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実移動距離の直接計算

第 6 章

6.2 実移動距離の直接計算

6.1節で挙げた問題に対し,装置を2台用い,平行に並べることで解決を図る.

これまでの移動量計測では,1台の装置で得られた輝度分布をフレーム間で比較 していたが,今回の構成では平行に並べられた 2 台の装置間で同時に得られた 輝度分布を比較する.装置間の実距離が既知であり,装置間の画素上距離を輝 度分布の相互相関で求めることができれば,そこから被写体までの距離を計算 できることが期待される.

装置構成の模式図をFig. 6-2に示す.図に示されるように,2台の装置で同時 に得られた輝度分布を相互相関で比較し,得られた画素上距離𝑇𝑖から装置間の実

6.2 実移動距離の直接計算 82

距離𝐷𝑠を計算すると,以下のように求められる.

𝐷𝑠 = 𝑆𝑝 𝑓 × 𝑆𝑖× 𝐷

𝑊× 𝑇𝑖 …式(4)

上式で,𝐷𝑠は装置設計時に決定されるため,既知として扱うことができる.

さらに,𝑆𝑝, 𝑓, 𝑆𝑖, 𝑊は装置の内部パラメータであるから,未知パラメータは被写

体までの距離𝐷のみである.式を整理して 𝐷 = 𝑊 × 𝑓 × 𝑆𝑖

𝑆𝑝× 𝑇𝑖 × 𝐷𝑠 …式(5)

これをフレーム間移動量の計算式に代入することで,画素上移動量から実移 動量への変換を行うことができる.

以上より,平行に並べた 2 台の装置を用いることで実移動量の計算が可能で ある.

Fig. 6-2 実移動量を直接計算するための装置構成模式図

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6.2.1 センサ個体差

同種のセンサを複数用いるとき常に問題となるのが,センサ間の個体差であ る.センサの出力には個体差があり,同じ環境で使用したとしても違うセンサ を用いれば異なる結果が得られる.極端なものでは,出力個体差が数倍になる こともある.この現象を放置したままセンサを利用すると,センサ間の情報を 比較・処理する大きな妨げになる危険性が高いため,一般的にはキャリブレー ションなどによってセンサ個体差を補正してから使用する.本章で提案する構 成では 2 つのセンサから得られた情報を比較するため,この問題を解決する必 要がある.

この問題は,相互相関を用いたデータ比較によって自動的に解消されると考 えられる.相互相関による相関値の計算は,2つのベクトルがなす角の余弦成分 の計算と同義に扱うことができる.ベクトル𝕒, 𝕓のなす角𝜃の余弦成分cos𝜃を計 算する式は,以下のように表される.

cos𝜃 = 𝕒 ⋅ 𝕓

|𝕒||𝕓|

これを書き換えて

cos𝜃 = 𝕒

|𝕒|⋅ 𝕓

|𝕓|

上式より,各ベクトルが正規化されてから計算されていることがわかる.本 手法でも同じ計算を行うため,比較する 2 つのデータの大きさはどちらも 1 に 整えられ,センサ個体差は解消される.

以上より,1つのセンサ内で素子間の出力個体差が少なければ,センサ個体差 に関する厳密なキャリブレーションの必要性は少ないと考えられる.ただし,

今回用いたリニアCMOS センサ「S10077」および「S11638」は出力される電 圧にオフセット電圧が含まれているため,この補正は行う必要がある.