y
v
0v
t =0
v
㸠º~
mg mg
- κ v - κ v
2 2
図25 問題25.速度の2乗に比例する空気抵抗f =−κmv2が働く場合(κ≥0)*20,
25-1.鉛直上方をy軸に選んで,運動の概略図を描け。
【解答】図25の通り。ここでvはy軸正方向の速度である。水平方向へ運 動しないので添字は使用しない。
25-2.κの次元がL−1(SI単位系ではm−1)であることを確認せよ。
【解答】与えられている空気抵抗力よりκの次元を計算すると [κ] = [f]
[mv2] = M LT−2
M L2T−2 =L−1. (5.29) そのほか後で出てくる組み合わせの次元を確かめると以下の通りである。
[gκ] =T−2 → [√gκ] =T−1, (5.30) [g
κ
]=L2T−2→ [√g
κ ]
=LT−1. (5.31)
25-3.運動方程式を書け。ついでに下降時の終端速度v∞を運動方程式だけから求めてみよう。
【解答】質点に働く力は重力と空気抵抗である。空気抵抗は、上昇中には下向き,下降中には上向きに働く。
よって
上昇中: mdv
dt =−mg−κmv2, (5.32)
下降中: mdv
dt =−mg+κmv2 (5.33)
となる。ちなみに等速落下運動となるときの速度v∞は(5.33)より
0 =−mg+κmv2 ∴v∞=−
√g
κ. (5.34)
根号を取るとき負号を付けたのは落下運動だから。これが速度の次元を持つことは(5.31)でわかる。
25-4.上昇中における運動方程式を積分し,速度v(t)を求めよ。
【解答】運動方程式(5.32)より dv
dt =−g (
1 +κ gv2
)
dv
1 + κgv2 =−gdt
∫ v v0
dv 1 + κgv2 =
∫ t
0 −gdt=−gt (5.35) こ こ で v =
√g
κtanθ に よ り 変 数 変 換 す れ ば ,
dv=
√g κ
dθ
cos2θ となり,積分区間は v v0 → v
θ γ → θ
θ = tan−1(√
κ gv)
, γ := tan−1(√
κ gv0
)
>0で あ
*20この空気抵抗をNewtonの抵抗法則という。この法則が成り立つ条件など詳しいことは流体力学で学ぶ。
る。従って
(5.35)のl.h.s.=
∫ θ γ
1 1 + tan2θ
√g κ
dθ cos2θ
=
∫ θ γ
√g κdθ
=
√g κ
[
tan−1(√κ gv)
−γ ]
=−gt· · ·(5.35)のr.h.s. (5.36)
v(t)について解けば v(t) =
√g
κtan(γ−√gκ t) (5.37) を得る。これは正の値でかつtの減少関数となり上 昇中であることと整合する。
25-5.質点が最高点に到達する時刻thを求めよ。
【解答】最高点ではv(th) = 0で,それは(5.37)よりtanの位相が0になる瞬間なので th= γ
√gκ = 1
√gκtan−1(√κ gv0
). (5.38)
上のthはv0の増加関数である。すなわち初速度が大きいほど上昇時間が長くなる。κに対する変化を調べる ため
√κ
gv0≪1としてテイラー展開すると th= 1
√gκ [√κ
gv0−1 3
(√κ gv0
)3
+1 5
(√κ gv0
)5
− · · · ]
= v0
g [
1−1 3
κv02
g +O(κ2v40 g2
)]
. (5.39)
確かにκおよびgの減少関数である。すなわち空気抵抗および重力が大きいほど上昇時間は短い。ここで下 のテイラー展開を用いた。
tan−1x=x−1 3x3+1
5x5+· · · . (5.40) このthを使って上昇中の速度(5.37)を書き換えると次式の通りである。
v(t) =
√g
κtan(√gκ(th−t))
. (5.41)
25-6.上昇中の高さy(t)および最高点の高さyhを求めよ。
【解答】(5.41)を積分する。
y(t) =
∫ y 0
dy=
∫ t 0
v(t)dt
=
∫ t 0
√g
κtan(√gκ(th−t)) dt
=
√g κ
√1gκlog cos(√gκ(th−t))
t
0
=1
κlog cos(√gκ(th−t))
−1
κlog cos(√gκ th
). (5.42)
t=thで第1項は0なので第2項が最高点の高さで ある:
yh=−1
κlog cos(√gκ th)
≥0. (5.43) t = 0で き ち ん とy(0) = 0を 満 た す 。yhを 使 っ て (5.42)を書き直すと
y(t) = 1
κlog cos(√
gκ(th−t))
+yh (5.44) ただし上昇中,すなわち時刻が(0≤t≤th)の場合 に成り立つ。
(5.43) を v0 を 用 い て 表 す 。三 角 関 数 の 公 式 cosθ= (1 + tan2θ)−12 および(5.38)より
yh=−1
κlog cos(√gκ th
)
=−1 κlog(
1 + tan2(√gκ th
))−12
= 1 2κlog
( 1 +κ
gv20 )
(5.45) となる。
空気抵抗が重力よりも弱い,すなわち κv20
g ≪1の
場合,(5.45)をκv20
g について展開すると
yh=1 2κ
[κv02
g −κ2v40
2g2 +κ3v06 3g3 +. . .
