A 働
第 7節 近世の遺構・遺物
近世の遺構は、〈3層 〉上面、〈4層 〉上面の
2面
で検出した。ここでは、それぞれ近世上層・下層 として報告 する。土坑、溝、畦畔、耕作痕 と考えられる東西 。南北方向の浅い溝など、農耕に関わる遺構を確認 した。1.近
世 下 層近世下層では、土坑
7基
、東西方向の浅い溝7条
、耕作痕 と考えられる東西 。南北方向の浅い溝 を検出した(図 43、 44)。 このうち、土坑は調査区南西、東西方向の浅い溝は調査区東半、耕作痕は調査区西半に分布 してお り、それぞれの遺構の分布範囲は一定のまとまりを示す。
a.土
坑調査区南西で
7基
の土坑 を検出 した。いずれ もBC‑8ラ
イン沿いに東西に並んで構築 されている。そのうち、4基
はほぼ同 じ位置に重複 して掘削 された ものである。19‑20
│
2,¬二重二上 里望生
̲Jfm
図
43
近世下層検 出遺構全体図□ 〈3d層 〉洪水砂
近世の遺構・遺物
土坑
9(図
45)BC19‑78区
で検 出 した。検 出面 の標 高 は約2.7mで、底面 の標 高約2.lm、 深 さ約60cmを はか る。平面形 は隅丸方形 を呈 し、規模 は長軸長164cm、 短軸長108cmで あ る。断面形 は箱形 を呈す る。掘 り方 はほぼ直線的 に立 ち上が り、
底面 は平 らであ る。埋 土 は3層に分層 される灰色〜茶褐色砂 質土 で構成 され る。各層 の上面 は、 中央が緩 くたわむ ものの、 ほぼ平
らな堆積状況 を呈 している。土器等 の遺物 は出土 していない。
土坑 10〜
13(図
46)BC19‑78・ 88区 で検 出 した。検 出面 の標 高 は約2.6〜2.7mであ る。
4基
の土坑が ほ とん ど位置 を違 えず、重複 して掘削 されており、土坑10・ 11ではわずか な痕跡 を確認 したのみである。
土坑12は 土坑13に よって南半 を切 られてい るが、平面形 は隅丸 方形、断面形 は底面 中央 がやや窪 む逆台形 を呈す る もの と思 われ る。底面 の標高 は約2.lm、 深 さ約60cmを はか る。残存 している規 模 は南北70cm以 上、東西92cmと なる。埋 土 は6層に分層 され る。
底面 に薄 く灰褐色粘質土が堆積す るが、上層 は灰茶褐色土〜砂 質土で構成 される。土坑12の 下半 に堆積す る
a断
面
8〜
11層、b断
面 8・ 10・ 11層と、それ よ り上位 の堆積層では不連続 な状況がみ られ、使用段 階 に再掘削 され た と考 え られ る。土器等 の遺物 は出土 していない。土坑 13の 平面形 はやや不整 な円形 を呈 し、半 円形 の断面形 を有す る ものであ る。規模 は長軸長132cm、 短軸長 108cmで 、底面 の標高 は約2.2m、 深 さ約50cmを はか る。埋 土 は
4層
に分層 で きる。4層
が大 き くえ ぐられたかた ちで上位 に3層が堆積 してお り、使用段 階 に再掘削 された痕跡 とみ られ る。4基
の土坑が重複 して掘削 され ること、それぞれの土坑 において使用段 階 に再掘削がみ られ ることか ら、本土 坑群 で は長期 の使用や土坑 の管理が なされていた ことを想定で きる。土坑14・
15(図
47)BC19‑98、
20‑08区
で検 出 した。検 出面 の標高 は2.65〜2.7mである。土坑15は 土坑14を 切 ってい る。19‑80ラインより 東へ2m
褐色砂質土 灰茶褐色砂質土 灰褐色砂質土
図
45
土坑9
図
44
近世下層全景Z`
く て
3/ 卜b︲﹁
劇FV∽0 1YO詞︒︱︱︱
0 (S=1/50) lm
11
SKll 12 28m a'
土坑11
12.橙色混灰褐色砂質土 土坑10
13.淡橙灰褐色砂質土
土坑13
1.淡橙灰褐色砂質土
2.橙色混灰褐色土
3.橙灰褐色砂質土
4.橙色混暗灰褐色土 土坑
12
‐5.橙色混灰茶褐色砂質土 6.橙灰褐色砂質土
7.黒色混橙灰褐色砂質土
8.暗橙灰褐色土
9.明橙灰褐色土 10.暗茶褐色砂質土 11.灰褐色粘質土
図
46
土坑 10〜 13N
SK15
土坑15
1.橙色混灰茶褐色砂質土
2
暗橙褐色砂質土3.灰橙褐色砂質土
4.灰橙褐色土
5.黄橙色混灰色砂質土
〕‑8ライン 南へ2m
SK14
土坑14
6.淡灰黄褐色砂質土
7.灰茶褐色砂質土
8.灰黄褐色砂質土
9。 青灰褐色砂質土 10.橙褐色砂質土 11.青灰色粘土 12.青灰色砂
? (S=2/3) 5,m
図
47
土坑14・ 15・ 出土遺物「 A
番 号 器 種 最 大長(cm) 最大 幅(cm) 最 大 厚(cm) 重 量 (g) 石 材 特 徴
S55 石 匙 629 サヌカイト 完形 、横 長剥 片素材 。刃部
