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鉄鋼業における「近代的熟練」への移行

圧 延工 程

熱 間圧 延工程 にお け る戦 後 の技 術革新 は,プ ル オーバ ー式圧延 か ら

1950年

代 の 第

1次

合理 化 にお いて導 入 され た ホ ッ ト・ ス トリップ・ ミルヘ の転 換 に お いて

,最

も顕著 に進 展 した。 と りわ け「鉄鋼業 の技 術革新 が労働 に与 えた 影響 の なかで は際立 った」影響 を及ぼ した(20)。

ホ ッ ト・ ス トリップ・ ミルの導 入 に伴 う圧 延工程 の連続化 は

,従

来 の圧 延 機 械 の配 置 と作業 を一変 させ た。 それ までの圧 延工程 が狭 い工場 内で屈折 し て不連続 に進行 して いたの に対 し

,新

しい圧 延機械 が工程 に したが って一 直 線 で結 ばれ

,そ

の こ とが ス ピー ドア ップや製品品質 の向上 を可能 にす る条件 と もなった。 この圧 延工程 で は

,加

熱 炉 か ら圧 延 を経 て剪 断 にいた る まで,

すべ て鋼 片 の移動 が ロール ガ ング等 に よって操 作 され

,圧

延作業 は 自動 的 に 行 なわれ るか

,一

部労働者 に よる電動 スイ ッチの操 作 に よって行 なわれ る よ うにな ったの で あ る(21)。 その結果

,こ

れ までの手工 的かつ年功 的熟練 に基づ く高熱 重筋労働 か ら

,機

械 や計 器 を媒 介 とす る監視 的労働へ と変化 し

,習

熟 期 間 も著 しく短縮 されて半熟練化 の傾 向 を もつ にいた る(22)。

その後

,ホ

ッ ト・ ス トリップ・ ミル にお いて は

,生

産工 程 の連続化

,圧

延 速 度 の高速化

,圧

延 コイル の大 型化 お よび計 装化 な どが進 展 し

,生

産性 が大 幅 に向上 して い く。

1960年

代 末 にな る と

,ホ

ッ ト・ ス トリップ・ ミル の連熱 仕上 圧 延 で は

,半

連 続式 か ら全連続 式への技 術革新 がみ られ る (米山喜久治 氏 は

,半

連 続 式 ホ ッ ト・ ス トリップ・ ミル の

C製

鉄 所 と全連続式 の

A製

鉄 所 の熟練・技 能の比較 を行 な ってい る)。 また

,圧

延速度の高速化 に対応 して 自 動 制御が進展 してい る。 自動化 とコンピュー タに よるデー タの蓄積 と解析 に よって

,作

業 の標準 化

,単

純 化 が進 み

,こ

れ に伴 い技 能 の平準 化が起 こって 習熟期 間の短縮 化がみ られ る。 しか し

,こ

の段 階で は

,コ

ン ピュー タに よる 工 程 のプ ログラム制御 まで は進 展 して いない。 この ため

,作

業 内容 自体 には 質 的 な変化 はみ られ な ぃ(23)。

プ ル オーバ ー・ ミル においては

,最

高 の熟練 を要 す る「圧 下 手」 の技 能 の 習熟 には 15〜

20年

を必要 と したが

,ホ

ッ トス トリップ 。ミル で は大幅 に短縮

鉄鋼業 における熟練・ 技能の特質 と継承問題 (上) 167

され る傾向がみ られた。「圧下手の仕事の純技術的な必要経験年数は

,高

卒後

2年

程 で習得可能なまでの短縮 されて きている」との指摘 もみ られ る(24)。 し か し

,米

山氏は

,圧

延機の理論式通 りの操作では完全な圧延作業が出来ない ために,「多数の変動要因を合めたパ ター ン認識か ら経験値 を得て理論値 を修 正す る」熟練が必要であるとして

,(半

連続式)の

C製

鉄所ではその習得 に10 年 を必要 とし (表

6),(全

連続式の

)A製

鉄所では自動化 によりこれが

5年

に短縮 しているとしている(表7)。 古い伝統 を持つ

C製

鉄所 において も技能 習得の習熟規制はみ られず,「両職場 とも年功的熟練 はすでに崩壊 してお り,

技術標準

,作

業標準 と教育訓練 を基盤 として近代的熟練が成立 している」(25)。

なお

,高

熱重筋作業 はほ とん どな くなった ものの

,計

器相互 間の動 きの監 視 な どの精神的緊張 といった

,別

の労働強度の高 ま りが生 じたことは見落 と

6 C製

鉄所仕上圧延 の技能 技

 

