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第9章 長野地方における調査研究

9.1はじめに

住宅の室内温熱環境に関する研究は,全国各地域で実 測調査,アンケート調査,数値シミュレーション等の手 法により行われている。この様な中,筆者らは長野県に ぉいて,主に長野市に立地する一戸建て住宅の室内温熱 環境の測定と室内温熱環境に対する居住者意識調査を実

施し,考察を行ってきているl卜5'。

本報告は,筆者らがこれまでに行ってきた一連の研究 を基に,長野地方における一戸建て住宅の温熱環境に関 する実態について紹介する。以下に本報告の流れを示す0

1)長野県の特徴を明らかにするために,気候条件と住 宅条件の観点から他地域との比較を行う。また,長野県 地方における民家について紹介する。

2)筆者らの行った一戸建て住宅の室内温熱環境に関す る調査の内容について説明する。

3 )長野県地方における一戸建て住宅の室内温熱環境の 実態について,冬季と夏季の測定結果を用い,住宅の熱 損失係数の分類によりどの様な違いがあるのかについて 報告する。

4)住宅の室内温熱環境に対する居住者の意識について, 冬季と夏季の調査結果を用い,住宅の熱損失係数の分類 によりどの様な違いがあるのかについて報告する。

9.2 長野県の気候と住宅

9.2. 1長野市の夏季と冬季の外気温度の特徴

一戸建て住宅の室内温熱環境を考える上で,外界条件 は重要な要素の1つである。特に,外気温度が室温に与 える影響は大きい。そこで,理科年表6'のデータを用い て夏季(8月)と冬季(1月)における長野市の外気温 度の特徴について検討を行った。 8月と1月の長野市を 含む13都市の月別平年気温,日最高気温の月別平年値,

日最低気温の月別平年値を図9‑ 1に示す。長野市の月別 平年気温は約25℃であり新潟よりも低い。長野市は平均 気温では仙台よりも高いが,日最低気温の平年値では低 くなっている。また,日最高気温の平年値では,東京な どと近い値を示す。長野市は平均値的には冷涼であると 言えるが,日中の最高気温は30℃を越え暑くなり,夜間

には20℃近くまで低下する。この様に他の都市に比べ日 較差が大きい。 1月の外気温度における長野市と他都市 の比較では,長野市は新潟,仙台よりも温度的に低くい。

以上より,長野市では冬季に寒冷となり,夏季には日 中の気温は上昇するが,夜間には気温は低下することか ら日較差が大きいことが特徴といえる。このことから, 冬季の防寒対策とともに,夏季においては夜間冷気の利 用等による,日中の防暑対策も必要であると考えられる。

●:夏(8月)

▲:冬(1月)

一日最高気温の月別平年値 一月別平年気温

一日最低気温の月別平年値

‑ 剪  剪  

‑ 剪 剪   剪

fL, 仙 東 新 絹 長 名 大 A 広 X 袖 JL

≠ 台 京 斡 井 好 古 蔽 屯 JL 知 内 児

▲       ■

図9‑ 1長野市と他12都市における外気温の比較 9.2.2 長野県の一戸建て住宅の特徴

居住者の住環境に対する評価の背景的な要素として, 住宅の立地条件や所有関係,規模などの建築条件,冷房 および暖房の設備条件そして家族人員などの世帯属性な どが考えられる。本節では,居住者の環境評価の検討の 前に,長野県の一戸建て住宅の特徴について考察する。

長野県の一戸建て住宅の特徴を明らかにするために, 統計資料を用い検討を行った。表9‑ 1に,長野県と他の 12都道府県および全国平均との比較を示す。使用したデ ータは,総務庁統計局発行の住宅統計調査報告(昭和63 年度)からのものである。住宅条件において,人口集中 地区に住宅が建築されている割合は全国平均が65. 1%で あるのに対し長野県は33. 9%と顕著に低い値になってい る。これより長野県の住宅は,分散して立地し集落的な 立地条件である考えられる。住宅の持ち家率は74. 1%で あり,福井,新潟についで高く,全国平均よりも約2割 高い値である。住宅の規模に関わる1住宅当たりの居住 重畳数,敷地面積,延べ床面積そして建築面積について みると,いずれも全国平均よりも高い値を示し,住宅規 模が大きいといわれる新潟県,福井県といった北陸地方 の値に近い値を示している。これより,長野県の住宅規 模は,他県に比べ大きいと言える。

