力 学 演 習
友寄 全志
2012 年 4 月 4 日
1 座標変換
1.1 平行移動と反転
問題1. 下の図で表される座標変換について,(x, y)成分と(x
′, y′)成分との関係を求めよ。
x
y
x'
y'
x'
y'
P (x, y)
a
b
x
y x
y
x'
y'
P (x, y)
x'y'
nÌæ1ÛÀ
【解答】左図では
x′ = x − a, (1.1)
y′ = y − b (1.2)
行列を使って書くと
(x′ y′ )
=(x y )
−(ab )
. (1.3)
右図では(xy系とx
′y′系の座標軸が区別し易いように原点をずらして描いた。もちろん原点が一致した変換 を考えている)
x′= −x, (1.4)
y′= −y, (1.5)
行列を使って書くと
(x′ y′ )
= −(xy )
. (1.6)
1.2 座標回転
x
y
x'
y'
α
cosα
sinα
- sinα
cosα
e
x'e
y'問題2. 右図の座標回転(x, y) → (x′, y′)について以下の考える。 2-1. x′, y′方向の単位ベクトルをそれぞれex′, ey′ と書く*1。これ らをxy座標系から見た成分で表せ。
【解答】単位ベクトルは大きさが1である。これを利用して各軸へ の射影を求める。図で,ex′のx成分およびy成分は緑色の線で表し, ey′のx成分およびy成分はシアンの線で表してある:
ex′ =(cos α sin α )
, (1.7)
ey′ =(− sin α cos α
)
. (1.8)
2-2.この座標回転での(x, y)成分と(x′, y′)成分との関係を求めよ。
x
y
x'
y'
α
x sinα
x cosα
x'
y sin α
y'
y cosα
P (x, y)
【解答】同一の点Pの座標が,xy座標系では(x, y)と,x
′y′座標系 では(x
′, y′)と表されるとする。図より
x′= x cos α + y sin α, (1.9) y′= −x sin α + y cos α (1.10)
と分かる。x
′
に関連する線をマジェンタで,y
′
に関連する線をシアン で描いた。
2-3.上の座標変換を行列表示せよ。
【解答】行列表記をすれば
(x′ y′
)
=
( cos α sin α
− sin α cos α ) (x
y )
(1.11)
上の変換行列において,1行目の横ベクトルはex′ の転置行列tex′一致し,2行目の横ベクトルはey′の転置 行列tey′に一致する。すなわち
(x′ y′ )
= (t
ex′
te y′
)(x y )
(1.12)
のように表せる。(1.12)式の意味を考える。規格直交化された座標系(x
′, y′)において,位置ベクトルrのx
′
成分とはx
′
軸への正射影すなわちex′との内積であり,y
′
成分とはy
′
軸への正射影すなわちey′ との内積で ある。右辺にある
(x
y
)
をベクトルrと解釈すれば,(1.12)式は,正しく上記の内容を表している。すなわち
x′= ex′· r, (1.13)
y′= ey′· r, (1.14)
である。これについて,問題3でも再び議論する。
2-4.この座標変換の逆変換を求めよ。求めた逆変換が回転角−αの座標回転と一致することを確かめよ。
*1太字で書いたアルファベットはベクトルを表す。
【解答】(1.11)式の成分行列を,回転角αの座標回転行列T (α)と定義する: T (α) : =
( cos α sin α
− sin α cos α )
. (1.15)
T (α)の行列式は0ではないので,逆行列が存在する。従って
(x y )
=[T (α)]−1(x
′
y′ )
= 1
cos2α + sin2α
( cos α − sin α + sin α cos α
) (x′ y′ )
=
( cos α − sin α + sin α cos α
) (x′ y′ )
(1.16)
と決まる。ここで三角関数の性質より (x
y )
=
( cos(−α) sin(−α)
− sin(−α) cos(−α) ) (x′
y′ )
= T (−α)(x
′
y′ )
. (1.17)
図から予想できた様に,回転角αの座標回転の逆変換は,回転角−αの座標回転となることが分かった。 問題3. xy平面上の任意のベクトルAは
A= Axex+ Ayey (1.18)
と表される。ここでAxおよびAyを,それぞれAのx成分およびy成分という。同様に問題2のx
′y′座標 系では,Aは
A= Ax′ex′+ Ay′ey′ (1.19)
と表される。これらの成分間の関係を求めよ。
【解答】(1.18)と(1.19)は,同一のベクトルを単に違う座標系で表現したものに過ぎない。従って当然これ
らは等しい。すなわち
Ax′ex′+ Ay′ey′ = Axex+ Ayey (1.20) が成り立つ。ここで(1.20)の両辺に対してex′ との内積をとる:
Ax′ex′· ex′+ Ay′ey′ · ex′ = Axex· ex′+ Ayey· ex′. (1.21) 左辺ではex′とey′との直交性を,右辺では(1.7)式を用いると
Ax′ex′· ex′
| {z }
1
+Ay′ey′ · ex′
| {z }
0
= Axex· ex′
| {z }
cos α
+Ayey· ex′
| {z }
sin α
