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週以降まで児生存が確認できた自然流産後, 週以降の人工流産・

Answer

妊娠 7 週以降まで児生存が確認できた自然流産後, 週以降の人工流産・

異所性妊娠後,腹部打撲後,妊娠中の検査・処置後(羊水穿刺,胎位外回転術等)

2.抗 Rh(D)抗体陽性の場合,妊娠後半期は 2 週ごとに抗 Rh(D)抗体価を測定する.

(B)

3.抗 Rh(D)抗体価上昇が明らかな場合,胎児貧血や胎児水腫の徴候について評価す る. (A)

▷解 説

1.

1)日本人では母体 Rh(D)陰性でも,胎児は Rh(D)陽性例が多く,Rh 不適合を念頭に置いた管 理を行う.妊娠初診時の間接クームス試験陰性の妊婦には,最低限妊娠 28 週前後および分娩前に Rh

(D)抗原に対する間接クームス試験を施行し,Rh(D)感作を確認する.Rh(D)陰性妊婦に対して,

どの程度頻回に間接クームス法による抗 Rh(D)抗体の定性検査や定量を行うべきかについて,明確に 規定する根拠はないが,ACOG では,妊娠中の初回の検査で抗 Rh(D)抗体価 8 倍以下(抗体陰性例 を含む)の場合には,4 週ごとの抗体価測定を提案している1)

2)Rh(D)陰性産婦に対する分娩後 72 時間以内の抗 D 免疫グロブリン投与によって産褥 6 か月時 点の感作率(risk ratio(RR)0.04,95% confidence interval(CI)0.02〜0.06)および次回妊 娠時の抗 D 抗体陽性率(RR 0.12,95% CI 0.07〜0.23)は著明に低下する2).投与量については,

ACOG(米国)では抗 D 免疫グロブリン 300μg3),RCOG(英国)では 100μg が勧められている4). 本邦では抗 D 免疫グロブリン 1 バイアル(約 250μg 相当)の筋注が標準である.

3)一方,Rh(D)感作の機会のない妊娠については,妊娠 28 週以前に感作されるリスクはきわめて 低い5).しかし,妊娠 28 週以後には感作のリスクが上がると考えられる.妊娠 28 週の抗 D 免疫グロブ リン 300μg の単回投与により,妊娠中の Rh(D)感作率は 2% から 0.1% に減少すると報告されて おり5)6),ACOG(米国)でもこのプロトコールによる妊娠中の感作予防を勧めている3).一方,RCOG

(英国)では妊娠 28 週と 34 週に 2 回の抗 D 免疫グロブリン 100μg 投与を臨床研究データ7)8)に基づ き推奨している4).本邦では,厚生労働省保険局医療課長通知(保医発 1029 第 4 号,平成 22 年)に より妊娠 28 週前後での投与が抗 D 免疫グロブリンの適応(効能)として加わったことから,その時期 の抗 D 免疫グロブリン投与を推奨している.また,本通知により,流産後,人工妊娠中絶後,異所性妊

娠後,妊娠中の検査・処置後(羊水穿刺,胎位外回転術等)および腹部打撲後等の D(Rho)感作の可 能性のある場合も効能追加された.ただし本通知によれば,羊水穿刺(羊水過多症の場合を除く)等の 従来から保険給付の対象とならない検査,手術などにより抗 D 免疫グロブリンの投与が必要となる場合 については,保険給付の対象とならない.

抗 D 免疫グロブリンは血液製剤であり, 感染症伝播リスクを排除できない点について十分に説明し,

同意を得る(同意が得られない場合についてもその旨カルテに記載する).新生児が Rh(D)陰性の場合 や,すでに母体が Rh(D)に感作されていることが間接クームス試験(母体)や直接クームス試験(新 生児)で明らかな場合には,抗 D 免疫グロブリン投与は不要である.妊娠中に投与する際,夫(あるい はパートナー)が Rh(D)陰性であれば胎児も Rh(D)陰性と考えられ抗 D 免疫グロブリン投与は不 要となるが,胎児の父親が妊婦の夫(あるいはパートナー)でない可能性もあることを考慮する必要が ある.また,不必要な血液製剤投与を避けるため,分娩後には児が Rh(D)陽性であることを確認して 抗 D 免疫グロブリンを投与すべきである.

抗 D 免疫グロブリンの半減期は約 24 日とされ,妊娠中に投与した後の間接クームス試験結果に影響 を与える.例えば妊娠 28 週に抗 D 免疫グロブリンを投与した妊婦の 15〜20% は分娩時,非常に低値 ではあるが抗 D 抗体陽性となる(通常 4 倍以下)9).妊娠中の抗 D 免疫グロブリンの投与の有無にか かわらず,分娩直後には抗 D 免疫グロブリン投与を行うのが一般的である.しかし,妊娠中の抗 D 免疫 グロブリン予防投与後 3 週間以内に分娩となった場合には,分娩後の抗 D 免疫グロブリン投与は省略 可能ともいわれている.ただし分娩により著しい胎児母体間出血があった場合はこの限りではない10). Rh(D)抗原は赤血球のみに存在し,亜型が存在する11).臨床的に問題となるものとして D 抗原の量 的異常である weak D がある(日本人における頻度:0.004%12)).妊娠中や妊娠前に適切に検査されて weak D と診断された場合,弱いながらも D 抗原は陽性であるので「Rh(D)陽性妊婦」として取り扱 われるべきで3)11)13),抗 D 免疫グロブリン投与は行うべきでない3).参考までに,日本赤十字社では,

weak D の人に輸血する際には Rh(D)陰性の血液を勧めている.その理由は Rh(D)陰性と weak D との鑑別が検査上,難しいことがあるためである.