ランク ポジシ ョン 基礎学力 経験年数 習 熟 内 容

1 綜合運転 高卒程度 10年以上

通板 を綜合的 に判断 し調整す る 仕上後面温度850°C維持す る

セ ッ ト替

2 ス ピー ダー2 (F4〜6)

10年

4番スタン ドの ロール回転数の決定 セ ッ ト替技能, リープの状態の調整 ス ピー ド調整

3

ス ピー ダー1 (Fl〜4)

8年

   

圧 下2

(F4〜6) 8年 セ ッ ト替技能,ス トリップの形状監 視 による圧下調整の技能

4 圧 下1

(Fl〜

̀)

5年

   

5

テーブル・

ンヤ

2年 テーブル・ ス ピー ドの設定技能, ク ロップ シャーの速度調整

下廻 り

 1

2年 圧延機の機構 に対する詳細な知識 を もとに した検査点検技能

下廻 り

 2

2年   

出所:米山喜久治 『技術革新 と職場管理』1978年

7 A製

鉄所仕上圧延 の技能 技

 

ランク ポジシ ョン 基礎学 力 経験年数 習 熟 内 容

1

下廻 り点検 高卒程度 5 設備

,圧

延機の機構 に関する知識

,故

障 の予測 と発見,点検

,品

質検査 総合運転 5 圧延機6スタン ドを総合的 に運転管理す

る。後面温度の維持,セ ッ ト替 え技能

2

速 度調整2 (F4〜6)

3

圧延機4号を基準 にロール速度のセ ッ ト 替 え

,圧

延材 と計器の監視 に よる速度の ハ ン ドル に よる調整

圧 下調 整1

(Fl‑3) 3

圧延機4号を基準 とす る圧下のセ ッ ト替 え

,圧

延材 と計器の監視 に よる圧下のハ ン ドル に よる調整

3

速 度調整1 (Fl‑3)

2 セ ッ ト替 え

,圧

延材

,ル

ーパー

,計

器の 監視 による速度調整

圧 下調 整2 (F6)

2 セ ッ ト替 え

,板

の形状監視

,圧

下及びバ ランスの調整

4

サ イ ドガイ ド

調

 

1 サ イ ドガイ ドセ ッ ト替 え

,調

整技能 テーブル運転 圧延 ピッチを前後工程 とあわせ る クレー ン運転 中卒程度 正確 にクレー ンを運転す る 出所:米山喜 久治 『技術革新 と職場管理』1978年

