5.3.1 フレーム
NU-11 のフレームは、昨年度の NU-10 での問題点を改善しつつ新たな試みを取り入れることを念頭に設計を行っ た.特に重要視した項目として、コンパクト・高剛性・整備性の向上が挙げられる.以下に、各項目の詳細を記す.
1.ショートホイールベース
NU-11 では、ホイールベースを NU-10 より 130mm 短い 1570mm とした.このショートホイールベースを生かすた めにフレームは全長を短くコンパクトにまとめた.
2.剛性
コンパクトにすることでフレームメンバーが短くなり、ねじり剛性 1550N・m/deg を達成.さらに、開口部を広くとっ ても剛性を確保できるためコクピットに余裕をもたせることにも成功し、ドライバーの居住性も両立した.
3.エンジン回りの整備性
昨年度はエンジン回りのフレームメンバーによってレイアウトが制限されていたが、NU-11 では脱着式メインフー プブレースを初めて採用することにより、エンジン搭載時の負担が大幅に軽減された.また、フレームメンバーは各 パーツの配置を考慮してレイアウトした.
このような要素を重視して設計したが、弊害として重心が高い、重量増といったマイナス要素が露呈してしまった.
これらを最低限に抑えられなかったのは、設計時に十分に考慮出来ていなかったからである.今年度も問題点を残 す形となってしまった.
Fig1.強度解析 変位図 Fig2.脱着式メインフープブレース
5.3.2 サスペンションシステム
作動性が悪く、コンポーネントレイアウトに無理があった昨年度の 反省から、基本に立ち返り、「素直によく動くサスペンション」を目標 に設計を行った.
1.サスペンション作動方式
前後ともにプッシュロッド方式を採用.これに加えて素直なレイ アウトを採用することで、作動抵抗を極力減らすことが出来た.
2.アーム類
断面形状を最適化し、アーム長さあたりの質量を低減するととも に曲げ強さを増すことに成功した.端部にはスフェリカルベアリング
(自己調心型軸受)を採用し、剛性を高めている.フレーム側のブ ラケットはプレートを溶接で張り合わせる構造とし、剛性を確保しな がらも大幅な軽量化を実現した.
3.ベルクランク
3 ピース構造とし,軽量かつ高剛性を実現するとともに、無給油 ブッシュ(すべり軸受)及びスラストベアリング(推力軸受)を採用す ることで作動時の摩擦抵抗の低減を図った.
4.アップライト
昨年度同様アルミ合金削り出しにより製作したが、構造を見直し、
かつ部品点数を削減.さらに,アーム取り付け点もアルミ合金製と することより、前年度比約 30%の軽量化を実現し、ばね下重量の 低減を図った.
5.キャンバー角の調整
従来のロッドエンドのネジ部によってアーム長を変化させる方法 から、アップライトとアップライトブラケット間にシムプレートを挟む 方法に変更し、調整作業を単純化した.
Fig.3 フロントサスペンション
Fig.4 リヤサスペンション ベルクランク
アップライト
5.3.3 ハブ・ブレーキ
ハブ
コンセプトを軽量化とし、アルミ合金削り出しで製作した.
強度が必要な部分であるため、出来るだけ単純な形状とし,大 幅な肉抜きはしていないが、昨年度と比較して約 50%軽量化す ることができた.また、国産車に見られる「ボルトがハブに圧 入されている」タイプではなく、ドイツ車などに見られる「ハ ブがメネジになっている」タイプを採用した.これは、一昨年 は前者を採用したアルミハブであったが、圧入したボルトがナ ットと供回りしてしまい、タイヤが外せなくなってしまったと いう事があったためである.
ブレーキ
今年度は、軽量化と前後制動力の最適化を目的とし、
昨年度の対向キャリパーから片押キャリパーに変更し た.それによってホイールとのクリアランスを広げるこ とができたため、ブレーキローター径を大きくし,制動 力を上げることができた.また、前後の制動力を最適化 するため,それぞれ異なるキャリパーを用い、プロポー ショニングバルブで調整を行った.
5.3.4 ステアリングシステム
今年のステアリングは「ドライバビリティの向上」を目標にし、以 下の 3 つの項目に重点を置いた.
1.ヘリカルギア・ラックの採用
ヘリカルギアは、歯スジがねじれている為、噛合い率が向上し、
平歯車より滑らかに静かに回転する.(Fig.8 参照)そのため、ヘリカ ルギア・ラックを使うことでドライバーがどんな感じでステアリングを 切っても思ったとおりにタイヤに入力が伝わるようにした.