∴ Ax′ = Axcos α + Aysin α (1.22) が導かれる。同様に(1.20)の両辺に対してey′ との内積をとり,ex′ とey′ との直交性および(1.8)を用い ると
Ax′ex′· ey′
| {z }
0
+Ay′ey′ · ey′
| {z }
1
= Axex· ey′
| {z }
−sin α
+Ayey· ey′
| {z }
cos α
∴ Ay′ = −Axsin α + Aycos α (1.23)
が導かれる。(1.22)および(1.23)をまとめると (Ax′
Ay′
)
=( Axcos α + Aysin α
−Axsin α + Aycos α )
(1.24)
=
( cos α sin α
− sin α cos α ) (Ax
Ay
)
(1.25)
と書ける。これらは(1.9)および(1.10),あるいは(1.11)と同じ形である。すなわち,座標回転に対してベク トルは,座標成分と同じ様に変換することが分かる。
(1.20)から(1.23)の計算によって,ベクトルAの両辺に対してex′ およびey′との内積をとると,そのx
′
成分およびy
′
成分を取り出せることが明らかになった。
✓ ✏
定義: 座標回転に対して座標と同じ様に変換する量をベクトルと呼ぶ。
✒ ✑
x
y
x'
y'
z' z
参考: 右図のような3次元の座標回転を考える。xyz座標系から見たx
′, y′, z′ 方向の単位ベクトルを次式で表す:
ex′ =
l1
m1
n1
, ey′ =
l2
m2
n2
, ez′ =
l3
m3
n3
. (1.26)
この場合,3次元の座標変換は次式の通りである: x′=l1x + m1y + n1z,
y′=l2x + m2y + n2z, (1.27) z′=l3x + m3y + n3z.
✎ 2次元座標回転の合成によって任意の3次元座標変換が作られるので,ここでは詳しく述べない。
1.3 直線の記述
問題4. ある直線上にある任意の点Pを表す位置ベクトルをpとする。pの満たす方程式は以下の3つの考 え方から求められる。
1. 直線上のある点Aの位置ベクトルaに,直線と平行なベクトルdの定数倍を加える。
2. 原点から直線に降ろした垂線の足をH,Hの位置ベクトルをhとする。P とHを結ぶ線は,hと直 交する。
3. 直線の上の同一でない2つの点S, T の位置ベクトルをそれぞれs, tとする。P は線分ST を適当に 内分または外分した点である。
下図を参考にして,それぞれの場合でpを表す式を作れ。
d
a
H
h
T
S p
p
p
s
t
【解答】図を参考に問題文のヒントをそのまま数式で表せばよい。結果は
1. p= a + kd (kは実数のパラメータ), (1.28)
2. (p − h) · h = 0, (1.29)
3. p= s + k(t − s) = (1 − k)s + kt (kは実数のパラメータ) (1.30)
となる。
3つの式を比べると(1.28)および(1.30)は2本の等式を含むのに対し,(1.29)は一本の等式しか含まない。 また,(1.28)および(1.30)はベクトルの等式であるのに対し,(1.29)はスカラーの等式である。以下で少し 詳しく調べる。
(1.28)および(1.30)はベクトルに対する式なので,2本の等式を含んでいる。等式が2本あるのは2次元 平面を考えているからであり,3次元空間なら3本,一般にn次元空間ではn本の等式を含む。2次元空間に 2本の等式(制約)があるため1点を指定することになるが,実数パラメータkが変化することで,直線(1 次元のオブジェクト)が記述できる。この構造は3次元以上でも同じで,どんな次元でも直線(1次元のオブ ジェクト)を記述する式である。
一方,(1.29)はスカラーに対する式なので,1本の等式しか含まない。3次元空間でも,一般にn次元空間
でも等式は1本しかない。平面を考える場合には,2次元空間に1本の等式があるため直線(1次元のオブ ジェクト)を記述する。しかし3次元空間の場合,3次元空間に1本の等式があるため平面(2次元のオブ ジェクト)を記述することになる。一般にn次元空間の場合,n次元空間に1本の等式があるためn − 1次元
超平面(n − 1次元のオブジェクト)を記述する。
2 速度と加速度
2.1 速度と加速度の定義およびグラフ的な意味
質点:物体の運動において,物体の大きさを考えず質量だけを持った点として扱ったもの。
位置ベクトル:質点の位置P を表すために用いる,原点Oを基準とするベクトルのこと。通常rで表す。 デカルト座標(直角直交座標)系の場合,点P の座標を用いて,
r= (x, y, z) または r=
x y z
(2.1)
と書く。基本ベクトルex, ey, ezを用いることで
r= xex+ yey+ zez (2.2)
と表される。
速度:位置rの時刻tに関する導関数のこと。通常vで表す。 v(t) := dr(t)
dt = lim∆t→0
r(t + ∆t) − r(t)
∆t =: ˙r (2.3)
= (vx, vy, vz) =
vx
vy
vz
=( dx dt,
dy dt,
dz dt
)
=: ( ˙x, ˙y, ˙z) (2.4)
で定義される*2。デカルト座標系では(2.4)式の様に書く。基本ベクトルを使うと,次式で表される:
v = vxex+ vyey+ vzez= ˙xex+ ˙yey+ ˙zez. (2.5) 加速度:速度vを時間微分したもの。aで表すことが多い。
a(t) :=dv dt =
d2r
