第 3 章
3.2 運動量計算原理
続く節でこの原理をさらに高速化する方法を述べる.
3.2 運動量計算原理
本手法では,撮像素子によって計測環境より得られた輝度情報を一方向に平 均化することでデータ量を削減させ,計算量を低減する.輝度情報の平均化に より 1 次元の移動量計算に限定されるものの,カメラを利用した従来の運動計 測手法より高速に運動を計測することが可能になる.また,本手法はカメラ映 像からの単なる輝度変化により運動計測を行う.移動量計算に用いるデータは 計測環境に存在する輝度特徴量のみであるため,マーカ設置など事前の準備が 必要なく,計測環境に制限されることがない.
Fig. 3-1 輝度分布と輝度平均
3.2 運動量計算原理 21
輝度情報の平均化について,次のように考える.
Fig. 3-1のように,縦,および横のピクセル数が𝑁𝑥, 𝑁𝑦 の画像を考え,𝑛フレ
ーム目で得られた画像における座標(𝑥, 𝑦)での輝度を𝐼𝑛 (𝑥, 𝑦)とおく.ここで,
𝐼𝑛(𝑥, 𝑦)を𝑦軸方向に加算した値𝐴𝑛 (𝑥)は式のように表される.また𝐴𝑛を式以下の ように定義する.
An(x) = ∑ In(x, i)
Ny
i=0
An = [An(0), An(1), ⋯ An(Ny)] …式(1)
次に,𝐴𝑛と𝐴𝑛−1との相関𝑅𝑛を求める.𝐴𝑛のずれ量を𝑗,その相関を𝑅𝑛(𝑗)とお くと,𝑅𝑛(𝑗)は以下のように求められる.
𝑅𝑛(𝑗) =
{
∑ 𝐴𝑛(𝑖) ⋅ 𝐴𝑛−1(𝑖 − 𝑗) (𝑗 ≥ 0)
𝑁𝑥−(𝑗+1)
𝑅(−𝑗) (𝑗 < 0)𝑖=0
…式(2)
ただし,−𝑁𝑥 ≤ 𝑗 ≤ 𝑁𝑥である.𝑅𝑛(𝑗)が最大となるような𝑗を𝑛フレーム目での 画像上の移動量とする.
最後に,画像移動量を実世界での移動量に変換する.各パラメータをTable 3-1 のように表せば,変換のための式は次のように表される.
3.2 運動量計算原理 22
Table 3-1 パラメータ詳細
パラメータ 詳細 単位
𝑇𝑟 実世界でのカメラ並進移動量 mm 𝑆𝑝 カメラ素子の大きさ mm 𝑆𝑖 画像の撮影範囲 mm
f 焦点距離 mm
𝐷 撮影距離 mm
𝑊 画像のピクセル量 pix 𝑇𝑖 画像上の移動量 pix
𝑇𝑟 = 𝑆𝑝 𝑓 × 𝑆𝑖× 𝐷
𝑊× 𝑇𝑖 …式(3)
この原理は一般的なRGBカメラを用い,得られた輝度情報をソフトウェアに よって圧縮することが前提となっており,高速な計測を行うためにはハードウ ェア・ソフトウェア両面から高速化する必要がある.つまり,フレームレート の高速化と計算量の低減が課題となる.
この問題を解決するため,本研究ではこの原理を応用し,リニアCMOSセン サとシリンドリカルレンズを用いる手法を提案する.シリンドリカルレンズに よって輝度情報を線状に収束させ,輝度情報の圧縮を光学的に行う.さらに,
収束した光をリニアCMOSセンサによって読み込ませることで,圧縮された輝 度情報を高速で読み取ることが可能である.この詳細を3.3節で述べる.