]
≃v20 2g
[ 1−κv20
2g +κ2v04 3g2 +. . .
]
(5.46)
となる。これは,κ= 0で空気抵抗がない結果(4.14) に一致し,κが大きくなるほど低くなる。
25-7.下降中における運動方程式を積分し,速度v(t)を求めよ。
【解答】運動方程式(5.33)より
dv dt =−g
( 1−κ
gv2 )
dv
1−κgv2 =−gdt
∫ v 0
dv 1−κgv2 =
∫ t th
−g dt=−g(t−th) (5.47)
t=thで最高点に到達し速度が0になるという境界 条件を用いた。積分区間の下限は,これを反映させ た。ここでv=
√g
κtanhφにより変数変換すれば,
dv=
√g κ
dφ
cosh2φとなり,積分区間は
v 0 → v
φ 0 → φ
φ= tanh−1(√
κ gv)
である。従って (5.47)のl.h.s.=
∫ ϕ 0
1 1−tanh2φ
√g κ
dφ cosh2φ
=
∫ ϕ 0
√g κdφ
=
√g
κ tanh−1(√κ gv)
=−g(t−th)· · ·(5.47)のr.h.s.
(5.48) v(t)について解けば
v(t) =
√g κtanh(
−√gκ(t−th))
=−
√g
κtanh(√gκ(t−th))
(5.49)
を得る。これは負の値なので下降中であることと整 合する。またv(t)の絶対値はtと共に増加するが上 界が存在するので終端速度を持つ。
25-8.この質点が等速運動になる条件およびその終端速度v∞を求めよ。
【解答】双曲線関数の定義よりtanhx=ex−e−x ex+e−x が飽和 するのはx≫1の場合 。よって(5.49)より
√gκ(t−th)≫1すなわち
t−th= 1
√gκ . (5.50)
空気抵抗係数κが大きくなるほど早く等速に達する。
その終端速度は
v∞=−
√g
κ (5.51)
となり,κが大きいほど終端速度は小さい。当然,重 力加速度が大きいほど終端速度も大きい。運動方程 式だけから直接求めた(5.34)と一致している。
硬式野球のボールの場合,κ≃8.7×10−3m−1程度
である。よって最高点に到達してから
√1gκ ≃3.4 s 後に,終端速度v∞=−
√g
κ ≃34 m/s≃122 km/h に達する*21。
25-9.速度v(t)をグラフで表せ。
【解答】
0.1 0.2 0.3 0.4 t@sD
-2 -1 1 2 3 4 5 v@msD
図26 速度の2乗に比例する空気抵抗があるときの垂直投げ上げ運動における上向きの速度v(t)。初速度 v0= 5 m/s,空気抵抗の係数κ= 10 m−1。黒い実線が速度変化を表す。青い破線は,上昇中の速度を下
降中にまで外挿したもの。緑の破線は,下降中の速度を上昇中にまで外挿したもの。赤い破線は,終端速 度−
√g
κである。
25-10.下降中の高さy(t)を求めよ。
【解答】速度(5.49)を積分する。
∫ y yh
dy=
∫ t th
v(t)dt
=−
√g κ
∫ t th
tanh(√gκ(t−th)) dt
=−
√g κ
√1gκ
[log cosh(√gκ(t−th))]t th
=−1
κlog cosh(√gκ(t−th))
. (5.52)
一方(5.52)の左辺はy−yhなので y(t) =−1
κlog cosh(√
gκ(t−th))
+yh (5.53) となる。
*21硬式野球ボールの実際の終端速度はもっと速く40m/s≃144k/h以上に達する。理由は,ボールが完全な球体でない事およびボー ルの自転によって空気抵抗が小さくなる事である。詳しくは流体力学で学習する。