dt2 =: ˙v =: ¨r (2.6)
= (ax, ay, az) =( dvx dt ,
dvy
dt , dvz
dt )
=( d
2x
dt2, d2y
dt2, d2z dt2
)
(2.7)
で定義される。基本ベクトルを用いて次式のように書ける:
a= axex+ ayey+ azez= ˙vxex+ ˙vyey+ ˙vzez= ¨xex+ ¨yey+ ¨zez. (2.8) 問題5. 直線上を運動する質点のx座標が次の様に表される場合,その質点の速度vxと加速度axを求めよ。
5-1. x(t) = x0+ v0t + 12at2,ただしx0とv0, aは時刻に依らない定数とする。
【 解 答 】1次 元 の 運 動 な の でy, z 座 標 は 考 え な い 。速 度 の 定 義(2.3)お よ び 加 速 度 の 定 義(2.6)よ り 計 算 する。
vx= dx(t) dt =
d dt
(
x0+ v0t +1 2at
2
)
= v0+ at, (2.9)
ax= dv(t) dt =
d
dt(v0+ at) = a. (2.10)
*2この授業では,定義を表す等号記号を書くとき,新しく定義される側に:を付ける。A:= Bと書けば,Aが新しく定義される量 であり,C=: Dと書けば,Dが新しく定義される量である。r の上にある·は,時間微分を表す記号でドットと読む。
5-2. x(t) = A sin ωt,ただしAとωは時刻に依らない定数とする。
【解答】同様に速度の定義(2.3)および加速度の定義(2.6)より計算する。 vx= dx(t)
dt = d
dt(A sin ωt) = Aω cos ωt, (2.11)
ax= dv(t) dt =
d
dt(Aω cos ωt) = −Aω2sin ωt. (2.12)
∆ t ∆ t
x
P
Q
R
t t+ t ∆ t+ 2 ∆ t t
問題6. 速度と加速度のグラフ的な意味を考える。 6-1.右のx(t)グラフで速度v(t)は何に対応するか?
【解答】点Pにおけるx(t)の接線の傾き。すなわち∆t → 0 の極限での線分PQの傾き。
6-2.右のx(t)グラフで加速度a(t)は何に対応するか?
【解答】点Pにおけるx(t)の接線の傾きと,点Qにおけ るx(t)の接線の傾きの変化の割り合いを表す。x(t)が直線 す な わ ちtの1次 関 数 な ら ば そ の 傾 き は 一 定 な の で ,加 速 度は0になる。線分PRより点Qが下にあれば加速度は正, 上にあれば加速度は負である。ちなみに∆PQRの面積は,
∆PQR= 12(∆t)3a(t)と表される。つまり∆PQRと相似で
∆t = 1となるように拡大した三角形の面積と加速度の2倍
とが一致する。
問題7. 位置r(t)が
r(t) = (R cos ωt, R sin ωt) = R(cos ωt, sin ωt) (2.13) と表される2次元平面内の運動を考える。Rとωは時刻に依らない正の定数とする。2次元の運動なのでz 座標は考えない。
7-1.位置ベクトルの大きさ|r|を求め,それが時間に依存しないことを確かめよ。
【解答】ベクトルの大きさの定義より
|r| :=√r· r =
√
R2(cos2ωt + sin2ωt) = |R| = R (2.14) となり時間に依らず一定である。最後の等号では,R > 0であることを用いた。
x
R
O
y
ωt r
v
a
7-2.この運動の軌道(運動の道筋)を図で表せ。【 解 答 】前 問 の 結 果(2.14)よ り 原 点 か ら 質 点 ま で の 距 離|r|は 時 間 に 依らず一定なので,この質点は円軌道を描く。図示すると右図の通りにな る。角速度ωの符号によって回転する向きが異なる。ω > 0なら図の矢印 のように反時計回りに回転し,ω < 0なら時計回りに回転する。
7-3. 速 度v = drdt を 求 め 図 示 せ よ 。ま た 速 度 の 大 き さv := |v| を 求 めよ。
【解答】速度の定義より v:= dr
dt = (−Rω sin ωt, Rω cos ωt) = Rω(− sin ωt, cos ωt). (2.15)
またその大きさは
v : = |v| =√v· v =
√
R2ω2(sin2ωt + cos2ωt) = R|ω| = Rω (2.16)
となる。最後の等号では,ω > 0であることを用いた。
7-4.加速度a= ddt2r2 を求め図示せよ。また加速度の大きさa := |a|を求めよ。
【解答】同じく加速度の定義より計算できる: a: =d
2r
dt2 = Rω(−ω cos ωt, −ω sin ωt) = −Rω2(cos ωt, sin ωt), (2.17) a : = |a| =√a· a =
√
R2ω4(cos2ωt + sin2ωt) = Rω2. (2.18) 7-5.位置ベクトルrと速度vとが直交することを示せ。
【解答】ベクトル同士が直交するための必要十分条件はその内積が0であること。内積を計算してみよう: r· v = R2ω(− cos ωt sin ωt + sin ωt cos ωt) = 0. (2.19)
従ってrとvとは直交する。
7-6.速度vと加速度aとが直交することを示せ。
【解答】前問と同様に互いの内積を計算する:
v· a = R2ω3(+ sin ωt cos ωt − cos ωt sin ωt) = 0. (2.20)
よってvとaとは直交する。
