⎜ 国務院研究室検討チーム編 中国農民工に 関する総括的研究報告 から ⎜
はじめに
( 中国農民工に関する研究報告 について)
農民工の全国的移動数を既存統計で把握することは困 難である。そうした中で、中国の行政・学会が総力を挙 げて 農民工問題 の解明にとり組んだ成果として中国 農民工問題に関する総合的研究報告起草チーム によ る、 中国農民工に関する研究報告 (Reporting on the Problems of Chinese Farmer-turned Workers )がある。
さらにこの報告は、国務院研究室検討チーム 編 中国 農民工に関する調査研究報告書 として、中国言実出版 社から 2006年4月1日に出版されている。
中国農民工問題に関する研究総報告起草チームによる 中国農民工に関する研究報告 の 中国農民工問題に関 する研究総報告 の 標題注釈 は、 2005年2月 26日 と3月 23日、温家宝首相は前後2回、農民工問題に関し て重要な指示を出し、国務院研究室と関連部門は、農民 工問題を深く研究し、農民工問題に関する各政策の制定 と政策を完備するよう促した。温家宝首相の重要な指示 を徹底的に実行するために、国務院の指導者によって、
2005年4月4日に〝農民工問題調査研究と文章起草チー ム" が組織された。調査研究グループは、国務院研究室 がリードし、中央と国務院の 17部門、8ヵ所の農民工の 流出又は流入大省(市)部門を構成員とする。さらに長 期にわたって農民工問題を研究している5名の専門家を 招聘した。そして中央の構成員は 33編、地方構成員は 12 編、5名の専門家は 10編の特別テーマについての報告を それぞれ行った。国務院研究室の関連同志は相前後して 11ヵ所の省(区、市)で調査研究し、調査研究チームも また農民工の重点問題に関連して9回の調査研究の成果 報告会と専門家の座談会を開催して、最後にこの報告を 作成した。 と述べている。
中国農民工に関する研究報告 は、魏礼郡による 農 民工問題の解決における正確な認識と解決の重要性 を 序章として、中国農民工問題研究総報告起草チームの 中 国農民工問題研究総報告 をはじめ、部門研究成果、地 方調研報告および専門研究報告の三部分から成ってい
る 。
同研究報告の 内容要約 において、 農民工は、中国 経済と社会発展を進める重要な力である。現段階で農民 工が直面する問題について、党中央と国務院は高度な関 心を持っている。……報告は、中国農民工の現状、作用 と発展形勢を分析し、農民工が直面する問題の原因を分 析し、問題解決の全体構想と目標を提起し、農民工に存 在する十大問題に関する若干の政策提案を行った。そし て農村余剰労働力の移転促進、都市政府の強化と改善、
農民工の管理とサービス、農民工の切実な利益保護など の面からの提案を行った と述べている。そして キー ワード として、 農民工、2元構造、都市と農村の統一、
労働力移転 を挙げている。
以下では、同報告の中から、魏礼郡 農民工問題の解 決における正確な認識と解決の重要性 (序章)、中国農 民工問題研究総報告起草チーム 中国農民工問題に関す る総合研究 、部門研究:労働と社会保障部調研チーム 現状における農民工の動きと就職数およびその構成と 特徴 、専門研究報告:劉懐廉 農民工政策に関する若干 の問題 を取り上げ、やや立ち入った紹介を行うことに よって、中国国務院が現状において 農民工 に対して、
いかなる現状認識を有しているか、という点について検 討してみよう。
第1節 農民工問題の解決における 正確な認識と解決の重要性
⑴ 概要
改革開放以来、中国の工業化、都市化の加速により、
多くの農村余剰労働力は都市(鎮)と郷鎮企業への出稼 に向かっている。その過程で、一つの特殊な社会群体が 形成された。いわゆる 農民工 である。中国の近代化 建設の途上に現れた一つの新型労働大軍である。 農民 工 とは、主に農村戸籍をもち、都市への出稼ぎをして いるか、もしくは現地および異地で非農業に従事するも のを指す。彼らは非常に移動性を持ち、農閑期に 渡り 鳥 の形で出稼ぎしているか、もしくは長期間都市に住 み、生活し、働き、すでに産業労働者の一部になってい る 。
1)農民工問題を解決する重要性と緊迫性を十分認識す ること
国家統計局の調査によると、2004年、全国の都市への 出稼ぎ農民工と郷鎮への出稼ぎ農民工の総数は2億人を 超えた。そのうち都市への農民工は約 1.2億人である。
農民工は様々な企業に就労しており、そのうち全加工製 造業就業者中の約 60%が農民工であり、同じく建築・採 掘業では 80%、衛生・家政・飲食などのサービス業では
