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作用原理によれば、時刻t1に場所q1を出発して時刻t2に場所q2に到達する物体が実 際に通る経路は、作用積分

S[C] = t2

t1 C

L(q(t),q(t))dt˙ (1)

が停留値をとるような経路である。作用積分の値は途中通る経路Cに依るのだが、色々 な経路について積分してみたときに少しくらい経路を変化させても作用積分が変化しな いような経路が実際に通る経路として選ばれる。出発点と到達点を定めると途中に通る 経路が定まり、作用積分の値が定まる。従って、実際に通る経路に沿って計算した作用 積分は、出発点の位置q1 と時刻t1および到着点の位置q2 と時刻t2の関数となるので、

S(q1, t1, q2, t2)と書くことができる。これをハミルトンの主関数と呼ぶ。

次に、出発点と到着点の位置と時刻を動かしてみよう。出発点および到着点の位置と 時刻を定めると、それに応じて途中の経路が定まり、作用積分の値が定まる。出発点を 1カ所選んでおけば、各時刻に配位空間の各点で作用積分の値が定まるので、この作用 積分の値を配位空間の各点に定義された場と考えることができる。この場の満たす方程 式を求めてみる。

出発点と到着点の位置と時刻を次のように動かしてみる

q1 −→q1 =q1+ ∆q1, t1 −→t1 =t1 + ∆t1, (2) q2 −→q2 =q2+ ∆q2, t2 −→t2 =t2+ ∆t2. (3)

q t

q

1

q

2

t

1

t

2

q+ d q q+ D q q

C C’

1

出発点と到着点の位置と時刻が変化すれば、それに応じて途中実際に通る経路もCか らCに変化する。元々、経路C上にある点(時刻t、位置q)が経路C上の点

q−→q =q+ ∆q, t −→t =t+ ∆t, (4)

に移動するものとする。ここでの∆q(t) =q(t)−q(t)と、作用原理で考えた同じ時刻に おける変化δq(t) =q(t)−q(t)との違いは

∆q(t) = q(t)−q(t) =q(t+ ∆t)−q(t)

= q(t) + ∆tq(t)˙ −q(t)

= δq(t) + ∆tq(t)˙ (5)

であたえられる。ここで∆tは小さい量としているので最後の項ではq˙とq˙との違いは高 次の微少量として無視した。

さて、実際に運動が起きる2つの経路関する作用積分の変化を求めるのに、同じ時刻 における被積分関数を比べることにすれば、出発点と到着点の積分領域の変化を考慮す る必要がある

∆S(q1, t1, q2, t2) =

t2+∆t2

t1+∆t1 C

L(q(t),q˙(t))dt t2

t1 C

L(q(t),q(t))dt˙

= L(q2,q˙2)∆t2−L(q1,q˙1)∆t1 + t2

t1

(L(q,q˙)−L(q,q))˙ dt

= [L∆t]tt21 + t2

t1

δL(q,q)dt.˙ (6)

同じ時刻におけるラグランジアンの変化は作用原理で使った変分なので、運動方程式を 導いたときと同じ計算をすればよい。dtdδq(t) =δq(t)˙ に注意して部分積分を行うと

∆S(q1, t1, q2, t2) = [L∆t]tt21 + t2

t1

i

δqi∂L(q,q)˙

∂qi

+δq˙i∂L(q,q)˙

∂q˙i

dt

= [L∆t]tt21 +

i

∂L

∂q˙iδqi

t2

t1

+ t2

t1

i

∂L(q,q)˙

∂qi

d dt

∂L(q,q)˙

∂q˙i

δqidt (7)

ここで、実際に運動が起きる経路を考えているので最後の項は運動方程式により零にな る。右辺第2項に(5)を用いると

∆S(q1, t1, q2, t2) =

i

pi∆qi(

i

piq˙i−L)∆t t2

t1

=

i

pi∆qi−H∆t t2

t1

=

i

p2i∆qi2−H∆t2

i

p1i∆qi1+H∆t2 (8) 2

これより、次の関係式が得られる p2i = ∂S

∂q2i, H(qi2, p2i) =−∂S

∂t (9)

p1i =−∂S

∂q1i, H(qi1, p1i) = ∂S

∂t

初期値t1, q1を固定して、到達点を色々動かすためにt2, qi2を改めてt, qiと書くことに すれば(9)より

pi = ∂S

∂qi (10)

H(qi, pi) = −∂S(qi, t)

∂t (11)

(10)を(11)に代入すれば、ハミルトンの主関数S(qi, t)H(qi,∂S

∂qi

) =−∂S(qi, t)

∂t (12)

という偏微分方程式を満たすことが分かる。これをハミルトン・ヤコビの偏微分方程式 という。

S

ハミルトンの主関数S(qi, t)は空間の各点に場を定義している。時間が経つとS(qi, t) が一定となる面は配位空間の中を波となって次々に移動してゆく。その場の時間的空間 的変化を決定するのがハミルトン・ヤコビの偏微分方程式である。粒子の運動量は(10) より

p(q, t) = ∇S(q, t) (13)

で与えられるので、運動量の方向はS(qi, t)一定の面に垂直である。丁度光が位相一定の 面に垂直な方向に進むのと同じように、粒子は配位空間の中でS(qi, t)一定の面に垂直な 方向に進む。

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