7-7.加速度aが位置ベクトルと平行で逆向きであることを示せ。
【解答】(2.13)と(2.17)とを比べる
a= −ω2r (2.21)
である。従ってaはrの定数倍なので平行であり,その係数が負なので逆向きである。 7-8.円運動の周期T (質点が一周するために必要な時間)をωを用いて表せ。
【解答】位置ベクトルが(2.13)と表されることと三角関数の周期が2πであるので,周期T はωT = 2πを 満たす。従って
T = 2π
ω (2.22)
である。この式からωの次元が(時間)
−1
であることが確認できる。
7-9.先日のニュースで話題となった国際宇宙ステーションは,地球中心を中心に半径約6.8 × 103kmの円
軌道*3を,約7.9km/sの速さで周回している。この円運動の周期T を求めよ。
【解答】(2.16)から角速度を求め,(2.22)に代入し周期を求める: T = 2π
ω = 2πR
v =
2π × 6.8 × 103 km
7.9 km/s = 5.40 · · · × 103≈ 5.4 × 103s≈ 90分. (2.23)
*3正確には楕円軌道であるが,ここでは単純化している。
国際宇宙ステーションは約1時間半で地球を1周することがわかる。またその角速度は ω = v
R =
7.9 km/s
6.8 × 103 km = 1.16 · · · × 10−3≈ 1.2 × 10−3rad s−1≈ 6.7 × 10−2deg s−1 (2.24) である。つまり位置ベクトルの向きは1秒当たり約0.07
◦
,1分当たり約4
◦
変化する。
7-10.国際宇宙ステーションの山崎さんが感じる重力加速度g
′ (加速度の大きさaに等しい)を求めよ。
【解答】(2.18)および題意より g′= a = Rω2= (Rω)
2
R =
v2 R =
(7.9 km/s)2
6.8 × 103 km = 9.17 · · · × 10−3 km/s2≈ 9.2 m/s2 (2.25) である。映像で見る宇宙ステーション内部の無重力(無重量)状態を想像すると,この値が大きく感じるかも 知れない。もちろん宇宙ステーション内部では地球からの重力と遠心力とがつり合って無重量状態が実現して いるのであり,地球からの重力は0ではない。そもそも地球からの重力がほとんど無ければ宇宙ステーション の公転運動を保つことが出来ず,宇宙ステーションは遥か彼方へ飛んで行ってしまう。
2.2 2 次元極座標
x
y r
θ
r
e
re
θ問題8. 右図の2次元極座標について以下の問いに答えよ。 8-1. xおよびyをrとθとで表せ。
【解答】図より
x = r cos θ, (2.26)
y = r sin θ. (2.27)
8-2. rおよびθをxとyとで表せ。
【解答】(2.26)と(2.27)をrとθ について解けばよい:
r =√x2+ y2, (2.28)
θ = tan−1 y
x あるいは tan θ = y
x. (2.29)
8-3. rが増える方向の単位ベクトルer のx, y成分を求めよ。erの方向をr方向または動径方向と呼ぶ。
【解答】erは,rに平行で大きさが1のベクトルであること及びxとyがそれぞれ(2.26)と(2.27)のよう に表されることを用いて
er: = r r =
(x, y)
r =
(r cos θ, r sin θ)
r = (cos θ, sin θ) (2.30)
と決まる。これはθの関数er(θ)である。
θ
r ( θ )
e
re
θδθ
r ( θ+δθ )
図1 8-4.同様にθが増える方向の単位ベクトルeθのx, y 成分を求めよ。eθ
の方向をθ方向と呼ぶ。
【解答】eθの向きは,rが一定でθだけが増える方向なので,図1のよう にerに直交する向きである。これは偏角がθ + π
2 であるときのerに一致す
るので
eθ(θ) = er(θ +π 2) =
(cos(θ +π 2
), sin(θ + π 2
))
= (− sin θ, cos θ) (2.31)
を得る。
8-5. erをθで微分するとeθになることを確かめよ。
【解答】er(θ)をex, ey方向の基本ベクトルを用いて表し,それをθで微分する:
∂er
∂θ =
∂
∂θ(cos θex+ sin θey) = − sin θex+ cos θey= eθ. (2.32) ここでexとeyがθに依らないこと及び(2.31)を用いた。この結果をeθの定義に照らして考えてみる。eθ とは,rを一定にしてθを微小量増やすときにrが変化する方向の単位ベクトルである。図1で説明すると er(θ + δθ)とer(θ)の差を規格化したものと言える。すなわちこれはrのθ微分を規格化したものに他なら ない。rとerの違いはθに依らないrだけなので,eθはerをθ微分を規格化したものに一致するわけであ る。いま2変数でありθで偏微分するときerを大きさ(= 1)を一定に保っているので,規格化が必要ない。
むしろ(2.32)をeθの定義とする方がわかり易い。erから計算だけで基本ベクトルが求められるので特に3
次元以上の極座標では便利である。
8-6. eθをθで微分すると−erになることを確かめよ。
【解答】前問と同様にeθ(θ)をex, ey方向の基本ベクトルを用いて表し,それをθで微分する:
∂eθ
∂θ =
∂
∂θ(− sin θex+ cos θey) = − cos θex− sin θey = −er. (2.33) 8-7. erの時間微分 dedtr をerとeθを用いて表せ。ただしerとeθの両方が必要とは限らない。