してはな らなぃ(26)。 また

,機

械装置の体系化 に ともない

,部

分的故障が工程 全体 とただちに関連す るため

,設

備保全のための特別な注意や異常処理の技 能が必要 となった(27)。 こうした状況変化 を反映 して

,A製

鉄所では

,工

長の

熟練 に「設備保全

,異

常処理の技能が含」 まれ るようになっている(28)。

II製

鋼 工 程

平炉か ら

LD転

炉への転換 は

,戦

後 日本鉄鋼業の技術革新のなかで も画期 をなす ものであった。転炉法 は

,炉

内の溶銑 に酸化性 ガス (酸素など

)を

吹 き込む ことによって発生す る酸化熱 を利用す るので

,外

部か ら熱 を補給す る ことな く製鋼で きるのが特徴である。平炉法 に比べ て

,精

錬作業が簡単であ り

きわめて短時間に精錬で きるので生産能率が著 しく高い

,設

備が簡単で 建設費が安い

,等

の特色 をもっている。転炉の精錬時間は約

30分

であ り

,4

鉄鋼業 における熟練・技能の特質 と継承問題 (上) 169

5時

間 かか って いた平炉 に比較 して

9分

1程

度 に短縮 され てお り

,こ

れ に よって生産速度が高速化 し

,高

い生産性 が可能 となった。 また

,そ

れ に対 応 して機械化

自動化が進 んだ。

転 炉炉 前作業 の 中心的作業 は吹錬作業 であ り

,そ

の 中心 的技 能 は平炉 と同 じ く吹錬技能 で あ る。(目標 の鋼 種 の溶鋼 を所 定量生産 す るための)吹 錬計算,

(転炉 か ら吹 き出て くる焔 の状 態 を観察 して吹錬 の進 行状 態 を判 定す る

)フ

レーム判 定,(吹 錬終 了後 にサ ンプ リング した溶鋼 の火花 と急冷後 の破 面観 察 に よって成分 を判 定す る)プ ローベ判 定が

,そ

の 中核 的技 能 とな ってい る(29)。

平炉 か ら転 炉へ の転 換 に よって

,炉

前作業 の形 態や熟練・ 技 能 は大 き く変 化 した(30)。

第一 に

,平

炉 の操 業 が炉況判断 。フ レーム判断 な どのす ぐれ て経験 的 な熟 練 に頼 っていたの に対 し

,転

炉 で はその か な│)の部分 が計算尺 に よる吹錬計 算 に よって客観 化 され

,経

験 的熟練 の 占め る比重が大 き く低 下 した こ とで あ る。 しか し

,吹

錬パ ター ンや 吹錬計算 の係 数選択 な どは担 当者 の経験 的判 断 に委 ね られてお り

また吹錬終 了時点の決 定 も炉 口か らあが るフ レームの 肉 眼観 察 に よる温度・ 成分 の判 定 に頼 るな ど

,経

験 的熟練 は依然 と して重要 な 役割 を 占め て い る。

第二 に

,平

炉 で は副原料 な どの投 入や炉床修 理 な どの労働 集約的 な高熱 重 筋労働 が広範 に存在 していたが

,転

炉 で は副原料 な どの投 入 は機械 化 され,

また補修 の専 門化 に よ り炉床修 理 もな くな るな ど

,高

熱 重筋労働 が大 幅 に減 少 した こ とで あ る。 その反面

,転

炉 の 回転 な どはボタ ン

,メ

ー ター等 の計 器 に よる遠隔操 作 とな り

,機

械 や計 器 に対 す る知識 が要求 され る職務や作業 内 容が増 加 した(31)。

第二 に

,吹

錬時 間の大幅 な短縮 に よって

,労

働 の テ ンポ と密 度が決 定的 に 高 まった こ とで あ る。平炉 の場合

,経

験 的熟練や高熱 重筋労働 の ウ ェイ とが 高 い反 面

,要

員 も多 く

,吹

錬 時 間が長 いため に作業 の テ ンポはむ しろ緩慢 で あ ったが

,転

炉 で は吹錬時 間が大幅 に短縮 した結果

,分

・ 秒 単位 での作業ヘ と変化 した。

平炉 の高熱 重筋労働 か ら転炉 の監視労働へ と作業形態が変化 す るなかで,

技能の平準化が行なわれ習熟期間が短縮 され

,平

炉 にみ られた習熟規制 もみ られな くなった。熟練 も

,長

年の経験 によるカン

コツを中心 とす る年功的 熟練か ら

,技

術標準 と作業標準 を基盤 とし教育訓練 によって成立す る近代的 熟練へ

と変化 した。 この ような熟練の質的変化 と技能の平準化 を物的基盤 として

,ジ

ョブ・ ローテーシ ョンが導入された。 ジ ョブ・ローテーシ ョンは, 作業班の機動力 を向上 させ ただけでな く

,単

調作業 に伴 う作業者のモラール の低下 を防止す るとい う側面 もみ られ る(32)。

HI製

銑 工 程

第 1〜

3次

合理化 によって

,高

炉の大型化

,装

入原料の事前処理

,重

油吹 き込み

,酸

素富化送風

,高

圧操業

,付

属設備の機械化 。自動化

コンピュー タの利用な どが行なわれた。 これ らの技術革新 によって

,高

炉作業能率 は著

しく向上 し

コー クス比の顕著 な低下

,出

銑比の大幅増加がみ られ る。

こうした高炉の大型化 を中心 とす る技術変化 によって

,高

炉の炉前作業 に おける高熱重筋作業 はかな り減少 し

,1950年

代 に存在 した習熟規制 も

60年

代末 にはみ られな くなった。習熟規制の消滅 と作業標準の設定によって年功 的熟練 は消滅 し

,代

わって近代的熟練が成立 している。

しか しなが ら

この ような技術変化 は

,作

業内容 を質的 に変化 させ るまで には至 らなかった。高炉炉前作業の技能 を規定 している基本的要因は

,現

在 の高炉操業技術の水準 にある。高炉作業の基礎理論 は確立 されているが

,工

場 における生産的実践の レベル になると非常に多 くの未知要因や外乱が入 っ て くるために

,個

々の高炉の炉内反応 は

まだ完全には解明 されていない。

高炉操業技術の不完全性 は

,次

の ような理由によっている。すなわち

,高

炉炉 内の下部温度が高温であるために

,有

効 な温度測定が行なえず

,こ

のた め正確 な数式モデルが コンピュータ・プ ログラム として開発 されていない。

さらに

,炉

項か ら装入 された原料の炉内滞在時間が

8時

間 もあ り

,タ

イムラ グが大 きす ぎてフ ィー ド・バ ック・ アクシ ョンが有効性 を減 じられている, 等 による。

高炉炉前作業の技能は

,こ

れ らの技術的不完全性 を補完す る もの として存 在 している。作業者 は

,多

くの経験 を積む ことによって

,炉

況 と出銑 。出滓

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