全就業者の 50%が農民工である。農民工は、中国の工業 化、城鎮化、現代化建設にとって非常に重要な作用を発 揮する。過去 20年間、もし農民工が居なければ、中国の 工業化、城鎮化、現代化を早期に進めることが出来なかっ たし、沿岸地域の新興産業と開放型経済も早期に発展で きなかった。党中央、国務院は非常に農民工問題を重視 し、農民工の権利保障と農民工就職環境の改善に対して 一連の政策をつくり上げ、各地域も積極的に対応してい るが、現実の状況から見ると、目下農民工は次のような 問題に直面している。給料が低く、給料の遅配が頻繁に 発生する。労働時間が長く、安全条件が不足である。社 会保障が十分ではなく、職業病と労災事故が多い。職業 訓練、就職、子女教育、生活住宅などの方面にも困難が あり、経済、政治、社会権利と利益分配についての有効 な保証がない。このような現状は社会矛盾と紛争を招く とともに、社会の各方面から注目されている。こうした なかで、農民工問題の解決は科学発展観の成し遂げるこ とであり、社会主義の調和社会建設の必然要求であり、
中国的な社会主義建設の戦略任務であると認めてい る 。
つまり、農民工は市場動向、自由選業、競争就業メカ ニズムの形成を促進し、城郷統一発展と三農問題を解決 するために、新たな道を開いた。更に、農民工の労働給 料・就職環境・共通サービスなどの問題解決、経済・政 治・社会権益の保護、農民工のために平等・良好な仕事 と生活環境を提供することが社会の公平・正義を促進し、
秩序ある安定的社会を形成することを可能にする。農村 余剰労働力が非農業と城鎮へ移動することは、世界各国 の工業化と都市化の展開過程と同様に、必然なことであ る。各国の工業化を進める過程における農業余剰労働力 の移動規模、速度と方式が異なるため、その社会効果も 異なる。中国は、人口が多く、農村労働力も多い。更に、
工業化、城鎮化の速度が早まるにつれて、将来益々、農 村余剰労働力は非農産業、都市に移動する。農民工の出 現と拡大は、中国の経済にとって、農村余剰労働力が転 移するための正しい選択である。そのため、私たちは工 業化、城鎮化の客観的ルールを守りつつ、中国の国情に 合わせ、正しく農村余剰労働力の非農産業と城鎮への秩 序ある移動を導くべきである。農民工問題を解決するこ とができるかどうかが、中国の現代化実現に直接関わっ ている。
2)農民工問題を解決するため、把握しなければならな い原則は、以下の通りである 。
農民工問題は、中国の工業化、城鎮化、現代化のなか で現れた新たな事象である。そして、農民工問題を解決 するために、根本的なのは正確な指導原則である。この 指導原則と言うのは、世界の現代化建設の一般的なルー
ルを守りつつ、中国の特殊な状況から考えることである。
農民工が直面している諸問題を積極的に解決しながら、
また、改革・発展・安定の方面から大局を把握すること。
現行の政策と管理を完備し、更に体制と制度の改革を行 うこと。城郷の統一発展とともに中国の特徴である工業 化、城鎮化、現代化を穏やかに健全に発展させることで ある。つまり、以下の重要な原則である。
① 差別せず、平等な扱いをすること
② サービスを強化し、完全な管理をすること
③ 統一的な計画、合理的な手引きをすること
④ 各地域の事情に即して指導すること
⑤ 現状の問題を解決するとともに長期の計画を立てる こと
3)現状ですみやかに解決しなければならない問題は以 下の通りである 。
農民工問題は、様々な方面に関わるため、現状、特別 に農民工の利益に関わる普及性と現実性を持つ問題の解 決が大切である。
① 農民工の収入は比較的低く、生産生活条件は劣悪
② 農民工の就職訓練と労働契約管理の強化
③ 農民工の社会保障問題
④ 農民工の公共サービスの改善
⑤ 農民工の権益の保証システムの擁護
⑥ 地域近隣での農村労働力就職の促進
⑦ 農民工自身の教育水準の向上
この内、特に⑥についてのみ内容を説明しておく。す なわち、 地域近隣での農村労働力就職の促進 という課 題は、 新型工業化の必然的な要求であり、中国の膨大な 農村労働力の移動就職には必然性がある。調査によると、
現在全国で移動した農村労働力の内、県域経済範囲の主 に郷鎮企業と中小企業で 65%を吸収している。浙江、江 蘇、山東、広東など、経済発達している省内で働く労働 力の内、90%程度現地および近隣の農村労働力が占めて いる。実際の動きからも明らかなように、上記の就職モ デルは非常に重要である。郷鎮企業と県域経済が発展す ることによって農村余剰労働力の現地での移動就職を促 すことができる。中西部に関連産業を移転し、中西部の 農村余剰労働力の就職機会を増加させる。農村基礎のイ ンフラ建設に着手し、農民の生産生活条件を改善し収入 を増加するとともに、農村余剰労働力の現地で移動就職 を促す。小城鎮産業集積と人口吸収能力を高め、出稼ぎ 農民の小城鎮への帰還創業と居住について奨励する。農 民工の土地請負権を法律に従い保護することは、農民工 の都市失業リスクを軽減し、社会調和と安定を維持する 上で、重要な問題である 。