農 業 講 習 所
財団法人大原奨農会の圭事業は農業研究所 であ ったが,農学校 の設置な ども行な うことが意図されていた。大正
9
年( 1 9 2 0 )
農業研究所 の基礎が 固まったので,農家の子弟を集めて普通教育 の講習お よび農業に関す る知 識技術を講 じ,農村 の中核 となる人物を養成 して農事改善 の一端に貢献する 目的で,同研究所内に農業講習所が開かれた。
この講習所は大正
9
年4
月1
日開講,毎週,月,水,金に教育を施 し,2
カ年 を修養年限 と定めた。 学生は4 0
名 とし, 隔年募集を行な った。所 長は農業研究所長が これに当 り,講師は研究員がその主体 をな し,その他 若干名の人が所長の依嘱に よって これを担任 した。大正1
1年( 1 9 2 2 )
第2
回生を募集 し,教育を施 したが,た また ま大正1 3
年( 1 9 2 4 )
には大原奨農 会 の事業内容が検討 されて,研究活動に専念す ることが確認 されたため, 農業講習所 は2回の卒業生を世に送 っただけで中止 され るに至 った。講 演 会, 講 習 会
大原孫三郎氏は学術知識普及 のため,倉敷 日曜講演を設立 し,その第1 回を明治
3 5
年2
月1 4
日( 1 9 0 2 )
,当時の 岡山県知事棺垣直右氏, 法学博 士仁保亀松氏を招いて開催,爾来明治4 0
年4
月( 1 9 0 7 )
第5 0
回にお よぶ までほ とん ど毎月これを開催 し,社会各方面にわた り学者名士の講演を行 な ったが, 第5 0
回以後は更に やや長期間の講習を行な うことが有利 であることを認め,従来開催 していた ものは随時 とし,冬期 または夏期に
5
日 ない し1 0
日間にわた る講習会 ようの 大講演会を開 くこととし, 大正3
年5
月( 1 9 1 4 )
まで1 2
年間,回を重ね ること実に67回,附属大講演会を5
回まで継続 した。そ して,同年7月財団法人大原奨貴会の設立に当 り,そ の事業 の一つ として 日曜講 演をこれに引き継 ぐことに した。つづいて農業研究所は設立を記念す るために大正
4
年( 1 9 1 5 )
以来毎年1
回農学に関す る講演会 または講習会を開催 した。大正5 , 6, 7
年 には毎回1
日間倉敷市において農学講演会を開催 したが,大正8
年( 1 9 1 9 )
以来講 習会 とし,8年には倉敷市で 3日間,9年 には 岡山市で 5日間,その後毎 年 同 じく岡山市において3‑ 5
日間農業講習会を開催 した。講師は主 とし て当研究所 の職員をあて,各 自の研究発表を骨子 としたが, これを契機 と して他 よ り学者を招いてその学説 を聞 くことも同時に行な った。聴講生は 主 として岡山県お よび隣県 の農業技術員,農業教員等であ った。昭和
4
年( 1 9 2 9 )
は研究所創立満1 5
周年にあた り, 7月6,7日に倉敷 市において農学会,札幌農林学会, 日本農芸化学会,土壌肥料学会,林学 会, 日本畜産学会,農業経済学会, 日本作物学会,園芸学会,東京昆虫学 会, 日本植物病理学会, 水産学会, 関西病虫害研究会 の1 3
学会の連合臨 時大会を開催 した。参会者実に4 0 0
名に達 し盛会をきわめた。昭和
9
年7
月( 1 9 3 4 )
には 研究所創立満2 0
周年 を記念 して 文学博士谷 本富民を招いて6日岡山市, 7日倉敷市において学術講演を開催 した。その後 も引き続 き毎年農業講習会を開催 したが,昭和
2 2
年( 1 9 4 7 )
農地 法に より財産の大部分 (農地)を解放 したため,研究所はその経営困難 と‑ 43‑
な り,昭和
2 6
年( 1 9 5 6 )
岡山大学へ 寄附 され ることにな った。 ここに, 設立以来約4 0
年 間幾多の著名学者を輩 出 した当研究所 の解散を記念 して , 昭和2 8
年( 1 9 5 3 )
倉敷市において一橋大学長中山伊知郎博士, 東京大学 農学部教授東畑精一博士を招いて大講演会を開催 した。ⅤⅠ ・ 農 業 図 書 館
大原孫三郎氏は農業 の専門図書館 を設立 して,農業研究所職員 の研究を 促進 し, かつ,広 く農学の発展に寄与す るため, 大正
1 0
年( 1 9 2
1)農業 研究所構内中央に コソクリー ト煉瓦建三階延93