は片面 か ら、急 斜度 の調整
近世の遺構 。遺物
土坑 14は 南北 にやや長い ものの、ほぼ円形 の平面形 を呈 し、断面形 は逆台形 である。規模 は南北176cm、 平面形 か ら本来の規模 を推測すれば東西 は約1.6〜1.7m前後 となろ う。底面 の標 高 は約1.38mで、深 さは約130cmを はか る。掘 り方 は法面 に小 さな段 を有す る ものの、上方 にむか って開 きなが ら立 ち上が る ものである。埋土 は7層に 分層 され る。最下層 の12層 は青灰色砂 が厚 く堆積 した ものである。その直上 には青灰色粘土 (11層
)が
堆積 す るものの、 それ よ り上位 はすべ て灰茶褐色系砂 質土で埋没 している。
土坑 15は 、平面形 は長方形 で長軸長 は144cm、 短軸長94cmを はか る。底面の標 高 は約1.75mで、深 さは約95cmで ある。断面形 は逆台形 を呈す る。掘 り方 は上方 にむか って開 きなが ら直線 的に立 ち上が る ものである。埋土 は5 層 に分層 され、灰褐色 〜茶褐色系 の土〜砂質土で埋没 してい る。
なお、遺物 は完形 の縄文時代 のサヌカイ ト製石匙1点が出土 した。横長剥片 を素材 とし、上辺 に突起 を有す る もので、刃 部 は急角度の片面調整 に よって作 出す る。
b。 溝
溝 11〜
17(図
48)検 出 された
7条
の溝 はいずれ も調査 区東半 にお いて東西方向 に掘削 された浅 い溝 である。本調査 区の南 に位置す る第8次
調査地点で は、近世下層 面で南北方 向の耕作痕が検 出 されているが、本調 査 区では南北方 向の耕作痕 は検 出 されていない。本調査 区の南辺付近が里境 にあたってお り、本調 査 区 と第
8次
調査 地点の耕作 地 は区画の異 なる耕 作地 であ る。 そのため、溝 や耕作痕 の方 向が一致a三 11蜘 a,b̲SD12 27mピ
c颯
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1
27mc,
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g̲̲̲ D17 2 8mg
l 〈3d層 〉灰白色細砂
図
48
溝 11〜 17 しないもの と考 えられる。溝 はいずれ も東西方向に掘削 される。幅は16〜36cmで、ば らつ きがあ り、断面形は底面がやや平坦 になる浅い 皿状のもの と、丸底状の ものがあるが、深 さは
3〜
7 cmでいずれ も浅い。皿状の断面形 をもつ溝 は北側の溝11〜13の
3条
、丸底の断面形をもつ溝は南倶1の溝14〜 17の4条
である。埋土はいずれ も灰 白色細砂である。 これ らの 溝はすべて調査 区中央 までの間で途切れ、それより西では確認 されないこと、溝の幅が狭いこと、掘 り方が浅いことなどか ら、耕作 にともなう溝の可能性 もある。
c.耕
作痕調査区北西で南北方向の耕作痕が密に検出されたほか、調査区東半や南西で も東西方向の ものがわずかに確認 されている。調査区北西の耕作痕はいずれ も幅約10〜20cmで、深 さ約3〜 5 cmの浅いものである。
2.近
世 上 層近世上層では、土坑13基、溝10条、南北方向の畦畔1条、耕作痕 と考えられる東西 。南北方向の浅い溝 を検出 した (図49)。 溝のうち、調査 区南辺に東西方向に掘削 された溝は、岡山平野の条里地割のなかでは里境の区画溝 にあたると考 えられるものであ り、それ以外の溝 はいずれ も小規模で浅い ものである。
a.土
坑近世上層に属する土坑13基は、調査区中央の19‑30〜50ラインの周辺に集中して掘削 されている。 これ らの土 坑 を平面形 に基づいて次の三類 に分類 した (図50)。
近世土坑
A類
:円形 プランを呈するもの。近世土坑
B類
:楕 円形プランを呈するもの。近世土坑
C類
:隅丸長方形 を呈するもの。? (S=1/400) 1?m
図
49
近世上層検 出遺構全体図(土坑25) (土坑22) (土坑27)
図
50
近世土坑 の分類近世土坑
A類
(図53)土坑23・ 24・ 25。 26が ある。規模 は直径1.5〜1.8m前後、深 さは約0.4〜0.8mのもので、いずれ も箱形 の断面形 を呈す る。土坑25で は、中に円形 の大形桶が残存 していた。
埋土 の状態 をみてみ る と、桶 が残存 していた土坑25で は、桶 の外側 と掘 り方の間に裏込めの埋め立て土が充填 されてい る。土坑23・ 24・ 26で も中心部 と周縁部 の土層 間で縦方向に不連続面が観察 されるため、土坑25と同様、