【解答】合成関数の微分法と(2.32)を用いる。 der
dt = dθ dt
∂er
∂θ = ˙θeθ. (2.34)
8-8. eθの時間微分 dedtθ をerとeθを用いて表せ。
【解答】同様に合成関数の微分法と(2.33)を用いる。 deθ
dt = dθ dt
∂eθ
∂θ = − ˙θer. (2.35)
8-9. 2次元極座標において位置ベクトルrはr= rerと表される。これを時間微分し速度v= dr
dt を
v= vrer+ vθeθ (2.36)
の形で表せ。
【解答】速度の定義より
v= d
dt(rer) = dr dter+ r
der
dt = ˙rer+ r ˙θeθ. (2.37) ここでerがrに依らないことおよび(2.34)と(2.35)を用いた。
8-10.速度vを時間微分し加速度a=dvdt を
a= arer+ aθeθ (2.38)
の形で表せ。
【解答】同様に加速度の定義およびライプニッツ則と(2.34),(2.35)より a= d
2r
dt2 = d2
dt2(rer) = ¨rer+ 2 ˙r ˙er+ r ¨er= ¨rer+ 2 ˙r ˙θeθ+ r
(θe¨ θ+ ˙θ ˙eθ)
=(r − r ˙θ¨ 2)er+(2 ˙r ˙θ + r ¨θ)eθ. (2.39) 8-11. 2次元極座標では任意のベクトルをA= Arer+ Aθeθと表すことができる。また,同じベクトルを xy座標で表すとA= Axex+ Ayeyである。Ar, AθとAx, Ayとの関係を求めよ。
【解答】erとeθは規格直交系を成すので,Aとerの内積をとればArが,Aとeθの内積をとればAθが 得られる。従ってx, y座標で表したAと,erまたはeθとの内積をとればよい。
Ar= er· A = Axer· ex+ Ayer· ey = Axcos θ + Aysin θ, (2.40) Aθ= eθ· A = Axeθ· ex+ Ayeθ· ey= −Axsin θ + Aycos θ (2.41) となる。これを行列を使うと
(Ar
Aθ
)
=
( cos θ sin θ
− sin θ cos θ ) (Ax
Ay
)
= T (θ)(Ax Ay
)
(2.42)
の様に表せる。右辺のT (θ)は(1.15)で定義した座標回転行列である。つまり,xy座標系をθだけ回転させ た座標系と一致する。
θ
r
r
θ
0R
R
l
θ−θ
0図2 問題9. 直線の方程式を極座標で書くとr cos(θ − θ0) = Rのように書ける。
θ0, Rはこの直線の何を表すか? 図も使って説明せよ。
【解答】はじめに図2で上式を確認しよう。2次元なので原点から直線lへ の法線ベクトルを与えれば直線が指定できる。その法線ベクトルをRとし,l 上の任意の点を終点とするベクトルをrとする。直線の記述法(1.29)と同様 にr− RとRが直交することを用いれば
(r − R) · R = 0 rR cos(θ − θ0) − R2= 0
∴ r cos(θ − θ0) = R (2.43)
が得られる。あるいはrからRへの射影が,原点からlまでの距離Rに等し いことが分かれば直ちに(2.43)を得る。ここまでで明らかな通りRは原点か らlまでの距離を表し,θ0はRの偏角を表す。
図よりθ = 0のときx軸切片rxに,θ = π
2 のときy軸切片ryに対応するので
rxcos(−θ0) = R, rycos(π
2 − θ0) = R, rx= R
cos θ0
ry= R sin θ0
. (2.44)
よってlの傾きは
傾き= − ry
rx = −
1
tan θ0 = − cot θ
0 (2.45)
である。従ってよく見慣れたy = ax + bの形では y = −tan θx
0
+ R
sin θ0
(2.46) と書ける。また直線の接線ベクトルの偏角がθ0−π
2 なのでtan(θ0−π2)から傾きを求めても良い。
2.3 3 次元極座標
x y
θ r
r
φ
z
r
1e
1e
re
φe
θ図3 問題10. 右図の3次元極座標においてr, θ, φの1つだけが増える方向の単位
ベクトルをそれぞれer, eθ, eϕとする。
10-1. er, eθ, eϕが,x, y, z方向の単位ベクトルex, ey, ezを用いて
er= sin θ cos φ ex+ sin θ sin φ ey+ cos θez, (2.47) eθ= cos θ cos φ ex+ cos θ sin φ ey− sin θez, (2.48) eϕ= − sin φ ex+ cos φ ey, (2.49)
の通りに表せることを示せ。
【解答】図のようにrをxy平面へ正射影させたベクトルr1とすれば r= r1+ r cos θez. (2.50) r1の大きさはr sin θなのでr1をex, eyで表せば
r1= r sin θ cos φ ex+ r sin θ sin φ ey. (2.51)
従って(2.50)と(2.51)より
r= r sin θ cos φ ex+ r sin θ sin φ ey+ r cos θez. (2.52)
これをrの大きさrで割れば(2.47)を得る。
次にeθを求める。図よりeθは,erでφを変えずにθをθ +π
2 にしたものに他ならない。よって eθ= sin(θ + π
2 )
