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1.自分の声に対する外的語音弁別能が低いのはなぜか?

異常構音患者は,「自己産出音に対する範疇的な知覚の基準」のズレ、い わゆる「自己産出音の誤りのズレを検出するモニターの基準」が,正常構音 者とは異なっているために,自己の誤りに気付かず,誤り音を正しい音とい う範疇に含めてしまい,自分の声に対する外的語音弁別能が低くなっている と考えている.

2.自分の異常構音に対する弁別はできないが,(自分と同じ種類の)他人の異 常構音は弁別できるのはなぜか?

同じ種類の異常構音でも,誤りのターゲットとなる音素が患者によって異 なることや,「モニターの基準のズレ」が患者ひとりひとりで異なっている ため,同じ種類の異常構音にも関わらず,他人の声であれば弁別できるので はないかと考えている.

3.声門破裂音や口蓋化構音は文章に対する正聴率が高いにもかかわらず,側 音化構音では正聴率が低いのはなぜか?

側音化構音は音の歪みの程度がわずかであるため声門破裂音などに比べわ かりにくい音であることや,文章では他の音に紛れてしまうために,正聴率 が低かったと考えられる.

4.口蓋裂に限らず,一般的に言語に問題がある患者ではどうであるか?

口蓋裂患者のように器質的に問題がないにもかかわらず,言語障害を認め る機能性構音障害患者に対する患者の異常構音と語音弁別能の関連性は,長

年研究が行われており,異常構音と語音弁別能との関連性があるとの報告も あるが,まだ結論は得られていない.

5.口腔内圧が高い文,低い文とは何か?

破裂音や摩擦音は口腔内圧を高めて産出される音であり,一方,母音や半母 音では口腔内圧が低くても産出できる音である.口腔内圧の高い音を多く用 いて作成された文を口腔内圧が高い文,口腔内圧の低い音を多く用いて作成 された文を口腔内圧が低い文とし,口腔内圧の違いによる鼻咽腔閉鎖の状況 を比較するための課題とした.

6.口蓋二次.手術はいつやるべきか?また,年齢が高いと予後は悪いのか?

手術時期に関しては,就学前の5-6歳頃や10歳前後など,施設によって報 告は異なるが,当科ではアデノイドの消退を考慮し,10-12歳前後に施行する ことが多い.ただし,re-pushback術は,咽頭弁形成術に比べ,術後の愁訴も 尐ないため,症例によっては6-7歳頃に施行することもある.

年齢が高いと術後の言語成績は良くないとの報告が多い.その原因として,

本研究でも述べた,「長期間鼻咽腔閉鎖機能不全が残存していることによる悪 習癖の習慣化」以外にも,学校や会社などにより言語訓練に通うことが困難 であることや,咽頭側壁や後壁の筋肉の動きの低下などが報告されている.

7.裂型や裂幅を検討した報告はあるか?

裂型や裂幅の違いによる報告は,現在のところない.

8.今回の研究を臨床にどのようにいかすか?

今回の研究で,正常構音に対する弁別能は良好だが,患者自身の異常構音 に対する弁別能は低いことがわかった.現在の訓練では,患者自身の声をテ ープに録音して弁別訓練を行っているが,今後は正常構音と患者自身の声を 録音したテープを比較し,音の違いを認識させながら訓練を行ってはどうか

と考えている.

9.知覚基準のズレを検出する方法はあるか?

現在その方法を考えているところであり,今後の検討事項である.

10.卖音,卖語および文章に分けた理由は何か?また分けずに正常群と比較し たらどうなるか?

卖語や文章では,前後の音による意味理解の影響を受けやすいため,今回 の研究では,各音のレベルに分けて比較を行った.本研究では,分けずには 比較検討を行わなかったが,側音化構音群では正聴率が低く,声門破裂音で は正聴率が高いのではないかと予測している.

11.言語中枢についてはどのようになっているのか?

脳波との関連をみる研究もあると聞いたことはあるが,異常構音と言語中 枢との関連性についてはまだはっきりとしたことがわかっていないとされる.

12.鼻咽腔閉鎖機能の総合判定を 3 段階に分けるのではなく,各評価項目のデ ータで比較したらどのような結果が得られたか?

ナゾメータ検査の結果が術後の言語成績を反映しているのではないかと考 えられた.今回はローデータの比較を行っていないため,今後行っていきた いと考えている.

13.会話明瞭度の改善が症例4ではみられなかったのはなぜか?

症例4では,鼻咽腔閉鎖機能は改善したものの,開鼻声や鼻漏出による 子音の歪みは残存し,異常構音の程度は改善していなかったことから,会 話明瞭度は不変だったと考えられた.

14.咽頭弁形成術の術式は?術後の合併症はあるか?

咽頭後壁より粘膜弁を起こし,これを軟口蓋後端に縫着して鼻咽腔閉鎖機 能を補助する方法である.当科では弁の先端を折りたたむ,folded pharyngeal flap法を行っている.

術後の合併症としては,睡眠時無呼吸症候群や顎発育への影響などがあげ られる.

15.対象年齢を低くして同じ研究を進めると,どのような結果が得られるか?

語音弁別能に問題がある症例と,問題がない症例に,結果が分かれるので はないかと考えている.語音弁別能に問題がないとされる症例は,訓練にて 言語障害は改善されるが,語音弁別能に問題がある症例は,言語障害が残存 するのではないかと予測している.

現在の検査方法では,低年齢児に検査方法が理解しづらいため,より簡便 な方法を考える必要があると考えられる.

16.対照群と異常構音群の正聴率の動きが,同じような傾向を示すのはなぜか?

異常構音群も,患者自身の異常構音に対する弁別能は低いが,その他の音 に対する弁別能には問題ないため,対照群と同じような傾向を示すと考えて いる.

17.語音弁別能の本態は?

「知覚のズレ」の問題だと考えているが,これを立証する方法を現在検討中 である.

18.「弁別」と「般化」の違いは?