坪 の書庫 と, 閲覧室,製 本室 の合計18坪 の木造‑階建を併置 し, 大 原奨農会に寄贈 された。 それ で,従来 同会応接室 の一隅にあ った図書室 の図書1, 0 0 0
余冊 を移 し,引続 き大規模かつ急速 に図書館の充実 に努力 した。それに要 した経費は莫大な ものであ ったが,それはすべ て大原氏 の特別寄附金に よってな されたもの であ って, 日本におけ る農業 に関す る図書館の中でももっともよ く充実 し たものの一つ といわれ る今 日の農業生物研究所 の図書館の基礎 とな った。図書収集について特記すべ きものをあげ ると次の よ うであ る。 大正
9
年( 1 9 2 0 )
ドイツの ライプチ ヒ大学 植物学教授 プェッファー博士が 死去 さ れ,翌年 同氏 の遺書が売 られ ることを聞 き早速全1万2千冊 を とりまとめ 購入 した。続 いて研究員山 口弥輔が大正1
1年 か ら1 3
年 まで ドイツに留学 し,そ の間多教の図書を購入 した。 また大正1 2
年 には 研究員西門義一お よび嘱託松本圭一 の両名が中国に渡 り,農業お よび植物に関す る漢籍 を広 く収集し
た 。 大正1 1 ‑1 3
年( 1 9 2 2 ‑2 4 )
の問に投 じた 図書費 を一例 とし てあげ る と次の如 くであ る。大 正
1
1年3 0, 0 0 0円
同1 2
年1 3, 00 0
円 同1 3
年1 1, 0 0 0
円以上は購入 した図書に関す るものであ るが, 日常交換あ るいは寄贈に よ
‑ 45‑
って収蔵 した書誌 叛 の数 もす こぶ る多 い。 活 澱 な研 究 活動 と和文 お よび欧 文 報告 の規 則的 な発 行 が も とで は あ るが,着 極 的 な 当研 究所 刊行 物 との交 換業 務 は 図書 館 の充 実 に 大 きな 力 と な った こ とはい うまで もな い。 これ らの中に は, 本 邦唯 一 といわ れ る文 献 も含 まれ てい る。 い ま, 昭和27年 (1952)当時 の寄 贈 を受 け た雑誌 や報 告煤 の数 を 国 別に示 す と次 の如 くで あ って, 日本809種 ,諸 外 国45カ国800種 の多 きに達 す る。
日 本 (809) カ ナ ダ (13) アル ゼ ソ チ ソ (ll)
メ キ シ コ (2)
‑ ル
ー
(1)中 華 民 国 (3)
マ ラ イ (4)
フ イ リ ピ ソ (5) オ ース トラ リア (23) ニ ュ‑ジーラソド
トラ ンスバ ール
ケ ヤ
EiiiIE5iJEiid5103qLpiR兄p
ベ ル ギ ー (13) 英 国 (47) フイ ソ ラ ソ ド (9) 東 西 ド イ ツ (6) オ ラ ソ ダ (18)
米 国 (360) キ ュ ー バ (2) ブ ラ ジ ル (ll) コ ロ ソ ビ ア (1) ス リ ナ ム (2) イ ソ ド (15) イ ソ ド ネ シ ア (7)
タ イ (1)
ニ ュ ー ギ ニ ア (1) エ ジ プ ト (3) マ ダ カ ス カ ル (1) オ ー ス ト リ ア (ll) デ ン マ ー ク (8) エ ス ト ニ ア (2) フ ラ ン′ ス ギ リ シ ャ
‑ ソ ガ リ ー
\‑ノ)\ー.27210((/し
イ タ リ ア
( 3 9 )
ノ ー ル ウ エ ー
(4)
ポ ル ト ガ ル
(5)
ス エ ー デ ソ
( 1 9 )
ス イ ス
( 1 4 )
ラ ト ヴ ィ ア
(2)
ポ ー ラ ソ ド
( 3
1) ル ー マ ニ ア(3)
ス ペ イ. ソ
(9)
ト ル コ
(1)
チ ェ ッ コ ス ロ グ ァキ ヤ
( 2 3 )
ユ ‑ ゴ ‑ ス ラ グ ィア(4)
以 上4 6
カ 国( 1 6 09 )
つ ぎに,大正
1 5
年( 1 9 26 )
お よび昭和2 7
年( 1 9 5 2 )
岡山大学へ 移管 し た当時 の蔵書数 を次に示す。 これ らの 総額 は1 2
億 余 円に見積 られ る という。
大正
1 5
年 昭和2 7
年洋 書
3 2, 21 0
和 漢 書
9, 0 0 6
蔵 書 総 数
4
1, 21 6
71, 2 5 7 43, 1 7 3 1 1 4, 4 3 0
これ ら諸雑誌 の内容 は ここに紹 介す る余 白が ないが,次 の蔵書 目録 に よ って承知 され たい。
岡山大学大 原農業 研究所蔵書 目録 (Ⅰ)本 邦雑誌 の部.