cos φ ex+ sin(θ +π 2 )
sin φ ey+ cos(θ +π 2 )
ez
= cos θ cos φ ex+ cos θ sin φ ey− sin θez, (2.53)
となり,(2.48)と一致する。 また図よりeϕは,erでθを π
2 に,φをφ + π
2 としたものである。よって eϕ= sinπ
2cos (φ +π
2 )
ex+ sinπ 2 sin
(φ +π 2 )
ey+ cosπ 2 ez
= − sin φ ex+ cos φ ey. (2.54)
となり,(2.49)と一致する。
10-2.以下の式を確かめよ。
∂er
∂θ = eθ,
∂eθ
∂θ = −er,
∂eϕ
∂θ = 0, (2.55)
∂er
∂φ = sin θeϕ,
∂eθ
∂φ = cos θeϕ,
∂eϕ
∂φ = − sin θer− cos θeθ. (2.56)
【解答】それぞれ導関数を計算すれば出てくるので簡単な解説だけを加える。(2.55)の第1式で,∂er
∂θ が
eθに比例するのは,eθ の定義そのものである。これは2次元極座標のところ(2.32)の下で述べたことに等し い。本質的に(2.56)の第1式も同じで,eϕの定義より∂er
∂ϕ はeϕに比例する。係数のsin θは規格化定数でも
あるが,erでφを微小量増やすときのz軸からの回転半径と考えても良い。(2.56)の第3式の右辺は,
∂eφ
∂ϕ
がeϕに直交することから
∂eϕ
∂φ = − cos φ ex− sin φ ey = aer+ beθ (2.57) と展開できる。erとeθは直交しているので,上式とerまたはeθの内積をとることで
a = − cos φ ex· er− sin φ ey· er= − sin θ cos2φ − sin θ sin2φ = − sin θ, (2.58) b = − cos φ ex· eθ− sin φ ey· eθ= − cos θ cos2φ − cos θ sin2φ = − cos θ (2.59)
得られる。(2.57)の真ん中の式は,(2.49)をφで偏微分して得た。
10-3. 3次元極座標における基本ベクトルer, eθ, eϕの時間微分を求めよ。
【解答】er, eθ, eϕはθとφの関数なので,合成関数の微分法と(2.55),(2.59)より計算する: der
dt = ˙θ
∂er
∂θ + ˙φ
∂er
∂φ = ˙θeθ+ ˙φ sin θeϕ, (2.60)
deθ
dt = ˙θ
∂eθ
∂θ + ˙φ
∂eθ
∂φ = − ˙θer+ ˙φ cos θeϕ, (2.61) deϕ
dt = ˙θ
∂eϕ
∂θ + ˙φ
∂eϕ
∂φ = − ˙φ sin θer− ˙φ cos θeθ. (2.62) 10-4.速度v =drdt をer, eθ, eϕを用いてv= vrer+ vθeθ+ vϕeϕ の形で表せ。また速度の大きさv := |v| を求めよ。
【解答】速度の定義と(2.60)より v= d
dt(rer) = ˙rer+ r ˙er= ˙rer+ r ˙θeθ+ r ˙φ sin θeϕ. (2.63) その大きさは
v =√vr2+ v2θ+ v2ϕ=
√
˙r2+ r2˙θ2+ r2φ˙2sin2θ . (2.64)
10-5.加速度a=ddt2r2 をa= arer+ aθeθ+ aϕeϕ の形で表せ。
【解答】加速度の定義およびライプニッツ則と(2.60),(2.61),(2.62)より計算する: a= d
2
dt2(rer) = ¨rer+ 2 ˙r ˙er+ r ¨er
= ¨rer+ 2 ˙r( ˙θeθ+ ˙φ sin θeϕ)
+ r[θe¨ θ+ ˙θ(− ˙θer+ ˙φ cos θ) + ¨φ sin θeϕ+ ˙φ ˙θ cos θeϕ+ ˙φ2sin θ(− sin θer− cos θeθ)]
= (¨r − r ˙θ2− r ˙φ2sin2θ)er+ (r ¨θ + 2 ˙r ˙θ − r ˙φ2sin θ cos θ)eθ+ (r ¨φ sin θ + 2 ˙r ˙φ sin θ + 2r ˙θ ˙φ cos θ)eϕ. (2.65)
2.4 速度の合成
R
O
O'
x
y
θ O'
P
r
'B
A
t
bãt
=0C D
図4 問題11. 半径Rの車輪が等速vで滑らずに転がっている。車輪上の
一点の座標と速度,加速度を求める。車輪の中心O
′
が原点Oを通り 過ぎた時刻を0とする。また角速度ωをω := v
R と定義する*4。以下
(♦,♢)でベクトルのx, y成分を表す。
11-1. Oから見たO′の位置をr0で表す。時刻tでのr0の座標を
求めよ。
【解答】O
′
のx座標は車輪が進んだ距離OA = vtに等しい。y座 標は車輪の半径Rに等しい。よって
r0= (vt, R). (2.66)
11-2.時刻0で地面に接していた車輪上の点が時刻tで点Pに来た。図のθをωを使って表せ。
【解答】車輪は滑らないので円弧
⌢
APとOAとは長さが等しい。AP = Rθ⌢ およびOA = vtより
Rθ = vt, ∴ θ = vt
R = ωt. (2.67)
11-3. O′から見た点Pの位置ベクトルr′を求めよ。
【解答】O
′
を原点と考えると,r
′
の大きさはR,偏角は3
2π − θ なので r′= R
( cos(3
2π − θ), sin(3 2π − θ)
)
