラティスなどというMayaの機能もあるが、
たくさんの泡を表現する時には処理に時間が掛かりすぎてしまうことが分かった。
また、NURBSとPolygonを比較してみたところ、NURBS は制御点により曲線を作成 しているため、プログラムでは制御しにくい。以上のことから、Polygon とパーティクルを 利用して泡を作成してみることとした。制御のしやすさや、処理の量そして泡らしさを比 較してどちらの方法を採用するか決定する。
図5-9
5.4 まとめ
今回の開発予備調査の結果より、泡の形状及び挙動の変化は周りの水流の影響により大き く左右されているということが分かった。このことから、周りの水流の解析と水流による影響に 応じて変形するようなオブジェクトの作成ができれば、リアルな泡を作成することができるの ではないかと考えた。よって、以降では水流解析のシミュレーションと外力の影響に応じてオ ブジェクトを変形させるプログラムの2本を軸にプラグインを作成することに決定した。
Polygon
エッジと呼ばれる辺の上に頂点 があり、頂点の位置が直接オブ ジェクトの形をあわらしている。