4)ACOG ガイドラインは,流産後,異所性妊娠後,羊水穿刺(絨毛生検,胎児血採取)後でも,抗 D 免疫グロブリン投与による Rh(D)感作予防を勧めている3).これらに対する抗 D 免疫グロブリン投 与量は 50μg で十分との報告14)はあるものの,至適投与量についての定説はない.また,初期流産症例 への予防投与の是非については,エビデンスが乏しいうえに相反する報告がある.しかし,1)胎児赤血 球が Rh(D)抗原を発現するのは妊娠 7〜8 週以降とされること15),2)胎児血の母体への流入が 0.25 mL 以上になると抗体を産生すると推定されること16),3)妊娠 8 週流産例での平均胎児血流入量は 0.33mL と推定されること17)などから,理論的に妊娠 8 週以降の流産で抗 D 免疫グロブリン予防投与 が必要との見解がある16).異所性妊娠についてもエビデンスがないが,同様の論拠から妊娠 8 週以前で は抗 D 免疫グロブリン予防投与は不要との考えがある16).羊水穿刺や絨毛生検,胎児血採取(臍帯穿刺)

後の抗 D 免疫グロブリンによる Rh(D)感作予防の必要性についても,根拠となるエビデンスは十分と はいえない.しかし,ACOG ガイドラインは,理論上,Rh(D)感作の可能性が高まるとして抗 D 免疫 グロブリン予防投与を推奨している3).さらに,部分胞状奇胎,出血を伴う切迫流産,子宮内胎児死亡,

母体の腹部外傷,妊娠中期・後期での出血,外回転術施行後などでも抗 D 免疫グロブリン投与を考慮す べきとしている3)

2.妊娠初期の検査で抗 Rh(D)抗体陽性の場合や妊娠中に抗体が陽性化した場合は,厳重な管理(貧 血治療や分娩時期模索が必要となる主に妊娠後半期)が必要になる.抗 D 抗体価の測定は,抗体価 8 倍 以下の場合は月 1 回程度行い,抗体価の上昇がないことを確認する.抗体価 8 倍以下でも,前回妊娠時

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に急激な悪化が起きている場合には慎重な経過観察が必要である.抗体価 16 倍以上の場合には,胎児 貧血発症のハイリスクと認識し,経過観察を行う.抗 Rh(D)抗体価が,必ずしも常に胎児貧血の程度を 反映しているわけではない1)

3.胎児貧血の評価には,以前より採取羊水の 450nm での吸光度(OD450)を用いてビリルビン値 を測定し,胎児貧血程度を推定する方法が用いられていた18).しかし,近年,超音波パルスドプラ法を 用いた胎児中大脳動脈最高血流速度(MCA-PSV)計測値が胎児貧血の推定に有用なことから19)20),表 1 に示すデータをもとに胎児ヘモグロビン値が推定されている.超音波検査による腹水や胸水など胎児 水腫徴候の検出も重要であるが,胎児貧血がかなり重症にならないと胎児水腫徴候が出現しないという 欠点がある.このような検査で胎児貧血が疑われる例には胎児採血が考慮されるが,正確な胎児貧血評 価法であるものの侵襲的であり,対象は限定的である.胎児採血の結果,ヘマトクリット値が 20〜30%

でかつ胎児水腫がある場合や 20% 未満の場合には,胎児輸血が考慮される.

文 献

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2)Crowther CA, et al.: Anti-D administration after childbirth for preventing Rhesus alloimmu-nisation. Cochrane Database Syst Rev 2000;(2):CD000021(Assessed as up-to-date:

4 May 2010)

3)American College of Obstetricians and Gynecologists: ACOG Practice Bulletin No. 4 : prevention of Rh D alloimmunization(May 1999).Int J Gynaecol Obstet 1999; 66: 63―

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4)Statement from the consensus conference on anti-D prophylaxis. 7 and 8 April 1997.

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6)Bowman JM: The prevention of Rh immunization. Transfus Med Rev 1988; 2: 129―150 PMID: 2856526(III)

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9)Moise KJ Jr: Prevention of Rh(D)alloimmunization. UpToDate 2009; version 17. 3(Re-view)

10)American Association of Blood Banks: Technical Manual, 12th ed, Bethesda, Maryland, American Association of Blood Banks, 1996(III)

11)松田利夫:Partial D と weak D(Du)―判定と意義.日本輸血学会雑誌 1999; 45: 11―19(Re-view)

12)大久保康人,他:Rh(D)陰性と Du について.衛生検査 1974; 23: 215(III)

13)Judd WB: Practice guidelines for prenatal and perinatal immunohematology, revisited.

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14)Stewart FH, et al.: Reduced dose of Rh immunoglobulin following first trimester preg-nancy termination. Obstet Gynecol 1978; 51: 318―322 PMID: 415273(II)

15)Bergstrom H, et al.: Demonstration of Rh antigens in a 38-day-old fetus. Am J Obstet Gy-necol 1967; 99: 130―133 PMID: 4962281(III)

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(Review)

18)Liley AW: Liquor amnil analysis in the management of the pregnancy complicated by rhesus sensitization. Am J Obstet Gynecol 1961; 82: 1359―1370 PMID: 14465271

(II)

19)Mari G, et al.: Noninvasive diagnosis by Doppler ultrasonography of fetal anemia due to maternal red-cell alloimmunization. Collaborative Group for Doppler Assessment of the Blood Velocity in Anemic Fetuses. N Engl J Med 2000; 342: 9―14 PMID: 10620643

(II)

20)Oepkes D, et al.: Doppler ultrasonography versus amniocentesis to predict fetal anemia.

N Engl J Med 2006; 355: 156―164 PMID: 16837679(II)

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