5. 学校アンケート結果の概要
5.2. 結果の概要
5.2.4. 重回帰モデルによる分析
本研究では、通信制高校の教育実態を把握し、在籍卒業率と関連性の高い方策について 分析することを目的としている。
通信制高校の教育システムの概要は、2.1.項で述べたように、レポート、スクーリング、
テストの 3要素で単位認定している。累積の学修が 74 単位になると卒業となる。そこで、
卒業に至る過程を、単位修得までの段階と、その後の卒業までの段階の2段階と仮定した。
はじめに、卒業に至る過程は、単位修得率がもっとも影響すると考える。また、土岐(2014、
p.121)は、通信制には不登校など学習にブランクのある生徒や厳しい家庭環境にある生徒 が入学し、学習意欲や将来に関する展望をもつことが困難であると指摘している。このよ うに困難を抱えて転編入学で入学する生徒の割合は、卒業率に影響するのではないかと考 えた。使用する推定式は、以下のとおりである。
<推定式1>
sotu_zaiseki25_i=β0+β1toi30_1_i+β2ze_tenkai _i+β3tu_tenkai _i+
β4 shiritu_dummy_i+ε_i
<被説明変数>
平成25年度在籍卒業率 =sotu_zaiseki25 平成26年度在籍卒業率 =sotu_zaiseki26 平成27年度在籍卒業率 =sotu_zaiseki27
平成25~27年度平均在籍卒業率 =sotu_zaisekiav
表5-20 推定式1の被説明変数の記述統計量
<説明変数>
H25全修得率 =toi30_1
H26全修得率 =toi30_2(sotu_zaiseki25の推計式では除く)
H27全修得率 =toi30_3(sotu_zaiseki25、sotu_zaiseki26の推計式では除く)
H25~H27平均全修得率 =syutoki_zen_av(各年度の推計式では除く)
全日からの転入学回数 =ze_tenkai 通信からの転入学回数 =tu_tenkai
記述統計量 度数 最小値 最大値 平均値 標準偏差
sotu_zaiseki25 52 0.06 0.66 0.225 0.135
sotu_zaiseki26 56 0.03 0.53 0.219 0.128
sotu_zaiseki27 59 0.04 0.57 0.217 0.127
sotu_zaisekiav 52 0.06 0.54 0.221 0.126
39 私立ダミー =shiritu_dummy i = 学校
ε = 誤差項
表5-21 推定式1の説明変数の記述統計量
次に、単位修得までの段階であるが、レポートに関すること(回答方式、分量、提出回 数の限度、採点頻度、採点基準)、スクーリングに関すること(受講できる回数、メディア を使っての代替、体育の指導の工夫)、テストに関すること(テストの受験回数、合格基準、
受験機会の弾力的な取扱い)が、単位認定にもっとも影響し、学校外の学修による単位認 定や年間の単位認定回数、1年間に登録できる単位数も影響する要素だと考えた。
また、生徒の学校生活を支援するガイダンスの取組、学習支援の取組、教育相談の取組 が影響し、それらの教育活動を行う教員数の影響があると考えた。
このうち、5.2.1 節で見てきたように、同じ内容のスクーリングを受講できる回数度、レ ポートの回答方法、レポートを提出しなければならない最低限度、テストの合格の基準の4 項目については、学校間の違いはほとんど見られないので除外する。さらに、5.2.2 節で見 たように、1年間に登録できる単位数については各高校でのばらつきが少ないので除外する。
使用する推定式は、以下のとおりである。
<推定式2>
toi30_1_i=β5+β6ninteisu_i+β7R_kijyun_i+β8T_su_i+β9danryoku_i+
β10guide5_i+β11guide7_i+β12shien5_i+β13shien10_i+β14sodan1_i+
β15sodan8_i+β16shiritu_dummy_i+ε_i
<被説明変数>
全科目平均修得率平成25年度 =toi30_1 全科目平均修得率平成26年度 =toi30_2 全科目平均修得率平成27年度 =toi30_3
記述統計量 度数 最小値 最大値 平均値 標準偏差
toi30_1 57 17.1 98 61.082 16.971
toi30_2 59 1 100 60.440 18.543
toi30_3 60 0.9 100 61.870 18.825
ze_tenkai 74 1 27 7.490 9.021
tu_tenkai 65 1 26 10.890 10.795
shiritu_dummy 74 0 1 0.280 0.454