96
貢 .( 1 9 5 3
年3
月)Li s to ft he Fo r e l gn Pe r i o di c al s i n t he Li b r a r y o ft he Oha r a l ns t i t ut ef o rAg r i c ul t ur a lBi o l o g y. p p .1 6 4.( Mar c h,1 9 5 6 )
書籍 については 目録 の刊行が不可能 で, そ の内容 は直接 照会 され る よ り ほかに方法がないが, 特異 な図書 として 次 のものを 挙 げ る こ とが で き よ‑ 47‑
う。
ペ ッファー文庫 (書籍,雑誌,別刷をふ くむ) 11,730冊
漢 籍 4,884冊
昆 陽 漫 録 (青木昆陽 自筆) 全
8
冊Et t i ng hau s e n
,C.F.V.undA.Po ko r r ) y:Phys i o t yp i aPl a nt a r um
Aus t r i a c a r um.Se r .I
&II,Bd.1 ‑1 2 ,Ta f e l nBd.1 ‑2 . Wi e nu , ndPr a g
,1873.急速 な図書数 の増加に よって,図書館設立当時 の書庫だけでは収容不能 に陥 ったので,昭和 の初めに約30坪 の仮書庫が附設 され たが,昭和27年 4月 (1952)岡山大学‑ の移管 の際,大原総一郎氏 の篤志寄附に よ り鉄筋 コソクl)‑ ト三階建
5 0
坪 の書庫が 従前 の書庫に連結 して建 て られ, また 閲覧室 お よび図書事務室 の改築が行 なわれ, これ らと図書整理室 (旧農業 講習所建物) をあわせ て3
つ の建物が 中庭を擁す る ごとく整理 され,両 日 を一新 した。最後 に, この図書館創設当初か ら昭和15年 (1940)までほ石原が, そ の 後は高橋が司書 として下記 の よ うに常に1名の協力者 とともに図書館事務 一般 の仕事を遂行 して来た こ とを附記す る。
司 書
石 原一画 (1920‑40),高橋良平 (1940‑52) そ の 他
高橋良平 (19?3‑40),友杉幸夫 (1939‑43), 田中加世 子 (1943‑47), 藤 原京子 (1947‑51),守屋啓子 (1950‑52),
Ⅴ Ⅰ Ⅰ . 財 団法人 大 原農業 研究 所 の 解散 と新 財 団 の設立
既に しば しば述べた よ うに, 第二次世界大戦後, 昭和
2 2
年( 1 9 4
7) に 行なわれた農地解放 のために運用基本財産の農地を大部分失 った当研究所 はたちまち経営困難に陥 ったが,文部省そのほか各方面 の絶大な支持援助 を受けて細 々なが らもその事業を続けつつあ った。 別に 昭和2 4
年 国立学 校設置法に よ り岡山大学が設立 され るに及び,本研究所 もその有力な構成 部門 とな るべ く望 まれ , ついに昭和2 6
年3
月( 1 9 5
1)その一部が, 次い で昭和2 7
年4
月残部が 岡山大学農学部附属大原農業研究所 として発足す るに至 った。 これは更に昭和28年( 1 9 5 3 )
に大学附置研究機関に昇格 し, 岡山大学農業生物研究所 として現在6部門を有 し,昔 日に勝 る とも劣 らな い研究活動を続けつつあ る。財 団法人大原農業研究所はそ の研究用資産 の大部分 と事業 の全部を岡山 大学に移管 したので, 昭和28年
( 1 9 5 3 )
解散 したが, その遺留財産が若 干あ ったので, これか ら上 る利益を壬 として岡山大学農業生物研究所 の研 究 の後援資金 とすべ く, 清算を行ない, 昭和3 2
年( 1 9 5 7 )
新 たに財団法 人大原奨貴会を設立 した。その寄附行為中, 目的お よび事業 のみを抜葦 して次に掲げ る。
第 2章 目 的 お よ び 事 業
第
3
粂 この法人は,農業生物に関す る学理お よびその応用に関す る研究 を助成 し,その研究成果を普及奨励 して,農業 の発達に寄与す ることを 目的 とす る。
‑ 49‑
第
4
条 この法人は,前条の目的を達成す るために次の事業 を行な う。1.岡山大学農業生物研究所が行な う研究の助成お よび斡旋
2.
