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第1節 O市の概況

O 市 は、遼 寧 省 遼 東 半 島 の 西 側 に 位 置 す る 面 積 1610.06km、2006年 の 人 口 が 約 74万 人(2004年 は 721,081人)の県級市である。県級市というのは、人口約 220万人のE市の中の県級市と呼ばれる行政単位であ る。

現在のE市は、民国時代の 1913年にE県となり、日中 戦争時代にE市と改称し、日中戦争後の 1946年にE市の 下に、元々E市の一地区としてあったO地区がE県と名 称を変え、このE県が 1992年にO市となった の で あ る 。

同市の特徴を表す例として、同市労働局資料では次の ようなことが言われている。同市に三代以上在住してい る人口は、約5万人と言われ、多数が他地域から流入し た人口である 。こうした特徴を持ったO市は、現在 17の 鎮と 252の行政村からなっている。

建国時(1949年)、現在のO市を含むE市の人口はわず か 87,000人であった が、そ の 後、O 市 だ け で 1975年 504,500人、1985年 629,700人 と 急 増 し、1995年 に は 607,300人と若干減少しているものの、短期間で人口は 急増している。この急増の背景には、以下にみられる同 市の地理的位置と地下資源が関係している。

第一に、西に北京市、北に沈陽市、南に大連市に通じ る鉄道と高速道路が交わる交通の要衝であり、E港に隣 接する商業貿易物流センターであること。

第二に、マグネサイト、ホウ素、滑石、白雲石、鉄、

金など 34種類にも及ぶ鉱物資源に恵まれ、マグネシウム 鉱石の採掘とマグネシウム製品加工業がO市の中心的産 業となっていることである。マグネシウム鉱石の埋蔵量 は 45億トンに達し、そのうちマグネサイトは 30億トン で全国一(世界四大マグネシウム鉱山の一つ)である。

また、白雲石の埋蔵量は5億トンで遼寧省唯一の国家級 保護区となっている。従って、マグネシウム鉱石の採掘 とマグネシウム製品加工業がO市の中心的産業となって いること。

第三に、農業(水産業を含む)は、2004年の総農地面 積が 78万 (約 52,000ha)あり、そのうち水田面積は 50万 (約 33,330ha)、畑地面積 28万 (18,700ha)

である。農業総生産額 21.2億元、農村住民1人当たり総 収入 4,320元、淡水養殖面積は 8.5万 、果樹生産量 4.5 万トン、水産生産量 4.7万トン、野菜総生産量 35万トン、

豚 42万頭、鳥類 2,240万羽、羊 10.11万頭、赤毛牛 4.6 万頭、肉類総生産量 5.8万トン、卵類総生産量 5.5万ト ン、乳量 1,900トン、養蚕 3,400把であった。

O市の農業の主力は、水田と畑作であり、後述する農

業・農家調査は水田地帯である4つの鎮の農家調査を 行ったものである。

改革開放後、O市の鉱業経済はその他の業界と同様に 著しい発展を遂げ、2000年末時点で、全市で 262鉱山を 数え、採鉱坑道口は 325、従業員は1万人近く、各種の年 間鉱石生産は 400万トン、年産額は 12,000万元に達す る。採鉱業は鉱物加工業に原材料を提供し、鉱物加工業 は採鉱業に影響を及ぼすなど、両者は互いに依存関係に あり、全市の支柱産業となっている。このような鉱物採 鉱業とその加工業がO市産業の主産業となっており、中 でもその中心となっているのが、マグネシウム産業企業

(従業員 20人以上の企業数、570以上)と新型建築材料及 び機械加工産業企業(200以上)である。前者の最大企業 はA社、後者ではB社が最大企業であり、ともに 5,000人 以上の従業員を有している。A社とB社の設立はともに 1984年であり、先に見たO市の人口急増は、この2社お よび関連会社の進出と深く関わっているのである。

このように鉱業資源に恵まれたO市には、鉱山採掘業 及び鉱物加工業が立地し、その発展とともに人口が急増 してきた。こうした人口急増に農民工はどこまで関って いるのであろうか。同市における農民工に関する統計は 無いが、1998年に限り次のデータがある 。

1998年のO市への遼寧省内からの流入人口は 11,790 人、遼寧省外からの流入人口が 1,017人で合計 12,807人 の流入であった。一方、O市から遼寧省内への流出が 10,149人、遼寧省外への流出が 1,297人、合計 11,446人 であった。差引 1,361人の純増であった。

次に、1998年のO市における外来人口登記では、その 総数が 25,127人、内暫住人口が 14,489人である。O市 の総人口の約 3.5%が外来人口であり、外来人口に占め る暫住人口は 57.7%がある。この暫住人口は、同市への 流入人口のうち届出によって暫住証交付を受けた者で あって、その多くは農民工とみてよいと考えられる。但 し、後述するように実流入人口に占める暫住届出者数は 少ないと考えられる。ともあれ、これら 14,489人の暫住 人口を農民工と見るならば、O市総人口 718,000人の約 2%が当時最も少なく見積った農民工数といえるのでは なかろうか。域外への出稼ぎ労働力に関する統計・資料 は無い。こうした状況から、筆者は後に見るように、O 市の農民工の実態調査をする必要を痛感した。