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表5-22 推定式1の被説明変数の記述統計量
<説明変数>
年間認定回数 =ninteisu レポート合格基準 =R_kijyun テスト回数 =T_su テスト弾力的扱い =danryoku 個別ガイダンス =guide5 ガイダンスその他 =guide7 補習授業 =shien5 ICT活用 =shien10 スクールカウンセラー =sodan1 担任面談 =sodan8
私立ダミー =shiritu_dummy i = 学校
ε = 誤差項
表5-23 推定式2の説明変数の記述統計量
(2) 重回帰モデルを用いた分析・考察
分析を行ったところ、強制投入ではほとんどの変数が有意確率5%を満たさなかった。表
5-24と表5-25 に強制投入とstepwize法により選択された変数の結果を示す。
記述統計量 度数 最小値 最大値 平均値 標準偏差
toi30_1 57 17.1 98 61.082 16.971
toi30_2 59 1 100 60.440 18.543
toi30_3 60 0.9 100 61.870 18.825
記述統計量 度数 最小値 最大値 平均値 標準偏差
ninteisu 74 1 12 1.910 1.799
R_kijyun 64 20 100 66.020 22.168
T_su 72 1 75 5.000 10.624
danryoku 61 1 4 2.130 0.974
guide5 74 0 1 0.460 0.502
guide7 74 0 1 0.014 0.116
shien5 74 0 1 0.378 0.488
shien10 74 0 1 0.230 0.424
shiritu_dummy 74 0 1 0.280 0.454
41
<被説明変数が在籍卒業率の重回帰モデル>
在籍卒業率では、平均、各年度とも、当該年度の全科目単位修得率が有意であった。「全 日からの転入学回数」、「通信からの転入学回数」はいずれの年度でも有意ではなかった。
結果として、在籍卒業率を決める要因としては、単位修得率のみが有効であったと言える。
制御変数で投入した「私立ダミー」が平均、各年度とも正の関係であり、私立の在籍卒 業率が、有意に高い。このことから、同じ単位修得率でも公立より私立が卒業しやすいこ とが分かった。
表5-24 在籍卒業率との関係(重回帰分析の結果)
注1) 括弧内は標準偏差
注2) *p<0.10、**p<0.05、***p<0.01
<被説明変数が単位修得率の重回帰モデル>
単位修得率では、「年間認定回数」、「レポート合格基準」、「テスト弾力的扱い」、「ガイダ ンスその他」、「ICT活用」、「スクールカウンセラー」、「担任面談」の各変数が有意ではなか った。
「テスト回数」、「個別ガイダンス」という項目で有意に負の関係が見られた。「テスト回 数」が負に有意だったのは、単位認定のためのテストの回数が少ないほど生徒の負担が軽 くなる、という事情が推察される。反対に学習内容の定着を求めると、テスト回数が増え て単位修得率は下がる結果になる。
また、「個別ガイダンス」は6項目の入学者(新入学・転入学・編入学)向けガイダンス に関する質問で、複数回答が可能になっている問いである。ガイダンスの回数が多いほど 修得率が下がるが、入学者に対して、個別ガイダンス必要としている学校は、入学者の要 因により単位修得率が低くなっている可能性がある。
「補習授業」では有意に正の関係が見られた。補習授業が単位修得に有意であると推察 される。制御変数で投入した「私立ダミー」が正の関係であり、私立の単位修得率が有意 に高いと推定される。このことから、公立に対して私立の方が単位を修得しやすいといえ る。
変数 stepwize法によ り選択された変数 変数 stepwize法によ り選択された変数 変数 stepwize法によ り選択された変数 変数 stepwize法によ り選択された変数
0.004 *** 0.005 ***
(0.001) (0.001)
0.00203 ** 0.002 **
(0.0008) (0.001)
0.003 *** 0.003 ***
(0.001) (0.001) 0.005 *** 0.004 ***
(0.001) (0.001)
-0.001 0.001 -0.00082 1.00E-03
(0.002) (0.002) (0.0028) (0.003)
0.002 -0.002 -0.00089 -2.00E-03
(0.002) (0.001) (0.0019) (0.002)