= R(− sin θ, − cos θ) = R(− sin ωt, − cos ω). (2.68)
11-4.原点Oから見た点Pの座標rを求めよ。
【解答】r= r0+ r
′
と書ける。(2.66)と(2.68),およびv = Rωより
r= r0+ r′= (Rωt, R) + R(− sin ωt, − cos ωt) = R(ωt − sin ωt, 1 − cos ωt) (2.69)
である*5。t = 0でr= (0, 0) = 0となり,点Pはきちんと原点にある。またnを整数としてθ = ωt = 2nπ のとき,点Pは地面に接する。その時のP の座標は
R(2nπ, 0) = n(2πR, 0). (2.70)
つまりnは車輪の回転数に対応する。
11-5.原点Oから見た点Pの速度v= ˙rを求めよ。
【解答】速度の定義と(2.69)より v= ˙r = d
dt(r0+ r
′) = ˙r0+ ˙r′
= R(ω − ω cos ωt, ω sin ωt) = Rω(1 − cos ωt, sin ωt). (2.71)
*4角速度については,単振動の節で詳しく議論する。
*5P
の軌道はcycloidと呼ばれる。最速降下曲線として解析力学で再び現れる。
特にP が地面に接するのはωt = 2nπの時で,その瞬間の速度vAは
vA= Rω(1 − cos 2nπ, sin 2nπ) = (0, 0) = 0. (2.72)
地 面 に 接 す る 瞬 間 ,P は 静 止 し て い る 。こ れ は 車 輪 が 滑 ら な い こ と を 意 味 す る 。車 輪 の 平 行 移 動 の 速 度r˙0 = (v, 0) と 回 転 運 動 に よ る 速 度 r˙
′
A = (−v, 0) の 合 成 で あ る 。一 方P が 車 輪 の 頂 上B に あ る 時 , ωt = (2n + 1)πより,その瞬間の速度vBは
vB = Rω(1 − cos(2n + 1)π, sin(2n + 1)π) = Rω(2, 0) = (2v, 0). (2.73)
これも平行移動の速度(v, 0)と回転運動の速度(v, 0)の合成である。同様に図4の点C,点Dでの速度は
vC = (v, v), vD= (v, −v). (2.74)
それぞれ右斜め上および右斜め下を向いている。 11-6.原点Oから見た点Pの加速度aを求めよ。
【解答】加速度の定義と(2.69)より
a= ¨r= Rω2(sin ωt, cos ωt) = −ω2r′. (2.75)
常に車輪の中心O
′
向きに加速度が生じている*6。
2.5 外積を用いる計算例
r
r+v t ∆
v+a t ∆
v
a t ∆
v
r
v t ∆
O
O
t
bã∆
t
θ
図5 問題12. 右図は平面上のある1点の回りを運動している物体のある瞬間
の位置ベクトルrと速度v,加速度aを図示したものである。以下,加速 度aと位置ベクトルrとが常に平行な場合を考える。
12-1.時刻tでrとvで作られる三角形(灰色の領域)の面積を面積速 度という。面積速度が 1
2|r × v|と与えられることを示せ*7。
【解答】外積の定義より 1
2|r × v| = 1
2rv sin θ. (2.76)
ここでr := |r|, v := |v|である。これは図の灰色の三角形の大きさに他な らない。つまり1
2|r × v|は面積速度の大きさに等しい。
12-2.面積速度が一定であることを面積速度の時間微分より示せ。
【解答】S(t) :=
1
2(r × v)とする。
S˙ = 1
2( ˙r × v + r × ˙v) = 12(v × v + r × a) = 12r× a = 0. (2.77) ここで加速度と位置ベクトルが平行であることa∥ rを用いた。時間による導関数が0なのでSは時刻に依 らず一定である。またこの条件には時刻tが陽に入っていないので,任意の時刻に対して成立する。
*6O′
と共に動く座標系では中心力であることを意味する。回転運動のところで詳しく考察する。
*7面積速度については,角運動量とケプラーの法則のところで説明する。ここでは外積の性質と時間微分の理解を目的とする。
12-3.時刻t + ∆tでの面積速度を計算し,それが時刻tでの面積速度と一致することを示せ。ただし(∆t)2 のオーダーは無視してよい。
【解答】∆t秒後,位置はr(t + ∆t) = r + ˙r∆t + . . .,速度はv(t + ∆t) = v + ˙v∆t + . . . となる。よって S(t + ∆t) = 1
2[r(t + ∆t) × v(t + ∆t)] ≃ 1 2
[(r + ˙r∆t) × (v + ˙v∆t) + O((∆t)2)]
≃ 1 2
[(r + v∆t) × (v + a∆t) + O((∆t)2)]≃1 2
[(r × v) + (v × v + r × a)∆t + O((∆t)2)]
= S(t) + O((∆t)2). (2.78)
従ってO(∆t)までの計算でS(t)は一定である。最後の変形で前問と同様にa∥ rを用いた。ここではrとv を別途テイラー展開して外積をとったが,Sを直接テイラー展開しても同じである。(2.77)の下でも述べたよ うに任意の時刻で(2.78)が成り立つので,Sは一定値のままで変化しない。もちろんより高次の項まで計算 してもSは変化しない。つまりO((∆t)2)以上の項も全て0になる。例えばO((∆t)2)の項は
(∆t)2 2! S¨=
(∆t)2 2!