もちろん、O市の調査から得られるデータを直ちに一 般化することはできない。その点に留意しつつO市の調 査で特に念頭に置いた点は、以下のとおりである。

1 マグネシウム関連産業に特化した(中国では)特殊 な地域ではあるが、この地域には他地域では見られな い多様な形態の企業群が存在している。そのうち、

①大手企業A社:同社は、郷鎮企業の一形態である 隊 企業 (1984年〜1987年)→ 合資企業 (1988年〜

1998年)→ 株式会社 (1999年〜現在)という変遷 をたどっている。つまり、A社は、改革開放とともに、

成立した郷鎮企業として出発し、その後 1997年の金融 危機を経て、体制改革した国有企業や発展させた私営 企業との競争を通じて、進化発展した大手企業である。

体制改革を成功させた郷鎮企業のひとつとして、どの ように農民工を採用したか、また、その待遇はどうか、

などについて、調査データが得られた。

②大手企業B社:同社は、国営企業を出発点にし、市場 経済の下での停滞期を経た後、外資の導入と土地の集 約により大企業へと進化した。つまり、B社は体制改 革を成功させた国有企業の一般代表として、どのよう に農民工を採用したか、また、その待遇はどうか、な どについて、A社と同様にデータが得られる。さらに、

同社が現地の農民に対して、どのような生活保障政策 を行ったかなどについても、データが得られる。A社 とB社の農民工は比較的上層の農民工の状況を反映し ていると推測される。

③中小企業C社とD社:有限公司である。農村に立地し ている企業としては、もっとも一般的である。このC 社とD社を調査することによって、中層の農民工の実 態把握が可能になると考えられる。

2 O市では 2007年2月から市役所と陽光オフィスに よって、未登録人口(その多くは農民工)調査が行わ れており、2008年1月の調査対象人数が 10万人を超 えている。1998年の調査は、O市における暫住人口(農 民工)登録についての集計結果であったの対し、2008 年に行われた調査は、属人別の未登録人口調査である。

つまりO市の現人口約 74万人に含まれていない人口 である。詳細は調査結果を待たなければならないが、

中国におけるこの間の激増流動人口が、就労と生活の 場を求めて全国を回流しており、O市もその例外では ないことが明らかにされつつある。

3 筆者はO市の市街地近郊で、仕事待ちの農民工につ いて調査を行った。この調査によって、下層の農民工 の実態を把握することができる。すなわち、農民から 労働者へという分解過程にある農民と既に労働者と なった分解後の農民の都市における存在形態、具体的 には、日雇い労働者の実情について、確認することが できる。

4 農民工を送り出している農村および農家についての 調査をO市周辺で行った。とりわけ、農家の後継者問 題に着目した。

第2節 大規模企業A社における農民工の実態

1 A社の農民工 1−1 A社の概況

A社の概況を同社の資料 により整理すると、以下の とおりである。

A社は、改革開放に伴って発展している大型非公有制 企業集団である。集団には現在 5,000人以上の従業員が 働いている。社有面積は 400万m で、その総資産は 12 億元である。生産品目は、主にアルカリ性耐火材と各種 不定形耐火材である。各種不定形耐火材の生産能力は 100万トンで、国内鋼鉄、有色冶煉、建材などの需要に応 じるだけではなく、50%以上の生産品を世界中の 40ヵ国 に輸出している。A集団は、14単位、3つの鉱山、20の 重焼マグネシウム窯、54の軽焼窯、11の電熔マグネシウ ム窯などの生産設備を有し、ドイツと日本からは2,000〜

3,000トン液圧機、強力混砂機、ロボットなどの先進設備 を輸入している。

図 4−1は、A社の組織機構図である。総経理が直轄す る管理事務室と財務部が同社の中枢部門であり、副総経 理8名が 12部門を分担し、全体(5,241人)の管理に当

たっている。同社の機構は、管理事務部門を含む 13部門 の 1,241人と生産部門の 4,000人に大別できる。同社で の聞取調査によれば、生産部門の 4,000人は現業職であ り、下崗労働者が 60%、農民工が 40%で、勤務年数は1

〜3年、長くて 10年の臨時工である。この下崗労働者と 農民工の割合について副総経理のO氏は、4,000人全員 の調査は不可能であり、大凡の数字であると述べている。

しかし、後に見るように 4,000人が農村戸籍であること、

出身地が農村地域であることからみて、下崗労働者 に ついても農民であったと見てよかろう。

A社の全従業員 5,241人の採用年度別雇用状況を示し たのが図 4−2である。創業時(1984年)の 47人から 2005 年には 5,241人へと飛躍的発展を遂げたのが分かる。

特に、1994年には 929人もの新規雇用を行っており、

翌 95年に着工した A1マグネシュウム工場 の操業に 向けた人員拡大である。また、2003年に着工した A2 マグネシュウム工場 は、2004年3月に第二期工事に着 工、続いて 2004年7月には第三期工事に着工するなどの 規模拡大を行った。こうした規模拡大にあわせて 2001年 から 2003年にかけて約 1,300人の雇用を拡大している。

1−2 生産部門以外の就業実態 1−2−1 管理事務室・財務部

総経理直轄の 管理事務室 と 財務部 は、同社の 中枢であり、その従業員の属性は図 4−3のとおりであ る。

管理事務室の 16人中 13人がO市出身で 1984同社設 立以来の副総経理を含む幹部職員であり、上海出身の2 人については同社がO市に設立する以前の同社の所在地 が上海にあったためである。

年齢は高く、学歴も高校卒が 12人を占め、必ずしも学 歴は高くはない。総経理は、O市の農民出身者である。

財務部の 100人については、男 40人、女 60人で年齢 も 23〜30歳と若く、全員が短大以上の高学歴者で占めら れている。出生地は、安徽省、湖北省、江蘇省、広西省、

浙江省、遼寧省と広範囲にわたっている。

図 4−1 A社の組織機構図

出所:A社案内パンフレット及び 2006〜2007年に実施した聞取り 調査とアンケート調査による。

注:総経理、副総経理は管理事務室部門内の人員である。

図 4−2 A社における採用年度別雇用人数 出所:筆者によるアンケート調査(2006年3月)から。

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