私立ダミー 0.1 0.117 *** 0.159 *** 0.152 *** 0.197017 *** 0.176 *** 0.151 *** 0.155 ***
(0.062) (0.04) (0.055) (0.0506) (0.037) (0.05) (0.037)
定数 -0.087 -0.086 -0.082 -0.096 * 0.072618 0.068 0.018 0.014
(0.07) (0.062) (0.06) (0.053) (0.0515) (0.049) (0.052) (0.051)
平成25年度在籍卒業率 平成26年度在籍卒業率 平成27年度在籍卒業率 平成25~27年度平均在籍卒業率
平成27年度 全科目修得率 全科目修得率 3年間平均 全日からの 転入学回数 通信からの 転入学回数 平成25年度 全科目修得率 平成26年度 全科目修得率
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表5-25 単位修得率との関係(重回帰分析の結果)
注1) 括弧内は標準偏差
注2) *p<0.10、**p<0.05、***p<0.01
(3) 仮説の検証と結論
本節では、分析結果をもとに、5.2.4.(1)で設定した仮説について検証する。
在籍卒業率に関しては、仮説のとおり単位修得率が有効であったが、入試に関しては、「全 日からの転入学回数」と「通信からの転入学回数」という項目は有意な関係が見られなか った。以上のことから、仮説①は支持されなかったといえる。
単位修得率に関しては、レポート、スクーリング、テスト等の様々な条件が関係すると 考えたが、レポート及びスクーリングに関する変数は残らなかった。テストは回数が負に 影響している解釈が難しい。補習授業が有効と考えられる。従って仮説については、一部 が支持されていると考える。
仮説② 単位修得率は、年間認定回数、レポートに関すること、テストに関する こと、ガイダンスに関すること、学習支援に関すること、教育相談に関すること と関係がある。
仮説① 在籍卒業率は単位修得率に影響され、その他、入試条件に関係がある。
変数 stepwize法によ り選択された変数 変数 stepwize法によ り選択された変数 変数 stepwize法によ り選択された変数
年間の単位認定回数 0.556 -3.924 0.575
(3.328) (4.866) (4.766)
レポートの合格基準 -0.097 -0.033 -0.053
(0.081) (0.121) (0.123)
定期テスト実施回数 -1.169 -1.754 *** -1.925 -1.416 ** -1.615 -1.408 **
(1.062) (0.375) (1.573) (0.521) (1.595) (0.549)
定期テストの弾力的扱い 1.676 -2.959 -3.524
(1.846) (2.552) (2.66)
個別ガイダンス -9.837 *** -7.554 ** -12.65 *** -11.082 ** -14.23 *** -12.056 **
(3.308) (3.364) (4.816) (4.53) (4.962) (4.739)
ガイダンスその他 -24.523 65.31 13.65
(53.616) (78.308) (78.086)
補習授業 10.775 *** 12.116 *** 13.955 *** 15.995 *** 14.048 ***
(3.967) (3.881) (5.712) (5.184) (5.885)
授業のICT活用 -5.309 -6.441 -7.985
(4.172) (6.197) (6.312)
スクールカウンセラー配置 -6.775 * -7.321 -9.268
(3.977) (5.826) (5.965)
定期的な担任面談 5.83 3.106 0.935 14.938 ***
(3.587) (5.129) (5.146) (5.4)
私立ダミー 13.92 *** 18.418 *** 8.03 12.505 ** 9.234 13.37 **
(4.922) (4.603) (6.422) (5.796) (6.273) (5.812)
定数 73.476 *** 66.118 *** 89.638 *** 65.446 *** 87.918 *** 66.334 ***
(11.416) (2.689) (16.498) (3.723) (16.764) (3.821)
平成26年度修得率 平成27年度修得率
平成25年度修得率
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