2.ユニバーサルジョイントの廃止
ステアリングシャフトのジョイントをなくし 1 本化することで損失動 力を少しでも減らし、ドライバーへの負荷の軽減とダイレクトな操作 感を実現.(Fig.9 参照)
Fig.8 はすば歯車 Fig.6 ブレーキキャリパー
マスターシリンダー
リアキャリパー フロントキャリパー
Fig.5 ハブ
Fig.7 ステアリングシステム
3.ステアリングギアボックスのレイアウトを上に変更
レイアウトを上にとることでドライバーの足がくる空間を昨年より広くとることができ、ドライバーが楽に運転できるよ うにした.(Fig.9 参照)
5.3.5 ステアリングホイール&シフター
メーター内臓ステアリングホイール
NU-11 の新要素としてメーター内蔵ステアリングホイール を採用することにした.その結果、運転中のドライバーの視線 の移動を最小限にすると共に、限られたコックピット空間を効 率的に使用することに成功した.また、Fig.10 に示すようにシ フトチェンジ用のボタンを適正な位置に取り付けることで、ドラ イビング操作の向上を図った.
シフター & パドルクラッチ
昨年のクラッチ一体型シーケンシャルシフターから電動シフ ターに変更、よりスムーズかつ確実なシフト操作を実現した.
また、連動したシフト操作を行うためにパドルクラッチも採用.
クラッチを切るためのストローク量を 50mm 以下、Fig.13 に示 すパドルアームの長さを最適化することで、ドライバーに負荷 をかけずステアリングを握ったままクラッチ操作を行えるよう にした.
Fig.10 メーター内臓
ステアリングホイール三面 Shift up Shift down
Fig.11 メーター内臓 Fig.9 ステアリングシステム変更点
NU-10ステアリングシステム NU-11ステアリングシステム
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5.3.6 デファレンシャル
今年度は昨年度の反省から剛性と強度の上昇を狙った設計とした.
フレームに溶接するステイは S45C の削り出しとし、デフマウントは肉 抜きをしつつ材料はアルミを使って軽量化をしながらも、強度解析に よって確実な安全率を確保した.基本設計は昨年度からあまり変わっ ていないが、車両の加速性能向上のため最終減速比を去年より上げ る必要があったためレイアウトの変更があった.(スプロケット外径大 型化のため) また、このレイアウト変更はフレーム外部にデファレン シャルユニットを設置するようにしたため整備製の向上につながった.
またターンバックル(チェーンの締りを調節する機構)は六角棒を使い、
これも整備性向上に貢献した.
5.3.7 ペダル
今年度は軽量化とユニットの省スペース化を目標に開発を行っ た.まず、フレームに溶接するステーやマウント以外のパーツは全 てアルミ製とし、各パーツに肉抜きを行った.また、小さくなったフレ ームに合わせて、マスターシリンダーを斜めに配置することでユニ ット全体の大きさを抑えることに成功した. 加えて、今年度からブ レーキペダルに関して「ブレーキペダルは 2000N の踏力に耐えら れなければならない」という新しいレギュレーションが追加され、こ れに適合すべく CAD ソフト上で応力解析を行いつつ適宣肉抜きを 行うことで、高い強度を持たせたうえで軽量化を実現した.また、今 年度からプロポーショニングバルブを採用することで、前輪と後輪 のブレーキバランスを自由に調整できるようにした.
Fig.14 デファレンシャルユニット Fig.13 パドルクラッチ
Fig.12 パドルクラッチ 3D-CAD モデル Paddle arm
Fig.15 ペダル解析図
Fig.16 ペダルユニット
5.3.8 インパクトアッテネータ&ボディ
インパクトアッテネータ
今年度のインパクトアッテネータは昨年度のハニカム構造からシンプルな構造にすることで 1kg の軽量化に成功 した.また、カウルの形状に自由度を持たせられるようにできる限りコンパクトな構造にした.
ボディ
今年度のボディはエンデュランス走行時のパイロンタッチを減 らせるように昨年度のものと比べオーバーハングを短くし、FRP の 積層工程を見直すことでかなりの軽量化に成功した.また、塗装 も昨年度使用したラッカー塗料ではなく、ウレタン塗料で行うこと で雨などによる色落ちなどがなく美しい外観が保てるようになっ た.
5.3.9 吸気系(インテークシステム)
今年度は「高い応答性」・「ハイパワー」を吸気系の目標とし て開発を行った.まず吸気系の設計を行うにあたり、搭載エン ジンの GSX-R600 用エンジンがカタログスペックで 12,400rpm で最高出力と 4 気筒エンジンならではの高回転仕様である.そ こで、高回転仕様の良さを十分に生かしつつ、かつ4輪のレー シングカーに搭載するということを念頭に置き、最高出力を 8000~10000rpm と純正エンジンよりも低い領域にて発生する ようにインテークシステムの経路長を決定した.また「高い応 答性」と「ハイパワー」はどちらもレーシングカーには必須な 要素である.この 2 つの要素はリストリクター・コレクタータ ンクの効率により大きく影響を受ける。そこで、今年度より流 体解析を導入してリストリクター・コレクタータンクの設計の
Fig.20 インテークシステム Fig17. 昨年度マシン搭載 Fig18. 今年度マシン搭載
Fig.19 ボディ(マシン搭載状態)