d2
dt2(r × v) = (∆t)2
2! d
dt(v × v + r × a) = 0. (2.79) 最後の変形では,v× v + r × aが恒等的に0であることを用いた。一般にn次の項も0になる。
(∆t)n n!
dnS dtn =
(∆t)n n!
dn
dtn(r × v) = (∆t)n
n! dn−1
dtn−1(v × v + r × a) = 0. (2.80)
2.6 余弦定理を用いる計算例
α u
v z
y x
O A
B
図6 問題13. 港から見て角αをなす二直線に沿って船Aが定速度uで港に近づき,舟
Bが定速度vで港から遠ざかっている場合を考える。港の位置を原点Oとし,港か ら船A,船Bまでの距離をそれぞれx, yとする。
13-1.船Aと船Bとの距離zをx, y, αを使って書け。
【解答】余弦定理より
z2= x2+ y2− 2xy cos α. (2.81) 図よりz= x − yなのでz2= (x − y)2としても同じ。
13-2. 2つの船同士の距離zが最小のとき,港から2つの船までの距離の比が
x : y = (v + u cos α) : (u + v cos α) (2.82) となることを示せ。ここで,u := |u|, v := |v|である。
【解答】zが最小になる瞬間,その時間微分は0でなくてはならない。そこで(2.81)の両辺をtで微分し,
˙x = −u, ˙y = vとすると
2z ˙z = 2x ˙x + 2y ˙y − 2 ˙xy cos α − 2x ˙y cos α = 0
−xu + yv + uy cos α − xv cos α = 0
−x(u + v cos α) + y(v + u cos α) = 0
∴ y
x=
u + v cos α
v + u cos α. (2.83)
これは(2.82)に等しい。ここで ˙x = −uと負号を付けた理由は,船Aは港に近づくため ˙xが負であること
と,定義よりuが正であることとを整合させるためである。
3 運動方程式
3.1 運動方程式を解かずにわかること
F m3 m2 m1
-
S1S1
-
S2S2
a
図7 問題14. 右図のように,滑らかな平面上で質量m1,m2,m3の物体を軽
い糸で連結し直線上に置いた場合を考える。
14-1. m1を力F で引張ると全体が加速度aで動いた。それぞれの糸
の張力をS1,S2として,質点m1,m2,m3に対する運動方程式を書け。
【解答】慣性系である地面を基準にそれぞれの質点の運動方程式を立て る。全体一緒に動くので,どの質点も加速度は|a|。右向きを正に選ぶ。
m1a= F − S1, (3.1)
m2a= S1− S2, (3.2)
m3a= S2. (3.3)
14-2.上の運動方程式から全体の加速度a及び,糸の張力S1,S2を求めよ。
【解答】両辺を足し合わせて
(m1+ m2+ m3)a = F , (3.4)
∴ a= F
m1+ m2+ m3. (3.5)
残りは上の運動方程式の代数計算で求める:
S1= m2+ m3 m1+ m2+ m3
F, (3.6)
S2= m3 m1+ m2+ m3
F. (3.7)
それぞれの力の大きさには
S2< S1< F (3.8)
なる関係がある。そのため糸の強度を超えるまでF が大きくするとm1の右側で糸が切れる。(3.4)は,全体を 1つの質点と捉えた場合の運動方程式に一致する。つまり内力S1, S2が分からなくても全質量m1+ m2+ m3 とF だけからaは決定できる。
F
m
M
a
F' b x
図8 問題15. 滑らかな水平面上にある質量M の板の上を質量mの人が 板に対して 加
速度aで歩くと,板は 水平面に対して 加速度bで動いた。人が板から受ける水平 方向の力をF として以下の問いに答えよ。
15-1.運度の様子が分かるように図(座標軸,力,加速度を含む)を描け。
【解答】右図の通り。x軸は,地面に静止した座標系である。F
′
は,板が人か ら受ける力である。本来ならF の始点は人の足の裏に,F
′
の始点はその直下に書 くべきだが,人も板も質点として扱うので力の矢印の始点を見やすいように移動し た。またここでは水平方向の運動だけを調べるので,直接関係のない垂直方向の力