農業生物に関す る研究成果の公開普及お よび出版3.
農業生物に関す る講演会,研究発表会お よび展示会等の開催 な らびに協力4.
その他前条の目的を達成す るために必要な事業なお,旧財団を清算 して新財団に引継がれた当時の資産を参考のために 次に掲げる (昭和32年2月26日現在)。
資 産 総 額 計 基 本 財 産
土 地
基 本 金 運 用 財 産
土 地
現 金
新財団の役員は次の とお りである。
理事長 大原総一郎 (1957‑ ) 理 事
(兼評議員) 西門 義一 (1957‑ ) 原 澄治 (1957‑ ) 清水 多栄 (1957‑58) 監 事 豊 島 武治 (1957‑ )
評 議貝 原 玄太郎 (1959‑ )
7,468,256円 3,724,649円 3,524,649円 200,000円 3,743,607円 3,693,607円 50,000円
高橋 隆平 (1957‑ ) 小林 純 (1957‑ ) 杉山 孝平 (1959‑ ) 小坂 暫二 (1957‑ ) 木村長三郎 (1959‑ )
(附記) 岡山大学農業生物研究所 の現状
さて旧財 団法人大原農業研究所 の王事業 であ る研究活動はそ の後身であ る岡山大学農業生物研究所に引継がれ たわけであ るが,そ の当時 は植物病 理部,害虫部,作物生理部,作物遺伝部,生物化学部 の5部門であ った。
昭和
3 5
年( 1 9 6 0 )
微細気象部が 新設 され, 現在6
研究部門1
事務部 の下 に研究活動が続け られ てい る。 その概 略を示す と次 の よ うであ る。所 長 杉 山 章 平
(事務部) 事 務 長 小 坂 啓 二,庶務係長 岡 本 芳 郎 会計係長 長 尾 吉 男,図書係長 高 橋 良 平
植物病理部 作物 の病原菌お よびバ イ ラス防除 の基礎的研究,作物 耐病性 の研究
教授 日 浦 運 治,助教授 井 上 忠 男,助手 都 田 英 雄 助手 井 上 威 信
害 虫 部 農業害虫 の防除に関す る基礎的研究
教授 杉 山 孝 平,助教授 安 江 安 富,助手 松 本 義 明 助手 河 田 和 雄
作 物生理部 栄養生理,作物栽培環境 の研究
教授 小 林 締,助教授 笠 原 安 夫,助手 完 金 章 助手 森 次 益 三
作物遺伝部 作物 の遺伝 お よび育種 の基礎的研究, 品種 の分化研究 教授 高 橋 隆 平,助教授 安 田 昭 三,助手 林 二 郎 生 物 化 郡 酵素,植物 ホルモ ンな らびに防除化学 の研究
教授 小沢澗二郎,助 手 岡 本 賢 一,助 手 鈴 木 幸 雄 微細気象部 微細気象 の基礎的な らびに実際的研究,植物気候 の研究
教授 高 須 謙 一,助手 山 口 信 之
‑ 51‑