次に,冷暖房設備の設置状況についてみると,冷房設 備は長野県の場合北海道についで個別型9. 3%,集中型 0.5%であり,全国平均および北陸地方の新潟県,福井 県に比べても低い値を示している。これは,長野県の夏 季の気候条件として,夜間の外気温が低く海沿いの地域 と異なり湿度が低いことから,比較的夏は過ごしやすい ためと考えられる。暖房機の設置状況では,長野県は個 別型17.6%,集中型1.8%であり,全国平均に近い値を 示している。暖房設備の設置率が高い値を示すのは北海 道であり,個別型84.9%,集中型10.0%となっている。

このことから,長野県では建物と暖房設備は一体として 計画・建築されず,建築後に居住者によりストーブ,こ

たつなどの暖房が室内に持ち込まれていると考えられる。

居住者の属性についてみると・ 1世帯当たりの人員は 3.8人と全国平均に近い値であり,単身世帯率は13・8%

と全国平均の17・8%に比べ低い値である。また・高齢者 (65歳以上)の世帯人員のいる世帯率についてみると長 野県は鳥取県,福井県についで高い37・7%を示し,全国 平均よりも約10%高い値を示している。このようなこと から,長野県の居住者像として小家族・高齢が推測され・

このこと‑の対応が必要であると考えられる。

9.2.3 長野県における民家

民家は,風土に対応した住宅の形態を具体的に表現し たものであると思う。長野県地方にも・地域により様々

な民家が存在するが,地域の屋外気候条件に強く影響を 受けたと思われる民家の形態をいくつか紹介する。

(1)中門造り

全国各地の豪雪地域でみられる「曲屋ふう」の間取り をもつ民家で,長野県飯山市から新潟県境の豪雪地域に かけて多く存在している。中門造りの民家では,長方形 のおも屋の玄関口に,その玄関口を覆うように3間×1 間程度の別の建物が設けられているoこの空間は,冬の 雪深い時期の玄関口の確保と同時に冬の仕事場ともなる 機能を持っているoこの様な地域では・一般的な住宅で

も玄関を囲うような工夫が多く見受けられるo (2)大軒造り

諏訪地方の山間部に多くみられ・ 3‑4m程度の深い 軒を南側にもつ民家である。この軒下空間は,厳寒とな る冬に備え農作物やたき木などの物置場や仕事場ともな

る。また,山からの強い風雨からおも屋を守る役割も果 たしている。

(3)建てぐるみ(抱きぐるみ)

諏訪地方に多くみられる民家の形態で,おも屋と蔵が 一つの屋根の下に造られている。蔵は多くの場合,大切 な家財を守るため火災などのおそれのあるおも屋から離 して建てられている。しかし,建てぐるみの民家では・

多くの場合玄関を入ると土間をはさんで蔵とおも屋が接 している。この様な形儀が発生した理由の一つには,こ の地方の厳寒な冬の気候があると考えられる。おも屋と 蔵を隣接させることで,冬季には屋外に出ずに必要なも のを出し入れ出来ることが可能となり,都合がよいと考 えられる。

以上のように,屋外気候の影響を受けたと考えられる 民家の形態についてみると,長野県地方においては冬季 の厳しい寒さや雪‑の対処が多く見受けられるoこの様 な形態上の工夫は,現代の住宅においても積極的に利用

される必要があると考える。

9.3 調査内容

6.3.1室内温熱環境測定

表9‑ 2に冬季と夏季において測定を実施した住宅概要 を示す。表中網掛けを行った住宅は,冬季と夏季の両時 期に調査を行った住宅であるo冬季における住宅の室内

温熱環境の測定は, 1988年から1994年の間に実施し・地 元の25社以上の工務店・建設会社が施工した72棟の住宅 について実施した。温熱環境測定の期間は3日間から1 週間の各点における連続測定とした。測定位置は・日常 表9‑1長野県と他12都道府県における住宅の比較R蒜 

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