桶状 の構造物 を設置 し、周縁 に裏込め土が充填 されていた と考 えることがで きる。 したが って、 これ らの土坑 は いずれ も桶状 の構造物 を内包す る水溜め状の施設であったことが推測で きる。分布 は調査区中央で土坑23・ 24、
土坑25。 26が 南北 に
2基
ずつ に分かれて位置 している。切 り合 いや埋 土の内容か ら、対 をなす2基
の土坑 はいずれ も新古 の関係 にあるため、南北 に1基ずつが並存 していた と推定 される。
土坑
A類
と周辺施設 との位置関係 をみてみよう。土坑25。 26の南には、東西方向の溝18に構築 された水門が位 置 し、南北方向に掘削 された溝21が南北のA類
土坑群 を結んでいる。土坑A類
が水溜めを目的 とした土坑であれ ば、基幹水路 に設置 された水門からの揚水 を蓄え、また土坑群を連結する溝による耕作地内への導水 と基幹水路 か ら離れた位置での貯水 という機能面での有機的な関係を想定できる。近世 。近代の耕作地における水利・灌漑 体系 を良好に示す もの とみ られる。類 類 類 A B C 左 中 右
近世の遺構・遺物
なお、土坑25で は桶 内の埋土が1907(明治
40)年
の陸 軍駐屯 地造成 のための造成上であ り、造成直前 まで使用されていた こ とを示 している。
近世土坑
B類
(図54)土坑17・ 18・ 20・ 21・ 22が ある。土坑16は 平面形が著 しく長楕 円形 を呈 し、小規模 で掘 り方 もわずか な もので あ るため、
B類
に準ず る もの としてお きたい。B類
に属 す る土坑 の規模 は、長軸長1.2〜3.Om前後、深 さ約0.4〜0。
9m前
後 で、平面 的 な規模 に大 きな差が見 られる。断面 形 は多 くで底面が緩 く湾 曲す るU字
形 を呈 してい るが、土坑17の み逆台形 の断面形 を呈す る。埋土の状況 をみて み る と、土坑17・ 18では再掘削の可能性 があるが、土坑 22で は単純 な堆積状況 を示 し、一様 ではない。分布 は小 形 で浅 い土坑16を のぞけば、いずれ も調査 区中央北側 の BC19‑35、 45、 46区 に集 中 している。
近世土坑
C類
(図53)土坑27・ 28が ある。土坑 19は 隅丸方形 の平面形 を有 しているが、小規模 で掘 り方 も浅いため、
C類
に準ず る も の としてお きたい。土坑 の規模 は、長軸長1.0〜1.2mであ る。土坑28は 側溝や攪乱 にかかってお り、断面 は著 しく 東 に寄 った位置で記録 したが、最終 的な掘 り方の形状 は北 に近接す る土坑27と 同様、逆台形の断面形 を有する土 坑 である。深 さは0.35〜0.9mであ る。分布 は、土坑19を のぞけば、調査 区中央南半 に位置 している。本層で検出された近世土坑
A〜 C類
は、平面形に基づいた分類 と断面形の形状とが相関関係を有している。ま た、A類
のように土坑内に桶の設置が想定されるものもあり、土坑の平面的な形状は土坑の機能と密接な関係に あることがうかがえる。また、これらの土坑の分布が類型ごとにまとまりを有することや、A類
が水溜め状の施 設であることを想定できることから、それぞれの類型が異なる機能を有 し、それぞれが耕作地内で適した位置に 構 築 された もの とみ ることがで きる。なお、本調査 区の周辺 では東約
200mの
地点 に位置す る第26次 調査地点で近世土坑が多数確認 され、溝や区画沿いに 分布す ることが指摘 されている。本調査 区において も溝沿 い に土坑が展 開 してお り、第26次 調査地点 と類似 した様相 を呈 している。
また、第26次 調査地点 における近世土坑 の密集 は構 内座 標 の15‑20ライ ンを中心 とす る坪墳 の想定 される範囲にあ た る。本調査 区にお ける近世土坑の密集 は19‑40〜50ライ ンの範 囲に展 開 し、その間隔は約210〜 220m、 約
2町
分 の距離 にあたる。 したが って これ らの土坑群の展 開 した範囲 のそばに条里 の坪境 の区画が存在 した可能性が高い。
土坑 出土遺物 (図52)
これ らの土坑群か らの遺物 は僅少であ り、土坑25・ 26か ら出土 した
2点
を掲載 した。1は染付 けの磁器片 の高台部 分 である。見込み中央 に文様があるが、意匠は不明である。K K
? (S=.1/3) lPCm
図
51
近世土坑A類
と溝180水
門1の位 置関係番 号 器種 法 量 (cm)
特 徴 色調
(内/外) 胎 土 口径 底 径 器 高
1 施釉磁 器・
染付 皿"碗
見 込 み 中央 、 内 面 中央 に文様 、
意 匠不 明 淡 白 微 砂 ・ 堅級 2 肥 前磁 器・
小碗 畳付 のみ露胎、
残 りは全面 施釉 白 微砂 ・ 堅緻
図