高精度5軸加工技術マニュアル(改訂版)
3. 5軸加工による加工事例と留意点 (要約)
第1章および第2章において、本事業の位置づけを述べたとおり、多軸加工・5軸加工 の普及は、従来製品の高能率加工の実現や複雑な形状を有する高付加価値加工の実現に寄 与することが予想され、前者には、比較的取り組みやすい割り出し5軸加工が、また後者 には難易度の高い同時5軸加工の適用が中心になると考えられる。
そこで、我々は、本マニュアルにおいて2つのモデルを提案し、それらのモデルの加工 を 5軸加工による加工事例としてその留意点について検証する。
3.1 割り出し加工を中心とした加工
まず本節では、割出し加工を中心とした加工を行えるモデルを提案する。提案したモデル のイメージを図3.1-1に示す。このモデルは、ジグ等を用いて割り出しを行なえば、3 軸加工で十分加工が可能であるが、割り出し5軸加工等を適用することにより、段取り換 えが減少し加工工程の集約化が図れるとともに、剛性の高い工具・ツーリングの適用等に より、加工精度や加工能率の向上が予想されるモデルである。
ここでは、従来加工(3軸加工)のみで行った場合と割出し加工を中心とした5軸加工 により加工を行った場合の比較検討を行った。このことにより、割り出し5軸加工を中心と した多軸加工の特徴について検証を行った。さらに工具ホルダーなど加工機の違いによる 比較も行った。主な評価項目としては、3次元形状精度、表面品位(表面粗さ、外観)、加 工時間等である。
結果として、割り出し加工やエンドミル側面切削(5軸スワーフ加工)を用いることで,
大幅な加工時間の短縮や表面粗さの低減が実現できた。加工機の違いによる留意点として,
加工機の精度によってはスワーフ加工におけるビビりが発生するなどの注意点も明らかに なった。
図3.1-1 割り出し加工を中心とした加工モデルイメージ
平面2 平面3
立ち壁1
曲面2(90°)
斜面1(12°)
斜面2(30°)
斜面3(60°)
斜面4(60°)
曲面1(60°)
平面1(基準面)
3.2 同時5軸加工を中心とした加工
第2のモデルとして、典型的な同時5軸加工のモデルであるインペラー(羽根車)形状 のモデルを取り上げる。取り上げたモデルのイメージを図3.2-1に示す。このモデルは、
同時5軸加工でなければ加工できないモデルであり、高付加価値加工に位置づけられるモ デルである。
このモデルにおいて、同時5軸制御加工を中心とした多軸加工の特徴について検証を行 った。主な評価項目としては、3次元形状精度、表面品位(表面粗さ、外観)、加工時間等 である。
結果として、同時 5軸加工において工具姿勢を滑らかに保ちながら加工を行うことが重 要であり、その姿勢変化によってはそれが切削痕として残ってしまうことに注意する必要 がある。また、ブレードの付け根部分の仕上げについても,その加工手順に留意する必要が あることが明らかとなった。
図3.2-1 同時5軸加工のモデルイメージ